もうすぐ紅転録の終わりですが、謎や付箋回収はEXの方が出てくる模様。
まぁ、お暇な時にでも読んでくださいませ。
side Frandre Scarlet
──地底(地霊殿前)
「オネー様達、行っちゃった」
「そうね。私達はここの相手だってさ」
霧に包まれる地霊殿。
その前には、狂気を失った妖怪が溢れかえったいる。
数は優に三百を超える。対して私達は吸血鬼三人、鬼二人、人間一人の計六人しかいない。
「どうやら......私らの知り合いも多いねぇ。鬼は少ないけどね」
「勇儀様、鬼は気絶?」
「敵はみんな気絶だよ。なに、萃香が霧を無効化してくれるらしいからね! 萃香が来るまでの辛抱さ!」
「私だけ人間で場違いな気もしますが、霊夢さん達のためにも頑張りますよー!」
私達は皆が違う理由で集まっている、いわば烏合の衆。
だが、相手も狂気にのまれただけの烏合の衆。
能力を使わずとも、戦力差は明らかでも、時間稼ぎくらいはできる......はずだ。
「フランもルナも、やばくなったらお姉ちゃんを頼りなよー」
「大丈夫。いつもフランに、弾幕ごっこの練習、してもらってるから」
「ま、そういうことだから。ミアこそやばかったら手伝ってあげるよ」
「成長したねー。でもね......姉として、万が一にでも助けてもらうなんてないからね!
じゃ、先に行くよー! ちょっと痛いけど我慢してね。『吸苻「ヴァンプティアー」』!」
大きな声とともにミアが空を何度も切り裂く。
すると、切り裂いた痕が弾幕となって敵へ降り注いだ。
「すごく元気だね、ミア......」
「数日分の鬱憤晴らし、かな?」
「おぉ! 活きのいい奴がいるじゃねぇか!
私らも負けられないね。行くよ! 朱童!」
「はい。気絶は難しいけど、頑張る」
「では、私も行きますよー! 『秘術「グレイソーマタージ」』!」
ミアに続き、鬼らしい二人と人間も続いて行く。
しかし、弾幕を撃てないのか撃たない敵達は、私達に向かって弾幕なんてお構い無しに突っ込んでくる。
「ルナ。私達もやろっか」
「うん、行くよ。『禁忌「パンドラボックス」』。囲め、囲め」
ルナのスペルカードによって敵の大軍を中心に、幾つもの円状に弾幕が展開される。
と、次の瞬間、円の内側から中心に弾幕が広がった。
「ガァァァ!」
中心にいた敵のほとんどは弾幕の攻撃を受け、鋭い叫び声が響き渡る。
弾幕に命中した者が壁となり、中心に居なかった者は被弾は避けられた。
「ワァァァ!」
「みんなルナのに引っかかるよね。箱の中身は希望か絶望か、ルナの気分次第で変わるのに。
ま、理性ないと思うから、引っかかってはないかもしれないけど」
なんてこともなく、波のように何度も広がる弾幕により、パンドラの匣に捕まった敵の大半は被弾する結果となった。
「みんな痛そう。正気ない時、私は痛くないのに」
「痛みが強すぎるのかも。もうちょっと落としていこっか。後で回復するの、多分お姉様だしね」
「フラン、ルナ。気絶だからねー! 悪い人じゃない妖怪も混ざってるんだから!」
「悪くなくても人じゃない」
「ルナ、揚げ足取りはいいから。じゃ、私もやるかぁ。出力低めの『レーヴァテイン』!」
弾幕ごっこ用よりもさらに低出力の
これにより斬ってもたいていの妖怪は火傷で済む......と思う。
「私も。『禁忌「カラドボルグ」』」
ルナも私を真似て、
「......ね、フラン。どっちが敵を気絶させて救えるか、勝負しよ?」
「え? ......いいよ。もしも私が勝ったらどうするの?」
「お姉様に告白、していいよ?」
「はぁぅ!? な、何言ってるの!?」
「始めよっか。あ、私が勝ったら、その逆ね」
それだけ言って、私の質問にも答えずにルナは敵の大軍へと突進して行った。
──ほんと、あの娘ったら......。
「フラーン! ヘルプミー!」
「ミア!? 助けてもらわないんじゃ......あぁ、もう! もうどうにでもなれ!」
「......勇儀様。待つ必要、ないかも、です」
「そうみたいだねぇ。ま、そん時はそん時だ! 私らも負けないよう、派手にやろうじゃないか!」
こうして、私達の戦いは勢いを増していった────
side Renata Scarlet
──地霊殿(とある広間)
「お前はここで終わりだ。先に逝って、姉でも待ってろ」
吸血鬼は大きく手を振り上げると、倒れた私へと振り下ろした──
「姉ならここよ。ルネの兄、フリッツ・エルジェーベト......だったかしら?」
が、それは私に届くことはなかった。
「ぁ......っ、姉様......!」
「レミリア......スカーレット......ッ!」
すんでのところで吸血鬼の爪は、姉の片腕を貫いたのだ。
「にしても......結構痛いわね、流石だわ。
でもね、妹を傷付けたからには......なんて、感情的になっちゃダメ、ねっ!」
言葉とは裏腹に、姉は貫かれた腕などお構い無しに、吸血鬼を蹴り飛ばした。
「お姉、様......っぐ!」
「大丈夫よ、これくらい。......でも、複雑な傷は治りにくい、し......」
お姉様は自身の鋭い爪で、怪我をしている腕ごと切り裂いた。
確かに複雑な傷は治りにくいが、そこまでする必要はなかったと思う。
「っと、これで大丈夫ね」
「だ、大丈夫な訳......ぁぅ......」
「ああ、可哀想なレナお姉様。でも大丈夫......私が癒してあげます......」
「シシィ。僕が見ますから、貴女は他の......さとり達を治してあげてください」
「あそこに倒れている方々ですね、分かりました!」
お姉様に次いで、ルネとルネに似た青い髪の女の子がやって来る。
「霊夢! 出遅れたみたいだ!」
「そうみたいね。って、凄くひどい有り様ね......」
さらには遅れて霊夢、魔理沙も到着する。
──どうしてここが......。
「レナ、大丈夫? 立てそう?」
「だ、大丈夫です......。傷は深いですが、これくらいなら吸血鬼の再生力のお陰で......何とかなります」
「ま、間に合った......。これで、僕の運命が......。
「何を安心しているか知らないけど、まだよ。まだ黒幕は倒れていないわ。
それにしても結構な数が倒れているわね。これもあいつのせいかしら」
霊夢がフリッツという吸血鬼を指差し、問いかける。
「はい、あいつがこの異変の黒幕です!」
それに対し、ルネが凄まじい勢いで答えた。
「そう......。で、なんだったかしら。人間の手で云々って紫が言ってたけど、いいの?」
「あのスキマ妖怪が......?」
「おそらくは地上と地底の取り決めの件があるからだと思います。
......ですからレミリア。お願いですから手は出さないでください」
何を考えているのか、ルネは懇願するようにお姉様へ頼んだ。
「......まぁいいわ。あんな吸血鬼の一人や二人、霊夢と魔理沙だけで充分ね」
「いいのか? お前らシスコンだろ?」
「いいのよ。私自ら手を下す必要なんてないわ」
珍しく、お姉様はすんなりと引き下がった。
そしてお姉様は私を敵から離れている、さとり達の近くへと運んでくれた。
「......ってことらしいぜ、黒幕さんよ」
「......はっ! たかが人間如きが俺様の相手になるか! いいだろう。
その浅はかな考えを後悔する間もなく殺してやるわ!」
お姉様に蹴られた傷もすでに治っているようで、フリッツは声を張り上げてそう言った。
意味がないのに、まるで威嚇しているようだった。
「だってさ、霊夢。さて、どっちが最後決める?」
「決めていいのね? なら私がやるわ。そうした方がいい気がする」
「オッケー! 援護するぜ! 『マスター......スパーク』!」
「え? 魔理沙、それ決め技──」
明らか援護という威力ではない『マスタースパーク』がフリッツへと飛んでいく。
「無駄無駄! 弾幕は俺様には通用しない!」
「なにっ!?」
「──でもなかったわね。ビックリした」
が、案の定、弾幕はフリッツに当たる直前に霧散し、消えてしまった。
「霊夢! 魔理沙! そいつはありとあらゆるものを霧散させる力を持っています! っぅ......」
「レナ! 喋っちゃだめよ。貴女は回復に専念を......あら?」
「なるほどな! やっぱり霊夢の勘は頼りになるな!」
「自分で決めようとしていた人が何を......」
霊夢が呆れた声で返すも、魔理沙は冗談っぽく笑ってみせる。
本当に仲のいいパートナーらしい。
「まぁいいわ。魔理沙、決めるからさっきの威力で援護よろしく」
「あれだと魔力が尽きちまうぞ?」
「いいのよ。どうせあいつが黒幕なんだから使い切っていいでしょ。多分」
「分かったぜ。特大のを見せてやる!」
「話し合いはそこまでだ! 見せてやる! 俺の力を!」
そう宣言すると、四方八方に向かって闇雲に弾幕を展開した。
「あっ、レナ達が!」
「魔理沙! あいつらは大丈夫だと思うから避けるのに専念しなさい!
あの弾幕、滅茶苦茶だけど殺気が強いわ! 当たったら人間の私達は大変よ!」
霊夢の話す通り、その弾幕が当たった床や壁は、まるで砂で出来ていたかのように簡単に砕かれてしまう。
「お、お姉様......!」
そうやって他人事にはできず、未だ傷が治らず、動けない私に弾幕が飛んできた──
「レナ──ッ!?」
──が、その弾幕は見えない壁に当たったかのように、途中で砕け散ってしまった。
「レナ、シシィ。レミリアも。動かないでください。
あいつの防衛対策は万全です。攻撃はできませんが」
「る、ルネ......。ありがとう、助かったわ」
「いえ。それよりも、今の状態では傷が治せません。ですので少しだけ我慢できますか?」
ルネは結界に集中して振り返ることもしなかったが、私に言ったのだとすぐに理解できた。
どういう訳か、ルネの目的は私を生かすことらしい。
「す、少しだけなら......。この傷、どういう訳か治りが遅いのでできるだけ早くお願いします」
「......な、治りが......?」
「危ねーっ! れ、霊夢! もう少し待ってくれ!」
そうこうしているうちに、霊夢と魔理沙は向かってくる弾幕を前に、迎え撃つ体勢を取ろうとしていた。
しかし、どうにも隙をつくことができずに、迎え撃つことができずにいたらしい。
「っ、仕方ないわね。一瞬だけ時間を稼ぐわ! 『封魔陣』!」
霊夢が魔理沙の前に入ったかと思うと、天高く広がる結界を張った。
「ナイス! 行くぜ......!」
「本当に一瞬だけだから早く!」
魔理沙はミニ八卦炉に魔力を溜め──
「分かってるぜ! 渾身の......『魔砲「ファイナルマスタースパーク」』!」
── 一気に放出した。
それは彗星の如く、他の弾幕を消し去りながら真っ直ぐ進んでいく。
「ついでよ。ホーミングアミュレット!」
さらには霊夢の御札が拡散しながらフリッツへと向かっていった。
しかし──
「無駄だということが分からんか!」
──全てが当たる直前で霧のように消えてしまった。
「霧散する量に限りなし! 高密度だろうが広範囲だろうが意味がないのだ!」
「だから?」
「え──ガハッ!?」
と、いつの間にかフリッツの背後に回っていた霊夢が、フリッツを素手で殴り飛ばしたのだ。
流石に子供と言えど吸血鬼だからか、尻もちをつく程度しか飛ばなかったが。
「に、人間がこんな力を!? いや、それよりもいつの間に!?」
「真っ直ぐ背後に回っただけよ。そしてやっぱり、人は霧散できないのね。安心安心」
「......霊夢お得意の瞬間移動だな。あいつ無意識でやってるけど」
霊夢はゆっくり御札を構えると、自身とフリッツの周りに配置していく。
そして、円柱の結界が完成した。
「これで逃げれないわね。あ。でも霧散されれば逃げられるか」
「気楽に言ってるが、俺様と素手で戦うつもりか!?
人間が、俺様に適うなど──!?」
結界の中から聞こえていた声が止む。
どうやら、何かの異変に気付いたらしい。
「あ、気付いた? お察しの通り、妖怪はこの結界の中じゃ全力なんて出せっこないわよ。
出せて一割......くらい? もしかしたら能力なんて使えないかもね」
「ぐ......ぐぬぬ......」
「あいつ容赦ねぇな。というかやばいな。あんな強力な結界を一瞬とか......」
魔理沙の哀れみの目が向けられる中、ほとんど無力化されているはずのフリッツに対して、霊夢が御札を構える。
「じゃ、そういうことよ。おあいにくさまだけど、鬼に引き渡すまで眠ってもらうわよ。
落ちなさい。『夢想封印』!」
異変の終結を告げるかのような色とりどりの弾幕が、結界の中を覆い尽くした────
ちなみにフリッツですが、見た目も年齢もレミリアと同い年くらいという。