おそらく、紅魔郷EXを除いて『その3』まで続くと思います。
今回は異変が終わった直後のお話。しばらくはほんのりしたのが続くと思います。
と言っても、ほとんど出てくるのはスカーレット姉妹だけど()
side Renata Scarlet
──紅魔館(フランの部屋)
「レナ、フラン。終わったわよ」
ミアと魔理沙が上に行ってからしばらくすると、お姉様がそう言って部屋に入ってきた。
「あ、レミリアお姉様! おかえりー!」
「お姉様、お疲れ様です」
フランはそう言うと、お姉様に抱きつきに行った。
そのお姉様は、急に抱きつかれたからか、少しだけ体勢を崩す。
「おっとと......えぇ、ただいま。貴方達もお疲れ様。......それと、レナ、ごめんね」
「大丈夫ですよ。これで、フランの狂気とも仲良くなれる気もしましたし」
「......そう、良かったわ。......ここで何があったか詳しく話してくれない?」
「はい、勿論いいですよ。では、フランが──」
私はお姉様に今まで何があったか、何が起きたか説明を始める──
──数分後 紅魔館(フランの部屋)
「ふーん......なるほどねぇ。それで、その魔理沙って奴はいつ来るかとか言ってた?」
「いえ、言ってませんよ。ですが、来るまで一週間も経たないと思います。ミアとフランの狂気の人形が出来たらすぐに来るはずなので」
「......フランの狂気って長くないかしら? 名前を決めない?」
「あ、それなら、お姉様が決めて。レミリアお姉様は名前のセンスが......」
「失礼ね。いえ、自分でもそう思う時あるけど......でも、咲夜の名前は良くなかった?」
「はいはい。それは認めるけどお姉様に決めさせて」
名前を決めるという大役を頼まれ、少し緊張する。
──フランの狂気の名前ね......。変な名前にしたら、絶対怒られるよね? 遊んでもらえなくなるよね? ......責任重大だなぁ。実を言うと、もう決めてるんだけどね。
「......『ルナシィ』とかはどうです?」
「ふーん。なるほどね。いいと思うわよ?」
「え? レミリアお姉様だけなんか分かっててずるーい。お姉様、どうしてその名前にしたの?」
駄々をこねる可愛い妹に対し、どうするかしばらく悩む。
──フランだってミアの名前の由来を教えてくれない......別にいいか。いつか教えてくれると思うし。多分だけど。
「『ルナシィ』には、狂気と月、という意味があります。月が無いと吸血鬼は本気の力を出せない。だから、フランの......ルナシィがいないと、味気ない、とか、あの......まぁ、そういうことです」
「ちゃんと決めてたんじゃなかったの......。でも、ルナシィねぇ......。いい名前。略してルナね。なんだかお姉様と名前が似ているわ」
「まぁ、略したらですけどね」
「ただいまー。あ、お姉ちゃん、咲夜は治しといたからね」
話している最中、ミアが部屋へと入ってくる。
いつも通り明るいが、少しだるそうにしていた。
「そう、ありがとうね。ゆっくり休むようには言ってくれた?」
「うん、一応、言っといたよ」
「ソロモンの指輪使ったからか、魔力はもう無くなりそうですね......」
「うん、もう無くなりそうだね。流石にあの量の霧を消すのは無茶だったね。まぁ、もう最後だからいいんだけど」
やはり、明るく見せているのは無茶をしているようだった。
──幻想郷中の紅い霧を消すのは結構魔力使うか......。でも、もうないから大丈夫......幻想郷だし、まだあるかな?
「ミア、消えちゃうの?」
「人形出来たらまた出てくるよ。しかも、今度はずっと一緒にいれるかもよ? 魔力消費量よりも回復量の方が多くなるだろうしね。戦闘とかあったら、どうなるか分からないけど......」
「私やお姉様がいますし、大体の奴は戦闘しても大丈夫ですよ。そこまで魔力使うこともないでしょうから」
「......ま、それならいっか。それじゃぁ、もうお別れかな?」
「うん、そうみたいね。もう魔力はほとんど切れたから、レナに消されるまでもないね......じゃあね、みんな。バイバイ」
手を振りながらミアの形は光となって崩れていく。そして、その光が私へと吸い込まれていった。
「バイバイ......はぁー、疲れたねー」
「はい、そうですね。......フラン、服が血で汚れてますけど、寝る前に着替えないでいいのですか? それに、腕も血で......」
「そう言うレナは汚れてるどころか、お腹のところが破れてるけど?」
お姉様に言われてよく見ると、確かに腹部のところが破れている。
──あぁ、フランにお腹を抉られたから......。思い出すとちょっとゾッとした。血で汚れてるくらいじゃ疲れてるし着替えなかったけど、流石にこれは着替えないと......。
「んー......あ、お姉様! 一緒にお風呂に入ろっ!」
「あ、そう言えば、まだ入っていませんでしたね。危うく忘れるところでした。ですが、一緒には入りません。絶対に」
「むぅー、なんで? いいじゃん。前まで一緒に入ってたでしょ?」
「今はその、少し恥ずかしいので......」
前世が男性だったせいか、妹でも恥ずかしくなってしまう。
──いや、本当は前世のことなんて全然憶えてないけど、本能的になんか恥ずかしいんだよね......。
「姉妹なんだし、恥ずかしくないよ! 一緒に入ろっ? それとも、私のこと嫌いだから一緒に入れない?」
「い、いえ、そんなことは......」
「なら一緒に入れる、よね?」
「わ、分かりました。一緒に入りますよ。それと、貴女のことは嫌いではないです。大好きです」
「やったー! お姉様と久しぶりに入る気がするー」
フランは本当に嬉しそうによく跳ねる。
あんなことがあった後だから、無理して元気に見せている気もするが。
「......私も入ろうかしら」
「あ、レミリアお姉様も入る? いいよ! 三人で入るのも久しぶりだね。ここに来てからは初めてかな?」
「えぇ、初めてね。それにしても、嬉しそうね、貴女」
「うん、お姉様達と入るの久しぶりだしね」
──......なんにせよ、フランが嬉しそうにしてるなら私も嬉しい。
「じゃ、着替えを取ってくるから、貴方達は先に行ってなさい。それと、フランはあんまりはしゃぎすぎないようにね。レナが疲れすぎて死んじゃうと思うから」
「はーい! じゃ、着替えはもう出しといたから、早く行こっか!」
「今、怖いことが聞こえた気が......あ、フラン、手を引っ張らないで下さい。引っ張らなくても、すぐに行きますので」
「あ、はーい」
お姉様と別れ、私はフランと一緒に大浴場へと向かった。
大浴場に辿り着くと、先に体を洗ったり、流しあいっこしたりしてから湯に浸かった。
「はぁ〜、いい湯だね〜」
「そうですね......あの、フラン? 広いのですし、もう少し離れてくれませんか? 狭いです」
「えぇー、いいじゃーん。お姉様のことが好きだから、近くに居るんだよ? お姉様は私が近いのが嫌なの?」
「い、嫌ではないですけど......ただ、近すぎるので」
フランはいつでも寝れるように私の肩に頭を乗せていた。
疲れているのも分かるが、寝る姿勢になっているのは少し困る。
「別にいいでしょ? 普段もこうしてる時あるし、まだ変なことは何もしてないしね」
「......それもそうですね」
フランの顔は見えないが、どんな顔をしているかは容易に想像できた。
──『まだ』って言う部分が気になるけど、今は大丈夫そうだから、聞かなくてもいいよね。と言うか、聞いたら悪いこと起きる気がする......。
「ふぅ〜......それにしても、気持ちいいね〜。私、お姉様と一緒に入れて嬉しいわ」
「そうですか......私もそれが聞けて嬉しいです」
「あ、もう入ってたのね。......それ、狭くないの?」
「......狭いです」
お風呂に浸かっていると、お姉様が入ってきた。
──それよりもうん、やっぱりお風呂に入っているからとは言え、裸姿を見られるのは恥ずかしい。特に、お姉様に見られるのは......。で、でも、お姉様は気にしてないだろうからいいよね......。
そう思いながらも、先ほどよりも深く湯に浸かる。
「えー、狭くない、あ、お姉様? いきなり深く入らないでよ。せめて何か言ってからにしてよね」
「あ、すいません。でも、ちょっと......」
「あれ? 顔が真っ赤になってるけど、逆上せちゃった?」
「え? あ、そ、そうみたいです?」
「あらあら。せっかく一緒に入れると思ってたのに......仕方ないわね。レナ、もう上がりなさい。一人で大丈夫? 立てるかしら?」
お姉様が手を差し伸べてくる。
──あぁ、優しいお姉様で本当に良かった。でも......その手は掴めない。
現在進行形で耳まで真っ赤になっているのが見なくても分かる。それくらい、恥ずかしいと言う気持ちがいっぱいになってきてる。手を掴むと......色々な意味で危なくなる気がする。
「だ、大丈夫ですよ」
「そう、それなら良かったわ。じゃ、私は身体を洗って来るわね。フランはどうするの?」
「お姉様が心配だし、先に上がっとくね。レミリアお姉様また明日、一緒に入ろうね」
「えぇ、いいわよ」
それにしても、どうして今更こんなに赤くなるのだろうか。
いや、考えるのは後ででもいいか。それよりも、今は早く上がらないと。
「じゃ、貴方達、また後でね。私も今日は一緒に寝るから」
「あ、そうなんだ。じゃ、また後でねー」
「また後で......うぅ、なんだかなぁ......」
「ん、お姉様、どうしたの?」
「いえ、何でもありませんよ......」
お姉様を残し、私とフランは一足先にフランの部屋へと戻った。
フランの部屋へと戻ると、真っ先にベッドの中へと入った。
「うぅ......フラン、私の顔、まだ赤くないですか?」
「うん、赤いよ。髪の毛と同じくらい赤くなってる」
大浴場から帰ってきてから、しばらく経つのに、未だに顔が赤くなっているらしい。
──もしかして、顔が赤いのは別の理由とか? ......そんなわけないか。あ、でも、今は魔力がほとんど切れてるから、それも何かしら関係があったりするのかな?
「うぅ、早く元に戻らないのでしょうか......」
「貴方達、お待たせしたわね。レナ、もう平気かしら?」
そう言って、お姉様が入ってきた。お風呂に来るよりも早かったから、私のことを心配して早く来たようだ。なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「あ、お姉様。だ、大丈夫ですよ。もうなんともありませんから」
「それなら良かったわ。さ、みんなで一緒に寝ましょう。もう今日は疲れちゃったわ」
「うん、私も色々あったからもう疲れちゃった。お姉様、早く寝よっ。勿論、お姉様は私の横に寝てね。レミリアお姉様はどこがいい?」
「うーん、せっかくだし、真ん中が良かったのだけど......」
「あ、そうなの? じゃ、今日はレミリアお姉様が真ん中にしよっか。お姉様もそれでいい?」
──お姉様が真ん中......お姉様が横に寝るのか。今の私は魔力切れのせいか何かおかしいけど......まぁ、大丈夫だよね、きっと。
「......はい、いいですよ」
「あら? まだ顔が赤いわよ? 熱でも出たのかしら?」
「え、いえ、だいじょ、ぁ......」
唐突にお姉様が私の額に自分の額を当てる。
──手で当てて調べればいいのに、どうしてわざわざそうしたんだろう? ......絶対、また耳まで真っ赤になってるよぉ、これぇ......。
「熱は......無いわね。って、あら? もっと赤くなってない?」
「うぅ、大丈夫です、多分......」
「んー、あぁ、そう言うことね。......私じゃ何の反応もない癖に。
レミリアお姉様、やっぱり私が真ん中になるわ。じゃないと、お姉様が死んじゃう」
「えっ!? し、死んじゃうって、そんな不吉なこと......。そ、それならいいわ。......でも、どうして死ぬの?」
「不治の病のせい、かな? どうして急になったのかは知らないけど、一日経てば元には戻ると思う」
口を三日月のように歪めて、フランが話す。
──あぁ、絶対フランにはバレた。これは絶対、後で何か言われる。今も言われた気がするけど。それにしても、その笑顔怖いんだけど......。
「ひとまず、ありがとうございます、フラン」
「うん、別に気にしなくていいよ。どうして私じゃなくてレミリアお姉様なのか気になるけど......まぁ、それはいいや。お姉様をいじるネタが増えたのはいいことだしね。それに......ううん、やっぱりいいやー」
「うぅ......フランが怖いです」
「何の話をしているのか分からないけど、早く寝ない? もう夜が明ける頃よ? それと、明後日、巫女のところに行ってみようと思うんだけど、貴方達も行く? ちなみに、咲夜は連れていくつもりよ」
巫女......おそらく霊夢のことだろう。だが、いつ魔理沙が来るか分からないのだから、待っていた方がいいはずだ。
──それにしても......霊夢にお姉様取られたらどうしよう? ......まぁ、霊夢だし大丈夫か。お姉様の方から気に入ったなら仕方ないよね。
「私は待ってますね。魔理沙がいつ来るか分からないので」
「私もー。お姉様の不治の病を治したいしねー」
「不治の病なのに治るの? まぁ、いいわ。さ、寝ましょうか」
そう言うと、お姉様が一番端に寝る。そして、その横にフラン、私と順に寝転ぶ。
おそらく、不治の病と言うか、魔力切れのせいで私に何か起きてるってだけなのだろう。
──いや、それでも結構怖いことなんだけどね。魔力切れたせいでそんなことになるって。
「じゃ、おやすみなさい」
「ふぁ〜、おやすみ〜......ぐぅ......」
「フランは寝るのが早いですね......では、おやすみです」
最後にそう言うと、私は目を閉じた──
──二日後 日の出後 紅魔館(エントランス)
「ふぁ〜......レミリアお姉様、まだ朝だけど、今から行くの......?」
「えぇ、今から行くわよ。......フラン、眠いなら無理しなくてもいいのよ?」
『紅霧異変』が終わってから二日が経つ。もう朝だと言うのに、お姉様は博麗神社に行くらしい。
二日前まで、私は何かがおかしかったけど、魔力が戻ったからか、今は普段と何も変わらなくなってきた。
──今でも少し何かがおかしい気がするけど......大丈夫だとは思う。
「無理してないよ......ふぁ〜」
「無理してるようにしか見えないわね......。じゃ、私はもう行くわね。咲夜、日傘は?」
「ここにありますよ。私がさしますが?」
「あら、そう? ありがと」
お姉様はお嬢様らしく、咲夜に傘を持たせると、日の下まで歩き、振り返る。
「じゃあ、また後でね。夜までには帰ってくるわ。まぁ、明日も行くかもしれないけどね」
「......行く時は朝だとしても絶対に起こしてね。絶対に見送るから」
「あ、それなら、私も起こして下さい。私も見送りますので」
「えぇ、分かったわ。......それじゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃいです」
「行ってらっしゃーい」
こうして、お姉様を見送った数時間後、二日ぶりにとある人間が来るのであった────
次回は日曜日に投稿予定です。
次は『ルナシィ』が出るかも。それと、紅魔館の住人の話もやりたい(願望)