今年もよろしくお願いします。
さて、今回は短めの雑談回です。それでもいい方は、どうぞー
side Renata Scarlet
──紅魔館(キッチン)
今日はお正月。年が明けた今年初めての日。
「レナ様。後はお任せいただいても......」
「いえいえ。咲夜だけに任せてはいられませんから。
私もお料理は得意な方ですし、任せてください!」
現在、お正月に食べるためのおせち料理を咲夜と一緒に作っている。
どうして私が手伝っていたかと言うと、妖精メイド達はお正月休みを与えられ、咲夜一人しか家事をする者がいないのだ。
流石に大変だと思い、私が手伝っている。
最初、お姉様が手伝おうとしていたのだが、少し不安だったので代わりを申し出た。
「そういう訳ではなく......。レナ様。貴方様はお嬢様の妹様なのですよ?
お嬢様の妹様に手伝わすなんて、メイドとして恥ずかしい限りです」
「ぐっ......。で、ですが、私としても咲夜一人に家事全般を任すなんて......」
「いつものことです。妖精メイド達はあてになりませんから」
「そ、そうですか......。で、でも、もうすぐ終わりますし......最後までやりますよ?」
「お先にお戻りください。お嬢様が待っていますよ?」
まるで心を見透かしているように咲夜は微笑む。
確かにお姉様と一緒に居たいとは常日頃思っていないこともない。
だが、それでも一人に任せることはできない。
「その手には乗りません。咲夜、終わるまで手伝いますよ」
「......はぁー。分かりました。こうなってはテコでも動きませんでしょう。
最後までお付き合いくださいね、レナ様」
「もちろんです」
こうして、私は咲夜を手伝い、料理を食堂へと運びに行った。
食堂では、待ちくたびれている妹達に、普段は食堂で食べることがないパチュリー達もいる。
流石にお正月というだけあって、全員が集合しているのだ。
「咲夜、レナ。お疲れ様。ありがとうね」
「いえ。仕事ですから」
「私は善意とかそんな感じですので」
「そ、そう......。遠慮しなくてもいいのに。......みんな揃ったわね」
お姉様は辺りを見回し、全員が揃ってることを確認する。
私達姉妹、咲夜、美鈴、パチュリー、そして小悪魔。
同じ家だというのに、広すぎるせいかあまり集まることのない家族が全員揃った。
「まず初めに、新年明けましておめでとう。これからもよろしくね。
さ、食べましょうか」
「早いです。もっとこう......新年の有り難みとか......」
「私達は吸血鬼よ? そんな堅苦しい風習なんか無視していいわ。それにね......」
ならクリスマスパーティーをやったのは何なんだ、と突っ込みたくなる衝動を抑え、お姉様の言葉を待った。
「こうして家族がみんな集まれるだけで有り難いわよ。
それとフラン達がもう待ちきれなさそうだから」
「ううん。吸血鬼なのに久しぶりにオールしたら辛かったの。だから食べたいとかよりも早く寝たい」
フランは私やルナと一緒にカウントダウンのために深夜まで起きていた。
私が寝てからも、テンションの高いフランはルナと一緒に夜通し起きていたらしい。
「私もよ。昨日からぶっ通しで魔法の研究してて......」
「パチェまで......。はぁー。いいわ。早く食べましょうか。
じゃ......いただきます」
お姉様の合図とともに食事が始まる。
「咲夜ー。これがおせち料理? 和食なんて珍しいね」
「フラン様は和食料理はあまり食べませんでしたね。お嬢様はよく注文されますが」
「え? レミリアお姉様よく食べるの? いいなぁ。私なんて
「ミア。それ、取って」
「これお酒だよ? というか誰置いたのこれー!」
もちろん静かな食事になることはなく、賑やかな食卓になる。
「え? これ伊勢海老? 幻想郷って海ないんじゃ......」
「スキマ妖怪から貰ったものですね。レナ様からのご提案で今回の料理に使いました」
「おせち料理と言えば伊勢海老あるような気がしますしね」
「美鈴ー。眠いー」
食事中にも関わらず、フランが隣にいる美鈴にもたれかかった。
吸血鬼と言えど、一日中起きているのは本当に辛いらしい。
「ふ、フラン様。お食事中ですよ? またお嬢様に......」
「あぁ、いいわよ。今日くらい。でもちゃんと食べなさいよ?」
「うん。分かってるよー......」
「美鈴。フランが寝たら部屋まで運んであげてくれない?」
「はい、分かりました」
「......フランはああだけど、ルナは大丈夫なの?」
二つ横で寝そうになるフランを見ながら、ミアは隣のルナに聞いていた。
その間も、私やパチュリー、小悪魔は黙々と食べていた。
話すことがなく、パチュリー達の方は夜通し起きていたのもあり疲れているのだろう。
「大丈夫じゃない。今、半分は寝てる」
「いつも通りすぎて分かりづらいね。ルナが寝たら私が運んであげよっかー?」
「大丈夫。オネー様に運んでもらう」
「私です? 私も朝早くから起きて辛いのですが......。いえ、妹の頼み事ですし、いいですけどね」
それに、夜通し起きていた二人の妹の横で寝ていたせいか、寝た気があまりしない。
二人とも可愛いから構わないが。
「ルナもレナ好きねー。なら私は......お姉ちゃん。私が寝たら頼むよー」
「仕方ないわねぇ。というか、まだ羽根突きとか初詣とかあるのに......」
霊夢から許可を貰っていないが、博麗神社に行くらしい。
怒られるのは目に見えているが、どうせ私達以外も妖怪がたくさん来るだろう。
「そうだわ。レナ。見てほしい魔導書があるのよ。後で見に来てくれない?」
「いいですよ。今日のうちに見に行きますね」
「こあ。食べ終わったらあの魔導書探してて」
「え? あ、はーい。分かりましたー」
この賑やかな食卓を見ていると、なんだか幸せな気持ちでいっぱいになる。
「咲夜ー。緑茶ー」
「お嬢様。紅茶でなくてよろしいのですか?」
「今日はお茶の気分なのよ。あ、緑茶ねー」
「紅茶もお茶よ、レミリアお姉様」
「あ......。言葉のあやよ。気にしないで」
やはり、こういう平和な日常が長く、永く続いてほしいと思う。
「レナ? どうしたの?」
「......いえ、何でもないですよ。さ、早く食べて神社に行きましょうか」
姉の言葉に、私は笑って答える────