東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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幻想郷へ行く前のお話。番外編。ただ、次女と末妹が戯れるだけの模様。

無性に書きたくなったから書いた。反省はしても後悔はしない()
本編以上のR15要素(微エロ+微グロ?)があるので読むさいにはご注意ください。


番外編「末妹の吸血衝動」

 side Renata Scarlet

 

 ──フランの部屋

 

 その日、フランの部屋に一人で来た。

 理由はなく、いつも通りの日常と化していただけの行動だった。

 

「おはよ。今日も来てくれたの? うふふ、ありがとね」

 

 最近、お姉様に会いに行くよりも、フランと遊ぶことが多くなっている。

 それは姉よりも妹が好きだから、という訳ではない。ただ単に、(フラン)を一人にするのが怖く、安心できないのだ。私はこの娘が一人で強がっていても、本心では寂しがっていることを知っている。一人でいるのが怖いことも知っている。一人で孤独に苛まれ、狂気に身をゆだねかねない心の弱さも知っている。

 だからこそ、フランの姉として、フランを一人にはさせたくない。

 

「おはようございます、フラン。毎日来るのは当たり前のことですよ。私は貴女のお姉ちゃんですから」

 

 人間にしては遅く、吸血鬼にしては少し早めの挨拶を交わす。

 フランの部屋にはいつも来る時間はバラバラだ。寝る直前の日が差し始める頃もあれば、起きてすぐの日が落ちる頃にも来る。

 今日は、後者の方だった。

 

「レミリアお姉様でも毎日は来ないんだよ? お姉様も自分のこと優先していいからね?」

「お姉様は忙しいですから毎日来れないだけで、本当は毎日来たいと思っているのですよ? ですから、いつも暇を持て余している私が代わりに来るのです」

「別に代わりにお姉様が来る必要はないと思うけどなぁ。食事の時に会うし。ま、来てくれるのは素直に嬉しいけどねー。お姉様。そんなところで立ってないで、早く座ってよ。また面白そうな本を持ってきてくれたんでしょ?」

 

 私が持っていた本が目に入ったのか、フランに好奇心に満ち溢れた顔で期待の眼差しを向けられる。

 そして、フランが座っているベッドの横に手招きされた。

 

 昔は魔導書など難しい本ばかりを持ってきていたが、流石につまらなかったのか読んでいる途中で寝ることが多くなっていた。だから代わりにと、最近は漫画など年相応の物を持ってきている。フランもそれは面白いから好きみたいで、途中で寝てしまうことはなくなった。

 そもそも、フランは子供だから魔導書なんて難しい本を持ってくるべきではなかったのだが。

 

「はいはい。持ってきましたよ。この本は、子供になった探偵の──」

「ん? お姉様、それ前に見せてもらったよー?」

「あらま。そうでした?」

「うん、そうだよ。確か、一ヵ月くらい前だったかな? その時に持ってきてたよ」

 

 ──これは失態だった。まさか、一ヵ月前のことを忘れるとは......。

 

「ま、別にいいけどね。一緒に読もー」

「いいのです? すぐに変えてきますよ?」

「いいの。お姉様と一秒でも長くいたいからね」

「そ、それなら......一緒に読みましょうか」

 

 可愛い妹の願いなら、どんなことだって聞いてやりたい。

 そういう気持ちが強くなり、流されるままに本を開けた。

 

「最初の方は飛ばしいっ......!?」

「え? あ、血が......」

 

 本をペラペラとめくっていると、右手の人差し指に痛みを感じる。

 見てみると、どうやら紙で指を切ってしまったらしい。紙で指を切ることは今までも何度かあったが、今回は深く切ったのか、指の上ですごく小さな血の水溜りができていた。

 

「お姉様、血が出てるけど大丈夫?」

「これくらい大丈夫ですよ。舐めていればすぐに治りますから」

「ふーん......それってさぁ......」

「はい?」

 

 フランの目はまるで正気が失ったかのように、虚ろになっていく。

 

「私が舐めても、すぐに治るよね」

「ふ、フラン? どうしわっ!?」

 

 急にどうしたのか、フランは私を押し倒し、馬乗りになって怪我をした方の指だけを手に取る。

 

「最近お姉様の血、飲んでないのよね。欲求不満って言うのかな? 血を見てたら......無性に飲みたくなったの。だからさ。今日くらい、いいよね?」

「え、ちょ、ちょっと待っ......ぁ、もぅっ!」

 

 返事を待たずに指を口にくわえ、限り少ない血を一生懸命飲もうとする。

 血がそれ以上飲めないと分かれば、フランはさらに血を出すために少しだけ牙で傷を付け、そこからさらに血を得ようとしていた。

 

「あぁっ、ふりゃん! か、噛みゃなくても......」

「......あ、ごめんね。ごめんね、お姉様。でも、ちょっと美味しいから、もう少しだけ......」

 

 私の血は依存性でも高いのか、フランを虚ろな目にさせ、吸血衝動を駆り立てているようだった。

 

 ──もうこれ、はたから見たら危ない光景なんじゃ......。

 

 そうは思うも、当の私も吸血による魅惑や快楽の影響で抵抗する気にはなれなかった。逆に、ずっとこのままでいたい、という気気持ちになってしまう。

 

「ふ......フランっ。はぁ、指ばっかり吸わないで......はぁ、今日は、許しますから......あぁっ、首から、ちゃんと吸血してください......」

「えっ? ......い、いいの? 多分、私は自分を抑えきれないよ? だから、必要以上に......」

 

 その言葉に驚いたのか、先ほどまで一生懸命吸血していた指を口から離し、私の目の前へと顔を移動させた。

 

「既に必要以上吸われていますし......後で吸われた分だけ返してもらうので大丈夫です」

「......それ、私の方が大丈夫なのかなぁ。でも、いいよ。お姉様に吸血されることってあんまり無いし......いつも吸血されるお姉様の気分を味わえるんだしね」

 

 断られる前提で言ってみたのだが、予想外の答えが返ってきたことに少し混乱する。

 

「い、いいのですね......。で、では、先に首から......」

「うんっ! それにしても、ふふっ。こんなお姉様初めて見るなぁ。私を求めてくれてる感じがして、とっても嬉しいよ」

「そ、そうです?」

「そうだよ。じゃ、失礼して」

 

 フランは噛むのに邪魔な髪をどけ、首元へ顔を持っていくと、ゆっくりとその皮膚に牙を立てた。

 

「あぁっ! や、やっぱり少しだけ痛いです......あっ!」

 

 そして、血の吸う音とともに、フランは吸血を始めた。

 

 最初は鋭い痛みがあったものの、次第に和らぎ、逆に段々と吸血の魅惑が強くなる。

 私は、気付かぬ間に快楽の渦へと引き込まれていった。

 

 

 

 それから何時間。いや、何分経ったのだろうか。

 

「ふ、フラン......」

「うぅん......もう少し。もう少しだけ......」

 

 もはや時間の感覚すら無くなるほど長い間血を吸われ、頭の中が真っ白になってきていた。

 

 それでも少ない自我を振り絞って、フランに声をかけ続ける。

 

「あ、あぁっ......ふ、フラン......!」

 

 気付いた時には、私は快楽を必死に抑えようとしてか、それともそれを少しでも発散させようとしたのか、今出せる精一杯の力でフランを抱きしめていた。

 

「......ぷはぁ。はぁ、はぁ、はぁー......何? もしかして、もうダメになっちゃった?」

「は、はい......。貧血気味です......。フラン、ちょ、ちょっとだけ......このままでいさせてください......」

「いいけど、もしかして魅惑で私の虜でもなっちゃった? ......うふふ、なんて冗談。吸血って人間以外にも痛みと一緒に魅惑の影響を与えたり、快楽を与えるんだって。知ってた?」

 

 悪魔らしく、口を歪めて話しかけてくる。

 本当に、はたから見れば危ない光景に見えてきそうだ。

 

「ふ、ふらん? もしかして、知ってて吸血を?」

「ま、さっき聞いたくらいだし、それは知ってたよ。でも、許したのはお姉様でしょ? 私、てっきり知ってて言ってるんだと思ってたわ」

 

 ──あぁ、だから、さっき驚いて......。でも、何気に自分を抑えて止めれてる。フランも成長してるんだね......あぁ、まだもう少しこのままでいたい。できればお姉様とも......。

 

「そ、そうなのですね。私、知らなかったです......」

「そうなんだ......。よかったね。また知識が一つ増えたよ」

 

 そう耳元で囁きながら、私を受け入れるようにして、フランは私の背中へと手を回した。

 

「あまり嬉しくないですけど......」

「あははー。ま、私はもう充分飲めたし満足したよー。

 もうすぐしたらご飯だろうし、上に行こっかー」

「......はいぃ? フラン? 自分だけ何もされずに行けるとでも?」

「ふぇ? お、お姉様、どうしたの? か、顔が怖いきゃっ」

 

 抱きしめながらも、私は転がってフランとの位置関係を逆転させる。

 

「最初に言いましたよね? 吸われた分は返してもらうと」

「た、確かに言われたけどっ! ......はぁー、やめて、って言っても聞いてくれないよね?」

「はい。貧血気味ですし、血を今すぐ補給したいのです......。姉妹ですし、結構合うと思うのですよね。それに、姉として、やられっぱなしって......ねぇ?」

「むぅ......はぁー、いいよ。別にいいから、やるなら早くしてよね。誰か来て見られても恥ずかしいし......」

 

 珍しく頬を赤らめながら、顔を逸らして話される。

 

 あまりの女性らしい可愛さに理性が飛びそうになる。

 

「わ、分かりました。では、失礼します」

「うん。......できれば痛くしないでね?」

「それは無理では......できる限り努力します」

「ありがと。じゃ、やって」

 

 フランに許可を貰うと、私はゆっくりと自分の妹の首元に噛み付いた────




ちなみに、小説内でケガをして傷口をなめる描写がありましたが、それはフラン達が清潔だったからできたことです。
口の中の雑菌が傷口から入ったり、逆に傷口のばい菌を口に入れてしまう可能性があります。ので、実際にはやらないでください()
いやまぁ、それを言うと吸血行為も(ry

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