東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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風邪を引いて、こんなに短いのに長引いてしまった...本当に申し訳ないです。

今回は美鈴が中心のお話。なお、レナータの出番がない模様()


5、「紅魔館の色鮮やかな門番」

 side Hong Meirin

 

 ──紅魔館(門前)

 

 一週間前、私はここの館のお嬢様に雇われ、ここの門番になった。

 門番になった理由は簡単。強い人と手合わせをしたいが為に『賭け』をして負けた。

 でも、私は後悔をしていません。お嬢様達は『悪魔』とは言われていますけど......言うほど怖くはないですし、門番の仕事も三食ついていてそこまでブラックな仕事ではないから、逆にお嬢様達に仕えることが出来て嬉しいです。

 門番の仕事はとても簡単で、お嬢様達がお休みになる太陽が登る時間から、お嬢様達が起きる太陽が沈む時間まで門で侵入者を入らせない。それだけの簡単な仕事。それで私は手合わせも出来るし、食事も三食取れる。今まで食事をまともに食べることなんて少なかったから......普通に嬉しい。

 

「お疲れ様、美鈴。後は私に任せて休んでいいわよ」

 

 日が暮れてから数十分くらい経った時、お嬢様がそう言いながら門に居る私に近付いて来た。

 

「あ、もうそんな時間ですか? やっぱり、一日は早いですねー」

「あら、今日も侵入者はいなかったのかしら?」

「まぁ、はい。案外来ないものなんですね」

「あら、そんなに毎日のように来られても困るわよ。さ、もう寝なさい。明日もあるんだから」

「ははは、そうですね。お嬢様、また明日、お会いしましょう」

「えぇ、またね」

 

 そう言って私は紅魔館へと戻り、私自身の部屋に帰る。私の部屋は門番らしく、門に近い場所にある。中は割と広めで、かなり快適な部屋だ。

 

「ふぅ......今日も何も無かったな〜。

 このまま続けていたら何かあるんでしょうか......。まぁ、考えてても仕方ないから今日はもう寝ましょうか」

 

 私はベッドに直進し、そのままダイブする。

 はぁ〜、温かいなぁ......こんなにふわふわなベッドで寝るのはここに来る前までなかったから......本当にここの門番になれて良かった。

 お嬢様達は優しいし、ここにいれば食事にも、寝床にも困らない。こんな生活は今まで出来なかったから......ここで門番して、手合わせもして、一生暮らしてもいいかも......。

 そう思いながら、いつしか私は深い眠りへと落ちていた──

 

 

 

 ──十数年後 紅魔館(門前)

 

 お嬢様達に仕えてから十数年が経った。明日はお嬢様とレナお嬢様のお誕生日で、準備のために準備のために、妖精メイド達が慌ただしく紅魔館内を走っている。私も、こんなに目出度い日の前日に襲撃が無いように門番を務めている。

 この十数年の間、人間や妖怪が攻めてくるのは一ヶ月に2、3回で数も多くて十人程度と、大規模な襲撃は無かったが......どうやら、今日は違うらしい。

 

「......珍しいですね。こんなに来ることがあるなんて」

 

 お嬢様達に仕えてから十数年が経ったが......珍しく、それも運悪く、お嬢様達のお誕生日の前日と言う日に三十人程の人間が紅魔館に攻めてきた。夜中ならお嬢様達が居て、早く片付けることも出来たんだろうけど......今は日中、それに、明日が誕生日だと言うのに、お嬢様達に人間の襲撃の防衛を手伝わせるわけにはいかない。

 

「はぁー、こんなに来るのは何も無い日にして欲しいですね......」

「俺達はなぁ、ここの『悪魔』に用があるんだが......ここを通してくんねぇかな?」

「残念ですが......この館には一歩も入らせません。ここに入りたければ、私を倒してみなさい!」

 

 私はそう言って、人間の集団へと突っ込んだ。

 

「せいっ! やっ! はっ!」

 

 そして、息をつかせる間もなく、人間に突き、蹴りを食らわせ、倒していく。人間を倒すことくらい、今まで修行を積んできた私にとっては簡単なことだ。

 そう思いながら、人間を倒していく時に「ヒュン!」と言う音がした。そして、腹部辺りから何か暖かい液体が流れた。

 って、え? これは......?

 油断していたせいもあり、刺さるまで気付けなかった。腹部には銀で出来ているらしい対吸血鬼の矢が刺さっていた。

 

「っ!? ......こ、これは銀の矢ですか。これくらいなら......くっ!?」

「油断したな! この馬鹿め!」

 

 人間が無数の銀の矢を私に向かって放った。そして、怪我のせいで避けそこねた私に、幾つかの矢が当たった。

 幾ら私がお嬢様達みたいに銀が弱点ではないと言っても、矢で受けた傷で行動が遅くなる。それに、十本とはいかないが、もう幾つもの矢が私に刺さっている。

 

「くっ......油断大敵とは、こういう時に使うのですね......」

 

 これは......手合わせなんて生温いものじゃなかったのを忘れてた。最初から、人間達にとっては命の奪い合いだ。どんな卑怯な手でも使ってくるだろう。

 ただ、今までの襲撃が優しかっただけだ。それなのに......私は油断して、敵から一撃をもらうことになってしまった。

 

「今だ! 放てっ!」

 

 人間達が私に向かって無数の矢を放った。さっきの攻撃で避けるのが......いや、もう避けれない、か。

 怪我、油断、目の前まで

 

「まさか......人間に殺られることになると──」

 

 ──ビュン!──

 

 そう言いかけた瞬間、何か赤いものが横を通った。その赤いものは無数の矢を巻き込みながら敵に向かって行った。

 

「あら? 美鈴。まだ殺られてないでしょ?」

 

 その声が聞こえ、私は声の主の元に振り返った。

 その声の主は穴が空いた門の先に居た。そして、私は何があったのかをようやく理解した。さっき、私の横を通った赤いものはお嬢様の武器──グングニル──であり、それは勿論、お嬢様が投げた物だと。

 

「お、お嬢様!」

 

 お嬢様は日が当たらない紅魔館の中にいた。お嬢様はそこから、閉じている門を破って、槍を投げたらしい。

 って、この門、絶対私が直すんですよね......まぁ、助かりましたし、それでもいいですけど......。

 

「情けないわねぇ。たった30人程度の人間相手に......ここまでやられるなんて。ここの門番なんだからもっとしっかりしなさい」

「す、すいません! ちょっと油断してしまいまして......」

「言い訳は後でにしなさい。今はこいつらを倒すことだけ集中しなさい!」

「はい!」

 

 そう言って人間達を倒していく。最初は優勢だった人間も、お嬢様の登場により、手も足も出なくなった。

 この十数年、お嬢様に仕えることは本当に私にとって良いことだったのか? と悩むこともあったけど......今はもう、仕えることが出来て良かったとしか思えないです。

 そう思いながら、しかし、油断することはせずに、私達は人間を倒していった────

 

 

 

 ──数分後 紅魔館(門前)

 

「いやー、助かりました。あ、お嬢様、どうしてこんな時間に起きていたのですか?」

「偶然よ。なんだか眠れなくなったから館の中を歩いてたの。そしたら、外が騒がしかったから見に来たってわけよ」

「わ、私は偶然で助かったんですね......。また油断しないようにしないと......」

「あら、油断しちゃったの? 気を付けなさいよ。いつも誰かが助けてくれるってわけじゃないんだから」

 

 あはは......確かにそうだ。今回は運が良かったからだけど、本当は死んでたかもしれない、のかな?

 

「明日、いよいよね。まぁ、明日......って言っても、もう5、6時間くらいしかないけど。私達の誕生日なんだから。仕事に戻ったら、誰も侵入させないようにしなさい。......今日はいつもよりも早く呼ぶわね」

「はい、お嬢様。では、私は今すぐにでも戻りま──」

「待ちなさい。まだ傷の手当が終わってないわよ?」

 

 あ、そう言えば......。でも、吸血鬼と違って強い再生力はないけど、私も妖怪だ。

 これくらいなら......って、あれ? 傷が......治ってない?

 

「貴女、ただの銀の矢だと思ってたのかしら? まぁ、私もレナに魔法を教えてもらわなかったら分からなかったかもしれないし...仕方ないわね。あの矢には魔法が込められていたのよ。魔法と言っても、呪いの方が近いかもね。傷が治るのを遅くする呪い......まぁ、吸血鬼が相手だし、このくらいやっていても、おかしくないわね」

「の、呪いですか? 私にはさっぱり分からないですけど......この傷はいつ治るか分かりますか?」

「そうねぇ。多分、一日は治らないかもしれないわね。まぁ、この魔法を使った術師にもよるけど」

 

 一日......そ、それじゃぁ、お嬢様達の誕生日の時もずっと傷があるままなのか。

 まぁ、痛みは殆ど無いからいっか。

 

「まぁ、安心しなさい。レナなら治せると思うわ。今すぐ呼んで来るから待ってなさい」

「あ、お嬢様。痛みはないですし、このままでも大丈夫ですよ。後でレナお嬢様に治してもらえさえすれば......」

「駄目よ。今すぐ治しましょう。貴女、油断してそうなったんでしょう? 次はないわよ?」

 

 お嬢様がそう言って、妖力を垂れ流した。うん、やっぱり怖い......。

 

「ま、まぁ、はい。そうですけど......」

「なら、呼んで来るわね。あぁ、そうそう。ここから離れたら明日、丸一日、門の前で立っててもらうから」

「ふふふ、お嬢様。丸一日くらい、耐えれますよ?」

「あぁ、勿論、ご飯抜きでね」

「え!? そ、それは嫌です!」

「なら、大人しく待っとくことね」

 

 そう言ってお嬢様がレナお嬢様の元──今はフランお嬢様の部屋で寝ているらしい──に向かって行った。

 そして、レナお嬢様がやって来て、呪いを解いてもらい、門番の仕事へと戻った。

 それから、数日間、レナお嬢様に心配されたのはまた別の話──

 

 

 

 ──数時間後 紅魔館(美鈴の部屋)

 

「美鈴、用意が出来たから来なさい」

「ふぁ〜、あ、お嬢様。もうそんな時間ですか......早いですねー」

 

 門番の仕事が早く終わり、部屋で寝ていた時、お嬢様がやって来た。

 

「まぁ、寝てたら早く感じるものよ。さ、早く行くわよ。レナとフランが待っているわ」

「はい、行きましょうか」

 

 そう言って私達はレナお嬢様とフランお嬢様が待っている部屋に向かった。

 そして、お嬢様とレナお嬢様のお誕生日会が始まった。私は、お嬢様達のお誕生日以外にお嬢様達と一緒に食べることが全くない。だから、久しぶりに一緒に食べることになった。

 最初に会った時よりは、レナお嬢様やフランお嬢様とも仲良くなることが出来た。......昨日みたいに襲撃があった時は、お嬢様達を守る為にここを守ろう。

 私は心でそう誓い、お嬢様達のお誕生日会を楽しく過ごした────




次回は今回の二倍くらいの字数にしたい(願望)

投稿は日曜の26時頃です()

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