今回も短いです。というか、番外編の字数が短くなってきた気が()
side Izayoi Sakuya
──紅魔館(咲夜の部屋)
「......五時、よね?」
毎朝、私は同じ時間に起きる。一秒の遅れも許されない。いや、お嬢様は「それくらい問題ないわよ」と許すだろうが、私が許さない。
「......今日も間に合ったみたいで良かったわ。それじゃぁ、早速......」
私は服を着替えて、部屋を出た。そして、足早に厨房へと向かった。
いつも通りの時間に起きて、いつも通りの仕事をする。そして、たまにお嬢様の
これが私の一日。そう、いつも通りだから、何も苦は──
「ん? あ、咲夜」
厨房へと急いでいると、偶然同じタイミングで部屋から出てきたフラン様とバッタリ出会った。
「......フラン様? 早起きですか? 珍しいですね」
「んー、まぁ、そうね。自分でも珍しいと思うよ」
それにしても、こんなところで何を......。あ、ここミア様の部屋だ。
まぁ、妹様達が一緒に寝るのはいつものことだし、別に不思議なことではないわね。
「咲夜って、いっつもこんな時間に起きてるんだね」
「えぇ、まぁ......私はメイドですので」
「ふーん、メイドって大変なんだね。あ、そうそう。咲夜はさ、レミリアお姉様にプレゼントをあげるとしたら......何がいいと思う?」
プレゼント? ......そう言えば、お嬢様にプレゼントなんて考えたことなかったわね。......私も何かプレゼントした方がいいかしら?
するとしたら、やっぱり誕生日にでも......。
「あ、プレゼントですね。えーと......いつもお嬢様が使っている物とかはどうですか?」
「レミリアお姉様がいつも使ってる物? ......んー、例えば?」
「そうですね......ティーカップとかどうでしょうか?」
「ティーカップ?」
いつも、お嬢様はお食事の時には、自分専用のティーカップを使っている。別に、それは特別な物ではなく、そういうのが欲しいからそれっぽく使っている、というだけだ。ちなみに、たまに妖精メイドが使っているのを見たりする。
「はい、いつも朝食の時や、ティータイムの時に使っていますので......。普段使っている物は古いですし、別に特別な物ではありませんので、新しく買った物をプレゼントしてみてはいかがでしょうか?」
「ふーん......そっかぁ、そういうのも......あ、ありがとうね、咲夜。おかげでレミリアお姉様達にプレゼントする物決まったから」
「いえ、お役に立てたのなら私も嬉しい限りです」
「咲夜はお硬いねぇ。いつも霊夢や魔理沙と喋っている時みたいに、砕けた口調でいいのよ?」
「いえ、そういうわけには......」
私はメイド。主人の妹であるフラン様に、砕けた口調なんて......。
「......ま、いいや。じゃ、また後でねー」
「え? フラン様、そろそろお食事の時間ですよ? そちらは食堂ではありませんが......」
「ん、お姉様達を起こしに行ってくるの。お姉様、お寝坊さんだしねー」
「あぁ、なるほど。では、貴女様が帰ってくるまでには作り終えていますね」
「うん、お願いね」
そう言って、フラン様は自分の部屋へと飛んでいった。
最初、フラン様とバッタリ出会った時は面倒事に巻き込まれるかとヒヤヒヤしたが......そんな心配も必要なかったみたいだ。
まぁ、今はそれよりも──
「──さて、急いで作りに行かないと......」
そろそろお嬢様を起こしに行く時間だ。急いで朝食を作らないとね。
まぁ、それこそ、時間を止めてでも間に合わせてみせるけど──
──紅魔館(レミリアの部屋)
「お嬢様、朝ですよ。今日は博麗神社に行く予定ですよ? 早く起きましょう?」
時を止め、何とかお嬢様を起こす時間までに間に合わせることができた。今は、妖精メイド達に食事の準備を任せている。
調理も任せていい気がするが......まぁ、あの娘達は少し雑なので仕方ない。
いつもは自分で起きるが、今日は博麗神社に行く予定なので、起きる時間が早い。お嬢様は吸血鬼が故に朝が苦手なので、こういう時は私が起こすことになっている。
「うーん......あら、咲夜? ふぁ〜......起こしに来てくれたのね、ありがとう」
「いえ、これが私の仕事ですので。お嬢様、朝食の準備はできています。さぁ、早く食堂に行きましょう」
「えぇ、そうね......ふぁ〜......やっぱり、朝は嫌ねぇ。眠いし、太陽が出てるし。霊夢も夜に起きればいいのに......」
「お嬢様、それは人間なので仕方ありません」
「えぇ、分かってるわよ。冗談だから気にしないで」
「はい、分かりました」
時々、お嬢様は突拍子もなく冗談を言ったりする。こういう時は本当にどうすればいいんだろうか......。
「......貴女、もうちょっと砕けてもいいのよ?」
「いえ、そういうわけには。私はメイドなので」
「......はぁー、分かったわ。それじゃぁ、着替えるから先に行ってなさい」
「別に、そのままでもいいのでは? 朝食を食べ終えるとまたここに戻ってきますし、館に変な輩や不審者が居るわけでもないですし」
「貴女、それどっちも変わらないわよ。それに......このネグリジェ姿で館内を歩くのも恥ずかしいわよ」
夜はいつもその格好で館内を歩いている気が......。
「お嬢様、ここにはメイドや妹様方しか居ませんが......」
「いいから、早く行きなさい。というか、その妹達に見られるのが恥ずかしいのよ......。
って、言わせないでよ」
「お嬢様、今自分から......いえ、何でもありません。では、先に行っています」
そう言って、ネグリジェ姿のお嬢様を置いて、私はひと足早く、食堂へと向かうのであった──
──紅魔館(食堂)
「──ごちそうさまでした」
お嬢様が遅れてやって来て、みんなが揃ったところで、私達は朝食を食べ始めた。
「ごちそうさま。では、博麗神社に向かいましょうか。美鈴、留守番お願いね。しっかりここを守りなさいよ」
「えぇ、お任せ下さい!」
「美鈴、寝ないでよ? 寝たら頭に角が生えるわよ。綺麗な銀色のね」
「あ、あれ、咲夜さん? いつもよりも辛口な気が......」
「残念。いつも通りよ。では、お嬢様。行きましょうか」
「この差、酷くないですか?」
「そうだね。いつも寝てる美鈴も悪いけど」
まぁ、いつも言ってることなんだけどね。いつも言ってるのに寝ているけど。
「フラン様まで〜」
「自業自得。あ、お姉様。今日もこいしと遊びたいなぁ」
「普通に言ってください。どうしてそんな甘えて言うのですか。いやまぁ、いいですけど、まずは探すところからですね......」
「あ、咲夜。手土産にワインを持っていきたいから、用意してくれない?」
「お姉様、霊夢ってワインとか喜ぶのですか?」
「さぁ? 知らないけど、何か持っていかないと失礼でしょ? だから、適当に持っていきたいのよ」
「お嬢様、それを絶対に霊夢の前で言わないで下さい」
「えぇ、もちろん分かっているわよ。絶対に言わない」
「......それなら、いいですけど」
そう言って、私は食堂を後にした。そして、博麗神社への手土産にと、ワインを用意するのであった──
──紅魔館(エントランス)
「あ、咲夜さん、お嬢様。お帰りなさーい」
博麗神社で長い時間遊んだ後、いや、遊ぶのに付き合わされた後、紅魔館へと帰ってきた。
「美鈴、誰も通してないわよね?」
「今日は大丈夫ですよ!」
「......今日『も』できるように頑張りなさいよ」
「は、はい、頑張ります!」
気迫だけはいいんだけどね。まぁ、美鈴はそこら辺の妖怪や妖精よりもかなり強いから、美鈴を倒して入ってくる奴なんてかなり少ないけど。
「では、お嬢様。私は夕食の支度があるので、これで」
「えぇ、任せたわ。あ、美鈴。今日はもう休んでいいわよ。たまには早めに終わってもいいでしょうし」
「いえいえ、大丈夫ですよ。というか、暇ですし」
「暇だからって寝ないでよね。まぁ、いいわ。
それでは、お嬢様。また夕食の時間に」
「えぇ、またね」
こうして、私はいつも通り、夕食の支度を済ませ、いつも通り、館の掃除をしに行くのであった────