蛇寮のハーマイオニー   作:強還元水

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第十章 落雷の中の試合

 「この腕でクィディッチが出来るだろうか……」窓を打つ嵐をよそに、マルフォイがため息をついた。

 

 「もうあなたの腕は治ってるでしょうが」ドラコの隣にバッグを置きながらハーマイオニーはウンザリと呟いた。

 

 「まだちょっと痛むんだ」ドラコはそう呟き、『傷ついた』腕で耳を掻いた。

 

 「それで、今日は何を相手にするんだ? 鋭い牙のある人魚か? ボガード、レッドキャップ、河童……まったく、ルーピンは魔法生物に対して強迫観念でも抱いているんじゃないか?」

 

 ハーマイオニーは同意の返事がわりにぶつぶつと呟いた。ハーマイオニーは闇の魔術に対する防衛術の授業で教室の一番後ろに座って、決して手を上げないようにしていた。それは授業を怖れていたからではなく、ルーピンに怒っていたからだ。ルーピンがスリザリンの授業で立ち往生していても、ハーマイオニーは決して質問に答えなかった。だからルーピンは、ハーマイオニー以外の生徒から答えを捻り出さなくてはならなかった。

 

 教室の扉が開いた。しかし、入って来たのはルーピンではなかった。スネイプだ。

 

 「ルーピン先生は今日は気分が悪く、授業が出来る状態ではないそうだ」スネイプの顔には明らかな悪意が浮かんでいた。「ルーピン先生はこれまでどのような内容を教えたのか、まったく記録を残しておらなかった。非常に嘆かわしい……。我々が今日学ぶのは――」スネイプは教科書の一番後ろまでページをめくった。「——人狼である」

 

 「狼人間?」パンジーがポツリと呟く。

 

 「その通りだ、パーキンソン。諸君、394ページを開きたまえ」

 

 「でも、先生。ルーピン先生はヒンキーパンクをやると話していました」とパンジーは苦々し気に視線を上げた。

 

 「どうして我輩がそれを考慮せねばならんのかね?」

 

 パンジーは無言で机に視線を落とした。

 

 「394ページを開きたまえ。いますぐにだ」

 

 生徒たちは教科書を無言で開いた。

 

 「人狼と真の狼をどうやって見分けるか、わかるものはいるかね?」

 

 生徒たちは皆シーンと黙り込み、身動きもせず座り込んだままだった。一部の生徒がハーマイオニーの方を振り返ったため、床を引っ掻く音がチラホラと聞こえた。しかし、彼らの期待に反してハーマイオニーは手を上げていなかった。

 

 「誰も分からんのかね?」スネイプは呆れた口調で呟いた。「すると、何かね。ルーピン先生は諸君に、基本的な両者の区別さえ教えていないと言うのかね」スネイプは退屈そうに見えた。しかし、その退屈そうな表情の下には明らかに悪意が隠れていた。「2カ月以上も教鞭をとっていたというのに、まったく……。グレンジャー、君なら答えが分かるだろう」

 

 ハーマイオニーは眉をひそめた。「いいえ」

 

 「いいえ?」珍しくスネイプは驚いた表情を浮かべた。「どうしてかね?」

 

 「人狼について記載されているのは最後の章です」

 

 「では、教科書を最後まで読まなかったという事かね?」

 

 「記載されているのは最後の章です」ハーマイオニーは繰り返した。「ルーピン先生はしっかりとした方で、授業スケジュールを緻密に管理できていると思ってました。なので、授業よりも先に進む必要はないかと思いまして」

 

 スネイプの口がゆっくりと弧を描いた。「確かに。生徒が先生に対して信頼を寄せるのは当然のことだ。ルーピン先生によって諸君の学習がどれだけ遅れているか、ダンブルドア校長にしっかりお伝えしておこう」

 

 それから暫くして、授業の終わりを知らせるベルが鳴った時、スネイプは教室中を見渡した。

 

 「各自レポートを書き、我輩に提出するよう。人狼の見分け方と殺し方についてだ」

 

 スリザリン生はうめき声をあげるほど愚かではなかった。

 

 

 ドラコがハーマイオニーの膝の上に包みを落とした。

 

 ハーマイオニーはそっとそれを拾いあげる。「なにこれ?」

 

 「プレゼント」

 

 「何の?」

 

 「君の誕生日プレゼント」

 

 ハーマイオニーは包みをひっくり返して裏側を見た。「私の誕生日は、2、3週間前よ」

 

 ドラコは肩をすくめる。「でも、君はそれを僕に言わなかっただろ。だから、僕は自分で調べなくちゃいけなかった」

 

 ハーマイオニーは包みを破いて中身を取り出した。それは緑と銀のウールで編まれたスリザリンのスカーフだった。

 

 「これをつけて応援に来てほしいんだ」

 

 「応援?」

 

 「クィディッチの試合の」

 

 「私、クィディッチは見に行かないわ」

 

 「いや、君は来るね」

 

 「どうして?」

 

 「僕がお願いしたから」

 

 「私の行動を勝手に決められるだなんて傲慢な考えは、さっさと捨てることね」

 

 「でも、普通は自分の寮を応援しに行くんだ。誰もがそうだ」

 

 「私はやるべきことがあるの」

 

 「一体何をするんだ?」ドラコはハーマイオニーの羊皮紙を覗き込んだ。

 

 「スネイプのレポートを書かなきゃ」ハーマイオニーは防御術の教科書を捲りながら答えた。

 

 「それ、やっても意味ないぞ。回収されないんだから」ドラコはハーマイオニーの隣の席に座りながら小さく笑った。

 

 「どうして?」

 

 「ルーピンはバカだけど、防衛術の教師だ。スネイプが自分の生徒に対して勝手に宿題を出すなんてことを認めるはずがない」

 

 ハーマイオニーはしばらくドラコの顔を見つめた。ドラコの言ったことは……間違っていないだろう。しかし、スネイプがそう簡単に引くとは考えにくい。

 

 ドラコはテーブルを指でトントン叩いた。「君は随分気詰まりしてるだろ。ずっと勉強ばかりしている」

 

 「そんなことは無いわ。勉強はしたくてしていることだもの」

 

 「ここ最近、ウィーズリーやポッターのことを揶揄ってもいないし。もっと何か、元気になるものが必要なんだ」

 

 「ドラコ、私に元気を与える物は勉強よ。もしくは読書。あるいは宿題」

 

 「耳が痛いほど素晴らしいよ。でも、クィディッチの試合には来る必要があると思うな」

 

 ハーマイオニーはため息をついた。「私がクィディッチを見に行くことがそんなに重要なの?」

 

 「スリザリン生がスリザリンチームを応援することは当然のことだ」ドラコは椅子を後ろに傾けて、机を指でドラムのように叩いた。

 

 「まぁ……スリザリンのスカーフの使い道はそれぐらいしか無さそうだし」

 

 「見に来るのか?」ドラコは満面の笑みを浮かべて立ち上がった。「今回はグリフィンドールに勝てそうだ」

 

 「私1人が見に行くだけで試合結果が変わるなんて、そんな馬鹿なことは無いわよ」

 

 「1人応援してくれる人が増えるだけでも大分違うさ」ドラコはそう言うとテーブルを離れていった。

 

 誰かがハーマイオニーの後ろで咳払いした。振り返ると、年上の女の子が立っていた。「貴方がグレンジャー?」

 

 ハーマイオニーは静かに頷く。

 

 「ポッターがホールであなたのことを探しているわ」

 

 「ポッターが私を? なぜ?」

 

 女の子は肩をすくめて、その場からすぐに立ち去った。ハーマイオニーはゆっくりと立ち上がると、大広間を出た。ポッターは腕の中にオレンジ色の生き物を抱えて立っていた。

 

 「クルックシャンクス?」ハーマイオニーは急いでポッターの元へ駆け寄った。

 

 「グリフィンドール塔に居たんだ。ロンはこの猫を串刺しにしたがってた」

 

 「なんて野蛮なことを考えるのかしら」ハーマイオニーは眉をひそめ、ポッターからクルックシャンクスを受け取ろうと腕を伸ばした。

 

 しかし、ポッターは後ろに下がり、腕をかわした。「君、またグリフィンドール寮に入ろうとしたんじゃないよね?」

 

 「いや、えっと、何のこと?」ハーマイオニーは凍り付いた。「言っていることがよく分からないわ」

 

 ポッターの緑の目がハーマイオニーを見つめる。「いや、君なら何のことだか分かるはずだ。最初、僕は見当もつかなかったけど、犯人が誰なのか突き止めることが出来た。二度と同じことをしないでくれ」

 

 「おい、いったい何をしてるんだ?」ハーマイオニーの後ろで声が上がった。振り返ると、ドラコがゆったりとした足取りで近づいてきている。「ポッター、まさかペットを盗む気か?」

 

 「ポッターはクルックシャンクスを連れて来てくれたの」ハーマイオニーは再び手を伸ばした。ポッターは今度は猫を手放した。

 

 「明日が楽しみだな、ポッター」ドラコがポッターに意地悪気な笑みを見せた。「試合前になると、君が箒から落ちたうえに、腕を折ったことを思いだすよ」

 

 ポッターはドラコを睨みつけ、フッと静かに笑みを浮かべた。「僕はその試合で、スリザリンに勝利したことを思いだすよ」

 

 

 「それで、私はいったい何を見ればいいの?」バケツをひっくり返したかのような雨と荒れ狂う風の中、ハーマイオニーは暗い空を見つめながら尋ねた。

 

 「試合」ダフネが額にくっついた髪を剥がしながら答える。

 

 風の物凄さにハーマイオニーはよろめいた。傘、雨具は簡単に吹き飛ばされ、みんなずぶ濡れになっている。しかし、それでも観客は叫び、飛び跳ね、ヤジを飛ばし、声援していた。

 

 「これ、面白い?」天に向かって吠えているトレイシーを呆れた顔で見ながら、ハーマイオニーは言った。

 

 「すぐに貴方もそう思うようになるわよ。ほら、あそこを見て!」ダフネは暗い空を指さした。2つの点が一緒に空を飛び回っている。「ドラコとポッターよ。たぶん、スニッチを見つけたのね」

 

 「どうやってこの荒れた天気の中でスニッチを見つけたの?」ハーマイオニーは驚いてダフネの顔を見た。「1メートル先だってよく見えないでしょ?」

 

 ダフネは楽しそうに鼻歌を歌った。「彼らがシーカーだからよ。特別で、私達とは見える物が違うのよ」

 

 「ああ、そう」ハーマイオニーはブツブツと呟いた。

 

 風が鞭を打つように体にぶつかり、コートを持ち上げる。ハーマイオニーの目は選手から、空へ、それからスタンドへとあちらこちらに彷徨った。スリザリンの反対側にあるスタンドは赤と金色に染められていて、グリフィンドールが得点するごとに甲高い悲鳴を上がっている。その近くにはハッフルパフ生たちが集まっていて、一部はグリフィンドール色の服を着たり旗を振っていたりしたが、ほとんどはいつもの黄色と黒のハッフルパフカラーを着こんでいた。レイブンクローはスリザリン側に近いスタンドに集まっていたが、スリザリンを応援していると思われる生徒はほとんど見られなかった。

 

 ハーマイオニーは試しにスリザリンチームを応援してみた。そうすれば、スリザリンチームが得点を決めた時に他の生徒と一緒に喜べると思ったからだ。しかし、5分もするうちに馬鹿らしくなった。服はびしょ濡れで体を冷やし、指はかじかんで感覚がなくなり、耳も傷み始めていた。スリザリンチームがゴールを決め、スリザリン生が沸き上がる。しかし、ゲームは終わりそうになかった。

 

 ハーマイオニーは試合を見るのに飽きて、クィディッチ場の観察を始めた。ピッチはサッカーグランドと同じぐらいの大きさだが、長方形ではなく、卵型だった。そして空高く飛ぶ必要があるため、屋根は無く、雨が選手と観客に容赦なく降り注いでいた。

 

 グリフィンドールのスタンドを見ていたハーマイオニーは、応援席の端に犬が座っているのを発見した。大きくて黒い犬。驚くことに犬は試合を観戦しているように見えた。ハーマイオニーは首を傾げてその犬を見つめた。どこかで見た覚えがある気がするのだ。ホグズミードだろうか、それともハグリッドの飼っている動物の中で見かけたのだろうか。

 

 「ねえ、ダフネ」

 

 ハーマイオニーはダフネに声をかけたが、ダフネはトレイシーと一緒に飛び跳ね、それに気が付かなかった。

 

 突然、明るい光が空から落ちてきた。1秒にも満たない僅かなフラッシュ。雷だ。ハーマイオニーは心の中でラッキーと呟いた。スポーツは雷が落ちれば中止になるのだ。ハーマイオニーは試合中止を知らせるホイッスルが鳴るのを待った。しかし、それは何時まで経ってもやってこない。

 

 「ねえ、試合は止まらないの?」ハーマイオニーはダフネに問いかけた。

 

 「どうして?」

 

 「雷が落ちたじゃない。雷の中を飛ぶのは安全じゃないわ!」

 

 ダフネはキョトンとした顔で首を振った。「彼らは大丈夫よ」

 

 

 「さあ、我々の寮へ戻ろう!」

 

 スリザリン生の行列は歓声と叫び声を上げて城へ進んだ。スリザリン生の一部はポッターが雲の上から落ちてきたことと、スリザリンが勝利したことで巨大なエクスタシーを得ていた。そして残りのスリザリン生は酷い嵐の中から抜け出せたことを喜んでいた。スリザリン生は大量の泥の足跡を城の廊下に残し、自分たちの寮まで闊歩した。

 

 談話室につくと、マーカス・フリントが暖炉の傍の椅子に飛び乗って、部屋が静かになるのを待った。それからフリントはクィディッチローブの襟首をつかんでドラコを引き寄せた。

 

 「スリザリンの勝利だ! マルフォイの勝利だ! ポッターはディメンターにビビって箒から落ちたぞ! 真の英雄はマルフォイだ!」

 

 歓声と叫び声が爆発した。耳と鼻がピンク色で、鼻水を少し垂らしたドラコはスリザリン生にもみくちゃにされた。ドラコは箒を掴んで満面の笑みを浮かべている。ドラコは箒を高く上げ、手を振った。スリザリン生は再び叫び声をあげ、ドラコの背中を激しく叩いた。

 

 誰かが酒の入った瓶を配り始め、あちこちに回り始めた。渡された人はそれぞれ1口ずつ飲み、回している。それがドラコの元へ渡った時、ドラコは何を思ったか酒を一気飲みした。そしてドラコはフリントに何かを耳打ちすると、瓶を手渡した。フリントは頷き、ドラコはフラフラと寄宿舎の方へ歩き出した。ハーマイオニーはその後を追って、男子の寄宿舎へと入って行く。

 

 「ドラコ、本当は今日の試合に満足していないんでしょ?」

 

 ドラコは歯を見せて笑顔を浮かべ、ハーマイオニーのことを持ち上げ、振り回した。「満足しているに決まっているじゃないか!」ハーマイオニーが悲鳴を上げて、ドラコが降ろすまでもがき続けた。

 

 「はぁ、私は納得できる試合じゃなかったわ」

 

 ドラコは手袋とローブをトランクに乱暴に投げた。そしてニンバス2001をベッドの横に優しく立てかけた。

 

 「あんな風にアルコールを飲むべきじゃなかった」ハーマイオニーは腕を組んで言った。

 

 「ちょっとだけだよ」ドラコは笑顔で言った。「どうせいつかは飲むんだ」

 

 「多分、あれウィスキーよ。一気に飲むのは危険だわ」

 

 ドラコは万歳して叫んだ。「僕たちの勝利だ! 祝ってくれ!」

 

 「ポッターが稲妻に打たれたから、っていうのが勝因だけどね」

 

 「よしてくれ、ハーマイオニー。勝利は、勝利だ。それに、ポッターは稲妻に打たれたんじゃない。ディメンターにビビって箒から落ちたんだ」

 

 「どうやって落ちたかが問題なんじゃないの」ハーマイオニーは沸き立った。「ポッターが空から落ちて死にそうになっている時に、貴方がスニッチを捕まえることを優先したのが問題なの」

 

 「でも、結局ダンブルドアが助けたじゃ無いか。それに、僕はクィディッチのルールを一切破ってない」

 

 「クィディッチのルール? 正直言ってそのクィディッチのルール自体、色々と可笑しな所があると思うわ。だって、雷が鳴ってるっていうのに試合を続行するのよ? ホント、馬鹿げてるわ」

 

 「ハーマイオニー、僕達は魔法使いだ。マグルの基準で物事を判断するのはやめろ」

 

 「いいえ、私は極めて合理的な考えで判断してるわ。あれは危険な試合だった。ドラコ、貴方だって怪我をする可能性があったわ」

 

 「そうか、僕のことを心配していてくれたのか」ドラコは赤い顔で笑みを浮かべた。

 

 「ええ、その通りよ」ハーマイオニーはイライラと呟いた。「貴方はたった1人の友達だもの。死なれたら困るわ」

 

 「おい、それは違うぞ」ドラコは素早く言い返す。「ダフネは君の友人だ。アストリアにデイビスもそうだ」

 

 「貴方が居なくなれば彼女たちは友人をやめるわ」

 

 ドラコは肩をすくめた。「アストリアは君の弟子になることを固く決意しているみたいだけど?」

 

 「彼女はダフネから良い話ばかり聞かされたのよ。ダフネが私から離れれば、彼女も自然に離れていくわ」

 

 「君は随分と悲観的な人間みたいだ」

 

 「私は別に、悲観的な人間じゃないわ」

 

 「君は僕が死ねばみんな自分から離れていくと言う」ドラコは静かに呟いた。「だが、僕が君のために集めた情報によると、そうでは無いようだ。僕は彼女たちが君から離れないと確信してる。まあ、とにかく、心配する必要は無い」

 

 「心配なんかしてないわ」

 

 「それから、気楽に構えてくれ」

 

 ハーマイオニーはイライラと語り出した。「私、さっき違法な祝賀会を目撃したの。そこにはお酒があったわ。このことはスネイプ先生に報告しなくちゃいけないと思うの」

 

 「でも、実際には報告しない」

 

 「あら、どうしてそう思うの?」

 

 「僕たちが勝ったから!」

 

 ハーマイオニーは呆れた思いで酔ったドラコを見つめた。「こんな勝利じゃ、ポッターより勝っていると証明できないわよ?」

 

 ドラコはハーマイオニーの肩をふざけて叩いた。「僕が優れたシーカーだって、君が知っていてくれさえいればそれで良い」

 

 「私には分からないわよ。だってクィディッチのことなんてサッパリだから、どういう人物が優れたシーカーか見分けつかないもの」

 

 「僕が優れたシーカーだ」

 

 ハーマイオニーは鼻を鳴らした。

 

 「ちょっと、シャワーを浴びたいんだ。そろそろ、怒号から解放してもらっても良いかな?」

 

 「怒号まではいかないと思うけど」とハーマイオニーは不満気に呟いた。「でも、そうね。お邪魔したわ」ハーマイオニーは反転して部屋から出ようとした。

 

 「ちょっと待ってくれ」ドラコは呻くような声で呼び止めた。「クリスマス休暇は何してる?」

 

 「学校に残るわ。貴方は?」

 

 「僕は家に帰る予定だ。それで、君も来るかい?」

 

 「貴方の屋敷に?」

 

 「ああ。君が学校に残りたいと言うなら別に良いんだが。でも、スリザリン生はほぼ全員居なくなるぞ。君が唯一残った女子生徒になっても少しも驚きじゃ無い」

 

 「でも、両親に学校に残るって伝えたの。それに多分、両親は貴方の屋敷に行くことを許可してくれないと思うわ」

 

 「なら、両親に伝えなきゃ良いじゃ無いか」ドラコは赤い顔で意地の悪い笑みを浮かべた。

 

 


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