そして短い()
それでもいいよという方は、ありがとうございます()
まぁ、お暇な時にでもお読みくださいm(_ _)m
side Renata Scarlet
──紅魔館(フランの部屋)
クリスマスの日。吸血鬼に似合わない聖なる日。
今日、
年に一度のイベントということもあり、お姉様主催で盛大なパーティーをするらしい。
もちろん人数は多い方がいいとお姉様が霊夢達、館の外の住人も呼んでいる。
だが、お姉様だけでは心配とミアも親しい仲の人を呼んでいるらしい。
そして、その朝。
「ふぁ、ぁぁ......?」
いつものように、フランの部屋で目が覚める。
私は起きたらすぐに左右どちらかに手を回す。
こうすると、抱き枕のようにフランかルナを抱きしめられるのだ。
しかし、今日に限ってはいつもの柔らかい肌の感触ではなく、何か固い感触が手に触れた。
「......えっ? 箱?」
重いまぶたをゆっくりと開けると、そこには私と同じくらい大きな箱が置かれていた。
私達子供が三人で寝ても広々と寝れる大きなベッドだ。だが、さらにそこへ私達と同じくらい大きな箱が置かれると、流石に狭い。
しかし、いつも両隣で寝ているはずのフランとルナは、何故か私の右隣で一緒に寝ていた。
──昨日寝た時は、いつものように両隣で寝ていたはずなんだけど......。
「......何が入っているのでしょう?」
しかし、そんな小さな疑問はすぐに消えた。疑問よりも、箱の中身という好奇心が勝ったのだ。
「......っと。さて、気になる箱の中身は......」
ベッドから降りて、箱を包む紙を破る。
そして、恐る恐る箱を開け──
「っ!? ......え?」
──すぐに閉じた。
理由はいつも見ている青い髪のようなものが見えたからだ。
もしやと思い、また恐る恐る箱の中身を確認する。
「......はぁー、びっくりした......」
中に入っていたのはお姉様......ではなく、お姉様の形を模した小さな人形だった。
中には他にもたくさんの人形があり、全てが紅魔館の住人を模した人形だったのだ。
偶然お姉様の人形が一番上に置いてあり、それを見て私は驚いてしまったようだ。
「誰が置いた人形でしょうか......それにしても可愛いお人形さんですね」
アリスに作ってもらったルナとミア人形よりも精密ではないが、まるでそのまま二頭身にしたかのように小さく可愛い。
──これほど上手に作れるのはアリスか咲夜しか知らない。アリスがわざわざここへ来てクリスマスプレゼントを送ることも考えにくいし、多分咲夜からのかなぁ。
「お姉様......? 落ちちゃったの......?」
箱の中身を漁っていると、ベッドの上からのぞき込むようにしてフランが顔を出していた。
眠たそうにまぶたを擦っている。
「あ、フラン。おはようございます。落ちてはないですよ」
「おはよ、ぉ......ふわぁー......」
「まだ眠たいのなら寝ててもいいですよ?」
「ならお姉様も上に......何それ?」
「サンタさんからの贈り物みたいですよ。みんなの人形が入っていました」
と、中に入っていた自分の人形をフランに見せた。
すると、あまり興味無さそうに「ふーん」とじっとそれを見つめていた。
「その細い首で頭支えれるんだ......」
「着眼点おかしくないです? いえ、そういうことよりもですね。可愛くないです?」
「うん、可愛いとは思うよ。じゃ、早く寝よ?」
本当に興味が無いらしく、一緒に寝る方を優先してくる。
「......分かりました。一緒に寝ましょうか」
流石にこれ以上何を言っても無駄だと判断し、フランの要望を受け入れた。
そして、深い眠りにつく。
「妹様、失礼致します」
次に目が覚めたのは、咲夜が扉をノックして入ってくる時だった。
「咲夜......? あっ! もう時間です!?」
「はい。ミア様のお声により、思ったより人が来てしまったことが原因で、予定よりも早く始めています。レナ様達も、早くお出でに......とのことです」
「は、はい! フラン! ルナ! 起きる時間ですよ!」
と、両隣で寝ている二人の妹の体を揺さぶる。
すると、二人は同じようにまぶたをこすりながら起き上がった。
「なぁにい......」
「ふぁ......っ」
「起きる時間ですよ。ほら、クリスマスパーティーです」
「では、私はこれで。お食事の用意をしてきますね」
「ありがとうございますね。咲、あっ。そう言えば、起きた時にクリスマスプレゼント? があったのですが、これって咲夜が用意してくれた物です?」
戻っていこうとする咲夜を引き止め、質問する。
本来は聞いてはダメなのかもしれないが、知的好奇心が抑えられなかった。
「プレゼント? いいえ、私ではありませんよ。私は貰った方ですから。今朝もお嬢さまから、お暇を二、三日貰いましたし。......もちろんお断りしましたけど」
「流石ですね......というかお姉様のチョイスおかしいですね。
......咲夜じゃないとすれば、一体誰でしょう......」
「......言っていいのか分かりませんが、おそらくお嬢さまではないでしょうか」
悩んでいると、咲夜が助言をくれた。
お姉様だとすれば隠れてプレゼントを送ったことは納得できる。
だが──
「ですが、お姉様の手先は不器用ですし......。あ、引き止めてすいません。答えてくれてありがとうございますね」
「いえいえ。お力になれたようで良かったです。では」
「あっ、ばい......早っ......」
と、瞬きをする間も無く咲夜は姿を消した。
時止めを使って移動したのだと思うが、いつもびっくりさせられる。
「ではフラン、ルナ。服着替えて行きましょうか。パーティー用の服ですからね?」
「オネー様、いつも真っ黒だから変わらない?」
「変わらないよね。お姉様。私達は普段着で行くから。堅苦しいの嫌いだし」
「あっはい。まぁ、うん......お姉様に何か言われても、私に振らないでくださいよ。どうしても、って言うなら別にいいですけど......」
「ふふふ。優しいお姉様で良かったね。ほんと。......ルナ。それ私のだよー」
妹達の愉快な会話を聞きながら、パーティーへ行く準備を進めていった。
パーティー会場は百人以上が入っても広々とできるほど広い造りになっている。
中央には巨大なクリスマス・ツリーが置かれ、至る所に丸いテーブルと食事に加え、飾り付けがしてある。
中には妖精メイドを除き、会場にはすでに二十人近い人間や妖怪達がいた。
ほとんど全員が顔見知りで、妖怪が主催するパーティーということもあり妖怪が多い。
「ようやく妹様達のお出ましか。先に食べてるぜー」
と、吸血鬼相手に気安く話しかけてくるのは魔理沙だ。
もちろん堅苦しく話すよりは、そっちの方がこちらとしても会話しやすい。
そのお陰か、フランは魔理沙と友達になっていた。
「あぁ、魔理沙。やっぱり来てたんだね」
「どうだ? フラン達も一緒に食べないか?」
「うーん......お姉様、いい?」
先に遊んでいてもいい、という意味で訪ねているのだろう。
私がお姉様に会いに行くことを知っているから、質問したのだとすぐに分かった。
「いいですよ。楽しんできてくださいね」
「はーい。ルナも行こー」
「うん。分かった!」
楽しそうに友達の場所へ向かう二人を見送り、私は姉を探しにパーティー会場をさまよい始めた。
「おっ、レナ。一緒にお酒飲みやしないかい?」
それから数分としないうちに声をかけられた。
相手は鬼の四天王が一人、伊吹萃香だ。
「あら〜。吸血鬼の妹さんじゃない。貴女は姉の方よりも親しみやすそうだわ〜」
「萃香さんの他に、幽々子さんも......皆さん、楽しんでいるようで何よりです」
会場の中心、クリスマス・ツリーの下では、シートを引き、萃香と幽々子、そして紫が一緒にお酒を嗜んでいた。
その近くでは藍と妖夢が主のために、料理を運んでいる。
「だから萃香でいいって」
「では、萃香。せっかくのお誘いですが、私はお酒を飲めません。そして今はお姉様を探しているので......」
「むぅー......まぁいいやぁ。じゃあ後で来てくれよー?」
「パーティーの終盤辺りで、ジュースでもいいなら......いいですよ」
「おぉ! もちろんいいぞー。約束だからなー!」
会話の最中も
──いや、無限にお酒が湧き出るのだから、飲み干すことはないか。
「私は今一緒に飲みたかったわ〜......」
「幽々子。あまり無茶を押し付けないであげなさい」
「は〜い。レナちゃん。また後でね〜」
「はい、また後で、です」
と、何気に今回一番の難所を超え、再びお姉様探しを再開した。
改めて辺りを見渡すと、妖怪の賢者と呼ばれる紫のように強力な妖怪から、ルーミアやチルノのような妖怪まで、様々な妖怪がいる。
クリスマスパーティーとは言え、こんなに様々な人が来てくれるのはとても喜ばしいことだ。
──......これは、お姉様やミアに感謝しないといけないなぁ。
「ここに居たのね、レナ」
物思いにふけていると、背後から声がかけられた。
その声に反応し、振り返ると、そこにはお姉様の姿があった。
お姉様はいつもとは違い、パーティー用の黒いドレスを着ている。帽子もドアノブのようなモブキャップではなく、シルクハットのような黒い帽子になっていた。
「え? あ、お姉様。......お揃いの服ですね」
「えぇ、そうね。似合ってるわよ、レナ」
「あ、ありがとうございます......。お姉様も似合ってますよ!」
会ったのはいいが、何を話していいのか全く分からない。
何故か緊張してしまい、会話を成立させれないのだ。
「ふふふ。ありがとう。まだ来たばかりかもしれないけど、楽しんでる? 楽しめそう?」
「は、はい。もちろんです。......お姉様、一緒に飲みません?
わ、私も多少のお酒なら飲めるようになってきてますし......」
「無理してお酒なんて飲まなくていいわよ。
「そ、そうですね......」
吸血鬼だから血液、私は特にAB型の血液は美味しいと思えるのだが、ジュースで出てくる血液だけの状態は未だに馴れない。逆に見るのも苦手なほどで、お酒の次くらいに苦手だ。
「咲夜ー。ブラッディジュースー。私とレナの分ねー」
「お持ちしました」
お姉様が大声で話すと、咲夜が突然現れる。
手にはすでに、ブラッディジュースが二つ、握られていた。
「早いですね......。あ、ありがとうございます」
「ありがと。料理や掃除の最中だったのにごめんね」
「いえ、私はお嬢さまのメイドですから。では、何かありましたら、またお呼びください」
と、言い残しては、現れた時同様、忽然と姿を消した。
「じゃあ......乾杯しましょうか」
「はい。......今日という、聖なる夜。素敵で無敵な奇跡の一瞬に......乾杯です」
「ふふ、何それ? 面白いわね。......乾杯」
グラスのぶつかる小さな音が響く。
しかしまだ、パーティーは始まったばっかりだ────
ちなみにモブキャップとは、18世紀の西欧で流行した、モスリン製の頭をすっぽりと覆う縁に襞の付いた婦人帽の一種、らしいです。ナイトキャップよりもこちらの方がしっくりきたので、これにしています。
レナにプレゼントを渡した人は謎のままで終わらせています。
もしかしたら、幻想郷にはあの赤い人が......なんてことも、ね。