ただ、ちょっとした鬼が出たり、次女が損するだけのお話。
あれ、22:00に投稿されてなくない?()
まぁいっか。
side Renata Scarlet
──博麗神社
「ふぁ〜......お姉様、そろそろ帰りませんか......?」
「もう少しくらいいいじゃな〜い。それとも何? レナは私と飲むのが嫌なのー?」
宴会のために、博麗神社に来てから数時間程経った。
お姉様はあれからも顔がほんのり赤くなるほどワインを飲み続けていた。
「い、嫌ではないですけど......もう眠いですし、お姉様も酔っていますし......」
「私は酔ってないわよー。嫌じゃないなら飲みましょうよー」
お姉様はほんのり酔っているからか、ちょっと上機嫌なだけに留まっている。
多分、完全に酔ったらもっと機嫌が良くなって......いや、これ以上はよくない。
「むぅ、お姉様が言うなら......」
「いやいや、さっさと連れて帰りなさいよ。朝まで居るつもり?」
眠たいせいか、それとも宴会での疲れのせいか、少し不機嫌そうな顔をした霊夢がそう言った。
そう言えば、もう私達しか残ってないからね。早く帰って欲しいんだろうなぁ。
「いいじゃな〜い。もうここに泊まってもいいんじゃないかしら?」
「駄目に決まってるでしょ。さぁ、姉の責任は妹の責任。貴女がしっかりと責任を持って連れて帰りなさいよ」
「むぅ、仕方ないですね......。お姉様、帰りましょう。ここに泊まると、みんなに心配をかけますよ?」
「えぇー、咲夜がいるでしょ? 咲夜に言ってもらえば心配かけないわよー」
「残念だけど、今日は片付けのために咲夜は借りるわよ。だから、貴方達がそれを伝えるためにも帰りなさい。まぁ、みんな知ってるかもしれないけど」
要するに、私一人でお姉様を連れて帰れと......。いやまぁ、いいんだけどさ。
お姉様、酔ってるから、最悪私がおんぶしないと......いや、それはそれで良いか。というかしたいしね。
「えぇー、レナー、まだ居ましょうよー」
「お姉様、子供みたいなこと言ってないで帰りましょう? おんぶしますよ? というかさせて下さい」
「貴女も必死ね。さぁ、帰りなさい。私はこれから片付けがあるから。ほんと、みんなも片付けてから帰りなさいよ......」
「頑張って下さいね。ささっ、お姉様も行きましょう」
「仕方ないわねぇ。あ、おんぶはしなくていいからー。子供じゃないからね。じゃぁ、霊夢、また来るからー」
「もう来なくていいわよ」
うぅ、お姉様をおんぶ......いや、まぁいっか。いつまで続くか分からないけど、また宴会はあると思うからね。
そんなことを考えながら、私達は空へと飛び立ったのであった──
──紅魔館への道のり(上空)
「お姉様、フラついていません? 大丈夫です?」
結局、お姉様をおんぶすることが叶わなかった私だが、フラフラと飛ぶお姉様を見ていると心配になる。
どうにかして、説得でもしようかな......。
「大丈夫、大丈夫ぅ〜。もぅ、レナは心配症ねぇ。可愛いわぁ」
「可愛い......ありがとうございます。......お姉様も可愛いですよ?」
「ありがとうね〜。......で、レナ、貴女は気付いたかしら?」
「ふぁっ!? あ、いえ、何にですか?」
「......何変な声出してるのよ?」
突然、流暢にお姉様が話し始めたから変な声が出てしまった。
え? もしかして、最初から実は酔ってなかったとか......?
え、酔ってるから何言っても忘れると思って、可愛いとか言っちゃったんだけど!? ま、まぁ、姉妹だし、大丈夫だよね、うん。
顔が真っ赤になってる気がするんだけど......。
「あのぉ、お姉様? 酔ってないのですか?」
「酔ってないわよ。最初から言ってるじゃない」
「いやいや、そんなの嘘だと思っていましたから」
「そう、貴女も鈍いのねぇ。あ、いえ、悪い意味じゃないわよ。それよりも......さっさと出てきなさい! もう気付いているんでしょ!?」
「え、え? 誰か居るのですか?」
「......ちぇっ、もう少し面白いものが見れると思ったんだけどなぁ」
お姉様が虚空に話しかけると、どこからともなく声が聞こえてきた。
聞いたことない声だ。もしかして、今までずっと見られていたんじゃ......。
って、今まで見られてたとしたら、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!? 絶対に顔が真っ赤になってるよぉ......。
「って、そっちの......お嬢さんはどうしたんだい?」
「え? あー、気にしないであげて。それよりも、早く姿を見せなさいよ」
「あぁ、確かに姿は見せた方がいいな。見せないと失礼だろうし。......はい、これでいいか?」
いつの間にか、目の前には薄い茶色のロングヘアーと真紅の瞳にほんわか赤い顔、そして、長くねじれた角が二本生えた少女が浮かんでいた。
服装は白のノースリーブに紫のロングスカートで、頭に赤の大きなリボンをつけ、左の角にも青のリボンを巻いている。
そして、左手には紫の瓢箪を持ち、三角錐、球、立方体の三つの分銅のような物を腰などから鎖で吊るしていた。
見た感じ、この娘の正体は山の四天王の一人と言われる伊吹萃香だろう。
「......で、貴女よね? 最近我が物顔で幻想郷を包み込んだり、私達......いえ、レナを覗き見したりしている奴は」
「ようやく気付いたのね。えらいえらい」
「あぁ、そう。ありがと。で、貴女が何者か知らないけど、
それに、
「私はあんたの事をよく知ってるよ。妹達と一緒に居ない時はいつも我侭ばっかり言ってたわよね。って、一緒に居ても我侭言ってたかな?
本当はずっと私の姿を気にしていた。まぁ、かなり細かく分散していたけど......」
え? 要するに、お姉様は気付いてたの? いや、それよりも、私、見られてたの!?
めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど......。私、何も変なことはしてないよね? 特に何もしてないよね?
「それでもあんたが動かなかったのは......」
「何のことを言ってるの?」
「本当は別の、人間に気付かせたかった。それに、私の狙いが気になったから。放置しとけばいずれ尻尾を出すとでも思った?」
「当たり前よ。妖怪退治は人間の仕事。それに、貴女が何者か分からないから、放置するしかないでしょ?」
「なら、どうして今頃話しかけてきたんだ? 不安になってきたんじゃないのか?」
「余りにもみんな鈍いし、これ以上、妹のプライベートを覗き見さすのは可哀想だからね」
「え!? やっぱり見られていたのですか!?」
い、いやまぁ、別に恥ずかしいことなんてないけど......。ない、はずだけど......。
「いやいや、そんな覗き魔みたいに言わないでくれよ。別にプライベートまで見てないからね?
でも、私はあんたの事をよく知ってるよ。宴会ではいつも妹達に酒を飲まされ、酔わされていたねぇ。毎回毎回、よく飽きないで同じことを繰り返せるよね。実は、好きでやってるんじゃないか? いや、それすらも覚えてないのかな?」
「確かに、私はお酒を飲まされてる気がしますけど......全然覚えていないのですよね」
「覚えてない方が幸せなこともあるわよ」
「それには同感だね。で、あんたは私を見つけてどうしたいんだ? 実は、あんた達で六、七人目なんだ。いや、もう二人も追加しないとな」
「あら、それでも異変は終わっていないということは......」
まぁ、負けてるんだろうね。それにしても、結構な数に見つかってたんだね。それでも宴会を続ける人達が凄いなぁ。
「まぁ、そういうこと。私も普通の勝負には飽きてきたところだし......どうだ? 一つ、賭けをしないかい?」
「はぁ? 賭け? 私、それなら強いわよ?」
「いやいや、お姉様はかなり弱いじゃないですか。フランにいつも負けっぱなしですし」
「失礼ね。それは運が悪いだけよ」
「なるほど。いつも運が悪いということだな。それなら、こっちに分があるな。
賭けと言っても、普通の勝負と変わらない。あんた達が勝ったら私はすぐにでも『萃める』のを止めよう」
あぁ、そう言えば、萃香って宴会を何回もやらせていたんだっけ? まぁ、あまり知らないから何とも......。
「ふーん、聞く必要はないけど、貴女が勝ったら?」
「お前の妹にこの酒を飲ます。どうだ? 負けても面白いだけで済むからいい話だと思わないかい?」
「いやいや、飲ませないから。この娘が酒に弱いのを知ってるでしょ?」
「大丈夫。死にはしない。そいつも一応、鬼だろ? なら大丈夫だ。それに、本当はあんたも見たいと思っているんだろ?」
「別に? 思ってないけど?」
「嘘。本当は思ってる。酔った時の甘えてくる可愛い妹の姿をまた見たいと思っているんだろ?」
「......よ、酔ってなくても甘えてくるから別にいいわよ」
「お姉様!? 今ちょっと考えていましたよね!?」
私って酔ったらそんなに甘えるの? 逆にちょっと見てみたいんだけど。というか、私、他の人に気付かれるくらい甘えてるかな?
「べ、別に......こいつがレナのプライベートを見ていないのなら、レナも他の奴と変わらないし、どうせ異変なんて、霊夢が何とかすればいいでしょうし......」
「お姉様ェ......」
「素直になったかい? 私はとある奴から
だから、もう見る必要はない。とある奴の正体は死んでも話すつもりはない。いやまぁ、死ぬことなんて有り得ないけどね」
「ふーん......貴女、名前は?」
「伊吹萃香。鬼の伊吹萃香だよ」
「萃香、レナにそれを飲ませるのを手伝って」
「え、ちょっと待って。お、お姉様!? どうしてですか!?」
お姉様がさらっと背後に回って、私の腕を掴まえて動けなくされた。
力だけならお姉様に勝てるか怪しいし、身体能力を強化する魔法は苦手だから、抜け出すことなんてできない......。
いやまぁ、一つだけあるけど、それだとお姉様を傷付けてしまうし......。
「そうねぇ......。レナ......貴女はいい娘だったわ」
「説明になってないのですが!?」
「姉よりも力が弱いのか? それとも、実はやって欲しいからか?」
「そ、そんなわけないですからね!?」
「嘘。まぁ、それが吸血鬼の愛情表現ってやつなら仕方ないな」
「違いますからね!? 割と真面目に!」
とか話しているうちに、萃香が紫の瓢箪の持って近付いてきた。
そう言えば、その瓢箪って人間が飲むと大変なことになるくらいヤバい酒が入っているんじゃ......。
「さぁて、一応、吸血『鬼』だし、結構飲ませても大丈夫かな?」
「一口だけでも酔うから、一口だけにしてあげて」
「そ、それは幾ら何でも早すぎるな......。まぁいっか。後日、また謝りに行くから我慢してくれ。その時は、お前の妹さんにも会わしてくれよ。あいつと同じ吸血鬼......会ってみたいからな」
「え? あ、モガっ!?」
しみじみと話していると思ったら、無理やり瓢箪を口に当てられ、お酒を飲まされた。
「あ、そのまま飲ますのね。って、飲ませすぎじゃない!?」
「ん? そうか? あ、ごめんよ」
「ゴクゴクッ、ぷはっ......お、おねぇさまぁ......いじわるぅ......」
うぅ、頭がフラフラする......。
「ふふ、ごめんなさいね。悪いと思っているわ」
「それにしては嬉しそうだね。まぁ、家までは送るよ。一人だと大変だろ?」
「えぇ、ありがと。それじゃぁ、レナー、甘えていいからねー」
「お、おねぇさまぁ〜」
「あら、本当に甘えてくれるのね。私、嬉しいわ」
フラフラしながら、私はお姉様を抱き締めた。
そして、気付いた時には、私はお姉様の部屋のベッドで寝ていた────
ちなみに、この後、酔っ払ったレナさんは姉に甘え続けた後、萃香と姉に部屋まで連れていかれ、寝かされたとか。
そして、姉は萃香の持つお酒を貰ったとか何とか......()
次回は金曜日の予定。水曜は日常編。