それでも良いよという方は、暇な時間にでもどうぞー。
side Remilia Scarlet
──紅魔館(咲夜の部屋)
襲撃を受けてから数分後、傷が治ったものの二人を心配に思って部屋へと連れて戻った。
そのついでにパチェと会い、二度と襲撃を受けないように防衛を固めてもらった、その後は、パチェには美鈴の容態を見てもらっている。
傷による痛みや疲れの影響か、それともルネのせいなのか、怪我が治った二人は未だに起きない。流石に人間の咲夜は仕方ないとは言え、美鈴も起きないのだから心配になっているのだ。
「咲夜......。ごめんなさい。私がもう少し早ければ、貴女も怪我をせずに済んだでしょうに......」
「レミリアお姉様のせいじゃないもん! 全部、何もかも怪我をさせた奴が悪いんだから!」
安静にさせたいから静かにと言っていたはずなのだが、横でフランが感情を爆発させる。確かにそうとも思ったが、それでも間に合いさえすれば助かっていたはずなのだ。これも、全て私がもっと早く気付いていれば......。
「......レミリアお姉様......。元気出してよ......」
「フラン。そっとしておく方がいい。レミリアオネー様。私達外で、門の前待ってる」
「えぇっ? ちょ、ちょっと待ってルナ! 私はここに......引っ張らないで、って!」
気を使わせてしまったのか、ルナがフランを連れて部屋から出ていった。
──正直な話、心細いから居て欲しかったのだが......。
「......私、どうしたらいいと思う? なんて、聞いてないわよね。......レナは行方不明。多分、ミアを探しに行ってるわ。そして、ルネからは全てを知りたければ地底に来いと言われている。けど、ここを離れるわけにもいかない。......私はどうすれば......」
「......行ってください。ここは、大丈夫です。命に変えてもここは守り抜きます」
いつの間に起きていたのか、咲夜が私の目を真っ直ぐ見つめてそう話す。
咲夜の気持ちは分かるが、またあの女性と同じかそれ以上の敵が来れば咲夜と美鈴で止められるとは思えない。
やはり、ここは私が......。
「お嬢様。心配なさらないでください。あの時は油断しましたが、今度こそは大丈夫です」
「......誓える? 私が帰ってくるまで、生きてここを守り抜くことを」
「誓えます。私の命にかえても守り抜きます」
「いや、命も大切にしなさいよ......。でも、そうね。分かったわ」
咲夜は私と約束を誓った時、必ずその約束を達成してくれる。それは、どんなに難しい約束でも、咲夜自身ができると思っているものは必ずだ。
「できるだけ早く帰ってくるから、ここは任せたわ」
「任されました。......そう言えば、美鈴が言ってましたがレナ様は地底へ向かったそうですよ」
「あら、あの娘も地底へ?」
「はい。どうやら異変のことで何か気付いたようで......」
──何か気付いた......流石私の妹ね。
そう思いながらも、少しでも言ってくれれば良かったのに、という感情も湧き上がる。もしかして姉として信用されていないのだろうか、それとも心配をかけまいとして......。
「......直接聞きましょうか。咲夜。ありがとうね。それじゃあ、紅魔館を......留守番を頼むわ」
「はい、仰せのままに」
咲夜の一言を聞き取ると、私は咲夜の部屋を出た。
──これで咲夜は何があっても大丈夫ね。
と安心するも、もう一人の方も気になり、外へ出る前に寄ろうと部屋へと向かった。
美鈴の部屋に入ると、そこに美鈴の姿は無く、パチェが私を待っていたかのように椅子に座って本を読んでいた。
普段と変わりない姿の友人は、現在進行形で館の防衛を強化してもらっている。無理をしているようには見えないが、それでも長年の仲だ。家族を傷つけられて無理をしないほど無神経な性格ではない。
だが、正直に言うと体が弱いパチェには強がって欲しくないのだが。
「......パチェ。美鈴知らない? ここに居たはずだけど......」
「もう仕事に戻ったわよ。本人も大丈夫と言っていたし、身体の傷も完全に治っていたし、身体に何らかの悪意ある魔力は感じなかったから行かせたわ。もう大丈夫よ。美鈴は」
「はぁー......全く。門番もメイドも揃いも揃って......。怪我がないとは言え無理しすぎよ......」
けれども、今までその二人が居たからこそ紅魔館は守られてきた。
──最近は襲撃らしい襲撃も無かったから身体が鈍っていた。だから次こそは必ず守れる。
みたいなことを考えているに違いない。しかし、私も実際にそうと思っているから止めようとは思わない。
「ふふふ。貴女が言えることではないでしょう?」
「そ、それは......否定はしないわ」
「主人の影響を受けて二人はああなっているのよ。でも、安心なさい。次があれば、私も出るわ。
けど、次なんて無いんでしょう?」
「えぇ、もちろんよ。次がある前に異変を終わらせる。霊夢や魔理沙よりも早くね」
あの二人ならもう動いていてもおかしくはない。だが私にとってはどちらでもいい。この異変は私が解決する。そして仇討ちという訳では無いが、ここを襲撃したことを後悔させてやるのだ。
「おそらく、犯人じゃなくてもルネは黒幕を知っている。まずは話を聞いてみるわ」
「そうね、そうしなさい。さ、早く行きなさい。早くしないと巫女に先を越されるわよ」
「えぇ、それもそうね。......じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
別れの挨拶を済ませると、私は門の前まで行く。
そして、美鈴の安否を確認した後に、フラン達と一緒に地底へと向かった────
side Renata Scarlet
──妖怪の山(地底の大穴)
まず初めに思ったことは、何これ、という純粋な疑問だ。
地底へと続く大穴から、黒くて禍々しい煙が天へと昇っていた。
私は魔力と妖力を持ち、どちらもそれなりに高くて、ある程度は感知できる自信がある。だが、すぐ近くに居てもその煙が魔力を帯びている気配は感じない。それどころか妖力さえも微かに感じるのみで、
「そう言えば地底って地上の妖怪が行っていけないとかいう条約が......。あ、でも私はその条約の後に来たから除外されますよね。うんうん。......誰か連れて来ても良かったかも」
だれに話しかけるともなく、一人虚しく話し続ける。
フランやルナなら快く一緒に行ってくれたかもしれない。だが地底は、特に旧都は妹を連れて行くには危険過ぎる。だからこそ、言わずに出てきたが......それでも一人でミアを広大な地底で探すのは、少し心細い。
「......お姉様なら、どうし──っ!?」
上空で誰かの話す声が聞こえた。
とっさに自分を『有耶無耶』にすると、茂みの影に隠れる。
「ここね」
「霊夢さーん! 速いですー!」
「それくらい急いでるんだろ。霊夢は勘が鋭いから、それで何か感じたんじゃないか?」
どうやら、異変を解決しに来た霊夢達のようだ。
しかし、霊夢と魔理沙は分かるが、珍しく早苗も来ている。UFOを探すよりも早くコンビを組んでいるようだが、おそらくは異変を解決しに来たのだろう。
というより、これだけ目立つのに異変解決に来ないことはないだろう。
「別に? ただ急いだ方がいいと思っただけよ。なんたって、二つも異変が起きてるんでしょう? 急がないと次の日が来ちゃうわ」
「お前、早く帰りたいだけかよ......。遠足気分だなぁ......」
「遠足は楽しかったですよ! でも、楽しくないとしても初めての異変解決です。頑張ります!」
「お前もお前で元気だなぁ」
面倒くさそうな霊夢に楽しそうな早苗。どうして同じ巫女なのに両極端なのだろうか。
──って、異変が二つ!? ......もしかして、運悪く怨霊の異変も......?
もしそうならば、さとりとこいしがもう一つの異変に巻き込まれているかもしれない。
これは私のせいで起きているかもしれない異変。なら私が助けに行くのが道理。しかし、このまま進んでも霊夢達が先に着いてしまうだろう。
──それなら、傷付く心配は無いから先に黒い煙を......。
と、一概には言えない。私がいることでバタフライエフェクトが起きているのなら、さとり達が傷つかない保証はないのだ。それに、もう一つの異変に巻き込まれているかもしれない。
「じゃあ、降りてすぐに解決しましょう。......この煙、あまり吸わない方がいい気がするから気を付けなさいよ」
「? 霊夢が言うならそうするが......」
「分かりました! ささっ、早く行きましょう! 私、待ちきれないです!」
やはり、ここは一足先に地霊殿へ向かおう。もし普通に大穴から行って霊夢達の道の前を行こうものなら霊夢に気付かれるかもしれないから、霊夢達が行った後に『ワープゲート』から誰よりも早く地霊殿に。
そう決めると、私は霊夢達が大穴を降りていくのを待った。
そして、大穴から降りていく霊夢達を見届けると、ゲートで地霊殿へと向かった────
異変終了後のEX(後日談)を含めれば、本編だけで100話行くかもしれない。というか行かす()