東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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間違えて最新話に投稿していたので、再投稿です。


日常編その2、「美鈴の平和な一日」

 side Hoan Meirin

 

 ──紅魔館(門前)

 

 十月のとある日の朝。まだ秋だというのに、木枯らしが吹き付ける寒い日。

 

「ふぅ〜......今日も寒いですね〜」

 

 今日も門の前で仕事......と言うよりも、ただ、突っ立ていた。

 まぁ、これはいつものことで、そこまで苦痛じゃないからいいんですけどね。

 お嬢様からは、門から離れないこと、怪しいものは中に入れないこと、しか言われてないからね。

 鍛錬出来るし、バレなかったら寝ることも......あ、それは咲夜さんに怒られるからダメかな。

 いつの間にか寝てたらいつの間にか怒られてるからね。......どうしてバレるんだろう?

 

「......はぁ〜、それにしても暇だなぁ」

「あら、美鈴。珍しく起きてるわね」

「あ、咲夜さん。って、まだ来てから間もないのに、そんなすぐ寝ないですよ!」

「寝てたから言ってるのよ」

「え、マジですか?」

「貴女、覚えてないの? 一昨日寝てたじゃない。それも、行ってから十秒も経たないうちに、ね」

 

 え、んー......全く思い出せないけどなぁ。咲夜さん、勘違いしてるんじゃないかな? ......まぁ、私が覚えてないだけかもしれないけど。

 

「......あぁ、覚えてないのね」

「え!? 咲夜さん、どうして心を読めるんです!?」

「え、いや、貴女、うーん、って唸ってたから」

「あぁ、なるほどー」

「貴女、本当に分かってなかったのね......まぁ、それよりも、ちゃんと仕事しなさいよ。定期的に見に来るけど、その時寝てたら......分かるわよね?」

「あははー、寝る訳ないじゃないですかー」

「......そう、それならいいけど......寝てたら、明日のご飯抜きだから」

「えぇ!? さ、咲夜さん! そ、それだけは! ......あぁ、行ってしまいました......」

 

 まさか、ご飯抜きと言われるなんて......これから私は、何を目標に生きてきたらいいんだ......。

 まぁ、寝ないようにすればいいよね。......毎日寝てる気がするけど大丈夫なのかな?

 

「はぁー、鍛錬でもしていますか......」

 

 

 そんなことを呟き、まずは腕立て伏せから始めた──

 

 

 

 ──数時間後 昼頃 紅魔館(門前)

 

「美鈴ー......美鈴ー!」

「はっ! え、な、何ですか!?」

 

 目が覚めると、目の前には日傘をさしたフラン様が居た。......あぁ、私、寝ちゃってたのかな? 咲夜さんにバレてなければいいけど......。

 

「美鈴、また寝てたよ? ま、それよりも、咲夜から、昼ご飯の時間だから美鈴を呼んで来て、って頼まれたのよ」

「あ、そうですか......。フラン様、咲夜さんに寝てるのがバレてると思いますか?」

「んー、まぁ、バレてると思うよ? でもまぁ、怒られるとは思わないかな〜」

「え、バレてるんだ......い、いや、それよりも、どうして怒られないと思うんです? バレてるなら、絶対に......」

「ふふ、咲夜が私に呼んできて、って頼んだわけだしね。いつも咲夜が美鈴を呼んできてるし、そこまで忙しそうにしてなかったのに、呼んできて、なんて言う理由は一つしか無いでしょ?」

 

 んー......もしかして......。

 

「......咲夜さんは、私を安心させてから怒るという、ドSな性格だったからですか!?」

「うん、もう怒られていいよ」

「えぇー!? フラン様だけは、私の味方だと思っていたのにですか!?」

「私が味方するのはお姉様達だけよ。......ま、別に貴女や咲夜とか、紅魔館に住んでる人の味方はしてもいいけどさ......。

 それよりも、本当に分からないの?」

 

 ま、まぁ、 確かにさっきのは半分冗談だったけどね。......半分は本気で思ってたなんて、口が裂けても言えない......。

 

「私を怒らないようにする為、とかですかね?」

「ま、それだと思うよ。聞いたところによると、寝てるのバレたらご飯抜きなんでしょ?」

「うっ......はい、そうですよ。フラン様も酷いと思いませんか!? 寝ているだけなのに、ご飯抜きなんて!」

「ううん、全然思わないよ。だって、美鈴っていつも寝てるでしょ? 自業自得よ」

 

 うぅ、言い返せない......。

 お嬢様に言われるならともかく、フラン様にまでこう言われる日が来るとは......やっぱり、成長してるんですね......。そう思うと、少し嬉しい気持ちもあるなぁー。

 

「えぇー! た、確かにいつも寝てますけど......」

「ほら、認めた」

「え? あ、あははー......」

「ま、別にこの話はこれ以上広げなくてもいいよね。......日傘持つのもしんどくなってきたし、そろそろ行こっか。お姉様達も待ってるだろうしね」

「あ、はい。そうですね」

 

 こうして、私は昼ご飯を食べる為に、紅魔館へと戻ることにした──

 

 

 

 ──紅魔館(食堂)

 

 食堂に入ると、既にお嬢様達が席についていた。ここに居ないのは、パチュリー様と小悪魔、ミア様、妖精メイド達だ。まぁ、パチュリー様と小悪魔はいつも図書館で食べてるし、ミア様や妖精メイド達は各々別の場所、時間に食べてるから、いつも通りなんだけどね。

 

「あら、貴方達、遅かったわね。何かあったのかしら?」

「あ、お嬢様。......ま、まぁ、特に何もありませんでしたよ」

「うん、そうだね。ただ、ちょっとだけ美鈴とお話してただけよ」

「......そう、ならいいわ。さ、早く食べなさい」

 

 ふぅー、お嬢様にこれ以上、追求されなくて良かった。追求されると、咲夜さんにご飯抜きにされるからね。本当に良かったわ。

 

「はーい。あ、ルナ、お姉様の横の席、渡してくれない?」

「ん、無理。私の横ならいいよ?」

「ルナのケチ。ま、今日はそれでもいいよ。今の私は機嫌いいからねー」

「......何かあったの?」

「ヒミツー」

 

 いつもレナ様かお嬢様の横を争って言い争いしてるのに......珍しいこともあるのね。

 

「美鈴、何ボサッと突っ立てるのよ。早く食べなさい。貴女はこれから門番の仕事があるのよ? 食べないと、とっさの時に動けなくなるわよ?」

「あ、はい。......って、咲夜さんが寝てたらご飯抜きとか言ってたのに......」

「美鈴、何か言った?」

「い、いえ、何でもありません......」

 

 咲夜さん......顔が笑ってるのに怖い......。

 

「咲夜、何かあったの? 顔が怖いけど......」

「いえ、何もありませんよ。お嬢様はお気になさらずに」

「そ、そう。貴女がそう言うならそうするわね」

「お姉様、食べ終わったので、私は戻りますね」

 

 レナ様が席を立って、そう言った。

 いつものことだけど、レナ様は食べるの早すぎません? お嬢様は少食だから早くてもおかしくはないけど、レナ様はお嬢様よりも量が多いのに......まぁ、別にそこまで気にすることはないですね。

 

「えぇ、分かったわ。それじゃぁ、また後でね」

「あ、オネー様! 待って!」

「あ、まだ食べ終わってないのに......。ま、後で行けばいっか。お姉様、ルナ。先に遊んでてねー」

「うん、フランも早く来てね」

 

 そう言って、レナ様とルナ様が出ていった。......私も早く食べて、仕事に戻らないとね。

 それにしても......平和だなぁ。やっぱり、こっちに来たのはお嬢様達にとっても、私にとっても、良かったことなんだ、と改めて思う。

 こんな平和な日がずっと続くように、私がしっかりと門を守っていないとね。

 そんなことを考えながら、私は食事をとった──

 

 

 

 ──数時間後 紅魔館(門前)

 

「おう、美鈴! 今日もそこを通らせてもらうぜ!」

 

 昼ご飯を食べてから数時間経った夕暮れ時。しばらく鍛錬に励んでいる時に、嫌な人の声が聞こえた。

 

「げっ、魔理沙......」

「おいおい、そんな顔をしなくてもいいだろ?」

「貴女を通すと、咲夜さんに怒られるのでね。......帰っていただくことは......」

「勿論、無理だぜ。さ、大人しく退いて貰おうか! 大人しくしているなら、怪我だけですむかもしれないぜ?」

「結局怪我はするんですか!?」

「ん? まぁな。マスパ撃つつもりだからな。怪我しない方がおかしいぜ」

「それ大人しくして得ないですよね!? まぁ、通すつもりは元からありませんけどね」

 

 通すと、咲夜さんに怒られるし、ご飯抜きにされることもあるからね。絶対に通すわけにはいかない。......止めれたことないけど。

 

「それなら仕方ないな。行くぜ! マスター......スパ、いてっ!? な、なんだ!?」

「ま、魔理沙のミニ八卦炉が......ナイフで!? ま、まさかあのナイフは──」

「昼寝してないか見に来たら、毎日のように見るこそ泥が一匹......いつも逃がしますが、今回はそうはいきませんよ?」

 

 そう言って、咲夜さんが急に私と魔理沙の間に現れた。

 やっぱり、こうやって見ると、頼りになるなぁ。......ちょっと怖い時あるけど。

 

「げっ、咲夜かよ。......二対一は分が悪いな。仕方ない。今日は止めとくぜ! それと、こそ泥じゃ──」

「あ、魔理沙。泥棒はダメだよ」

「え、あ、フラ、ン......?」

 

 いつの間にか、妹様達が魔理沙の背後に現れ、フラン様が魔理沙に何らかの魔法を使い、気絶させた。

 魔理沙は地上に落ちそうになったが、ギリギリのところでレナ様に捕まり、助かることが出来た。

 

「妹様方、ご協力、ありがとうございます」

「ううん、泥棒は悪いことだしね。後で魔理沙には、ちゃんと言わないとね」

「じゃ、もう遊びに行ってもいい?」

「はい、勿論いいですよ。レナ様、フラン様とルナ様をお願いしますね」

「はい、分かりました。お姉様に心配をかけないように頑張りますね。まぁ、フランもルナもいい娘だから大丈夫でしょうけどね。

 あ、魔理沙は預けますね。私の体格だと、ちょっと持ちにくいですし......」

「はい、仰せのままに」

 

 そう言って、魔理沙は咲夜さんに引き渡され、妹様達は外へと遊びに出られた。......あれ、緑の髪の人が横に......いや、気のせいかな。

 

「咲夜さん、ありがとうございます。私だけでは、おそらく突破されてましたし......」

「いいわよ、それくらい。今日はこそ泥は捕まえたから、もう休んでいいわよ。......それと、今日は起きてたみたいだし、明日はちゃんとご飯あるわよ。まぁ、明日も頑張りなさい。門番としては、貴女ほど頼れる人はいないと思ってるしね」

「咲夜さん......はい、ありがとうございます!」

「あ、ついでに、運ぶの手伝ってくれない? 起きるまで、客室に寝かしておこうと思うから」

「はい! 勿論手伝いますよ!」

 

 こうして、門番としての仕事が終わり、今日も平和な一日が過ぎていった────


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