東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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今回から、番外編を一つに纏めることにしました。
以前からある番外編はそのままにしますけど()

記念日なので、普段通りのほのぼのです。
時間がある時にでもゆっくりお楽しみくださいませ。


番外編
番外編「七夕の夜」


 side Renata Scarlet

 

 ──七夕の夜 紅魔館(パーティーホール)

 

「この部屋を使うのは久しぶりねぇ」

「誕生日は大食堂を使っていますしね。

 まぁ、七夕用の竹が入らないからここにしただけで、本来なら大食堂を使っていたでしょうね」

 

 今日は七月七日。七夕の日だ。

 昨日、知らなかったらしいお姉様にそのことを伝えると、暇つぶしにと、パーティーホールを使用した大掛かりな催し物を始めた。

 催し物とは言っても、集まっているのは紅魔館の住人だけだが。

 

「お姉ちゃん達、短冊書かないのー?」

「書いたわよ。もう竹に付けてあるから、見たかったら見てもいいからね」

「はーい。ねぇねぇ、レナはー?」

 

 好奇心旺盛な声で、無邪気な子供みたいな顔をしたミアがそう聞いてきた。

 ──毎回思うけど、本当に子供の時みたいな反応をする時があるよね、ミアって。可愛いからいいけど。

 

「私も書きましたよ。ですが、私のは見ないで下さいね。恥ずかしいですし」

「えー、いいじゃなーい。レナが書いたことは、ミア()が書いたも同然だしー」

「なら何を書いたか分かりますよね?」

「むぅー......まぁいっか。その代わり、私と久しぶりに遊びましょー」

「久しぶり、って言うほど経ってないと思うのですが......」

 

 確か、前に遊んだのは二週間ほど前だったし......。

 吸血鬼である私達にとって、二週間なんてあっという間だし......。

 

「まぁ、いいんじゃないの? 私と遊ぶよりも、自分(ミア)と遊んだ方が楽しいと思うわよ?」

「何言ってるの? お姉ちゃんも遊ぶんだよ?」

「え? あ、そうなの。でも、夕食までもう時間が......」

「あー......できれば、体を動かすことがしたかったけど、トランプゲームでもいっか。

 レナ、トランプ出してー」

「まぁ、それくらいはって、自分で出せばいいじゃないですか。......ほら、トランプですよ」

 

 具現化魔法でトランプを作り出し、私はミアに手渡した。

 ちなみに、この魔法、作った物は一時間ほどで消えるから、こういう時にしか使えないのだ。

 

「ありがと。そう言えば、フランとルナは?」

「さぁ? 何処に行ったのかしらね」

「あぁ、あの二人ならまだ短冊を書いていますよ。願い事は一つだけにしなさい、と言ったら、かなり悩みながら考えていました」

「あら、願い事って一つだけなの?」

「そんなことはないんじゃない? 自分で努力して叶えれるんだったら、何個でもいいと思うけど」

 

 あれ? そうなの?

 前世の記憶の中に、願い事は一つしか書いてない記憶があるから、てっきり......。

 そうなれば、フラン達に言いに行かないと。間違いだったと知れば、怒るかな?

 いや、流石に怒りはしないか。

 

「すいません。フラン達に訂正してくるので、先に始めていて下さい」

「先にって言われても......って、あら? もう行っちゃったの?」

「お姉ちゃん。待ってよっか」

「えぇ、そうね」

 

 

 

「フラン、ルナ。すいません」

「オネー様? どうしたの?」

「え? お姉様? 急にどうしたの?」

「いえ、願い事は、別に一つじゃ無くてもよかったらしいので......」

「あれ、そうなの? なら──」

「──いっぱい書いちゃおー」

 

 私の妹達は、息の合った会話をしながら、次々に短冊へと願い事を書いていった。

 

「あ、それと......お姉様達とトランプゲームをするのですが、しませんか?

 夕食までなので、短い間ですけど」

「もちろんするー! もちろん、ルナもするよね?」

「するー」

「......本当に仲良しですよね、貴方達って。嬉しいです」

 

 まぁ、この娘達やお姉様は、たまに言い争いをしているのを見かけることもあるけど、それでも姉妹。仲が良いのは変わらないから嬉しいや。

 あれかな? 喧嘩するほど仲が良い、っていうやつなのかな。

 

「ま、姉妹っていうか、双子みたいなもんだしね」

「うん。フランの気持ち、言わなくても大体分かることあるし」

「感覚共有? まだ残っていることってあるのですね。いや、私とミア、フランとルナでは少し......」

「え? どうしたの?」

「いえ、何もありませんよ。ささっ、願い事を書いて早く遊びましょう?」

「急かさない、急かさない」

「すぐに終わるから、ちょっと待ってて」

 

 私は「分かりました。先に行ってますね」とだけ答え、お姉様とミアが居る方へと戻っていった。

 

「あら、あの娘達はやらないの?」

「いえ、もうすぐしたら書き終わるらしいので、先に戻ってきました」

「そう。じゃぁ、早速──」

「お嬢様。お楽しみの最中に申し訳ございませんが、お食事の準備ができました」

「......まだ楽しいんでないわよ。はぁー、仕方ないわね。先に食べましょうか」

「むぅ......すいません、お姉様。私がもっと早くしていれば......」

「貴女のせいじゃないわよ。それに、もっと早くしていれば、している最中に来ていたと思うわよ?」

 

 あ、そっか。確かに、している最中に来て中断するよりは、する前に来た方がいいね。

 

「じゃぁ、行きましょうか」

「......え? 何処にです? ここで食べるのではないのです?」

「テラスに行くのよ。今日は晴れてるから、天の川を見ながら食べたいじゃない?」

「あぁ、なるほど。そういうことですか」

「七夕とかじゃないと、なかなか天の川なんて意識して見ないからね。新鮮な感じがするよね」

 

 そう言えば、本当は天の川って一年中見れるんだっけ?

 結構長い間生きてる気がするけど、あんまり見たことないから本当にそうなのか知らないけど。

 

「レナ。悪いけど、もう一度フラン達を呼んできてくれない? 私達は先に行ってるから」

「あ、私が呼ぶよー。だから、レナはお姉ちゃんと先に行って、ね?」

「なら、先に行ってるからね。レナ、行きましょう」

「え、あ、はい。分かりました」

 

 なんかミア、面白そうに笑みを浮かべてたけど、何か企んでいるのかな?

 なんか怖いなぁ。

 

 そう思いながらも私はお姉様と共に、テラスへと目指した──

 

 

 

 ──七夕の夜 紅魔館(テラス)

 

「......遅いですね」

「そうねぇ。天の川はこんなに綺麗に見えるのに。......道にでも迷っているのかしら?」

 

 テラスに着いて十分くらい経った。それなのに、未だにミア達が来ない。

 短冊を書いてるにしろ、五分もあれば余裕で追いつくはずなのに......。

 

「自分の家で迷うことなんてあります?」

「......レナ、頭にブーメラン刺さってるわよ」

「え? ......何も刺さってないですけど......」

「いや、そういう意味じゃ......まぁ、いいわ」

 

 一体どういうこと? 月は紅くないのに、変なお姉様。

 まぁ、紅くなくても変な時あるけど。

 

「それにしても、綺麗ねぇ。そう言えばどの星だっけ? 織姫と彦星の星ってのは」

「えーっと......あの上の方でかなり光っているのが織姫星ですね。

 彦星が天の川を挟んで下の方にある星、ですかね?」

「聞かれても分からないわよ。それに、星が沢山あり過ぎて分かりづらいわ」

「うぅ、ですよね......」

 

 やっぱり、都会と違ってここは暗いから星が沢山見えるから、分かりづらいのも無理はないかぁ。

 はぁー、もっとしっかり調べてればよかった......。

 

「あ、べ、別に貴女のせいじゃないわよ! だ、だからね、安心して?」

「そ、そんな必死に言わなくても大丈夫ですよ。そんな顔に見えます?」

「え、えぇ。かなり悲しそうな顔を......」

 

 ただ単に、落ち込んでただけなんだけどなぁ......。

 そんな顔になってたんだなぁ。心配かけないように、これからは気を付けないと。

 

「まぁ、大丈夫ですから安心して下さい。それにしても、星の数凄いですよね」

「外の世界にいた頃とあまり変わらないと思うわよ?」

「......いえ、かなり違いますよ。えぇ、とても......」

 

 前世のことはあまり憶えていないけど、空に星が見えなかったのは憶えている。

 こうやって綺麗な空、綺麗な星を見るのも新鮮だなぁ。

 やっぱり、幻想郷(ここ)に、この世界に来れてよかったなぁ。

 

「? まぁ、貴女がそう言うのならそうなんでしょうね。

 ......咲夜も遅いわね。いつまで待たせるのかしら?」

「そう言えば、夕食を持ってくるはずなのに、遅いですよね。いつもなら一分で来るのに」

「おっと、すいません。少し道に迷っていまして」

「きゃっ!?」

「わっ!? ちょ、ちょっとぉ......」

 

 話をしていると、料理を手に持った咲夜が、突然目の前に現れていた。

 ──いつものことなのに、未だにこれは慣れないや......。

 

「おや、驚かせてしまいましたね」

「あ、お姉ちゃん! お待たせー。あっれー、咲夜も今来たところ? 良かったー、タイミング良かったのねー」

「......本当にタイミング良すぎない? ねぇ、本当にタイミングが良かっただけなのかしら?」

 

 なんだろう。ミアの顔、明らかに嘘をついてる顔のような......。

 

「あははー、やだなぁー。本当だよ。ね? フラン、ルナ」

「え、う、うん。本当だよ」

「ちぇっ、美味しい展開に期待してたのに......。やっぱり、二人だけの時に......」

「フラン。心の声漏れてるわよ?」

「え? ......あっ! な、何でもないからねー」

「大体分かったわ。......貴方達ねぇ......!」

「キャー、お姉ちゃんが怒ったー」

「ちょっ、待ちなさい!」

 

 ......賑やかだなぁ。夜空を見ながら食べる、って話は何処に行ったんだろうか。

 でも、こういう時があってもいっか。楽しいし。

 

 織姫と彦星が出会える一年の中で唯一の日。

 今日も、私達は賑やかに過ごすのであった────




次の記念日はいつぞやら。本当にいつなんだろう()

後、投稿時点でお気に入り者数が500を超えたので、日常編を来週か再来週辺りに投稿します。

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