東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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結局遅れてるじゃないか!?(←おい)

ま、まぁ、気を取り直して、今回は1ボスの話+αです。



7、「『春』を追って、その先へ」

 side Kirisame Marisa

 

 ──とある森(上空)

 

「あぁー! 寒い! 寒すぎるわ!」

 

 博麗神社から飛び立って、数分も経たないうちに、霊夢がそう騒ぎ始めた。

 いつものことだが、異変の時、こいつって騒がしいよな。......まぁ、私が言えないけどな。

 

「おいおい、そんなに騒ぐことでもないだろ?」

「そんなに騒ぐほど寒いのよ! あ〜ぁ、どっかに運動代わりに倒せる妖怪とかいないかしら?」

「......お前って妖怪に対しては酷いよな。まぁ、博麗の巫女だから、ってのもあるんだろうけどな」

「よく分かってるじゃない。あ、丁度いいところに妖精がいるじゃない。

 あれは......氷の妖精ね。あれを倒せば、少しは寒さもマシになるかしら?」

「お前、本当に容赦ないな」

 

 我が親友ながら、本当に恐ろしいやつだぜ......。こいつ、本当は妖怪かなんかじゃないのか?

 そんなことを考えているうちに、可哀想な氷の妖精が霊夢に撃ち落とされていた。......あれ? あの妖精、どこかで......いや、気のせいだな、絶対に。

 

「『霊符「夢想封印」』! なんか見てたら寒いから落ちなさい!」

「ぐあぁぁぁ!」

「......あいつには慈悲がないのか? はぁー、仕方ないな。あの妖精くらいは助けるか......」

 

 それにしても、霊夢の妖怪や妖精を見つけたら問答無用で倒す癖、何とかならないのか? ......いや、ならないな。あいつは絶対に。

 

「あら、その妖精、助けるの?」

「まぁな。ちょっと可哀想だしな。......なんか私も倒したことがある気がするけどな」

「ふーん、それなら同罪ね、私も貴女も」

「いやいや、私は襲われたから倒したんだぜ。お前みたいに見つけたから倒したんじゃないぜ?」

「妖精なのよ? 人間に悪戯するし、退治しといて損にはならないと思うわよ?」

「さっきは運動代わりとか言ってたくせに、何を言ってるんだか......」

 

 こいつ......全然自分が悪いとは思ってないな......。まぁ、いつものことだからいっか。それよりも、適当な場所にこの妖精を寝かせてやらないとな。

 まぁ、どうせあのまま落ちてても、一回休みで復活してただろうから放っておいてもよかったんだろうけど......まぁ、助けておいて損はないよな。助けてもらったのを覚えてるかどうかはともかくな。

 

「さ、早く置いてきなさいよ。これから異変を解決しに行くってのに、連れてけないわよ」

「勿論分かってるぜ。あの辺とかいいかな? ほら、草木が生い茂ってるし」

「何処でもいいわよ。......まぁ、妖怪とかに襲われないように、一応、隠れさせなさいよ」

「おっ、霊夢もたまには優しいことを言うんだな」

「たまには、は余計よ」

 

 妖怪に対してはいつもキツイのに、こんなこともあるんだな。

 そんなことを考えながら、妖精を草木に隠した。一応は大丈夫だと思うが、少し心配だな。まぁ、何かあっても一回休みで復活するけどな。

 

「よし、終わったぜ。待たせたな」

「待ちくたびれたわ」

「いやいや、そこまで時間は経ってないだろ?」

「まぁ、そうね。......はぁー、それにしても寒いわね。いい加減にして欲しいわ。いつもならもう眠る季節だって言うのに」

「春眠暁を覚えず、かい?」

 

 気が付くと、目の前には、紫色の瞳を持った薄水色のショートボブに白いターバンのようなものを巻き、ゆったりとした服装をした女性がいた。そして、下はロングスカートにエプロンらしきものを着用し、首には白いマフラーを巻いているが、見た感じは防寒具ではない。この寒い日に、そこまで厚い服を着ていないとなれば、冬の妖怪か何かだろう。

 

「どっちかつーと、あんたらの永眠かな?」

「おいおい、最初から毒舌だな......」

「ところで、人間は冬眠しないの? 哺乳類のくせに」

「する人もいるけど、私はしないの」

「私もしないぜ」

「なら、私が眠らせてあげるわ。安らかな春眠」

 

 こいつ......明らかに戦おうとしているな。まぁ、霊夢の方がやる気みたいだし、ここは任せるするけどな。

 

「あ~ぁ、春眠ももっと暖かくならないとねぇ」

「暖かくなると眠るんなら、私達と同じだね。あと、馬酔木の花とかも」

「うるさい、あんたみたいのが眠ればちったぁ暖かくなるのよ!」

 

 そう言って、霊夢が弾幕をばら撒き始めた。

 やる気なのはいいが、私を巻き込まないでくれよ......。

 そんな心配をよそに、霊夢と冬の妖怪の弾幕ごっこが始まった────

 

 

 

 

 

 side Renata Scarlet

 

 ──魔法の森(上空)

 

「オネー様はまだ着かない?」

「まだ着きませんよ。というか、どこに黒幕がいるのかさっぱりです......」

「ま、仕方ないよね。先に咲夜か魔理沙を見つけよ」

 

 紅魔館を出てから博麗神社、魔理沙の家を見てきたが、魔理沙や霊夢は見つからなかった。

 やはり、もう異変を解決しに行っているのだろう。......どうやって合流すればいいんだろう......。

 

「オネー様、魔理沙を見つける魔法ない?」

「そんな便利な魔法はありませんよ。まぁ、目視さえすれば、何とかなったり、元々魔法をかけていれば大丈夫なんですけど......」

「オネー様、便利」

「本当にお姉様って便利だよね。肝心な時に、レミリアお姉様みたいになることもあるけどさ」

 

 お姉様に似ていると言われるのは嬉しいけど、流石にそれは似たくないや......。

 

「......あ、あれってアリスの家だよね?」

 

 フランが指差す方向には、確かにアリスの家があった。

 そう言えば、ここって魔法の森だったね。......そう言えば、この異変を何か知ってるかもしれないし、寄ってみようかな。

 

「アリス? あ、たまに図書館に来るあのアリス?」

「うん、そのアリスだよ。貴女の身体を作ってくれた人でもあるんだよ?」

「私の、身体を......? お礼、そう言えば言ってない。言った方がいいよね?」

「そうですね。ついでに、異変のことを何か知っているか聞きに行きましょうか」

 

 確か、原作ではアリスはこの異変に出てきてたよね? まぁ、関わってたかどうかは知らないけどね。

 

「あら、貴方達は......紅魔館の吸血鬼姉妹ね。こんなところでどうしたの? もしかして、魔法を教えにでも来てくれたの?」

「あ、家に行くまでもなかったね。こんにちは、アリス」

 

 その声が聞こえ、声の方を振り返ると、目の前にはアリスが二体の人形を引き連れて宙に浮かんでいた。

 

「こんにちはです。今日は、ちょっと妹達と一緒に異変でも解決しようかと思って、何か知ってそうなアリスさんのところに訪ねて来たんです」

「へぇー、異変を解決......って、貴方達が!? よ、妖怪なのに!?」

「まぁ、妖怪ですけど、妖怪が異変を解決する時もありますよ」

「......まぁ、それもそうね。妖怪だから異変を解決してはダメだ、っていうルールも無かった気がするし、止める必要もないわね」

 

 あらま、思ったよりもあっさりと理解してくれたなぁ。

 やっぱり、幻想郷は常識なんて通用しないのね、どっかの緑の巫女が言ってたみたいに。

 

「......アリス?」

「あら、どうしたの? ......ルナ、だったかしら?」

「うん、そうだよ。身体、作ってくれてありがとう」

「え? あぁ、そうだったわね。別にお礼なんていいわよ。久しぶりに大きめの人形を作れて楽しかったし、夢にも一歩、近付いた気がするし......」

 

 アリスの夢? ......そう言えば、何か聞いたことがある気がするけど......まぁ、忘れちゃったから別にいっか。

 

「あ、そうそう。話を戻すけどね。異変を解決する為には、春を......春度を集め、追いなさい」

「春度? 何それ?」

「桜の花びらのような物のことよ。それと、さっき貴方達のメイドに会ったわよ。あいつも異変を解決したいらしいから、今、貴方達に言ったのと同じことを言ったら、春度を集めて、どこかに飛んでいったわ」

 

 春度......そう言えば、一枚だけ。お姉様に渡しちゃったなぁ。まぁ、お姉様が咲夜に渡したかもしれないし、普通に探した方が早いだろうけどね。

 

「ふーん......じゃあさ、その春度ってのを集めよっか。アリスは持ってないの?」

「何枚か持ってるわよ。でも、全部は渡せないわ。これを持ってると、暖かいしね。だから、一枚だけあげるわ。後は、貴方達で集めなさい」

「うん、アリス、ありがと」

「お礼なんて別にいいわよ。それよりも、行きなさい。私としても、これ以上冬が続くのはごめんよ。だから、貴方達に任せたわ」

「はい、分かりました。......では、また会いましょう」

「えぇ、またね。次会う時は、魔法でも教えてちょうだい」

 

 そう言って、アリスは家の方向へと飛んで行った。

 それにしても、この桜の花びらが異変解決の手がかりだったなんて......やっぱり、幻想郷って不思議だなぁ。

 

「お姉様、早く行こっ?」

「はい、そうですね。あ、フラン、ルナ。寒くないですか?」

「私は大丈夫。フランは?」

「私も大丈夫だよ。ま、吸血鬼だしね、これくらいの寒さはへっちゃらだよ」

「フラン、フラグ?」

「いやいや。......って、お姉様。ルナに変なことを教えないでよね。私が何か言う度にこれ言うんだから」

「え、は、はい......すいません」

 

 毎回言ってるんだ......。と言うか、教えてはないよ? ただ、真似されているだけで......いや、原因は私だからあんまり変わらないか。

 

「じゃ、取り敢えず向かおっか。この春度? を集めに、ね」

「はい、そうですね」

 

 こうして、私達はなけなしの春度を持って、春度を集めに飛んで行くのであった────

 

 

 

 

 

 side Kirisame Marisa

 

 ──魔法の森(上空)

 

「ちょっと動いたからかしら? 暖かいわね」

 

 結局、冬の妖怪は霊夢に簡単に倒された。それも、スペルカードを連続で二枚使うという鬼畜な技でだ。

 やっぱり、こいつ......本当は妖怪なんだろうか?

 

「それにしても、魔理沙。気付いた?」

「ん? 何がだぜ?」

「これ、桜の花びらよ。戦ってる途中、何処からともなく飛んできたのよ」

「桜の花びら?」

 

 確かに、霊夢が見せてきたのは桜の花びらに見える。だが、何か神秘的と言うか、魔力的と言うか......とにかく、普通じゃない気がする花びらだ。

 

「これ、本当に桜の花びらか? 何かが違うぜ」

「えぇ、そうね。何かが違うわ。......なんだか、これを集めた方がいい気がするわね。魔理沙! これを集めましょう!」

「え、あぁ、いいけど......いつにも増してやる気だな。何があったんだぜ?」

「え? あぁ、それはね。気付いちゃったのよ」

「......え? 何にだぜ?」

「弾幕ごっこをすれば、暖かくなるし、ついでに異変を解決できるかもしれないから、一石二鳥だ、って!」

「いやいやいや、それはおかしいぜ!? それに、異変がついでかよ!?」

 

 こいつ......本当に博麗の巫女なのか? 本当は化け狸か何かの妖怪なんじゃないのか?

 それも、結構鬼畜なやつ。

 

「絶対に解決出来るかは分からないでしょ?」

「え、ま、まぁ、それもそうだが......」

「さ、そうと決まれば、行くわよ!」

「って、おい! 私を置いていくなー!」

 

 こうして、いつもよりも乗り気な霊夢に連れられ、私達は謎の桜の花びらを集めることになったのだった────




そう言えば、ルナの身体を作ったアリスはルナのお母さんとも言える? とか思ったりした(←どうでもいい)

それと、次は日曜日の予定。

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