東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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次こそは遅れないはず......()

今回は咲夜と紅魔館の住人が会うだけの話。

※最終的に可哀想な美鈴


9、「咲夜と紅魔館の住人 美鈴の災難」

 side Sakuya Izayoi

 

「咲夜、そろそろ起きなさい。もう日が沈んだわよ」

「ふぁ〜......あぁ、そう言えばそうだった。失礼ですが、お嬢様。人間は昼に活動する生き物です。出来れば、日が昇った時に起こして欲しいのですが」

 

 昨日、捕まったんだった。それで、メイドになれって言われて受けたんだった。ま、食事が不味かったら逃げよう。人間一人くらい、追いかけてこないだろうし、未練なんて全くないからね。

 

「え? 無理よ。貴女は私の従者、私の命令に従いなさい。それに、すぐに慣れるわよ」

「はぁ......分かりましたよ、お嬢様。で、今日は何をすればいいですか? 今の私は掃除くらいしか出来ませんよ? 出来れば、料理とかも教えて欲しいです」

 

 どうせここで反発しても、意味がないんだろうなぁ。この吸血鬼、結構わがままみたいだし。まぁ、今までまともにご飯なんて食べれなかったし、ちゃんとしたご飯さえ食べれれば文句ないけど。

 

「そうねぇ、まずは料理の練習から始めたいけど、先にこの館の住人に会った方がいいかしら。フランもレナがいれば大丈夫だろうし、パチェも問題はない。美鈴も大丈夫かな。......じゃ、私について来なさい。まずは図書館から行きましょう」

「はい、分かりました、お嬢様」

 

 そう言って、私は吸血鬼について行った。

 それにしても、これから毎日夜に起きないと駄目なんだ......まぁ、今までも夜に起こされていたから大丈夫か。

 

「あ、貴女、私を殺そうとしたことを私の妹達に言わないでよ? 貴女が死んでもいいなら言ってもいいけど」

「......さらっと、怖いことを言いますね。絶対に言いません。まだ死にたくないので」

「そう、命を大切にする方でよかったわ」

 

 命を大切にしない奴なんているわけないでしょ。

 それにしても、『妹達』? ここにいる吸血鬼は二人だけだと聞いてたけど、『達』ってことは妹が二人、こいつも含めて吸血鬼は少なくても三人はいるということ? やっぱり、逃げてた方が良かったかしら? ......でも、逃げたとしても吸血鬼を殺すのが失敗したと町の連中にバレれば、殺される可能性もあるか。例え殺されなかったとしても、食事なんて与えてはくれないだろう。......まぁ、それは元からだから関係ないか。

 

「咲夜、どうかしたの? 顔が暗いけど」

「いえ、何でもありませんよ。それよりも、お嬢様の妹様達はどのような人達なのですか?」

「そうねぇ......名前は次女がレナータ、末妹がフランドールっていってね。レナは悪魔にしては優しい方で、魔法が得意なの。ちなみに、あの人形を作ったのもレナよ。

 フランは悪魔らしく、悪戯が好きだけど、寂しがり屋で可愛い子なのよ。後、怒ったら一番恐い子だから、気を付けなさいよ」

 

 ふーん......レナって奴があの人形をねぇ......。吸血鬼は誰が怒っても恐いだろうから、常に気を付けるに決まってるじゃない。

 ......それにしても、こいつ、妹のことなのに嬉しそうに話すわね。

 

「ふむ、では、先ほど言っていたパチェと美鈴という方は? その方達も吸血鬼なんですか?」

「いえ、美鈴は妖怪だけど、吸血鬼ではないわよ。パチェ、もといパチュリーは魔女よ。パチェは毎日魔法の実験をしてて、あまり話すことはないわね。でも、根はいい奴だから安心して。それに、知識も豊富で色々と教えてくれるから、何か疑問でもあったら聞きなさい。

 美鈴はここの門番をしているわ。まぁ、時間は日が昇っている時間だけなんだけどね。料理も大体は出来るから、料理は美鈴にでも教えてもらいなさい」

「はい、分かりました」

 

 そう言ってから少しした後、少し大きめの扉の前で吸血鬼が止まった。

 

「あ、着いたわよ。ここが大図書館。ここには、さっき言ったパチェがいるわ」

 

 パチェ......魔女か。ほとんどの魔女は魔女狩りで死んだって聞いたけど、まだいたんだ。

 

「パチェー、居るかしらー?」

 

 そう言って、吸血鬼が部屋に入って行った。

 

「夜なのにうるさいわね。あ、あんた達、吸血鬼は夜に行動するんだったわね。で、そこの娘は誰?」

 

 すると、奥からパチェと思われる人物が歩いてきた。眠そうにしているけど、寝てたのかな?

 

「パチェ、紹介するわ。この娘は『十六夜 咲夜』よ。昨日から、ここでメイドをすることになった人間よ」

「人間? 貴女、どうして人間なんかメイドにしようと思ったの? まぁ、別にいいわ。私はパチュリー・ノーレッジ。よろしくね、咲夜」

「はい、パチュリー様、よろしくお願いします」

 

 人間『なんか』......ね。まぁ、この館に人間はいないみたいだし、ここに来る人間の目的は大体が襲撃とかだろうから、そう思われても仕方ないか。

 

「パチュリー様ー。レナ様とフラン様がこちらに来るみたいですよー。あ、お嬢様。あれ? そちらの方は?」

 

 そう言って、赤い長髪で頭と背中に悪魔のような羽、白いシャツに黒色のベスト、ベストと同色のロングスカートで、リボンを着用した女性が近付いてきた。

 こいつが美鈴? でも、妖怪と言うか、悪魔だし、違うか。

 

「『十六夜 咲夜』よ。昨日からこの館のメイドになった人間よ。咲夜、こいつは小悪魔。パチェがレナに教えてもらった召喚魔法を使ったら、何故かこいつが召喚され、そのままパチェの使い魔になった下級の悪魔よ」

「そうですか。小悪魔様、よろしくお願いします」

「え、あ、よ、よろしくお願いします。......様付けされたの初めて......」

 

 なんかうっとりしてるけど、この人、大丈夫なの?

 

「それよりも、小悪魔。レナとフランが来たのね?それなら丁度いいわ。咲夜を紹介したかったし」

「あ、もうここに来るは......え!? ちょ────」

 

 小悪魔が言い終わらないうちに、何かがどこからともなく飛んできて、小悪魔に当たった。そして、小悪魔が飛ばされてしまった。

 

「ふぅ......あれ? なんか当たった? ま、いいや。やったー! お姉様に勝ったー! ......あれ? レミリアお姉様?」

 

 無邪気な笑顔を見せ、そう言って入ってきたのは、濃い黄色の髪をサイドテールにまとめ、その上からナイトキャップを被っている少女だった。 瞳の色はレミリア......お嬢様のように真紅で、服装も真紅の半袖とミニスカートを着用している。 またその背中からは、一対の枝に八色の結晶がぶら下ったような奇妙な翼が生えている。

 まぁ、少女と言っても──年齢はともかく──見た目も今の私よりかは上なんだけど。

 

「フラン、小悪魔を飛ばしちゃってるわよ。まぁ、生きてはいるから大丈夫でしょうけど」

「フラーンー。館の中で急いで飛ぶと危ないですよー。あ、お姉様? ......と人間?」

 

 そして、フランと呼ばれた吸血鬼の後ろから入ってきたのは、濃い赤色の髪をして、お嬢様のような色の服装をした少女だった。瞳の色はお嬢様やフランと呼ばれた吸血鬼のように真紅で、背中からは、お嬢様の翼に血を塗ったかのような真っ赤な翼が生えている。

 こっちの少女もお嬢様やフランと同じくらいだから見た目も年齢も上なんだけど。

 

「あぁ、レナ、フラン。この娘は『十六夜 咲夜』、昨日からこの館のメイドになった人間よ。仲良くしてあげてね」

「ふーん......私はフランドール、フランでいいよ。それと、スカーレット姉妹の三女だよ。よろしくね」

「......私はレナータです。呼び方はレナでいいですよ。私はスカーレット姉妹の二女です。よろしくお願いしますね」

「はい、フラン様、レナ様。よろしくお願いします」

 

 三姉妹ってことでいいのかな? まぁ、何でもいいか。それよりも、見た目の歳はは私よりも少し高いくらいなのに、勝てる気がしないわね......。これが吸血鬼と人間の差なのかしら。

 

「レナ、貴女、デザート以外の料理も出来るわよね?」

「? まぁ、簡単な物なら出来ますよ。それがどうかしましたか?」

「明日でもいいから、咲夜に料理を教えてあげて。この娘、掃除は出来るけど、料理は出来ないらしいから」

「料理が出来ない? ......ふむ、まぁ、いいですよ」

「......お姉様、ついでに私も教えてくれない?」

「え? フランもですか? まぁ、一人くらい増えても大丈夫でしょうし、いいですよ。それにしても、どうして急に?」

「え、いやぁ、何でも別に理由なんてないよ? 将来、役に立つかなぁって思ったから」

 

 ......いや、目が泳いでるし、冷や汗みたいのかいてるし、絶対嘘でしょ。

 

「あぁ、それなら勿論いいですよ」

 

 そして、レナ様は本当に騙されてるっぽいんだけど!? え? 嘘って分からないの? なんで『あぁ、なるほど』的な顔をしてるの!?

 ......もしかして、この二人、知っててやってるの? わざと嘘っぽくしてる? それを分かって、信用した振りをしている? ......いや、何でもいいや。こんなことで騒いでも仕方ないし。

 

「あ、咲夜、ちょっと話があるの。来てくれる?」

「え? いいですが、どうしました?」

「いいからいいから......。じゃ、レミリアお姉様、咲夜をちょっとだけ借りるからね」

「えぇ、いいわよ。でも、殺したら駄目だからね」

 

 そう言って、フラン様が私を引っ張って少し離れたところに行った。

 っていうか、お嬢様、『殺したら駄目だからね』とか簡単に言いますね......。

 

「でね、咲夜。お姉様になにかしたら殺すから。レミリアお姉様にもね。全部知ってるからね。お姉様に内緒でレミリアお姉様人形に魔法をかけてたの。それで、全部見てたから。後、逃げて人間達に情報を流されても困るから、逃げようとしても殺すから。じゃ、戻ろっか」

 

 子供のように、無邪気な笑顔を見せ、私にそう言った。

 ......え? 何? どういうこと? バレてるって......え!?

 

「ふ、フラン様! す、少しお待ち下さい!」

「え? 何?」

「あ、あの......このことはお嬢様やレナ様に言いませんか?」

「うん! 勿論言わないよ。まぁ、これから一緒に住むわけだし、仲良くしよっ!」

 

 そんな悪魔みたいな笑みで言われても......いや、悪魔か。それにしても、本当に悪魔みたいだ。......私はこの館で生きていけるのだろうか?

 

「......はい、これからもよろしくお願いします......」

「ふふ、それと、私は今すぐにでも貴女を殺す能力を持ってるの。凄いでしょ? まぁ、お姉様達の為に生きていくなら、何も手は出さないから、安心してねっ」

「うぅ......嘘じゃないと大体分かるから困る。......フラン様、私と約束してくれませんか? それと悪魔は約束、と言うか契約を破れないと聞きましたが、本当なんですか?」

「ん、本当だよ。じゃ、私と契約する? 勿論、破ったらただじゃおかないけど」

「えぇ、契約します。私がお嬢様達に一生仕え......お守りすることを。そして、その代わりに仕えている間は、何があっても私を殺さないことを守ってください」

「うん、いいよ。私はお姉様達に危害が加えられなければ何でもいいから」

 

 姉思いの妹......いや、少し異常な気もするけど、私も死ななければ何でもいいか。

 

「じゃ、お姉様達のところに戻ろっか」

「はい、そうでございますね」

 

 そう言って、私とフラン様はお嬢様達のところに戻った。

 

「戻ったわね。さ、最後は美鈴のところよ。行きましょう」

「あ、レミリアお姉様、私もついて行っていい?」

「えぇ、いいわよ。レナはどうする? 貴女もついてくる?」

「んー......フランが行くならついて行きます」

「そう、なら寄り道しないようについて来なさいよ」

 

 そう言って、お嬢様が大図書館を出て、歩いて行く。勿論、私達はついて行った。

 それにしても、早速お嬢様の忠告の意味が無くなったけど、これからどうなるんだろうか......。あ、そう言えば、飛ばされた小悪魔もどうなったんだろう? ......まぁ、無事だろうからいっか。

 そう思いながら、私は足を進めた────

 

 

 

 ──紅魔館(美鈴の部屋)

 

「美鈴ー、開けるわよー」

 

 そう言って、お嬢様が返事を待たずに扉を開けた。そこにはレナ様よりは薄い赤色だが、レナ様よりも長い髪を持ち、寝巻きを着た女性がベッドに横になって眠っていた。

 

「あら、やっぱり寝てたわね。まぁ、昨日もずっと門番として働いてたし、疲れているから仕方ないわね......じゃ、レナ、フラン。美鈴を起こしてちょうだい」

 

 ......え? 自分で疲れているから仕方ないと言っておきながら、結局起こすの? ......別にいっか。私には関係ないし。

 

「はーい。美鈴ー、起きてー。起きないと食べちゃうぞー?」

「フラン、それくらいじゃ起きませんよ。と言うか、起こし方が雑過ぎます」

「えー、お姉様に言われたくないよー。お姉様っていつも私を起こすの遅いじゃない」

「それは優しく起こそうとしているからですよ。それに、フランの寝起きは機嫌が悪いことが多いですし」

 

 どうしてこの二人は言い合いしているんだろうか。それにしても、どんどん声が大きくなってるから、

 

「それはお互い様でしょ? お姉様も機嫌が悪い時多いから。私よりも──」

「んー......あれ? レナ様、フラン様? それに、お嬢様まで。一体どうしたんですか?」

 

 そう言って、美鈴とか言う妖怪が目を覚ました。やっぱり、この二人の声が大きくなってきたから起きたのかな。これで起きない人は少ないだろうし。

 

「ようやく起きたわね。紹介するわ。この娘は『十六夜 咲夜』。昨日からここでメイドをすることになったわ。けど、まだ料理は苦手らしいから、この娘に教えてあげてくれないかしら?」

「勿論、いいですよ。それと、咲夜さん、私は紅美鈴です。よろしくお願いね」

「はい、よろしくお願いします」

「さ、あっちで言い争いしている二人はほっといて、次はこの館の案内をするわね」

 

 あぁ、起きたのも気付かずにまだやってたのか。......え? なんか言い争いと言うか、取っ組み合いになってない?

 

「お、お嬢様、あの方達を放っておいても大丈夫なのですか? 吸血鬼ですよね? 喧嘩なんてし始めたら、この部屋がかなりやばいことになるのでは?」

「大丈夫よ。放っておいてもね。あの二人もここが美鈴の部屋って分かっているでしょうし、そこまで酷いことはしないと思うわ」

「そ、それならいいのですが......」

「あのぉ、お嬢様。昔、そんなことも気にせずに喧嘩して、部屋を壊された気がするんですが......」

「......大丈夫よ。後で怒るから。じゃ、行きましょうか」

「それ壊される前提になってるじゃないですか! って、待ってくださいよ〜」

 

 美鈴って妖怪、可愛そうだなぁ......。

 そう思いながら、お嬢様について行き、部屋を出た。この後、美鈴の部屋を壊した二人がお嬢様に怒られたのは言うまでもない────




おそらく次の日曜日に投稿するはず()

多分、次の次で幻想郷の話になりそう

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