東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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題名はあれですけど、ネタ回ではないです。ご注意を()


10、「異変だよ! 全員しゅうごーう!」

 side Kirisame Marisa

 

 ──人里付近

 

「はぁ、今日は来客が多いな。やはり、あの月のせいか?」

 

 人里を通りかかった時に突然、青い服を着た青っぽい銀髪の女性が話しかけてきた。

 

「うにゃ、通りかかっただけだぜ。気にするな」

「妖怪の言う事は信じられないんだが......まぁ、さっきと同じ目に遭いそうだからな。

 目的次第では、ここを通してやろう」

 

 アリスはともかく、私は妖怪じゃないんだけどなぁ。

 まぁ、別にいいけどな。間違えられるくらいなら。突然攻撃されても、正当防衛にできるし。

 

「あぁ、人里をおそ──」

「魔理沙。急いでるのよ。余計なことは言わないで。

 私達はあの月にした犯人を探しているのよ。何か知らないかしら?」

 

 ちぇっ、流石に止められるか。まぁ、いいか。異変の黒幕と弾幕ごっこできればそれでいいか。

 

「やっぱり、前の奴らと目的は同じだな。竹林の奥へと進むことだ。そこに答えはある」

「そう。ありがとう。さっ、魔理沙。行くわよ」

「あ、ちょっと待ってくれ。前の奴らってのは、どんな奴らだ?」

「紅白の目出度い奴と胡散臭そうな妖怪だ」

 

 紅白......十中八九霊夢だな。やっぱり、異変に出ていたのか。

 胡散臭そうな妖怪は......思い当たる奴が一人いるが、そいつとは関わりたくないな。

 まぁ、異変を解決するなら絶対に会うことになりそうだが......。

 

「ふむふむ。そうか......。ありがとな。アリス。行くぜ」

「それ、さっき私が言った」

 

 霊夢が異変に関わってる......余計に燃えてきたぜ。

 そう思い、私は全速力で竹林へと向かうのであった──

 

 

 

 ──十数分後 竹林

 

「やばいな。帰り道が分からなくなってきたぜ」

「急ぎすぎよ......。はぁー、帰れなくなったらどうするのよ」

「その時はその時だぜ。それよりも、今は異変を......。あ、大丈夫そうだな」

「え? ......あぁ、本当ね」

 

 私が見ている先には、夜の竹林でもよく目立つ紅白の服を着た女性と胡散臭い奴が飛んでいた。

 あれは、絶対に......。

 

「おーい! 霊夢ー!」

「何? 何でこんな所に魔理沙が居るの?」

「異変を解決するためだぜ。お前達もそれが理由なんだろ?」

「......一緒ではありませんわ」

「ん? 違うのか?」

 

 なんだか不穏な空気だな......。何かまずいことでも言ったか?

 

「違いますわ。私達は『異変解決』に。貴方達は『異変解決ごっこ』でしょう?」

「ちょっと。どうしてそんな敵対心が強いのよ」

「この人達が居ては足でまとい。今回の異変、そんな人達が居ては迷惑極まりないので」

 

 ......やっぱり、この妖怪は嫌いな奴だ。

 こいつは何故か信用できない。どうして霊夢はこんな奴と一緒にいるんだ?

 

「あら、私達がそんなに弱いと思う?」

「少なくとも、私達よりはかなりの格下では?」

「へぇー、なら試してみる?」

 

 あれ、なんでこんなに殺気が高いんだ?

 顔からして、霊夢も困惑してるみたいなんだが......。

 

「試す価値もないと思いますが?」

「......魔理沙。やるわよ」

「はぁ!? どうしてそうなるんだ!?」

「霊夢。やりなさい」

「ちょっと。どうしてこっちは私頼りなのよ。戦うなら貴女も手伝いなさいよ」

 

 あれ、どうして霊夢もやる気になってるんだ?

 私だけか? まともな人間は。いや、人間は私と霊夢しかいないが......。

 

「仕方ないですね......。藍。行きなさい」

「はい。承知しました」

「おい、今どっから出てきた。っていうか、どうして霊夢戦うことになってるんだよ......」

「いや、その前に紫も戦うなら手伝いなさい。どうして式神に......」

「私の式神に負けるようなら、足でまとい以下ですので」

 

 こいつ......煽ることに長けてやがる。

 まぁ、そこまで言われて、黙っているほど私は優しくないけどな。

 

「よし、やるか。私達の力を見せてやるぜ! アリス。式神を頼む。私は霊夢だ」

「いいわよ。覚悟しなさい」

「結局、紫はやらないのね......。はぁー、まぁ、いいけど」

 

 こうして、私達と霊夢、紫の式神との戦いが始まった────

 

 

 

 

 

 side Remilia Scarlet

 

 ──時間は少し遡り 人里近くの森

 

「ねぇ、お姉様。咲夜の様子、少しおかしくないですか?」

「え、そうかしら?」

 

 いや、確かに蛍を倒してから、少し経った今、戦っている時と比べて、咲夜はボーッとしてる感じがするけど。

 おかしいとまでは思わないわね。たまにこうなるし。こういう時は、何か考え事をしているはず。

 

「むぅ、おかしいですよ。多分」

「多分じゃダメじゃない。確実じゃないんだから」

「まぁ、確かに確実じゃないですけど......」

「お嬢様方? どうなされましたか?」

 

 あら、流石に気付かれるわね。

 まぁ、レナったら、ひそひそ声だから気付かれるのも無理ないけど。

 

「貴女が少しおかしいってレナが思って、私に聞いていただけよ。

 多分だけど、貴女、何か考え事してるだけでしょ?」

「まぁ、はい。そうですよ」

「お姉様も多分じゃないですか。いえ、それよりも......そう思ってたなら教えてくださいよ」

 

 まぁ、確かに言ってもよかったわね。まぁ、レナの心配する顔を、もうちょっと見たかったからなんだけど。

 

「あら、言うのを忘れてたわ。ごめんなさいね」

「絶対嘘ですよね......」

「まぁ、いいじゃない。それで? 咲夜。何を考えていたの?」

「いえ、大したことではありませんよ」

 

 ......咲夜の大したことじゃないので、大したことあったやつが多い気がするんだけど......。

 まぁ、本当に大変なこと、特に命の危機とかならすぐに言うはずだから、今すぐ聞かなくても大丈夫とは思うけど。

 

「ただ......」

「ただ、どうしたの?」

「人里が一向に見えない、と思っているだけです」

 

 人里......? そう言えば、確かにここら辺に人里があったような......なかったような......。

 

「あ、そう言えば見当たりませんね。お姉様も前に一度、ここに来たはずですし憶えていますよね?」

「......いえ、憶えてないわね」

「結構最近だった気がするのですけど......。もしかして、来たことも憶えてないってことは......」

「あ、それは憶えてるから安心しなさい。っていうか、悲しそうな顔になるの早すぎよ」

 

 あの時、フード付きコートがあるから日光を防げたはずなのに、レナが甘えて私の傘に入ってきたことが印象に残ってるわ。

 ほんと、甘えるのは家だけにして欲しいわ。......流石に恥ずかしいし。

 

「それは仕方ないですよ。あの時のことも、大切な思い出ですから......」

「レナ......」

「......お嬢様方。良いところで申し訳ないですが、爆発音です。おそらく、人里近くの竹林辺りからの」

 

 咲夜にそう言われ、耳を澄ましてみる。

 確かに聞こえるわね。それも、一回や二回じゃないわ。

 

「あ、ほ、本当ですね」

「本当ね。誰かが戦っているのかしら?」

 

 あれね。レナと話していると、時間を忘れてしまうわ。

 それにしても、レナの顔、赤くなってない? 大丈夫かしら?

 

「行ってみるしかありませんね。お嬢様方。私が案内します。大体の位置は把握しましたので」

「え、よく分かりますね」

「まぁ、メイドですから。音の反響や......いえ、長くなるので割愛します」

「ごめんなさい。それがどうしてメイドと関係あるか分からないわ」

 

 まぁ、咲夜が意味が分からないことを言うのは今に始まったことじゃないけど。

 それでも、レナよりはマシなんだけどね。......私の家族、変な奴多いわねぇ。

 

「まぁ、行ってみるしかないわね。咲夜。案内お願いね」

「はい。では向かいましょう」

 

 こうして、私達は音のする竹林へと向かっていった──

 

 

 

 ──竹林

 

「......お嬢様。霊夢と魔理沙が戦っているみたいですが、どうしましょうか」

「......まぁ、見学でいいと思うわよ。微妙に魔理沙達の方が劣勢みたいだけど」

 

 霊夢と魔理沙、アリスと紫の式神が戦闘中。そして、紫は式神の後ろで見ているだけ......。

 あの妖怪、意味の無いことはしないはずだし、何か考えでもあるのかしら?

 いえ、それよりも、見ているだけでいいのかしら......。

 

「あらあら〜、いっぱい人がいるわねぇ」

「あ、げっ......幽々子さん......」

「あれ、どうして皆さんこんな場所に?」

「あら、冥界のお嬢様とその庭師じゃない。異変解決のためよ」

 

 こんなに集まるとは......。別に、今回は何も運命を弄ってないのに......。

 偶然? それとも必然? ......まぁ、いいわ。これだけいれば異変を解決するのも簡単ね。

 どうして霊夢と魔理沙が戦っているのか謎だけど。

 

「異変、解決? ......幽々子様。お出かけとか言いながら、こんなことを企んでいたんですか」

「偶然よ〜。偶然〜」

「信用できない......」

「あらあら、主人を信用するのは従者として当たり前でしょ〜?」

「えっ?」

「咲夜? どうしてそこで疑問に思うのかしら?」

 

 私、従者に優しい方だと思うんだけど......。稀に、ごく稀にわがまま言うこともあるけど......。

 

「いえ、何でもありませんよ」

「お姉様って自覚ないですよね。無理難題言ったりすることもあるのに」

「レナも失礼ね。そんなこと、一回もないわよ」

「えーっと。話の途中で申し訳ないですが、あの方達はどうして戦っているのでしょうか......」

 

 あ、そう言えばそうだったわね。

 って言っても、弾幕ごっこの最中に聞けるわけないけど......。

 

「まぁ、終わるまで待つしかないわよ。多分、何か戦わないといけない理由があるんでしょ」

「かたや通りすがりに妖怪を倒す人、かたや弾幕ごっこが好きな人ですけどね」

「......そう言われると、理由が無くてもおかしくなさそうね......」

「弾幕ごっこに理由なんてあってないようなものよ〜」

「確かに、遊びみたいなものだしね......」

 

 私達は幽霊と雑談を続けながら、弾幕ごっこが終わるまで待つことになったのであった────


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