side Renata Scarlet
──紅魔館(とある部屋)
「ふぅ......この部屋が最後ですね」
お父様達が死に、館に残っていた人間の残党を全て消した後、お父様達を弔い、そして、お父様達の墓を建てた。......まぁ、殆どやったのはお姉様なんだけどね。
そして、今は『一回休み』が終わった妖精メイド達と一緒に館の後始末......と言うか掃除をしている。
「......お姉様ぁ、一気に掃除出来る魔法とかないの〜?」
「流石にそんな便利な魔法はないですよ。さぁ、ここが最後なんですから頑張りましょう」
予め場所を決め、妖精メイド達、私はフランと、お姉様は一人で掃除をしている。
ちなみに、私とフランが一緒の理由はフランの能力が暴走しても止めれるようにだ。
フランの能力はまだいつ暴走してもおかしくない。......いつか、フランの能力の暴走を抑えれるような魔法を作れたらいいんだけど......。
「はーい。......私達二人でもこんなに大変だったし、レミリアお姉様は一人で大丈夫かな?」
「んー......お姉様のことですから、きっと大丈夫ですよ。......早く終わらせて、お姉様が居るであろう場所に行きましょう」
多分、お姉様なら何とか頑張っているだろう。それに、お姉様がこの分け方をしたんだ、きっと大丈夫のはず......。
「うん、そうだね。......よし、今から本気出すよー!」
「さっきまで本気じゃなかったんですか?」
「あ、さっきから本気だったけど......今からもっと本気出すって意味よ!」
「......無理はしたら駄目ですからね」
まぁ、吸血鬼だし掃除程度なら大丈夫だとは思うけどね。
「無理をしても大丈夫よ。掃除くらいで倒れるわけないわ」
「......本当に倒れませんか?」
「倒れないわよ。それよりも、お姉様。早くしないとレミリアお姉様のところに行けないわよ。早くしましょ」
まぁ、確かにこれ以上話を続けていたら、お姉様の加勢にいけないかもしれないね。
「それもそうですね。それにしても、話逸らされた気がするんですけど......」
「気のせいよ。お姉様、そっちやっといて」
「......まぁ、いいです。分かりましたよ」
そう言って私達は掃除を再開した──
──数分後 紅魔館(とある部屋)
「......フラン、遅くないですか?」
「お姉様が早すぎるのよ! まだ始めてから数分しか経ってないじゃない!」
「こ、これが姉と妹の差ですね。私は姉として、家事などは一通りやったことがあるのです」
まぁ、本当は今世ではやったことないんだけどね。
前世でもちょっとしかやってないし......本当は綺麗になっているかあんまり自信ない。
でも、フランの前では姉として、見本を見せてあげたい。いやまぁ、何か間違ってる気もするけど......。
「お姉様、絶対適当にやってたでしょ!」
「て、適当にはやっていません! ほ、ほら、これを見てください。かなり綺麗でしょう?」
「お姉様、慌て過ぎ。......で、本当に綺麗なの、かしら......って、えぇ!? 本当に綺麗......。
お、お姉様、本当のことだったの!?」
「え、は、はい。本当のことでしたよ」
ふぅー、良かった。ちゃんと綺麗になってたみたいで......。
「んー、それにしても、なんか嘘っぽい気がするけど......」
「ほ、本当ですよ? さ、さぁ、終わったことですし、早くお姉様のところに行きましょう!」
「......まぁ、いいや。行くのはいいけど、そう言えば、レミリアお姉様は何処にいるか知ってるの?」
「え? 私は知りませんよ? フランが知ってるんじゃないのですか?」
誰が何処を掃除するとかは決めてあるけど......今、お姉様が掃除している部屋は知らない。
この館は結構広いし......一体、何処に居るんだろう?
「はぁー、お姉様......やっぱり、知らなかったのね。まぁ、私もお姉様にあの魔法かけてなかったから知らないけど......」
「んー......仕方ないですね。普通に探しましょうか」
「ま、それしかないよね。お姉様、レミリアお姉様も待ちくたびれてるかもしれないから急いで探そっか」
「えぇ、そうですね」
そう言って私達はお姉様を探しに行った──
──数十分後 紅魔館(図書館)
「後はこことフランの部屋ですね」
「うん。......でも、入れ違いとかになってないかな?」
「そう言えば、その可能性もありましたね......。まぁ、例え見つからなかったとしても、寝る時には部屋に戻っているでしょう。取り敢えず、こことフランの部屋を探してみましょう」
「うん。......お姉様、そう言えば、どうしてレミリアお姉様と一緒に寝れないの?」
図書館内を探している時にフランが聞いてきた。
「お姉様はこの館の当主としての......いえ、長女としての役目があるので」
この館の当主として、私達、姉妹の長女として私達を守るためにフランの部屋、要するに地下には居れないらしい。
なんでも、一緒に居ると必要以上に私達を庇おうとするからとか。それだと庇って怪我をした時に私達に心配をかけるから出来るだけ、この館に侵入者が入らないようにしたいらしい。そのために入口近くの部屋で寝ることにするらしい。
「ふーん、レミリアお姉様も大変なのね。......お姉様、もうレミリアお姉様と一緒に寝ることや遊ぶことって出来ないの?」
「大丈夫ですよ。たまに私がお姉様の代わりをします。......まぁ、お姉様はプライドが高いですし、私達、妹に迷惑かけたくないみたいですから、無理かもしれませんが......」
「ま、レミリアお姉様が決めたことなら、無理なら無理で仕方ないよ。......それにしても居ないね」
「そうですね。んー......ここは広いですし、入った時は見えてないだけかと思っていましたが......どうやら本当にここには居ないみたいですね」
フランと話をしているうちに、私は魔法でこの図書館内に生命体の反応が無いか調べてみた。その結果、ここには居ないことが分かった。ちなみに、この魔法の範囲は限られているので、図書館内しか探せない。
本当に、一体何処に居るんだろ?
「そっかー......最後は私の部屋だね」
「はい、そうですね。まぁ、フランの部屋はお姉様の担当場所ではないですから可能性は低いですけど......」
「あ、確かにそうだよね......」
フランの部屋は私とフランが最初に掃除した場所だ。まぁ、そこまで汚くないからあんまりやってはないけど。
「そう言えばさ、お姉様にとってレミリアお姉様ってどんな人なの?」
フランの部屋に向かっている最中、フランがそんなことを聞いてきた。
私にとってお姉様は......んー、急に言われてもなぁ......優しくて、頼りがいがあって......。
「え、えーと......」
「......あ、やっぱりいいよ。それよりもお姉様、もう着いちゃうよ?」
「え、あ、そうですね」
フランから話を振ってきたのに......一体どうしたんだろう? ま、別にいっか。
それにしても、中から生命体の反応が無い。まぁ、一応、開けてはみるけど。
「お姉様、居ますか? ......やっぱり、居ないですね」
扉を開き、中を確認してみる。やはり、お姉様は中には居なかった。
「んー、レミリアお姉様、何処に行ったんだろ?」
「やっぱり、さっきフランが言ったみたいに、すれ違っているのかもしれません。
今日はもう寝ましょう。明日、お姉様も起きた時に来るでしょうし。」
「...それもそうだね。お姉様、寝る前に一つ魔法を教えてくれない?」
「いいですよ。どんな魔法ですか?」
「うーんとね......回復魔法を教えて欲しいの。......私の能力で『破壊』しても治ってしまうような魔法が......」
フランが少し悲しいそうな顔でそう言った。
回復魔法......一応、それはあるけど、フランの期待に添えるようなものはない......。
まぁ、無機物限定ならあるんだけど......。
「......無機物限定なら完全に直す魔法がありますよ。ですが、フランの能力で『破壊』された生物を治す魔法は......流石にありません。フランの腕力でならある程度は大丈夫かもしれませんけど......」
「あるのね! それでもいいよ! お姉様、その魔法教えて!」
フランの目がキラキラしている。......嬉しそうで良かった。
「えぇ、勿論、いいですよ。その魔法は『パッチワーク』と言ってですね。人間サイズの物なら『破壊』されても十分で元に直せる魔法で──」
「お姉様! それだけ分かれば充分よ! 早く早く!」
「え、は、はい。......まずは──」
そう言って私はフランに魔法を教え始めた──
──数十分後 紅魔館(フランの部屋)
フランに魔法を教えている最中、フランがうとうとし始めたので今日はもう止めて寝ることにした。
私はお姉様のことが気になるから、フランが寝た後にお姉様の部屋に行こうと思いながら、フランと同じベッドに入った。
そして、しばらくして、フランが眠り、お姉様が寝ているであろう部屋に行こうとした時に、部屋をノックする音が聞こえた。
「......ようやく寝たみたいね。レナ、少し話があるから一緒に来てくれない?」
返事を待たずにお姉様が扉を開けてそう言った。
「お姉様? ......いいですよ。それにしても、今日は何処に居たんですか? 紅魔館全体を探したのに居なかったですけど......」
「すれ違ってただけよ。......まぁ、最後の方は運命を操って、貴女とだけ話が出来るようにしてたからね。
会わなかったのはそのせいよ」
「......話の続きは部屋を出てからにしましょうか」
「えぇ、そうね。......フラン、おやすみなさいね」
寝ているフランにそう言って、私とお姉様は部屋を出て、歩き始めた。歩き始めた理由はお姉様が先に歩いたからだ。多分、お姉様はフランに絶対に聞こえないようにしたいのだろう。
「お姉様、話ってなんですか?」
「貴女には知ってて欲しいと思う話があってね。......レナ、貴女は『お父様達が人間に殺された』って聞いて本当にそうだと思ったのかしら?」
「......お母様は能力のせいで弱っていたと言っても、吸血鬼の中でも一二を争うと言われていたお父様が......簡単に死ぬわけないとは思っていました。でも、実際は違っていました。お父様は、人間に──」
「違うわ。......お父様達は人間に殺されたわけではないの。
レナ、私がお父様達と別れる時になんて言ったか憶えてる?」
お姉様が、お父様達と別れた時に何か言ったか? そう言えば、何か言ってたけど......なんだったっけ?
「どうやら、憶えてないみたいね。......私は『あのエルジェーベトに気を付けて』、そう言ったの。......これを言った意味が意味が分かるかしら?」
「......もしかして、お父様達は人間ではなく、あのエルジェーベト家の人達に殺されたと言うわけですか?
でも、一体どうして......。いくら残虐で非道な連中だからと言っても......同種族を殺すものですか?」
「あいつらが何を考えているか私にも分からないわ。ただ......自分達を脅かすような勢力は先に潰したかった、とかかもね.....」
......まぁ、私にもあいつらが何を考えてるか分からないけどね。一回しか会ってないし。
「......お姉様、あの連中が殺したってどうして分かったんですか?」
「私の能力で見たのよ。止めることが出来ない未来を、ね......」
「......そう、ですか......私を外に出したがらなかったのはそいつらに殺される未来でも見えたからですか?」
「それだと半分正解ね。『そいつら』ではないわよ。『そいつ』よ。あのバートリ・エルジェーベトだけがお父様達を殺したのよ。......そして、貴女を殺していたかもしれないやつよ......」
お姉様が『貴女を殺していた』の時に拳を強く握っていた。そして、妖力を垂れ流している。
普通は自分で制御して相手を威圧する時とかにするけど.....多分、怒りでそうなっているのかな......。
「お姉様、怒りを鎮めて下さい。私は無事でしたから......」
「あ、そ、そうね。......少し頭に血がのぼっていたみたいね。ごめんなさい。
で、話の続きなんだけど......もし次に会うことがあっても、殺そうなんて思わないで、何も知らない振りをして。......無意味に敵対していても意味無いから。それに、今の私達には勝てないわ。だから......お願い。絶対に守って」
お姉様が真剣な顔でそう言った。
「......いいですよ。お姉様の命令なら...何でも聞きます」
「そう、何でも聞くのね。なら、その何でも聞くのを止めなさい。......レナ、自分の意思で決めて」
「......はい、分かりました。お姉様に言われたことなら、仕方ないです。
でも、お姉様がさっき言ったことは守ります。......少なくとも、お姉様達を何からでも守れるように強くなってからにします」
「あら? 私を守れるくらいってことは、私よりも強くなるってことかしら? レナ、姉よりも強くなれると思っているのかしら?」
お姉様が微笑み、またもや妖力を垂れ流してそう言った。
「お姉様よりも強くなってみせますよ。だから、私に負けないくらいお姉様も強くなって下さい」
「勿論よ。......さ、話はここまでね。そろそろ、フランの元に帰ってあげて。あの娘を長い間一人にさせるのは、可哀想だしね」
「はい、お姉様」
私はそう言ってお姉様と別れ、フランの部屋へと戻ってきた。
「良かった、まだ寝てますね。......フラン、貴女も私が守ってみせます。たった一人の......私の妹ですから。
......では、おやすみです」
そう言って私はフランと一緒に寝た。
これから、私は何人もの人と出会い、幾つもの危険に遭遇する。
しかし、今の私はまだ、そんなことは知らない────
次回からは二章の始まりです。因みに三章で幻想入りする予定なので二章では...まぁ、お楽しみにして下さい。
次回は金曜日に投稿予定