東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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番外編10.5「次女のデート とりあえず追いかける姉妹達」

 side Remilia Scarlet

 

 ──紅魔館(レミリアの部屋)

 

「お姉様、外出許可を貰ってもいいですか?」

「ふぁ〜......唐突ね」

 

 おそらく、日が暮れる時間よりも少し早い時間。

 誰かに体を揺らされたと思ったら、レナに起こされていた。

 そして、開口一番にそう言ったのだ。

 

「唐突ですいません」

「いえ、別にいいのよ? それよりも、何処に行くの?」

「ちょっと人間の街まで」

「......それ、大丈夫なの?」

「人間に化けるので大丈夫ですよ。太陽は流石に防げないので、もう少ししたら、日が暮れてから行きますけど」

 

 まぁ、それなら大丈夫かしら。レナももう子供じゃないんだし、少しくらい自由にさしてもいいわよね。

 ......でも、心配ね。隠れてついて行こうかしら?

 

「......気を付けなさいよ? バレたら大変なんだから」

「その時は、助けてくださいね?」

 

 レナは冗談半分で言ったのか、ニコニコと笑みを浮かべながらそう言った。

 

「当たり前じゃない。すぐに助けに行くわよ」

「サラマンダーよりもずっと早く助けてくれますか?」

「え、えぇ。そのさらまんだー? よりも早く助けに行くわよ」

「むぅ......可哀想に......。あ、お姉様のことじゃないですからね。お姉様、ありがとうございます」

「え、あ、うん」

 

 たまに、レナはよく分からないことを話す。けどまぁ、本人は楽しそうだからいいわよね。

 

「それじゃぁ、行ってきますね」

「えぇ。......あ、レナ」

「はい? なんですか?」

「一応聞くけど、一人で行くのよね?」

 

 もしも、フランが一緒に行くなら、私も行きたい......。三人一緒に遊びに行くのが最近の夢だし。

 留守番は美鈴や咲夜が居るから大丈夫だろうしね。

 

「いえ、ルネと行ってきますよ」

 

 一瞬、世界が停止した気がした。

 えーと......レナが? ルネ()と? ......い、いえ、聞き間違いよね。

 そんな、私の妹(レナ)が......私よりも早く男と出かけるなんて、あるわけ無いわよね。

 

「レナ、ごめんなさい。もう一度だけ、言ってくれないかしら?」

「え? ルネと行ってきます。人間の街に」

 

 ......やっぱり、聞き間違いじゃない。こ、これってどうすれば......。

 

「れ、レナ? 私も、ついて行ってもいいかしら?」

「駄目です。お姉様はここでゆっくり待っていてくださいね。では、行ってきます」

「え、あ、ちょっと! ......行っちゃった......」

 

 ま、まぁ、こうなるわよね。これって、あれでしょ? デートってやつでしょ?

 デートに姉なんか連れて行かないわよね。......これ以上、無理矢理止めようとしたら、流石にレナも怒るわよね?

 

「......咲夜ー!」

「はい、こちらに」

 

 いつも思うんだけど、名前を呼んだだけで目の前に現れるって、どういうことかしら?

 声が聞こえる範囲にでもスタンバってるのかしら?

 いえ、今はそれよりも......。

 

「咲夜。今日、ちょっとだけ家を空けるから。留守番は任したわよ」

「はい、分かりました」

 

 これで留守は大丈夫っと。後は......あの娘も呼びましょうか。

 多分、暇してるだろうし、あの娘もレナがデートと言ったら、付いてきてくれるわよね。

 

「咲夜、ついでにフランもここに呼んでちょうだい」

「はい、仰せのままに」

 

 パチンっと指を鳴らしたと思ったら、目の前から咲夜が消えていた。

 おそらく、今頃はフランの目の前に──

 

「え、いったぁ!?」

「お嬢様、連れてきました」

 

 と思っていたのだが、どうやら無理矢理連れて来たみたいだ。

 空中で放り出されたフランは、尻もちをついて痛がっている。

 咲夜も案外無茶苦茶なところがあるわね......。

 

「んー......あれ、レミリアお姉様? ここってレミリアお姉様のお部屋?」

 

 連れてこられるまで寝ていたのか、眠そうな顔をしているわね。

 まぁ、私もレナが来るまで寝てたんだけど。

 

「では、お嬢様。私は失礼いたしますね」

「あ、逃げた。まぁ、いいわ。

 フラン。今日、レナが外にお出かけすること知ってる?」

「え? 聞いてないよ。っていうか、今日って言っても、お姉様はいつお出かけするの?」

 

 確か、日が暮れてから......ん? それってもう過ぎてる気が......。

 

「あ、やばい。フラン!」

「わっ!? ちょ、ちょっと、急に大声出さないでよね」

「今から行くわよ! さぁ、早く支度して!」

「えぇ〜! まだ眠いんだけど〜?」

「フラン。レナがデートするんだって」

「......え? ご、ごめん。もう一回言ってくれないかな?」

 

 フランが驚きのあまり、目を白黒させている。

 やっぱり、フランにも信じられないわよね。

 

「レナがデート。ルネと」

「......レミリアお姉様、それ本当?」

「本当よ。レナが、ルネとお出かけするって言ってたのよ」

「......よし、今すぐ行こう! とりあえず、引き裂こう!」

 

 あれ、フランの目が本気......あ、これやばいやつだ。

 

「え、ちょ、ちょっと待って! と、とりあえず落ち着きましょう? ね?」

「落ち着いてたら、間に合わなくなるかもしれないよ!? 私はすぐに着替えてくるから、レミリアお姉様は先に行ってて!」

「え、ちょっと! ......はぁー、どうしてみんな、最後まで話を聞かないのかしらねぇ」

 

 まぁ、いいわ。先に行きましょうか......。レナを見失ったら元も子もないし。

 そう考え、私はエントランスの方へと歩を進めた──

 

 

 

 

 ──人間の街

 

 急いで紅魔館から出ると遠くにレナが見えたので、付いていくと紅魔館から一番近い人間の街に着いた。

 そして、私達はレナ達にバレないように少し離れた位置に降りた。

 

「あれね」

「......お姉様......それに、あいつ......」

 

 降りた場所からは、レナが見える。そして、レナ(私の妹)と仲良く話しているルネ()も......。

 それにしても、どうしてかしら? 私の隣から、凄い殺気が......。

 

「ね、ねぇ、フラン?」

「何? 今、お姉様と、お姉様を誑かした奴を見てるんだけど?」

「殺気が凄いから、気付かれるかもしれないわよ?」

「大丈夫。それも気にならないほどいちゃいちゃしてそうだし」

 

 確かにレナとルネは笑顔で話しているから、いちゃいちゃしてるようにも見えるけど......。

 あれはそういうのじゃない気が......。

 

「あ、移動するよ!」

「フラン、もう少し静かに行きましょうね。気付かれるから」

「あ、そうだね。気付かれたら、殺る前に逃げるかもしれないしね」

「......私、貴女も止めないといけないのね......」

 

 どうしてこの娘は、こんなに殺気が高いのかしらねぇ......。

 まぁ、いいわ。今はそれよりも、レナを追わないと。

 

「ん、あ、お店の中に入っていった」

「服屋、かしら? どうして......」

「あ、ウェディングドレスを買うため、とか? ......自分で言ってから何だけど、お姉様、あのお店燃やしていい?」

「やめなさい。燃やしたら騒ぎになるし、まだそうと決まったわけじゃないでしょ?

 まぁ、もしも、それなら、燃やしていいけど」

 

 まぁ、そのドレスって、私達の敵の服のようなものだし、流石にないとは思うけど......。

 でも、あの娘ってそういう事に結構疎いからなぁ。

 

「......あ、出てきたよ」

「早いわね。......あら?」

 

 よく見てみると、レナは小包を手に、店から出てきた。

 

「んー......中に何が入っているんだろう?」

「服だとは思うけど......あ、また移動するみたいだし、行くわよ」

「うん、そうだね」

 

 私達は、レナとルネの後を追って、数分ほど歩いた。

 そして、レナ達が着いた場所は......。

 

「......指輪専門店?」

 

 だんだん嫌な予感が......。ん、あれ、なんか熱い気が......。って、フラン!?

 

「ちょっと!? 無言でレーヴァテインを構えないで! バレるから!」

「......ちっ、仕方ないね。レミリアお姉様、次は止めないでよ」

「いや、絶対止めるから......」

 

 止めないと、絶対に騒ぎになるじゃない。そうなったら、レナに嫌われる自信があるわ。

 勝手について行った挙句、騒ぎを起こすなんて。ここに来れなくなるだろうし......。

 

「ん、あれ? また早いわね」

「......レミリアお姉様。もしかして、お姉様って前にも何回か外に出たりしてる?」

「まぁ、何回か出てるわね。......あっ」

 

 もしかして、予約でもしてたのかしら? ということは、ルネとデートするのは今回が初めてじゃないと?

 姉として、帰った後に問い詰めようかしら。

 

「レミリアお姉様も分かったみたいね。なら、突撃してもいい?」

「それはやめて。帰った後にしなさい」

「むぅ、分かったよ。けど、帰ったら......うふふ」

 

 何を企んでいるのか、フランはいたずらっ子のような目つきで笑っている。

 ほんと、この娘って生粋の悪魔よねぇ。レナとは全然違うのに、どうしてこの娘達は仲が良いのかしら?

 まぁ、仲が良いのはいい事だけど。

 

「あら、次は何処に行くのかしら?」

「......レストラン、かな?」

 

 再びレナ達が歩を進めた先にあったのは、小さなレストランだった。

 そして、レナ達は中に入ると、食事を取っていた。

 そう言えば、まだご飯食べてないわ......。帰ったら食べないと。お腹が空いたし......。

 

「いいなぁ。お姉様達、ご飯食べてる......」

「帰ったら咲夜に何か作らせるから我慢しなさい」

「はーい......」

 

 それにしても、楽しそうに食べてるわね。

 これって、もしかして本当に......。

 

「ねぇねぇ。レミリアお姉様」

「何かしら?」

「あの二人、仲良さそうだよねぇ......」

「そ、そうかしら? 私には、ただの友達にしか見えないけど?」

「ふーん......そっかぁ」

 

 まぁ、本当のことを言うと、友達以上の関係に見えなくもないんだけど......。

 

 それからは、しばらくレナ達の様子を見ていたが、特に何も起きなかった。

 そして、レナ達が帰る前に、私達は紅魔館へと急いだのであった──

 

 

 

 ──紅魔館(レミリアの部屋)

 

「お姉様? 何か用です?」

 

 レナが家に帰ってきたと同時に、私はレナを部屋に呼び出した。

 もちろん、街でのことを聞くために。

 

「ちょっとね。聞きたいことがあったから」

「まぁ、丁度よかったですけどね。はい、お姉様。誕生日プレゼントです」

「......え?」

 

 レナがそう言って、先ほど街で買っていた小包を二つ、手渡してきた。

 

「どうしました? ほら、お姉様の誕生日プレゼントですよ。何年も生きているせいか、イベントとかって忘れがちですけど、お姉様の誕生日は絶対に忘れませんよ。まぁ、私の誕生日でもありますしね」

 

 も、もしかして、人間の街に行ってたのって、私のため? で、でも、服屋に指輪専門店って......。

 そう思って、小包を開けて見ると、中には薄いピンク色の帽子と赤い指輪が入っていた。

 

「この帽子、お姉様の服に合うように、服屋さんで聞いて買った物なのですよ。

 それと、この指輪。こっちはルビーが付いた宝石ですが、ルネに手伝ってもらって、災いから身を護ってくれる魔法が込められているのです! どうです? 気に入ってくれました?」

 

 私......勘違いしてたんだ。......あれ、目の前が霞んで見えないわね......。

 

「あれ、お姉様? 大丈夫ですか? 泣いているみたいですけど......」

「ふふ、大丈夫よ。ただの......嬉し泣きだからね。それよりも、ありがとう。私のために、ここまでしてくれて......」

「いえいえ、お姉様のためなら何だって頑張りますよ。まぁ、ひとまずは、嬉しそうで良かったです」

 

 そう言えば、いつもレナはこの時期になったら、私に誕生日プレゼントをくれるわね。

 当たり前のようになっていたから、忘れていたわ......。ほんと、姉としてどうなのかしら。

 

「......レナ、欲しい物があったら、私に言いなさいよ」

 

 まぁ、無くても何か、お返しのプレゼントを考えるんだけどね。

 

「え? 欲しい物、ですか? ......私は、お姉様達と一緒に居れればそれでいいですよ。

 えぇ、ただ、それだけでいいですから......」

「そうなの? ......まぁ、いいわ。ありがとうね、レナ」

「お姉様が嬉しそうで私も嬉しいですよ。......あ、朝ご飯食べてきますね。咲夜も用意してくれてたでしょうし......」

 

 私は、そう言って部屋を出ていくレナを見送った。

 ......あれ、そう言えば、何か忘れてる気が......まぁ、何もないわよね。

 

 こうして、今日も一日が過ぎていく。この後、フランが勘違いしてレナに詰め寄るのだが、それはまた別の話────


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