蛇寮のハーマイオニー   作:強還元水

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第八章 忍び寄る恐怖

 「あれってどういう意味なの?」パンジーが監督生から注意を受けないように声を潜めて尋ねた。

 

 「スリザリンの継承者がホグワーツに戻って来たってことだ」マルフォイが鼻を鳴らして答える。

 

 スリザリンの生徒たちは血の文字が書かれた壁から寮へと素早く移動していた。6人の監督生は集団を包囲する形で散らばり、物音ひとつでも聞こえれば立ち止まらせて警戒を強めていた。ハーマイオニーにはスリザリンの継承者が何を意味しているのか分からなかった。秘密の部屋がどういった部屋であるかも。ただ、ダンブルドアが深刻に受け止めるほどの事態になっていることは確かだった。

 

 ――スリザリンの継承者? その人物の敵はマグル生まれなの? さっきのマルフォイの言葉はただの脅し?

 

 ハーマイオニーは素早く考えを巡らせる。

 

 ――どのような意味で継承者なのかしら? 財産? 知識? あるいは血統の継承者? だとするとその血統ははるか昔のサラザールのもの? 

 

 ――彼は非常に強力な魔法使いだったらしいけど、果たして現在までその血を絶やさずにいられるかしら。でも……マルフォイ家は1000年前から続く家だって話だし

 

 談話室につき、寄宿舎に行こうとしたところで、誰も自分の部屋に行こうとしていないことにハーマイオニーはかろうじて気が付いた。

 

 ――仮にサラザールの継承者だとしたら何か遺産を引き継ぐのかしら。でも学校で? 学校に残したならば優秀な先生が引き継ぐべきじゃないかしら? ロックハートみたいなのにはあり得ないけど……。

 

 ハーマイオニーはそこでふと壁の文字を思い出した。

 

 ――なぜ『秘密の部屋』って呼ばれているの? おかしい。秘密の部屋。どうして秘密なのかしら。秘密の部屋は開かれたり。どうして継承者を必要としたのかしら。

 

 「誰が継承者だと思う?」トレイシーがローブの端を少し握りながらパンジーに尋ねた。

 

 「間違いなくスリザリンの生徒よね」

 

 「多分……絶対じゃない」

 

 目を向けると、ダフネが考え込むように腹の上で手を組んで立っていた。

 

 「どういう意味だよ」ノットは不満げな様子だ。

 

 「ポッターの可能性もあるわ」

 

 パンジーは小馬鹿にしたように小さく笑った。「ポッター? 彼は間抜けよ。魔法もろくに知らない」

 

 「君はポッターがスリザリンの継承者だと思うのかい?」マルフォイは幅広のこめかみを抑えつつ尋ねた。

 

 「俺にも聞かせてくれ」ザビニが割り込み、談話室の生徒たちもダフネの話に耳を傾けているようだった。

 

 「闇の帝王は個人的に彼を探していたわ」

 

 「それは根拠にならない」ノットは素早く言った。「闇の帝王は個人的にゴブリンの家族を殺したことがあった。でもゴブリンがスリザリンの継承者だったからじゃない」

 

 「ゴブリンは人間じゃないわ」ダフネは挑むようにノットを見つめた。

 

 「ポッター家は何らかの理由があって隠れていた。そして闇の帝王は手間暇をかけてポッター家を探し、襲撃した。ポッター家には何かがあったのよ」

 

 「何か理由があったかもしれないが、今回の件とは関係ないだろ。ポッター夫妻は簡単に死んだ。赤ん坊は生き残ったけど……」

 

 ダフネは言葉を濁したザビニを楽しそうに見つめる。

 

 「どうして闇の帝王は赤ん坊を殺し損ねたのかしら? 正直、ポッターは箒以外優れたところがあるとは思えないわ。ポッターが助かったのは彼の体に流れる血が特別だったからよ。そして、それは闇の帝王の権威を貶める物だったんだわ」

 

 誰かが反論しようと口を開きかけた時、ダフネは言葉を紡いだ。

 

 「両親がよく言うわ。高貴な血は常に保たれ存続し続けるって。思い出して、闇の帝王は消えたけど、ポッターはまだこの学校にいる」

 

 ダフネはゆっくりと唇を重ね合わせた。談話室は異常に静かだった。マルフォイは困った顔を浮かべて、椅子に深々と座っている。

 

 ――ハリー・ポッターがスリザリンの継承者?

 

 ハーマイオニーはダフネの意見が正しいとは思えなかった。

 

 ――でも一体誰が継承者?

 

 疑問はぐるぐると頭の中で回転していた。

 

 

 「ミス―――あー?」

 「グレンジャーです。先生、『秘密の部屋』について何か教えていただけませんか」

 

 

 「どうして『秘密の部屋』に興味があるんだい?」

 

 魔法史の授業の後、後ろからやって来たマルフォイが尋ねた。

 

 「グレンジャー、もしかして君は……怖いのかい?」

 

 「穢れた血だものね!」嘲笑うドラコに合わせるようにパンジーは叫んだ。「貴方は用心しなくちゃ、あの猫のようにぶら下げられることになるもの!」

 

 ハーマイオニーは殴りかかろうとしたが、ドラコとクラッブとゴイルが前に出てそれを防いだ。パンジーは素早く後ろに隠れると、ダフネとトレイシーと一緒にハーマイオニーを睨みつけた。

 

 「貴方も用心するべきよ。私がこの間チェックした時、貴方は全ての教科で私より劣っていたわ」ハーマイオニーは震える声を何とか抑えつけながら言い放った。

 

 「私は純血よ」とパンジーは短いセリフを吐き、睨んだ。「継承者は私に手を出さないわ」

 

 「あら、貴方は男なら誰にでも手を出すのに?」

 

 パンジーは飛び出さんばかりに目を見開き、唸り声で歯をむき出しにした。

 

 「貴方が死んだら、大喜びしてあげる。継承者は他の全ての穢れた血と同様、あなたを殺してくれるわ。スリザリンには穢れた血はふさわしくない」

 

 「それは1000年前の話よ。そしてマグルも魔法族の存在を知っていた時代。もしかしたら今の選別方法は成績かも知れないわよ。スネイプ先生の話を思い出して見て? 足を引っ張る馬鹿な生徒は縁を切られるのよ」

 

 マルフォイは待っていましたとばかりに、コホンと1つ咳払いをして周りの視線を集めた。

 

 「50年前に秘密の部屋が開かれた時、殺された1人の女子生徒は間違いなく穢れた血だった」

 

 

 『エクスペリアームス(武器よ去れ)「武装解除術」。この呪文は通常、対象の持つ武器を強制的に吹き飛ばし、武装解除するのに用いられます。それゆえ、安易に対立を終わらせることが可能です。「盾の呪文」とともに使用されることが多く、武装解除術は身を守る上で最も非暴力的な方法の1つです。

 武装解除術は使用者によっては大きな作用を生み出すことが出来ます。術の当て場所や練度次第では、武器を持つ人間も同時に吹き飛ばして気絶させたり、吹き飛ばした武器を自分の手元に来させることが可能です』

 

 ハーマイオニーは自分自身を守る術を必要としていた。継承者が自分自身を襲いに来るというのならば、何とか対抗できる状態にしておきたかったのだ。ハーマイオニーは低学年の内から盾の呪文を学んでおくべきだと言う持論が間違っていなかったのを嬉しく思ったが、盾の呪文の後ろに隠れてひたすら救助を待ちたくはなかった。しかし武装解除を身に着け、継承者から杖を奪えば、継承者は自分を襲うことが出来ないのだ。

 

 だが残念なことに習得するために必要な対象者がいなかった。ウィーズリーを怒らせて魔法を唱えさせるという案もあったが、城の中で杖を出せば問題になることは間違いなかったし、スリザリンのヘイトがたまっている今、他の学生からいつも以上に冷たい視線を浴びせられるのは確実だった。

 

 ――パドマなら。パドマならきっと協力してくれる……。

 

 

 朝食は厳粛な雰囲気に包まれていた。前日、ポッターの活躍でスリザリンはグリフィンドールにクィディッチの試合で負けたのだ。ハリーは腕を折ったが、それと引き換えにスニッチを捕まえた。しかし、マルフォイはハリーとの競争の中で、地面へと無様に落ちたのだ。マルフォイは口を閉じ、パンジーでさえもおしゃべりをしていなかった。

 

 「150点差ってことは、シーカーの実力差で勝負が決まったってこと?」トレイシーがそっとダフネに尋ねる声はやけに大きく聞こえた。

 

 「より良いシーカーの条件は何だったかしら? 箒の質? 生まれの質?」ダフネは腕に抱き着くトレイシーを引きはがして容赦のない微笑みを浮かべた。

 

 「それとも箒の質だったかしら?」

 

 ハーマイオニーはドラコが顔を赤くして小さく痙攣するのを見た。

 

 「僕はどの点においてもポッターを上回っている。奴は運が良かったんだ」

 

 「そうさ、自分よりも遅い箒に乗るポッターを叩き潰すだけの簡単な仕事だったんだ」ザビニはあくびしながら独り言のようにつぶやいた。

 

 「おい、お前ら! 凄いニュースだぞ! 僕が何を見てきたか分かるか!?」

 

 上級生が駆け足でやって来て、スリザリンの席についた。

 

 「医務室にいったらスネイプ先生が薬を飲ませようとしていたんだ!」

 

 「腕がプランプランになったポッターにか?」とうんざりした様に上級生がぼやいた。

 

 「腕は笑えたが、それじゃない」上級生は興奮気味にまくしたてる。「穢れた血の1年生が石にされていたんだ」

 

 上級生はゾッとするほど悪意に満ちた笑みを浮かべた。

 

 「第1の犠牲者が出たぞ」

 

 

 継承者の敵はマグル生まれの生徒だった。継承者は1年生から順に襲うのだろうか。どういう法則があるにせよ、ハーマイオニーの番が来るのは確実なことだった。その日、授業に集中するのに苦労するほど、ハーマイオニーは気が散っていた。

 

 ミリセントに肘で軽く突つかれ、ハーマイオニーは何?とうなり声を上げた。

 

 「取り掛からないの?」

 

 「えっ、もう始まってる?」

 

 「魔法薬学よ。集中して」

 

 「ああ。そう」

 

 ハーマイオニーは教科書を開いたが、全く目を通すことが出来なかった。それどころではない気がしたのだ。何とかして武装解除術の習得に取り掛からなければ、その思いばかり募っていった。継承者に襲われる前に、何とか。

 

 ――でも直接襲ってこないとすれば? 敵がもしも……怪物だったとすれば?

 

 突然、微風が吹いて、目の前に黒いローブが現れた。ハーマイオニーの大釜は空だった。調合の素材でさえ、刻んでいなかった。ハーマイオニーはゆっくりと顔を上げ、スネイプの黒い目と視線を合わせた。

 

 「これは新しいテクニックかね」スネイプは穏やかな声で尋ねた。「自動的に魔法薬を創造する術を思いついたのかね?」

 

 「いいえ」ハーマイオニーは恥ずかしくて俯いて返事した。

 

 「時間通りに終わらせることが出来れば、まだ『О評価(おおいによろしい)』かもしれない。ただ、このまま何もせずに我輩の授業を受けるというならば『T評価(トロール並)』ということも……」

 

 ハーマイオニーが絶望を抱きながら顔を上げた時、スネイプは言い放った。

 

 「調合を始めたまえ」

 

 ハーマイオニーは急いで立ち上がり、調合の素材を取りに行った。そして危険なほどに素早く素材を切った。不均一なスライス、それに荒っぽい寸法。今までで最も酷い出来なのは間違いなかった。しかし幸いなことに、大釜を吹き飛ばすようなことは無かった。

 

 調合終了の数秒前で、液体を小瓶に詰めることが出来た。しかしそれは、本の説明とはまったく合わない暗い茶色であった。マルフォイはスネイプの机へ行く途中でハーマイオニーの隣ににじり寄り、誇らしげに笑顔を見せた。

 

 「今日は調子が悪かったみたいだな。えっ、グレンジャー?」マルフォイの液体は、透明な琥珀だ。

 

 「何か、気に障る出来事でもあったのかい?」

 

 「何かあった時じゃないと勝てないなんて全く誇らしい事じゃないわ。普段の授業で勝てないからこうやってわざわざ宣告しに来るのね」と言い返しつつも、ハーマイオニーは泣きそうになっていた。

 

 「言葉には気をつけろよ、グレンジャー。怪物がどこで耳を――」

 

 「ミスター・マルフォイ」教壇からスネイプは冷たい声を発した。スネイプは提出されたマルフォイの薬を吟味中だった。

 

 「授業の後、教室に残りたまえ」

 

 「そんな! 僕の魔法薬は完璧です!」

 

 「教室の外では話し辛いことだ。……お父上から伝言を預かっている。……あのパフォーマンスを見てお父上は大変胸を痛めたそうだ」

 

 マルフォイは顔を赤くして軽い痙攣を起こしていた。

 

 

 校長のオフィスを守る石のガーゴイルは奇妙だった。自分を見ているかのように感じるのに、ガーゴイルは全く動かず静かだ。

 

 「すみません」

 

 ガーゴイルが聞いているように感じるのに、やはり動かない。ハーマイオニーは誰も来ていないことを確認するために素早くホールに目を走らせる。

 

 「校長に会う用事があるんです。どうしてもダンブルドア先生にお会いしたいんです」

 

 ハーマイオニーは頭を振って俯いた。ガーゴイルは全く動く気配がなかった。それは完全に石だった。

 

 「お願いします……。どうしても会う必要があるんです」

 

 突然、目の前の壁が開き、石の床が浮かび上がると、螺旋を描きながらぐんぐんと上へ伸びていった。そしてそれは最終的に螺旋階段へと形を変えた。

 

 「えっと、ありがとう」

 

 ハーマイオニーはウィンクするガーゴイルにお礼を言い、階段に足をかけた。階段は自動的にハーマイオニーを上階へと運ぶ。オークの木でできた扉が前方に現れたところで階段は動きを止めた。ハーマイオニーは前に進み、金色のドアノックで二度扉を叩いた。

 

 扉は勝手に開いた。円形の部屋にはメモリや羅針盤やその他変わった物がおかれていた。部屋の反対側には大きな机が置かれ、そこにダンブルドアが座っている。

 

 ダンブルドアは長さ15センチほどの羽ペンを使って羊皮紙に何かを書き込んでいる。羽ペンの羽は心配になるほど揺れ、ダンブルドアと同じく古いのが見て取れる。

 

 ハーマイオニーが部屋に入って来てもダンブルドアは顔を上げなかった。ハーマイオニーが机の傍に歩いて1分ほど経った頃に、ようやくダンブルドアは顔を上げた。

 

 「ああ、ミス・グレンジャー!」ダンブルドアの眉は驚きで跳ねあがった。

 

 「何か約束があったかね? どうにも物覚えが悪くなってきてしまってな」

 

 「いいえ」

 

  ハーマイオニーは急に自分が場違いなことをしている気がしてきた。ダンブルドアは世紀で最も優れた魔法使いだ。事件の解決の術などとうに思いついているのだろう。

 

 「約束は……していないです。私、ガーゴイルに頼み込んだんです。あの……出ます」

 

 ハーマイオニーは自分の髪が顔を叩くほど素早く後ろを振り返った。

 

 「出て行く必要などない」とダンブルドアは穏やかな口調で告げた。

 

 「君は既にここにいる。約束など必要はないじゃろう。さて、用件を聞こうか」

 

 ハーマイオニーは躊躇しながらダンブルドアの元へ寄った。ダンブルドアは自分の傍に椅子をだし、手招きしてハーマイオニーを呼んだ。ハーマイオニーはその魅力的な提案に従い、椅子に腰を下ろした。

 

 「あの……私……よく……」

 

 ダンブルドアは突然クスクスと笑いだし、ハーマイオニーは顔を上げてダンブルドアの目を覗き込んだ。

 

 「感情を隠す必要などない。恐れを悪いことだと思うのはスリザリン生の欠点じゃ。恐れを受け入れなさい。そうすれば勇気と強さは自然に身につく」

うすれば勇気と強さは自然に身につく」

 

 ダンブルドアは再び微笑んだ。

 

 「秘密の部屋について知りたいんじゃな?」

 

 ハーマイオニーは魂を見透かされたような感覚を感じて僅かに体をビクッと揺らした。

 

 「保障しよう、ハーマイオニー。おっとハーマイオニーと呼んでもよろしいかな? ありがとう。ハーマイオニー、するべきことの全てはされていると約束しよう。心配する必要はないのじゃ」

 

 ハーマイオニーは机に目を落とした。ダンブルドアの言葉は頭の中で何度も響いていた。心配する必要はない。されるべきことは全てされている。

 

 それは……あまりに不十分な答えに思えた。

 

 「校長は医務室で寝ている男の子にも同じことを話したんですか? 心配する必要はないと仰ったんですか?」

 

 ダンブルドアはほんの少ししか微笑まなかった。「彼は助かる。心配する必要はないのじゃ」

 

 「校長は私が心配しないために何をしていますか? 1人の生徒は既に石にされました。マンドレイクは春まで収穫できません。男の子は最初の1年間を石で過ごすことになるんです。それに、継承者が捕まらなければこれからも犠牲者が増えます!」

 

 「ミス・グレンジャー――」

 

 ハーマイオニーはいつの間にか溢れ出していた涙をぬぐって話を続けた。

 

 「私が次の標的だとしたらどうしますか? 校長はそれを止めるための手段を考えていますか? 私はマグル生まれなのにスリザリン生です。最優先に狙われることは間違いないです。どうですか? 次が私なら止められますか? 何か手段はあるんですか?」

 

 「彼女がスリザリンと言うのは確かなのか? それは……あまりにも屈辱的なことだ」

 

 突然ハーマイオニーの頭上から甲高く不快な声が聞こえた。見上げると肖像画の男が怒りに満ち溢れた顔でハーマイオニーを見ていた。

マイオニーを見ていた。

 

 「フィニアス……。すまんが席をはずしてれ」

 

 ハーマイオニーは胸に足を引き上げて、椅子の上で体を縮めた。それから俯いて涙を隠すように前髪を顔に下した。

 

 「ハーマイオニー、わしは君がどれほどの恐怖を感じているか分かっているつもりじゃ」

 

 「校長はマグル生まれですか?」

 

 「いいや。マグルとの関わりは他の物者よりも多いのじゃがな」

 

 「校長はスリザリンでしたか?」

 

 「いいや」

 

 「校長はこれまでに穢れた血と呼ばれたことがありますか?」

 

 「ミス・グレンジャー」

 

 「違うのにどうして私の感情が分かるっていうんですか? 悪いことをしていないのに非難めいた目で見られたことはありますか? 努力して授業で活躍しても褒めてくれるのは先生だけだったことがありますか? 寮では受け入れられず、外では緑色の服を着ているから差別される。そんな経験をしましたか?」

 

 ハーマイオニーはもはや何が言いたいのか分からなくなっていた。頭の中がぐちゃぐちゃになって訳が分からなくなっていた。

 

 ダンブルドアは眼鏡の中からジッとハーマイオニーのことを見つめていた。

 

 「わしは知っておる。君が感じていることを。君が必死に努力していることを。君が才能あふれる魔女であることを。

 しかし、一生懸命に努力しても障害は至る所にあるのじゃ。人々が何故か敵対的になることもある。わしは前にそのようなことを見て、また経験したことがある。しかし、ハーマイオニー。その困難な道の先に君の明るい人生が待っておるのじゃ。すべてが終わった時、君は自分が選んだ道と、自分が何者であったかと、これからの道を見ることが出来る。ハーマイオニー、君が自分の行く道を選択するのじゃ。そう、結局、君は自分の足で歩くしかないのじゃ。辛い道じゃが、それが才能を持つということなのかもしれん……」 

 

 


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