東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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ただ、こんな幸せな日々が続いて欲しい────


5、「狩りと幸せな日」

 side Renata Scarlet

 

「おねーさま、おとーさまいないね」

「えぇ、何処に行ったのかしら…...仕方ないわ。執事長の場所に行きましょう。多分、今の時間は部屋に居るでしょうから」

「うん」

 

 空を飛ぶ練習......もとい回避練習が終わった後に私達は紅魔館の部屋を全て探しまわった。しかし、どれだけ探しても見つからなかったので今は執事長の部屋に向かおうとしていた。

 

「......おねーさま、フランの所にはいないのかな?」

「......さぁね。行けないから分からないわ」

 

 全ての部屋を探したと言っても行ってはいけない言われて、探せていない部屋もある。その部屋の一つがフランの部屋(地下)だ。

 フランはいつ能力が暴走してしまうか分からない。だから、お父様が一緒じゃなければ行ってはいけないと言われている。だから、地下にお父様がいた場合はどうすることも出来ない。例え、執事長とかと一緒に行っても怒られてしまうだろう。......逆に言えば怒られてもいいなら行けないこともない。

 

「あ、この部屋ね。レナ、着いたわよ」

「うん......おねーさまがあけてくれる?」

「え? ......まぁ、別にいいけど。どうしたの?」

「ううん、とくにりゆうはないよ」

 

 執事長の部屋に着いて、私はお姉様に開けてもらおうとした。......いや、開けてもらうのに本当に理由は無いよ。あるとしたら、お姉様の少しでも困った顔が見たかったってことくらいかな。

 

「執事長、居るかしら?」

 

 お姉様がコンコンとノックして聞いた。

 

「レミリアお嬢様? はい、居ますよ。......おや? レナータお嬢様まで.....。どうかされましたか?」

 

 そしたら、執事長が扉を開けて、聞いてきた。

 

「お父様が何処に居るか知らないかしら?」

「御主人様なら...『狩り』をするために何人かの従者達と出掛けたかと」

「『狩り』? あら、今年は随分と早いのね」

 

『狩り』......本来の意味とは少し違うと思うけど...短くて言いやすいから全員こう言っている。

 吸血鬼の『狩り』は勿論、人間を食料として『狩る』ことだ。『狩る』と言っても殺すことはせず、生かして紅魔館に連れて帰る。確か、普通に連れて帰ると暴れるから先に吸血して大人しくさせるとか......。

 ちなみに吸血には幾つかの種類がある。まず一つ目、食事のためにする吸血。これは吸血鬼だとしたら誰でも知っている方法で、やり方も簡単。噛んだ時に出た血を飲む......ただそれだけだ。

 二つ目は、吸血された人をした本人に対して魅了させる吸血。これのやり方はよく知らない。大人になったら教えてくれるらしい。......吸血鬼の大人って何歳なんだろう? 500歳では無いことは知っている。──現在進行形で薄れつつある前世の記憶の中で──お姉様が500歳になっていても、まだ10歳になってないくらいの姿だったことを知っているからだ。1000歳くらいでも20歳くらいの見た目なのかな? いや、見た目で決めては駄目か? まぁ、それは置いといて、吸血の効果は魅了させることによって、どんな指示にでも従わせるようにするらしい。使い道は『狩り』の時に大人しくさせることくらいらしい。

 三つ目は吸血鬼の眷属にする方法。そのままの意味で、吸血鬼の眷属......吸血鬼の劣化版みたいな感じにするらしい。吸血鬼になった時に命令に従わせるために、二つ目の吸血と一緒に使うことが多いとか。これも大人になったら教えてくれるらしい。......本当に吸血鬼の大人って何歳なんだろう?

 

「御主人様は......奥様を心配して、いつもよりも早く『狩り』を行うことになさったとか」

「......そう、分かったわ。聞きたいことはそれだけよ。ありがとう。さ、レナ、次は部屋で魔導書に載っている魔法を練習するのでしょ? 行きましょう」

「......お嬢様方、お待ちください。一つだけ御主人様に伝言を預かっています」

「ん? 何かしら?」

 

 そう言って執事長が私達を引き止めた。

 

「今日からしばらく『狩り』で紅魔館を空けることになるから奥様とフランドールお嬢様を頼んだ......と」

「そう......しばらくって具体的な日数は?」

「一週間程でございます。ここの近くの町は殆ど人間が住んでいないため、遠くの町に行くんだとか......」

「え? 何で人間が少ない場所は襲わないの?食料が沢山いるとか?」

 

 お姉様、さらっと人間を食料に変えるのはおやめください。いやまぁ、間違ってはないけど......。

 

「それもあるらしいですが、遠くの町の人間、同族の勢力も見てくるついでだとか」

「あぁ、なるほどね」

 

 そう言えば、前にお父様が言っていた。近くの人間、同族......もとい吸血鬼の勢力はそこまで脅威にはならないらしい。しかし、最近は遠めの場所で吸血鬼ハンターとか、夜の帝王とか言われている吸血鬼の勢力が拡大していて、私達にとって脅威となるかもしれないらしい。

 

「では、私は夕食の準備をしてきますので。また後でお会いしましょう」

「えぇ、分かったわ」

 

 そうお姉様が言って私達は執事長と別れた──

 

 

 

 ──それから少し経って紅魔館(レナータの部屋)

 

「ふぁ〜......もうねないと......」

 

 執事長と別れてから、自分の部屋でお姉様に見守られながら魔法の練習をした。流石に、一日じゃ魔法を使うことが出来なかったから今日は諦めて明日にするとお姉様に言ったら.....

 

「そう。じゃあ、明日に続きをしましょう。今日はもう寝なさい」

 

 と言って、お姉様が自分の部屋に戻っていった。そして......

 

「......おねーさま、どうしてわたしのへやにきたの?」

「あら? 姉が妹の部屋に来るのに理由なんて必要かしら?」

「うーん......ないけ...ど...」

 

 お姉様が寝巻きを着て、私の部屋に戻ってきたのである。

 

「じゃあ、問題ないわね。さ、明日も早いわ。早く寝ましょう」

「うん。......おねーさま、いつでていくの?」

「明日よ」

「......きょうはいっしょにねたくない。」

「え!? れ、レナ......私のことが......姉のことが嫌いになったの?」

 

 ......そんな震えている声で言われても答えは変わらない。......変える気が全くない。

 

「......おねーさま、きのう、なにしたかおぼえてるの?」

「昨日? さぁ、憶えてないわね。そんな過去のことなんて忘れて一緒に寝ましょう?」

 

 白々しい......。しかも、さっきの震え声は何処にいったの! って、いつの間に私の隣で寝ようとしてるの!?

 

「......おねーさま! わすれたとはいわせないよ! あれはほんとうにいやだったんだから!」

 

『あれ』とは勿論、くすぐられたことだ。......どうやら、前世と違って私は脇がとても弱いらしい。脇をくすぐられると自然に涙が出て、力も入らなくなってしまう。

 

「忘れたわ。さ、早く寝ないと明日にひびくわよ」

「うー......そうなったら、おねーさま! おもいだすまでゆるさないんだから!」

 

 そう言って私はお姉様の脇をくすぐろうとした。が、

 

「あら、私に何かしようとしたのかしら?」

「あ、あれ!?」

 

 いつの間にかお姉様が背後に回っていた。

 

「レナ、勿論、私をくすぐろうとしたのだから......失敗した時の覚悟はあるわよね?」

「ちょっ、ちょっとま、ひゃはははは!」

「あらあら、ここがくすぐったいのかしら? それともこっち?」

 

 そう言ってお姉様は私の脇以外にもお腹、首をくすぐっていく。

 

「お、おねーひゃま!」

「あぁ、ごめんなさいね。......今日はもうしないわ。代わりに一緒に寝てもいいかしら?」

「きょうもあしたもこれからはずっとだめ!」

「分かった分かった。で、一緒に寝てもいいかしら?」

「こちょこちょするおねーさまはいや!」

 

 お姉様は本当に反省してない。......先にやり返そうとした私も悪いけど。そう言えばやり返しても無駄ってお姉様が言ってたっけ......。

 

「一緒に寝てくれるならしないわよ」

「......はぁ、わかった。......ほんとうにしないよね?」

「勿論よ。......ちゃんと私の言う事を聞いてくれるならだけどね」

「うー、なんかいやなよかんがす...る...」

 

 本当に大丈夫なのかな? なんかこれからはずっと、お姉様の言いなりになりそうな気がする......。

 

「大丈夫よ。......さ、早く寝ましょう。もう眠たいわ」

「...おねーさまのせいで──」

「レナ、何か言ったかしら?」

「うー、なにもないです......」

 

 やっぱり、これからはずっと言いなりになりそうだ......。

 

「よろしい。......レナ、貴方は私が守るから安心してね」

「ん? おねーさま、なにかいった?」

「......いえ、何も言っていないわよ」

 

 一緒に横になった時にお姉様が何か小さな声で言った気がしたけど......気のせいなのかな?

 

「......おやすみ、レナ」

「おやすみ、おねーさま」

 

 そう言って私は目を閉じた────

 

 

 

 

 

 side Remilia Scarlet

 

 ──紅魔館(レナータの部屋)

 

「うー、そうなったら......おねーさま! おもいだすまでゆるさないんだから!」

 

 そう言ってレナが私の脇をくすぐろうとした。......勿論、何をするかは私の能力で既に見ているから私にそれをしても意味は無いとレナも分かっているはずだけど......感情的になっているせいか忘れたみたいね。

 

「あら、私に何かしようとしたのかしら?」

「あ、あれ!?」

 

 そう言って私はレナの背後に回った。

 

「レナ、勿論......私をくすぐろうとしたのだから......失敗した時の覚悟はあるわよね?」

「ちょっ、ちょっとま、ひゃはははは!」

「あらあら、ここがくすぐったいのかしら? それともこっち?」

 

 そう言って、レナの脇を──ついでにお腹とかも──くすぐる。

 

「お、おねーひゃま!」

「あぁ、ごめんなさいね。......今日はもうしないわ。代わりに一緒に寝てもいいかしら?」

 

 一緒に寝たいというのに特に理由はない。ただ...妹の可愛い寝顔を見たいだけだ。

 

「きょうもあしたもこれからはずっとだめ!」

「分かった分かった。で、一緒に寝てもいいかしら?」

「こちょこちょするおねーさまはいや!」

 

 うっ......それを言われると地味に傷つくわね。

 

「一緒に寝てくれるならしないわよ」

「......はぁ、わかった。......ほんとうにしないよね?」

「勿論よ。......ちゃんと私の言う事を聞いてくれるなら。」

 

 逆に言えば言う事を聞かないとこちょこちょはする。......レナが私を嫌いにならない程度に。こちょこちょをするのはされている時のレナが可愛いからだけど......私を嫌いになるくらいならやめようとは思う。でも、可愛いからやっぱり、やりたい気持ちもある......。

 

「うー、なんかいやなよかんがする......」

「大丈夫よ。......さ、早く寝ましょう。もう眠たいわ」

「......おねーさまのせいで──」

「レナ、何か言ったかしら?」

「うー、なにもないです......」

「よろしい」

 

 すぐにその言葉に反応するとレナは誤魔化した。......そんなレナも可愛いわ。......もしも、レナが死んだら私はどうなるんだろう? 後を追って自殺とか?でも、私にはフランという妹もいる。......そうだ。それならレナを死なさなければいい。何があってもレナを、フランも......妹達を守ればいい。

 

「......レナ、貴方は私が守るから安心してね」

「ん? おねーさま、なにかいった?」

「......いえ、何も言っていないわ」

 

 声が出てしまったみたいだ。レナに聞かれたと思うと少し恥ずかしいけど......どうやら気付いてはいないみたい。

 

「......おやすみ、レナ」

「おやすみ、おねーさま」

 

 そう言って私は目を閉じる。

 ......しかし、お父様がいないこの紅魔館を守ることが出来るだろうか。そんな不安のせいでなかなか寝付けない。......執事長も結構強い方だし、大丈夫だとは思うけど......。もしも......もしものことがあったら私は......。

 ......そんな不安はレナの寝顔を見て消えた。何があってもこの娘は必ず守る。......例え、私が死んでも。家族として、たった一人の姉として......この娘を守ればいいんだ。

 そう思いながら寝ているレナの頬に触れる。

 暖かくて柔らかい......。触れていると安心する。大丈夫。私はやれば何でも出来る。私はレミリア・スカーレット......スカーレット家の長女だ。それなのに妹を守れないわけがない。

 そう思いながらもう一度目を閉じた。......明日もいつも通りに暮らせる。私には能力があるから大体のことは分かる。先のことが見えるとレナもフランも絶対に死ぬことはない。

 ......そう自分に言い聞かせてようやく私は眠った──

 

 

 

 

 side Renata Scarlet

 

 ──紅魔館(レナータの部屋)

 

 お父様が『狩り』に出掛けてから一週間くらい経った。。そして、ようやく今日の日の出頃にお父様が帰ってくるらしい。

 一週間の間、特に事件らしい事件は無かった。......この一週間の間、お姉様と毎日寝ている。......勝手に私の部屋に入ってきて、こちょこちょすると脅されて、一緒に寝ている。まぁ、お姉様の寝顔が可愛いからいいんだけどね。どっちかっていうと一緒に寝れて幸せ。

 ......でも、私よりも早く起きた時に毎回こちょこちょするのはやめてほしい。しかも、お姉様はいつも私が笑い過ぎて死にかけるまでやるから本当に嫌だ。......一回だけ、お姉様よりも早く起きてお姉様にいつものお返しとして、こちょこちょしたことがある。が、しかし.....

 

「おねーさま、きょうこそは......」

 

 そう言ってお姉様の上に馬乗りになってこちょこちょしたけど......

 

「ひゃっ!? れ、レナぁ! ひゃ、ひゃめて! な、何でもっ! 何でもするから!」

「や、やった! おねーさまにかった! ......おねーさま、ほんとうになんでもする?」

「も、勿論......するわけないでしょ!」

「えっ? ひゃ、ひゃっ!? ひゃはははは! お、おねーひゃま! ひゃ、ひゃめて! ゆ、ゆるして!」

 

 している最中に逆にやり返されて、先にこっちがこちょこちょの快感に負けてしまい、こちょこちょをするのをやめてしまう。更に、いつの間にか逆に馬乗りをされる状態になってしまい、いつもの状態になってしまうのだ。

 

「レナ、先に手を出したのは貴方なのよ? ......勿論、やり返される覚悟もあったのよね?」

「ひゃはははは! ご、ごめんなひゃはははは!」

「あら? 笑いながら謝るなんて......ちゃんと謝らないと駄目でしょう? ちゃんと謝るまで許さないわ」

「ごめんなひゃぁ! ご、ごめんなさい! おねーさま! もうしません!」

「ちゃんと謝れたから今回は許してあげるわ。でも、もしも、次したら......分かってるわね?」

「はぁ、はぁ、はぁ......わ、わかってます。もうしません......」

 

 これを機に、もうお姉様に歯向かうのはやめたのであった...…。

 

 ちなみに、一週間の間、魔法の練習も続けて、ようやく一つだけ魔法が完成した。

 それは『ディメンジョン・ゲート』という名前らしい。これは直径一kmの目に見える範囲にワープが出来る抜け道を作る魔法だ。その抜け道は壁か地面に作らないといけないみたいだから外ではあまり使えなさそう。だが、好きな時に作れ、そして消せるから便利ではある。

 でも......今の私では2、3回使うと魔力がからになってしまうくらい燃費が悪い。年をとり、成長するにつれて魔力も同じように成長するみたいだから将来的には大丈夫だと思うけど......。

 他にも、この魔法を研究して、燃費を良くする方法もあるみたいだけど......今の私には無理っぽいからこれもいつか練習しないと......。

 

 そして、今日もお姉様と一緒に寝て、起きて、今は魔法の練習をしている。その魔法は最近魔導書を読んでいる時に見つけたやつだ。人や動物に化けることが出来る魔法らしい。

 その魔法を練習をしている時に、執事長がやって来た。

 

「レミリアお嬢様、レナータお嬢様。御主人様がお帰りになられました」

「おとーさまが? もう?」

「......ようやく帰ってきたのね」

 

 私は思ったよりも早くこっちに着いたから少しびっくりしている。だが、お姉様は能力を使っていたのか驚いていない。

 

「後で......フランお嬢様の部屋で御主人様が帰ってきたお祝いにパーティーをするとのことです」

「フランのへやでパーティー? やったー! フランにひさしぶりにあえる!」

「良かったわね。レナ。......今日はもうここまでにしましょう。続きはまた明日」

「おねーさま、ありがとう! おねーさま、だいすき!」

「ふふ、どういたしまして」

 

 そう言って、私達は練習を終え、フランの部屋でパーティーをした。......久しぶりに会ったフラン、お母様、お父様はいつもと全然変わりなく、皆で楽しい時間を過ごすことが出来た。

 

 ......その後はいつも通り、私の部屋でお姉様と一緒に寝ることになった。

 こんな幸せな日がずっと続けばいいのに。そう願いながら......私は次の日をむかえた────




レナはその願いだけが叶って欲しかった。他の願いよりも、ただ、幸せな日々を暮らすことだけを────

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