なお、大妖精の出番はない模様()
1、「『紅霧異変』の始まり 闇の妖怪と氷の妖精」
side Hakurei Reimu
──満月の夜 博麗神社
「ふぁ〜......平和ね〜」
「霊夢ー!」
神社の台石に座ってお茶を飲んでいる時に、黄色い髪を持つ白黒の魔法使い、魔理沙が騒がしく、箒に乗って飛んできた。
全く、少しは静かにして欲しいわ。
「......はぁ、騒がしいのが来たわね。嫌よ。めんどくさい」
「まだ何も言っていないぜ。それよりも、異変だぜ! 異変!」
異変......あぁ、紅い霧のことね。半月ほど前から、霧の湖の方向から広がっているって言うあれね。
「そんなの見たら分かるわよ。それがどうしたのか言いなさいよ」
「解決しに行かないのか? 異変を解決しに行くのは巫女の仕事だろ?」
「そんなの決まってないわよ。ただ、代々妖怪退治や異変解決を生業としていたってだけで」
「それなら仕事でも変わらないと思うぜ? さぁさぁ、早く行こうぜ!」
はぁ、めんどくさいってさっきも言ったはずなんだけど......。
「めんどくさいから、貴女一人で行けばいいじゃない」
「おいおい、親友に対してその言葉は酷くないか? 折角だし、一緒に行こうぜ」
「何が折角なのよ。私はここでゆっくりしたいのよ」
「......はぁー、ほっといてもいいのか? あの霧は人間にとっては悪影響を及ぼすらしいぜ? それに、このままだと結界の外に出るかもしれないんだぞ?」
結界の外に出るのは困るわね......はぁー、めんどくさいけど、行くしかないわね。
「分かったわよ。行けばいいんでしょう、行けば」
「ようやく分かったか。あぁ、そうだぜ。さぁ! そうと決まったら早く行くぜ!」
そう言って、魔理沙は箒にまたがって宙に浮いた。
「はいはい、分かったわよ。それにしても、貴女、騒がしいわね」
「騒がしいのは元気だっていう証だからいいじゃないか。じゃ、先に行っとくぜ!」
魔理沙はそう言ってかなりのスピードで霧の湖の方角へと飛んでいった。
「......先に行くなら、急かさなくてもよかったじゃない」
そう呟いて、私も霧の湖の方角へと向かった──
──神社近くの森(上空)
「はぁー、本当に先に行っちゃったわね。それにしても......気持ちいいわね。
魔理沙に言われたから夜に出ることになったけど.....どこに行っていいか分からないわ。暗くて。でも......夜の境内裏はロマンティックね」
「そうなのよね〜。お化けも出るし、たまんないわ」
「って、あんた誰?」
襲ってきた妖精達を倒しながら進んでいると、いつの間にか、目の前には、目は赤で髪は黄色のボブの幼い少女が居た。
白黒の洋服を身につけ、スカートはロング、左側頭部に赤いリボンをしているが、あれは明らか『お札』だ。お札を付けられているってことは、過去に何かやらかしている妖怪? まぁ、どうでもいいけど。
「さっきも会ったじゃない。あんた、もしかして鳥目?」
いや、会った覚えないんだけど......もしかして、魔理沙と勘違いされているのかしら? でもまぁ、私が覚えてないだけの可能性もあるんだけど。
「人は暗いところでは物が良く見えないのよ」
「あら? 夜しか活動しない人も見たことある気がするわ」
「それは取って食べたりしてもいいのよ」
「そーなのかー」
そう言って、その妖怪は両手を左右に大きく広げたポーズをとった。
......これは深く突っ込まないようにしましょうか。
「で、邪魔なんですけど」
「目の前が取って食べれる人類?」
「良薬は口に苦しって言葉知ってる?」
そう言って、私は少し距離を置き、スペルカードを構えた。
「スペルカードルールって知ってるわよね?」
「えぇ、勿論。何枚?」
「早く終わらせたいから、二枚で」
「それでいいわ。先にこっちからいくわ。『夜符「ナイトバード」』!」
妖怪はスペルカードを宣言した。そのスペルカードは私を中心として、左右に円弧状に青色の弾幕をばらまくと言う簡単なものだった。
「単純ね。避けやすいわ」
そう言って、私は軽々と弾幕を左右に避けていく。
この弾幕の密度は全然濃くないし、そこまで綺麗とは言えない。これ、鳥の翼をイメージしているのかしら? まぁ、全然そうには見えないけど。
「くぅぅ......当たらないかぁ〜」
「当たらないわね。さ、次はどんな弾幕かしら?」
「あんまり舐めてると、当たるかもよ? ま、いいや。次は難しいからね! 『闇符「ディマーケイション」』!」
そう言って、妖怪は二枚目のスペルカードを宣言した。それは自分から波紋状に青、緑、赤の順に米粒弾をばらまきながら、私を狙って青い弾を発射するという、これまた簡単なものだった。
「少し青い弾が早い以外は特に脅威にならないわね。じゃ、次は私よね?」
「え!? ちょ、ちょっと! まだ──」
「『霊符「夢想封印」』! 」
私はそう言って、スペルカードを宣言した。
「え、これ──」
色とりどりの大き目の光弾が次々と飛び出して、相手めがけて飛んでいき、当たると同時に炸裂した。
そして、妖怪は炸裂したと同時に黒焦げになって落ちていった。
少し、やり過ぎたかしら? まぁ、いっか。妖怪だし。
「......良薬っていっても、飲んでみなけりゃわかんないけどね。さ、早く行かないと、またうるさい奴に怒られるわね」
そう呟いて、私は霧の湖へと急いだ────
side Kirisame Marisa
──霧の湖(上空)
「島は確かこの辺だったような気がするが......もしかして移動してるのか?」
霊夢よりも急いでしばらくしたら、霧の湖に着いた。紅い霧が濃くなってきたし、おそらくここに元凶がいるはずなんだけどなぁ......
「それにしても......おおよそ夏だぜ。なんでこんなに冷えるんだ?」
「もう二度と陸には上がらせないよ!」
そう言って、妖精が急に目の前に出てきた。
身長はかなり低く、氷の羽根を十枚持っている妖精だ。髪は薄めの水色で、ウェーブがかかったセミショートヘアーに青い瞳。青く大きなリボンを付けている。
服装は白のシャツの上から青いワンピースを着用し、首元には赤いリボンが巻かれている。そして、足には水色のストラップシューズを履いている。
「あんたね。寒いのは」
「暑いよりはいいでしょ?」
「寒い奴」
「それはなにか違う......」
「いっぱいいっぱいなんだろ?」
「と、とりあえず! スペルカードで勝負よ!」
いや、正直言っても意味が分からないぜ。
「まぁ、丁度手ごわい奴がいなくて飽きていたところだ。その勝負、受けて立つぜ! あ、何枚にするんだ?」
「二枚で! 『氷符「アイシクルフォール」』!」
「おいおい! 始めてから宣言するのが早すぎないか!?」
そう言って、その妖精はスペルカードを宣言した。
弾幕の内容は、その妖精の側面から滝のように水が流れるように私に向かって降り注ぐと言うものだ。
「うわっ、中途半端な距離だと避けにくいぜ」
「えへへ、そうでしょ!?」
「まぁ、避けれてるけどな」
少し遅い弾幕を、それよりも早く左右上下に避けていく。
それにしても......中途半端な距離だと避けにくいけど、近いと避けやすくないか? これ。
「ぐぬぬぬ......それなら、これならどうだ! 『凍符「パーフェクトフリーズ」』!」
次のスペルカードは、カラフルな小弾を放射状に撒くと言うものだった。
「これなら、さっきの方が強くないか?」
「ふふん! まだまだ本気じゃないからね! ほらっ!」
そう言って、妖精は飛んでいる最中の自分の弾幕を凍らせた。
「ん? 何をする気だ?」
「はっ!」
妖精はそう叫んで、さらに弾幕を放った。そして、時間差で凍らせた弾をランダムに動かした。
放った弾幕は直線的に飛んでくるが、少し早く、周りの弾幕がランダムで飛んでくる為、上下左右前後を巧みに避けないと、当たってしまうだろう。
「なっ!? これは避けにくいぜ!」
「えへん! そうでしょ!」
「あぁ、そうだぜ。......だから、こっちも本気でいくぜ!」
私はそう叫んで、ミニ八卦炉を取り出し、両手で相手に向かって構えた。
「いくぜ! 『恋符』! 『マスター......』」
「な、何をするんだ?」
「『スパークッ』!」
そう叫んで、ミニ八卦炉に貯めた魔力を一気に放出した。
その魔力は大きな光の塊となり、妖精へと一気に向かっていった。
「う、うわぁぁぁ──!」
そして、見事に命中した妖精はそう叫びながら、湖へと落ちていった。
......少し、威力が強過ぎたぜ。
「それにしても、寒いな。ああ、半袖じゃ体に悪いわ。早くお茶でも出してくれるお屋敷探そう、っと」
そう呟き、紅い霧が発生している場所へと向かった────
side Renata Scarlet
──紅魔館(フランの部屋)
「ミア、どうですか? 様子は」
「湖の上で膨大魔力を感知。近くまで来たみたいですね」
起きた時にフランから、「お姉様が『異変を解決しに来る人達がもう来る』って言ってたよ」と言われ、急いでミアを召喚した。
そして、今はミアに近くに誰か来ていないか見てもらっている。
「やっと来たんだね! 早くここに来ないかなぁ〜」
「それでは、お姉ちゃん達に伝えてきますね」
「はい、お願いしますね。......ミア、ちょっと相談があるのですが、いいですか?」
「言わなくても分かるからいいよ。私も姉として、それくらいのことはお易い御用だよ」
そう言えば、考えていることが共有されてるんだったね。じゃ、頼むね、ミア。
そう頭の中で思うと、ミアは頷いて部屋から出ていった。
「ん? お姉様、なんてお願いしたの?」
「秘密ですよ。でもまぁ、すぐに分かるので、ここで待っていましょう。すぐに......ね。ふふふ......」
「お姉様が珍しく悪い顔になってる......明日、雨降って外に出られなくなりそう」
「そんなに珍しいですか?」
「うん、珍しい。いつもほわわん......としてるから......」
そうなんだ......あれ? なんかおかしい気が......。
「えーと、フラン? 大丈夫ですか?」
「......誰よ?」
「ふ、フラン?」
「誰なのよ!? 私の中に入ってこないでよ!」
いきなりフランがそう叫んで、取り乱し始めた。
「貴女は私じゃないでしょ!? 勝手に私の中に入ってこないで! 私は......私は!」
「フラン! 落ち着いて下さい! 大丈夫ですよ! 私がいますから! 私がずっとそばにいますから!」
「駄目! 駄目駄目駄目! ......私に近付いたら、駄目......」
「フラ、グッ!?」
言いかけたその刹那、フランが私を力強く突き飛ばした。
「つぅ......ふ、フラン? どうしたのですか......?」
「......オネーサマ、アソボ?」
次にフランを見た時、その目は狂気に染まっていた────
次回は日曜日。
しかし、次回はレナ、フランサイドはないと思う()