東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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ようやく永夜異変開始。
長かったような、短いような......いや、長いなぁ()


8、「永い夜の始まり」

 side Renata Scarlet

 

 ──紅魔館(テラス)

 

「お姉様......」

「あら、こんな夜中にどうしたの?」

 

『三日おきの宴会』から数ヶ月。まだかまだかと思っていたけど、今思い返せば案外早いものだった。

 

「月、おかしくありません?」

「......まぁ、気付くよね。できれば、貴方達が起きる前に済ませたかったんだけど......」

「まだフランもルナも寝ていますよ。起きているのは私くらいです」

「『貴方達』にはレナ(貴方)も含まれているのよ」

 

 まぁ、うん、そうだよね。やっぱり私も含まれてるよね。

 ......昔は何処かに行く時は、よく連れて行ってくれてたのになぁ。

 

「......お姉様、あの月は何なのです?」

「さぁね。私にも分からないわ。ただ、私達、妖怪にとってあれは放っておいていいものじゃない気がするわ」

「......あの月にした犯人の場所に行くつもりですか?」

「えぇ、咲夜を連れて行ってくるわ。レナは安心して、ここで待っていなさい」

 

 むぅ......待っていなさい、と言われて待っている私じゃないのに......。

 お姉様に無理言ったら行ってもよくなるかな......?

 

「お、お姉様」

「何かしら? と言っても、顔に出てるから言いたいことは分かるけど......」

 

 あれ、顔に出てた? ......顔に触れてみても、案外変わってるかどうか分からないものなんだね。

 あ、元の表情の時にあまり触ってないから分かるものも分からないか。

 

「分かってるなら、いいですか?」

「ダメ。一応、口で言ってからにしなさい。本当に私が思ってるのと、合ってるか分からないから」

「分かりました。......お姉様、私も連れて行ってください。絶対に役に立ちますから」

「......はぁー、やっぱりそう思ってたのね。

 できれば、貴方達を危険な目に遭わしたくないから、連れて行きたくないのよね......」

 

 お姉様......優しいのはいつも通りだけど、もう子供じゃないのに......。

 あ、吸血鬼だから子供か。まだ五百歳くらいだし。......五百歳って結構だなぁ。

 

「それに......いえ、何でもないわ」

「え、何です? 気になります」

「何でもないから気にしない、気にしない」

「むぅー、教えてくださいよー」

「レナ様。お嬢様は以前、妹様方だけで異変に向かったのを羨ましく思っているのです」

「ひゃっ!? き、急に出てくるから変な声出ちゃいました......」

「さ、咲夜!?」

 

 咲夜って、いつも急に現れるよね。......もしかして、遊んでる?

 いや、今はそれよりも......。

 

「お姉様、羨ましかったのならそうと言ってくださいよー」

「べ、別にそんなこと思ってないわよ! ただ、あの月が気に入らないだけで......」

「レナ様達が異変に向かった後、お嬢様は『自分も行けばよかったなぁ......』と、ご自分の部屋で嘆いていました」

「ど、どうして知ってるの!? あっ......れ、レナ。フランとルナには内緒にしておきなさい。いいね?」

「うふふ、お姉様の頼みならばいいですよ」

 

 やっぱり、お姉様も可愛いところあるんだなー。

 可愛すぎて、咲夜が居なかったら今すぐにでも抱きしめていたかも。

 

「よかった......。あの娘達、特にフランにバレたら......まぁ、バレたら何とかするけどね。レナを犠牲にするとか」

「お姉様、酷くないですか?」

「大丈夫。冗談よ。で、結局、貴方も行きたいの?」

「お姉様に付いていきたいです。離れたくないです」

「......まぁ、いいわ。遅れないように付いてきなさい。咲夜、貴方も付いてくるのよ?」

「はい、仰せのままに」

「え、あ、お姉様! 行くなら行くって言ってください!」

 

 そう言って飛び上がったお姉様を、私は見失わないように付いていった────

 

 

 

 

 

 side Hakurei Reimu

 

 ──博麗神社

 

「ふぁ〜......もう夜遅いし、そろそろ寝ないと......」

 

 ろくに掃除もしてないけど、もう眠いから明日でいいよね。

 どうせ明日も何もない暇な──

 

「あら? まだ夜は始まったばかりよ?」

「......明日は何もない日だったらいいわねー。さて、寝ないと」

「明日は何もないと思うわ。だって、今日が何かある日なんですもの」

 

 後ろからずっと聞こえる嫌な声......。

 やっぱり、この声ってあいつよね?

 

「......一応、誰かしら? さっきから私の平穏を崩そうとしている奴は」

「私よ。八雲紫。っていうか、声で分からない?」

「はぁー、分かっていたけど、できれば違うやつがいいな、って思ってたのよ......」

 

 そして、できるなら今すぐこいつから逃げたいわ......。

 絶対に面倒事を持ってきてるし。

 

「残念だったわね。私でしたー」

「無性に腹立つのはどうしてかしらね」

「さぁ? カルシウム不足じゃない?」

「貴方のせいだから!」

 

 はぁー......どうしてこいつがここに......。

 確かに、博麗の巫女とは縁がありそうでもないけど......。私には関わって欲しくなかったわ。

 先に関わったのは私だけど。

 

「まぁまぁ。落ち着きなさい。それよりも、異変よ。博麗の巫女の出番じゃなくて?」

「はぁ? 異変?」

 

 異変って、そんな予兆とか無かったと思うけど......。

 何か普段と違うことでも起きているの?

 

「あら、やっぱり気付いてなかったのね。あの満月、何か妙と思わないの?」

「満月? ......別に、普段と変わりないと思うけど......」

「はぁー、やっぱり人間には分からないのねぇ」

 

 私がそう答えると、紫はため息をついてそう言った。

 分からないと思っていたのなら、さっさと言えばいいのに。

 

「で、何が変なの? 貴方の目から見て」

「私だけじゃないわ。妖怪の目から見てあの月はおかしいのよ。

 あの月は、偽物よ。人間には分からないと思うけど」

「偽物? ......全然分からないわね。で、それの何が悪いのよ」

妖怪(私達)の力が弱くなる」

「なら、放っておいてもいいわね」

 

 妖怪が弱くなるなら巫女の私にとっては好都合だし、逆にずっとこのままでも......。

 

「あら、長い間放っておくと、私みたいにしびれを切らした妖怪達が暴れ回るかもしれませんわよ?」

「......その発想はなかったわ。いいわ。手伝ってあげる。これでも博麗の巫女だから。この偽物の満月って、夜の間にしか出ないのよね? なら、夜の間に解決しないとダメなの?」

「えぇ、そうよ。でも、安心なさい。夜を止めてでも解決するわ」

 

 嫌な予感しかしないわね。けど、こいつは結構強いし、何とかなるわよね。

 

「まぁ、それならいいわ。じゃ、案内して。大体の位置は分かっているんでしょ?」

「まぁ、方角程度なら分かりますわ。では、付いてきてくださいな」

「はいはい。......妖怪に仕えてるみたいで嫌な気分......」

 

 そう思いながらも、私は紫の後へと付いていくのであった────

 

 

 

 

 

 side Kirisame Marisa

 

 ──魔法の森(魔理沙の家)

 

「ん、こんな遅くにお客さんか」

 

 家で本を読んでいると、「こんこん」と扉をノックする音が聞こえた。

 多分、霊夢ではない。あいつならノックなどせずに勝手に上がってくるからな。

 かと言って、他の人の可能性は......あの吸血鬼達くらいか? いや、あいつらもこんな遅くには来ないな。

 なら、誰だろうか?

 

「誰だ? ......なんだ、アリスか」

 

 扉を開けると、そこに立っていたのは、同じ魔法使いであるアリスだった。

 いつも通り、小さな人形を従えている。

 

「なんだ、とは失礼ね。貴方も魔法使いなんだから気付いているわよね?」

「え? 何がだ?」

「はぁー、その様子だと気付いてないのね......」

「何に気付いているか言わないと分からないに決まってるじゃないか」

「気付いてたら、聞いただけで分かるくらいの異変なのよ」

「ん、今何て言った? 異変だと?」

 

 まさか、今、現在進行形で異変が起きているのか?

 それなら行かないとな。霊夢も行ってるだろうし。

 

「まぁ、異変ね。気付いていないのなら教えてあげる。今、外に見えるあの月。何かおかしいと思わない?」

「月? ......あぁ、今日は満月で綺麗だな」

「......分からないのね。あれは本物の月じゃないわ。偽物の月よ」

「え? あれが、偽物だって?」

 

 どう見ても、普通の月にしか見えないんだが......。

 アリスは嘘をつくような奴じゃないし、言ってることは本当なんだろう。

 けど、どう見てもあれが偽物とは......。

 

「偽物なのよ。私は本物の月に早く戻したい。魔理沙。手伝ってくれない?」

「......まぁ、異変だしな。手伝わないわけないぜ。あ、霊夢も気付いているのか?」

「さぁ、それは知らないわ。けど、霊夢も博麗の巫女なんだし、気付いてたら解決している途中にでも会うでしょうね」

 

 まぁ、確かにそうだな。もし会えれば、協力もできるかもしれないな。

 とりあえず、異変に向かって、霊夢がいたら協力して、最後のおいしいところだけ私がやるか。

 道中は霊夢に任せて。

 

「......魔理沙。凄く悪い顔になってるけど?」

「あ、あはは、気にするな。特に意味はないからな」

「ふーん。嘘だと思うけど分かったわ。さ、付いてきて。大体の場所は見当ついてるわ」

「おぉ、流石だな。頼りにしてるぜ」

「......そう、ありがとう」

 

 私はアリスを頼りに、異変を解決するために暗い夜の中を急ぐのであった────

 

 

 

 

 

 side Konpaku Youmu

 

 ──白玉楼

 

「妖夢ー、お出かけしましょー」

 

 夕食の後片付けをしている最中、幽々子様が唐突に口を開き、そう言った。

 

「幽々子様。突然どうなされましたか? それに、お出かけと言っても、何処に行くのですか?」

「幻想郷〜」

「は、はあ......。幻想郷と言っても、何処に行くのですか? 神社とか、山とか、館とか、色々ありますけど......」

「そうねぇ......竹林辺りかしら?」

「『かしら?』って......。また思い付きなんですね......」

 

 いつものことだけど、幽々子様の思い付きには困らさられる。

 はぁー、私、こんなことやっといて体持つかな......?

 

「あらあら、思い付きじゃダメかしら〜?」

「いえ、別にいいですけど......」

「なら、行きましょ〜」

「まだ片付けが終わっていないですけど......」

「帰ってからでいいじゃなーい」

 

 洗い物はできる限り早めに終わらせたいんだけどなー。でも、幽々子様の命令を聞かないのもなー......。

 

「......はぁー、いいですよ。行かないとうるさいでしょうし」

「やった〜」

「ただし、洗い物を水につけるくらいはさしてください」

「それくらいはいいわよ〜。さ、終わったら急いで冥界の出入り口に来なさいよ〜」

「はいはい。分かりましたよ。って、もう行っちゃいましたか......」

 

 それだけ言い残して、幽々子様は消えてしまっていた。

 多分、もう行っちゃったのかな。私も急いで行かないと。

 そう思って、私は急いで片付けを再開するのであった────


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