それと、異変の方は『全く進まない不思議!』となっています()
side Kirisame Marisa
──紅魔館(フランの部屋)
「えーと......どこから話を始めましょうか?」
「私が狂気に染まったところとかで良いんじゃない? あ、ミアと別れた時からかな?」
「軽く言いますね。まずはミアと別れたところからですね。ミアと別れた後、フランが──」
こうして、レナとフランの話が始まった────
side Renata Scarlet
──レナの回想 紅魔館(フランの部屋)
「えーと、フラン? 大丈夫ですか?」
「......誰よ?」
「ふ、フラン?」
「誰なのよ!? 私の中に入ってこないでよ!」
フランがいきなりそう言って、取り乱し始めた。
「貴女は私じゃないでしょ!? 勝手に私の中に入ってこないで! 私は......私は!」
「フラン? お、落ち着いて下さい! 大丈夫ですよ? 私がいますから......。私がずっとそばにいますからっ!」
「駄目! 駄目駄目駄目! ......私に近付いたら、駄目......」
「フラ、ぁっ!?」
フランに近付いたと思うと、私は後ろへと飛ばされる。
「つぅ......ふ、フラン? どうしたのですか......?」
「......オネーサマ、アソボ?」
次にその娘の瞳を見ると、それには狂気が渦巻いていた。
前にも見たことがある。あの、狂気の瞳だった。
「......いいですよ。でも、その前に一つだけ聞いてもいいですか?」
「イヤ、ハヤクアソブッ!」
フランがそう叫ぶと同時に『レーヴァテイン』を手に持つ。
──やっぱり、コミュニケーションは難しいかぁ。まぁ、いっか。
「......っ。仕方ないですね......。その遊びに付き合いますよ。『神剣「クラウ・ソラス」』!」
私は身を守る為にも、『クラウ・ソラス』を作り出す。
この剣はフランのレーヴァテインと違い、刀身は普通の剣とあまり変わらない。だが、特別な能力もある。
──と言っても、今は魔力がほとんどないからこの剣の真髄は使えないけど......。
「アハハハハ! アリガトウ、オネーサマ! ジャ、チャントヨケテネ!」
フランはそう言うと、レーヴァテインを勢いよく振り下ろした。
「手がっ、痺れっ!? ふ、フラン? もう少し手加減してくれません......?」
ギリギリのところで剣で受け止めるも、フランの強過ぎる力の反動で手が痛い。
さらに、フランの方が力が強いため、受け止めることに集中しないとすぐに真っ二つにされそうだ。
「ちょ、ちょっと、力が強過ぎませんか!? もうやばいのですけど!?」
「アハハハハ! モットガンバッテ! オネーサマァ!」
さっきまでのも全力では無かったのか、剣に込められた力が増す。
「っ!? ......こ、これはやばいっ! 仕方ないですね......っ! 『輝きを放て! クラウ・ソラス!』」
「ッ!?」
叫び声のような声を言い放ち、無けなしの魔力を使って『クラウ・ソラス』の刀身を輝かせた。
そして、フランが怯んだ隙に、『クラウ・ソラス』で『レーヴァテイン』の攻撃を逸らして私は逃げる。
「チッ! ニガサナイ!」
「逃がして下さい! 鬼ごっこだと思えば、楽しいですよ!?」
「イヤ! イマハ、オネーサマヲキリキザミタイキブンナノ! タノシイヨ!?」
「それはどういう気分ですか!? それに楽しくないです! 痛いの嫌です!」
──でもまぁ、確かにフランなら......いや、それでも痛いのは嫌だ。それにしても、魔法使えなくなると、全然戦えなくなるなぁ。
......やっぱり、無理して魔力を分けない方が良かったか。それとも、今まで魔法に頼ってたせいか。
「『フォーオブアカインド』!」
逃げていると、背後から声が聞こえた。
振り返って見てみると、フランが四人に増えた。
──これ、どうすればいいんだろう? 笑えばいいのかな? それとも、説得を......。
「アソンデクレナイ。ソンナ、オネーサマナンテ......シンジャエ......」
そして、フランの分身が弾幕を放ち始めた。そして、本体が『レーヴァテイン』を私に向かって振り下ろす。勿論、どちらも当てる為に放っているものなので、逃げ道なんて用意されてない。
「......フラン、死にませんよ。死んだらフランが凄く悲しむと、私は知っていますから。『神槍「ブリューナク」』。ごめんなさい、フラン」
私は『クラウ・ソラス』を消して、槍である『ブリューナク』を妖力で作り、手に持った。
「この槍、少し痛いと思います。ですが、我慢して下さい。すぅー......はぁっ!」
私は迫り来る弾幕を無視して、『レーヴァテイン』を握っている両腕に向かって、全身全霊を込めて槍を放つ。
「っ! 結構痛いですね......」
弾幕を無視して投げたこともあり、少しの弾幕に触れてしまった。
「ッ!? ア、アァァァ──ッ!」
しかし、それと同時に、フランの両腕に槍が突き刺さった。あまりに痛かったせいか、刺さったのと同時にも、分身と弾幕は消えてしまった。
槍は投げた力が強過ぎたのか、そのまま壁にまで飛んでいく。槍は壁へと刺さり、フランは槍に刺さったまま叩きつけられることになった。
そして、壁に叩きつけられたフランが声にもならない苦痛の叫びをあげた。
「イタァイ......イタイ、イタイイタイッ! イタイ......」
「っ。やっぱり、私が死んででも......フラン......」
「イタイノ、イヤ! ユルサナイ......オネーサマ! ユルサナイ!」
「え、なっ......!?」
痛みなど無かったのか、そう思うほど勢いよく槍に刺さった両腕を引きちぎった。
引きちぎられたフランの両腕は、片方は肘から無くなり、もう片方は今にもとれそうなことになっている。
「ふ、フラ、ぐっ!?」
そして、私が心配し、油断した一瞬の隙をついて、フランが突進して来た。私はそれを避けることが出来ずに、さっきのフランと同じように壁へと叩きつけられる。
「ユルサナイ!」
「ふ、フラン......」
フランは首に叩きつけるように、今にもとれそうな片腕を私の首に押し当てた。
「そ、そんなことをしたら......貴女の手がぁッ!」
「ウルサイ......コロス......」
フランが千切れた方の腕を使って、私の顔を殴った。勿論、拳ではなかったが。それでも痛い。
しかし、それよりも後悔と悲しみの感情が溢れてくる。殴ったと同時に、『グチャッ』と言う音が響くからだ。それが私に訴えるように木霊して耳に響く。
「っ!? ......かはっ......フラン......無理、しないで......」
フランは無理をして、何度も私の顔を無いはずの腕で殴り始めた。
その姿を見ることはできても、目を背けたくなった。
「シネ! シネ! シネッ! ......ハァ、ハァ、ワタシヲ、キズツケル、オネーサマナンテ......! シンジャエ!」
「フラン......私に死んで欲しいならグっ! ど、どうして......っ! な、泣いているのです......?」
フランの目からは、いつの間にか涙が零れていた。
「ハ、はァ......?」
「そ、そうですよ......な、泣いています! フラン! 私は能力を使いません! あ、貴女だけで......貴女の狂気に勝ちなさい!」
私が狂気を『有耶無耶』にしても意味がない。ここで抑えたとしても、今回のように、次はより酷くなるだけだ。こうなると、最終的には私の能力で抑えきれないほど強力になるだろう。
──フランの狂気を抑えるには......フラン自身が何とかするしかない。フラン自身が狂気を克服しなければ意味がない。フランを信じて......あ。もしかしてだけど、これって......私とミアのようなものなのかな?
「オネーサマ......コロ......い、嫌! オネーサマは殺したくナイ! コロス! ワタシヲ傷つけタ、オネーサマナンテコロす! イヤ! お姉様は私ノ為に! 私ナラ! それくらいワカッテル!」
「......狂気と戦えるようでよかったです。フラン......それと、フランの狂気も......傷つけてごめんなさい。気の済むまで殴っていいですが、フランの狂気は少しだけ、出てくるのを我慢してくれませんか? また後で、ミアのようにしてあげますから......」
「ミア? ......ホントウニ? どういうこ......ソレナラ、モドル。......アリガトウ、ゴメンナサイ。......キライだなんて、ウソ。ホントウはダイスキ。デモ、ワタシヲキズツケル、オネーサマ、キライ」
「え、それゆるうっ! っはぁ!」
フランの狂気がそう言うと、私の腹を爪で突き刺した。そして、そのまま中を抉るようにして、取り出した。
──腕、取れかかってたのに、いつの間にか治ってたんだ......。不覚......。
「ちょ、ちょっと......痛すぎる......」
「......え? あ、お姉様!」
「あ、フラン、戻りましたか。それにしても......狂気の方は本当に困った娘ですね......あ、私のことは心配しなくても大丈夫ですよ」
「嘘でしょ......お姉様、血がいっぱい出てるもんっ......」
フランに体を支えられながら、その声に耳を傾ける。
「本当に、気にしなくていいですよ? それよりも、私の方がごめんなさい、ですよ」
「ううんっ! お姉様は私のために......!」
「このくらいなら、すぐに治ります。......でも、少し疲れたので、寝させて下さい......」
──あぁ......視界が暗くなってきたなぁ......。でも、本当にフランが元に戻ってよかった。フランの狂気も、これで心配いらなくなりそう......。あれ、目の前が暗く......。
「お姉様......グスッ。うん、おやすみなさい......。大好き......」
その言葉を聞いた後、私は気絶した──
side Kirisame Marisa
──紅魔館(フランの部屋)
「とまぁ、私が憶えているのはここまでですね」
「ま、その後すぐにミアと魔理沙が来たから、話すのはここまででいいよね、うん」
「? まぁ、そうですね」
「そう言えば、ほぼ千切れた腕で殴ってたんだよな? それなのに、どうしてレナの顔は綺麗なんだ? ふつー、血で真っ赤に......」
「え!? ......そ、それは私が拭いてあげただけだよっ!」
フランが慌てた様子でそう言った。
──なんか怪しいが、まぁいっか。
「ふーん、そうか......それで、結局狂気ってなんだ? 今の話を聞いたら、余計分からなくなったんだが」
「......それは、私とミアのような感じですね。まぁ、正確に言うと少し違うのでしょうけどね。要するに、もう一人のフランです。解離性同一性障害。まぁ、多重人格ってやつですね」
──なるほど、多重人格か。......これ、私はあまり深く聞かない方がいい気がするな。
「あ、魔理沙、遠慮しなくてもいいよ? 私も大体気づいていたしね。......たまに頭の中に声が響くの。私を出せって。お前ばかりずるい......ってね。だから、気づいていたの。でも、私は無視してた......」
「私とは違って、自我が強いのね。私は別にミアと視覚とか共有してるし、表に出たいとかあんまり思わないのよねぇ。まぁ、少しは思うんだけどね、少しは」
「まぁ、無理なんですけどね。魔力消費量やばいし......」
やっぱり、そうなんだな。
──ん? と言うことは、ずっと召喚なんて出来ないのか? それなのに、ミアは視覚とか共有してるから別にいいと......変な奴だぜ。
「でも、出来ないことはないよね? 器となる容れ物があればいいだけだし。私を召喚するのって、ほとんど外側を作るので魔力使っちゃってるしね」
「あ、そう言えばそうでしたね」
「ん? 要するに、人形かなんかで容れ物を作ればいいってことか? それならいい奴を知ってるぜ!」
「あ、アリスさんですね、分かります」
「し、知り合いなのか!?」
「はい、そうですよ」
まさか、アリスに吸血鬼の知り合いがいたとはな......まぁ、世の中こんなこともあるか。
「それで、話を戻すが、容れ物さえあれば、ずっと召喚したままでも大丈夫なんだよな?」
「うん、大丈夫だよ。多分、そうしたら、召喚による魔力消費量よりも、自然での魔力回復力が多くなるだろうしね。それに、分身の方が食事や睡眠とかもすれば、本体が送る魔力はほとんど要らなくなると思うし」
「最初から、そうすればよかったです......」
「そうねぇ〜」
さっきまで生きるか死ぬかなのに、気楽だなぁ......いやまぁ、私が言えないんだけどな。一応、ここ敵地だし。
「まぁ、取り敢えず、この異変が終わったらアリスに頼みに行ってくるぜ! お前もその狂気って奴も、ずっと外に出てたいだろ?」
「ま、まぁ、それはそうだけど......フランの狂気は少し危険な気が......まぁ、本体と入れ替わろうとか思ってなければいっか。ちなみに、私はそんなこと思ってないから、うん」
「ミアのはある意味自殺行為ですね。まぁ、しないと思いますが。お姉様もフランも居るし......」
なんか便利そうで不便な気がするな、分身って。魔力はほとんど使うなら、私はいらないな。
やっぱり、弾幕は分身とかよりもパワーだぜ。
「......私、私の狂気と仲良くなれるのかな?」
「異変が終わったら、フランの狂気を呼び出しましょう。自我があるなら、出来るはずなので。......そこで話をしてみればいいのですよ」
「......うん、分かった」
「まぁ、大丈夫だと思うよ。私もレナのことは気に入らないことがあるけど、好きなのは好きだから」
「さらっと酷いことを聞きました......」
「私はいいこと聞いた。ありがとうね、ミア。......そう言えば、魔理沙は異変を解決しに来たんだよね? お姉様に会いに行かなくていいの?」
ふと聞かれた質問に、あっと驚く。
──すっかり忘れてたぜ。
「い、行くぜ? 今から行こうかと思ってたところだぜ?」
「あ、う、うん。......あぁ、もう霊夢がお姉様と戦ってるみたいだよ?」
「え!? ま、マジかよ......って、私、霊夢のこと言ったっけ?」
「え、うん。言ってたよ。博麗の巫女だって」
──言ってたのか。全然憶えてないな。
「......はぁー。異変解決は諦めるか。あいつがもう戦ってるなら、間に合わないからな。その代わり、また後日来てもいいか? あいつがお前達の姉と戦ってるって言うなら、私はその妹、お前達と戦いたいからな。勿論、万全な状態でな」
「ま、いいよ。その時は、ミアと私の狂気の人形を持ってきてね。家族が増えるのは嬉しいことだと思うし、私の狂気とは一度話をしてみたいしね。いつもは一方的にしか喋ってこないし......」
「あ、霊夢も連れて来てくださいね。二人対一人は流石に酷いと思うので」
まぁ、確かに二対一はきついな。それも、吸血鬼相手となると、かなり苦戦しそうだぜ。
「あぁ、分かったぜ。あ、そう言えば、ミア。私を霊夢のところに送れるか?」
「送れるよ。友人の勝負を見に行くの?」
「あぁ、そうだぜ。心配だからな。一応」
「あはは、優しいのね。じゃ、私は魔理沙を送ってくるけど、レナとフランはどうする?」
「私はもう少し休みたいので、待っときますよ。まぁ、ミア視点で弾幕ごっこの風景は見れると思うので、それで充分ですよ」
あ、そう言えば、こいつらは視覚共有するんだったな。なんか便利でいいな。
「もう終わるかもしれないけどね。で、フランは?」
「私はお姉様の面倒見とく。それに、レミリアお姉様は大丈夫だと思うしね。まぁ、負けても面白かったら良さそうな人だしね、レミリアお姉様は」
「私はお姉ちゃん勝った方が嬉しいけどなぁ〜」
「さぁ、早く行こうぜ?」
「あ、うん、分かったよ。じゃ、またね、レナ、フラン」
「また会いましょう」
「あ、うん。バイバイ」
ミアが私の立っている場所に穴を作る。私は、重力に従うように地面へと落ちていった────
次回は水曜日までに
※追記:ご指摘をいただいたので、編集しました。
これからも、おかしな部分があれば、教えてくださいm(_ _)m
それと......誰か! レナータさんのイラスト描いてくれる人居ませんか!?(自分は絵が酷すぎるので())
Twitterで『紅転録』とタグでも付けてくれたら、多分、見ますので()