「俺が死んだ日」
──今日は私が死んだ日。それと同時に、生まれた日でもある──
──日本 都内
俺は都内に住む普通の高校生。なんの特徴もなく、普通に生きている。そして、俺はこの世界は退屈だ...と思うことが多い。しかし、満足はしている。何故なら友達がいて、恋人が出来て、けど、別れてしまう。たまに悪いこともあるけどいいこともある。そんな平和な日常だからだ。そして、どうせ今日もいつも通りに時間が過ぎて明日を迎える。
そんなことを思っていた。いつもこうだからどうせ今日もこうだ、とか考えてた。テレビとかで何か事故や事件が起きたのを見た時も「あぁ、可哀想に。でも、俺は関係ない、どうせ俺にはそんなことが起きるわけがない。」とか他人事のように考えてた。あの事故が起きるまでは......。
......俺は後悔した。でも、もう遅い。あの子のことで考え事をしなければ......、あいつの声にもっと早く気がつけば......。そんなことを考えながら俺は最後に目を閉じた。目を閉じた時に聞こえたのは誰かの泣き叫ぶ声と悲鳴だった。
そして......次に目を開いた時に聞こえたのは─────
ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ……。
いつも通りの朝、秋だからか少し冷える日。俺は何かの夢を見た。そして、いつも通りに耳障りな音が聞こえる。かなりうるさい。やっぱりもっと音が小さいのにしたらよかった。でもこのくらいじゃなきゃ起きないか......。そう思いながら音の発生源を探す。
音の発生源......ピピピとうるさく耳元で甲高い音を発生させているのは、単針を六の位置に合わせて鳴る目覚まし時計だ。無論、用途は遅刻防止。学校が遠いので殆どの同級生よりも三十分早くに合わせて、毎日セットしている。同じクラスでも同じ時間に起きなければ遅刻するのは数えれるくらいしかいない。......と言っても三十数人だから数えれることには数えれるか......。さっきのは訂正、両手で数えれるくらいだ。.....大体三分の一くらい......あれ? 結構居たわ。
まぁ、それは置いといて......音の発生源を見つけて手を伸ばし、音を消すためにボタンを押そうとした。
しかし、頭の中は半睡眠状態にあるらしく思い通りに言うことを聞かない。いつもよりも遅いペースでそのボタンを押した。
「ん......あれ?......あぁ、夢か.....ふぁ〜、にしても、朝早いしうるさいし......本当に......あ、今思いだしたけど今日休みだから目覚まし時計いらなかったわ......二度寝しよ」
と独り言を言ってまた寝る。いつも遅く寝ては早く起きるの繰り返しだ。折角の休みだしもう一度寝よう。というか寝たい。
だが、また起きることになるのには時間はかからなかった。
「早く起きなさーい! 友達が来てるわよー!」
「......はぁ、分かったー!」
なんでこんなに早く来るんだ。そう思いながら時計を見ると二度寝してから10分しか経ってない。
こんなに早く来るなんて、あいつしかいない。
『あいつ』というのは俺の親友のことだ。家が近く、学校も同じなのであいつも目覚まし時計を早めに設定してる1人だ。
とにかくあいつは短気な方だし急ごう。にしても、学校休みなのに何かようなのか? そう言えば昨日何か言ってた気もするが......あいつに聞けば分かることか。そう思ってすぐに私服を着て外に出る支度をする。
外に出るとあいつが待っていた。勿論、私服だ。学校が休みなのにわざわざ制服を着る人も少ないだろう。あいつも俺も休みの日に制服を着ることはない。そもそもあの制服動きにくいし.....。そんなことを考えてると親友が話しかけてきた。
「おいおい、まだ寝てたのか?」
「折角の休みだろ?ゆっくり寝させてくれよ」
「お前は相変わらずだな。ま、それより早く行こうぜ!」
「えっ?行くって何処にだよ?」
「......えっ? 昨日話しただろう? 関西にあるインテックス大阪だよ! 東方紅楼夢を見に行くんだよ! 忘れてたのか? 昨日言ったことなのに?」
「あ、あぁ、そう言えばそうだったな。今思い出したよ」
そう言えばそんなこと言ってたな。というか結構前から言われてたのに忘れてた......。俺はボケてきたのかな?
そんなことを考えてる俺を尻目に話し続けている。
そう、俺たちは東方ファンだ。と言っても原作を少しやっているくらいだ。キャラの設定は大体知ってるし漫画とかなら大体は見てるから......まぁ、大丈夫だろう。多分。というか何が大丈夫なのか分からないけど。
親友も俺と同じくらいだ。でも、親友の兄はかなり知っているらしい。たまに会っては一緒に遊ぶこともある。その時に色々と教えてもらってるが…...話についていけないこともしばしばある。
「おーい? 聞いてるのかー?」
色々と考えてたら話を聞いていないと思ったのか親友が聞いてきた。まぁ、聞いてなかったけど。
「あぁ、聞いてるよ。じゃ、早速行こうよ。ま、早めに行ってもどうせそれ以外にも色々見て回るんだろう?」
「おい、絶対聞いてなかっただろ。まぁいいや。関西とかなかなか行かないから楽しみだなー。よし、行くかー」
こんな話しをしながら俺たちはインテックス大阪に向かって行った。
──インテックス大阪
駅を降りて徒歩で数分...何事もなく、無事に俺たちはインテックス大阪に着いた。そこに着くと親友は「よし、ここから自由行動な。」と言ってすぐに何処かに行った。
あれ?一緒に来た意味なくない?と思いながらも見て回る。
俺自身も色々と見て回り、色々買った。そんなことをしているといつの間にか夕方になってた。やっぱり楽しい時間はすぐに終わるな。と思いながら親友を探そうとした。
「もしかして......ねぇねぇ、そこの貴方。お名前は?」
探そうとした時、不意にそんな幼い声が聞こえてきた。
後ろを振り返るとそこには濃い黄色の髪をサイドテールにまとめ、頭にはドアノブカバーに似た独特な帽子を被っている。こんな帽子は初めて見たが...既視感があるような気がする......。
そして、 瞳の色は真紅。服装も真紅を基調としており、秋なのに半袖とミニスカートを、スカートは一枚の布を腰に巻いて二つのクリップで留めている。 足元はソックスに赤のストラップシューズを履いている。 見た目は10歳未満の少女だ。
外国人かな?と思ったけどそんな考えはすぐに消えた。何故ならその少女の背中には翼が生えていたからである。一対の枝に八色の色とりどりの宝石が付いていた。それは妙にリアルで自然に動いたりしている。しかし、俺以外の人は見ていないみたいだ。こんなにリアルなら誰か見たりはするはずなのに誰も見ようとはしてない...というか気付いていないみたいだ......。それにしても何処かで見たことがある気がする。思い出そうとしても記憶に靄がかかってるみたいに よく思い出せない。
「あれ?おーい、聞こえてる? 貴方のお名前はなんですかー?」
そんなことを考えてるとその少女は再度聞いてきた。
「え、あ、すいません。俺の名前は──です」
「あれれ? よく聞こえなかったけど......もう一度言ってくれる?」
聞こえない?やっぱり外国人の人だからか?英語は苦手だし...発音が下手だったのかな。ただのコスプレイヤーにしてはかなりリアルだし.....そもそも、何のコスプレなんだ?
「? ......俺の名前は――です」
「......おかしいなぁ......やっぱり聞こえないや。......ごめんね。引き止めて」
「え、は、はい」
俺は訳も分からずその少女と別れた。その少女が何処かに歩いて行くのを見ていると何故か心にポッカリと大きな穴が空いてしまった気がした。初めて会ったはずなのに......別れるのが嫌だ。もしも、ここで追いかけなかったら、一生会えないような......そんな気持ちが頭の中で渦巻いている。だが、追うことはなかった。すぐに見失ったというのもあるが......俺には追う勇気がなかったのだ。
――それからしばらくした後、そろそろ帰る時間帯になった頃、俺は親友を探して駅まで行ったらその途中に案の定、親友がいた。と言っても見つけたのは親友だが......。その親友が横断歩道を歩いた先で待っていた。
今更だが、よく、待ち合わせ場所も決めないで会えたな...…。携帯電話を持ってたから電話は使えるけど。
「おーい、遅かったなー」
「お前が早いだけだろー!というか集合場所も決めてないのに会えるわけないだろ!今、横断歩道渡るから待っとけー」
そう言って信号が青になった時に横断歩道を歩いた。
にしてもあの子は何処かで、そう言えば東方のキャラに.....そうだ!思い出した!なんで今まで忘れてたのだろうか。.....あ、名前が思い出せない。
俺が好きなキャラだった、はずだ。多分。本物みたいだったのに、追えばよかった。追ったところで何をすればいいのか分からないけど。.....にしても、やっぱり記憶に靄でもかかっているか? 名前が全然思い出せない。
なんだったかな? えーと、確か名前は────
「おい! ──!聞こえてるのか!? ──!今すぐそこから───」
「えっ?」
考えている最中に親友が叫ぶ声がした。だが、遅かった。俺は何かにぶつかった。そして目の前が真っ赤になり、全身が痛む気がした。──意識がはっきりしない......。俺は何にぶつかったのか? 俺は、何故意識がはっきりしないんだ? 俺は.....どうなったんだ?身体が動かない。あれ? 腕の......足の感覚がない。あ、車のブレーキ音が聞こえた。
やっと理解出来た。
......あぁ、きっと俺は車かなんかにぶつかったのかな......。
そう気付いた時にはもう遅い。あの子のことで考え事をしなければ、あいつの叫び声にもっと早く気がつけば......。そんなことを考えながら俺は最後に目を閉じた。目を閉じた時に聞こえたのは誰かの泣き叫ぶ声と悲鳴だった。
──今日は......俺が死んだ日だ───
そして......次に目を開いた時に見え、聞こえたのは─────
誰かが俺をのぞき込む姿、誰かの産声。.....その産声が俺.....いや、私の声だと気付くのはそう遅くなかった。.....気付いたことで理解した。
──今日は......私が生まれた日なんだ......と──
短いのでこれからはもう少し増やせるように頑張ります。