蛇寮のハーマイオニー   作:強還元水

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第三章 実際の防衛

 ギルデロイ・ロックハートが生徒の方にやって来て、ロングボトムが持っていた『トロールとのとろい旅』を取り上げ、ウインクしている自分自身の写真がついた表紙を高々と掲げた。

 

 「私だ」と本人もウインクしながら彼は言った。

 

 「ギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員、そして、『週刊魔女』5回連続『チャーミング・スマイル賞』受賞――もっとも、私はそんな話をするつもりはありませんよ。バンドンのなき妖怪バンシーをスマイルで追い払ったわけじゃありませんしね!」

 

 ロックハートはみんなが笑うのを待ったが、ごく数人があいまいに笑っただけだった。

 

 「最初にちょっとしたミニテストをやろうと思います」

 

 ハーマイオニーはグラッブとゴイルがくぐもったうめき声を出すのを耳にした。パンジーと一緒に座っている斜め前の席のマルフォイを見ると、少し怒っているように見える。でもそれは、ロックハートのせいではないだろう。おそらく、ポッターとウィーズリーが魔法がかけられた車で学校に来て、しかもそれをマグルに見られるという大事件を起こしたのにも関わらず、ダンブルドアが二人を退学にしなかった、という件があったからだ。それはハーマイオニー自身も可笑しいと思う処罰だった。

 

 「心配はご無用――君たちがどれくらい私の本を読んでいるか、どれくらい覚えているかをチェックするだけですからね」

 

 ハーマイオニーは闇の魔術に対する防衛術の教科書リストを確認して小さく微笑んだ。教科書のほとんどは既に頭に入っている。先生を失望させることはないだろう。

 

―――――

 1 ギルデロイ・ロックハートの好きな色は何?

―――――

 

 ハーマイオニーは笑みを凍りつかせた。配られたテストペーパーには、ロックハートの夢や好みや、単なる意見などのくだらない事しか載っていない。最後の54番まで問題をざっと見てみるが、やはり馬鹿らしい事ばかりだ。ハーマイオニーは必死にこれはクイズだと自分に言い聞かせて答えを記入し始めた。

 

 30分後、ロックハートは答案を回収し、クラス全員の前でパラパラとそれをめくった。

 

 「チッチッチ、私の好きな色はライラック色だということを、ほとんど誰も覚えていないようだね。『雪男とゆっくり一年』の中でそう言っているのに。ところが、ミス・ハーマイオニー・グレンジャーは、答えを知っていたようだ――よくできました! それに満点です! ミス・ハーマイオニー・グレンジャーはどこにいますか?」

 

 ハーマイオニーはスッと手を挙げた。

 

 「優秀なグレンジャーなら答えられると思ったわ」パンジーは忍び笑いをしながら呟く。

 

 「素晴らしい!まったく素晴らしい!スリザリンに10点あげましょう!では、授業ですが……」ハーマイオニーの手がまだ挙がっているのに気がつき、ロックハートは言葉を止めた。

 

 「どうしましたか、ミス・グレンジャー?」

 

 「先生、防衛術に関するテストをした方が、実際に役に立つと思いませんか?」

 

 ロックハートは表情を硬くしておうむ返しした。「実際に役に立つ?」

 

 「失礼ですが、先ほどのクイズは……本題からずれているように思えました」

 

 「なるほど、なるほど。ええ、ええ、言いたい事は分かりますよ。しかし、クイズにはしっかりと意味があるので」ロックハートは白い歯を見せて笑う。「私は偉大な魔法使いアルバス・ダンブルドアに直接依頼されて闇の魔術に対する防衛術の教師に就任しました」

 

 マルフォイがそこで軽く咳払いをしたため、ハーマイオニーはそっと視線をマルフォイに向けた。

 

 「ミス・グレンジャーの心配は理解出来ます。しかし私は、防衛術を実際に教える前に、生徒と信頼関係を築きたいのです。賢明な私の授業に万が一ついてこれない生徒が出たり、聞く気がない生徒が出てきてしまったら、自分自身を守る術など到底教える事が出来ませんからね」

 

 ハーマイオニーはロックハートの言葉に困惑し、やめようと思っていたのにも関わらず、質問を続けた。「しかしロックハート先生、先生の好きな色を答える事が信頼の構築に繋がるとは思えません」

 

 「私は信頼構築の一歩になると思いますよ」ギルデロイは面白そうな目つきでハーマイオニーを見つめた。

 

 「貴方は先生です。だから、生徒と信頼関係を結びたいというのは分かります。でも、校長や理事会の人が望んでいるのは、授業で信頼を得ることで、少なくともクイズではないかと」

 

 「ええ、全くその通りですね」とロックハートは答えた。そして机の後ろにかがみ込んで、覆いのかかった大きな籠を持ち上げ、机の上に置いた。

 

 「魔法界で最も汚れた生き物と戦う術を授けるのが、私の役目です。狼男と遭遇したらどうしますか? どんな魔法を使いますか。それはどうして効果的なのですか?」

 

 ロックハートはゆっくりとハーマイオニーの机に近寄り、愛想よく微笑んだ。

 

 「貴方はこれまでに狼男に会ったことがありますか?」

 

 「いいえ」

 

 「では変身するところを見たことがないと」

 

 「はい」

 

 「なるほど」とロックハートは明るい声で呟いた。「狼男になる瞬間、体のあらゆるものが変化します。変身が終わると毛皮、爪、牙が現れますが、それは非常に強固で脅威で、ほとんどの魔法が奴らを殺すまでには至りません」

 

 ロックハートは表情を消してハーマイオニーを見下ろした。

 

 「現在、狼男の数は少なくなっています。しかし、だからこそ危険なのです。彼らは狼男の数を増やすために子供に外傷を与え、わざと生かします。そうする事で、残念な事ですが、その子供は狼男になるからです。もしかすると……皆さんも狙われてるかもしれませんよ? ただし! 私がここにいる限り、何物も君たちに危害を加える事は出来ませんがね!」

 

 「しかし、私たちが1人でいるときに襲われたらどうするんですか?」

 

 「貴方は何歳かな?」

 

 「13歳です」

 

 「貴方が13または14、あるいは15歳で狼男に襲われたならば、私が個人的に貴方を襲った狼男に復讐に行きますよ」

 

 ロックハートは教卓へと戻ると籠の覆いに手をかけてパッと取り払った。「捕らえたばかりのコーンウォール地方のピクシー小妖精!」

 

 パンジーはハーマイオニーに顔を向けて笑う。「1年だって待てないわ。狼男でもディメンターでも何でも構わないから、彼女をはやく襲ってくれないかしら」

 

 防衛術の授業が終わると、ハーマイオニーは急いで教室の外へ出た。ロックハートは不親切で、傲慢で、防衛術に関して無知であった。だからハーマイオニーは初めての授業でロックハートのことを嫌いになった。

 

 ――ピクシー小妖精。こんな生物から身を守る術を今更学ぶ必要があるのかしら?

 

 去年クィレルが学校から消えた後、ハーマイオニーは来年は優秀な先生が来るだろうと期待していた。しかし、今日の授業で明らかにその期待は裏切られた。ロックハートから多くのことを学べるとは到底思えない。

 

 ハーマイオニーはダンブルドアに対しても失望を感じざるを得なかった。彼は今世紀で最も偉大な魔法使いであるかもしれないが、先生を選ぶことに関しては才能がない。

 

 先生の教育が当てにならないならば、独力で学ぶしかない。そう思ったハーマイオニーは、幾つかの計画を考え始めた。

 

 ハーマイオニーは次の授業である魔法薬学の教室に向かうために階段を降り始めた。

 

 ――新しい魔法を独学で身につけるためには、それに相応しい場所が必要ね

 

 自分の部屋でプライバシーを保ちながら学習するのが最も理想的な形であったが、実際には寮にプライバシーなど存在しない。ハーマイオニーは容易に、自分の練習を邪魔するためにパンジーが何か仕掛けてくることが想像出来た。

 

 ハーマイオニーは人気が全くない廊下へと着いた。この廊下は『走ることを禁じる』魔法がかけられていて、生徒たちはあまり近寄らない。元気のいい生徒にとっては、走っただけで拘束され、必ず厳罰を与えてくる廊下など、不愉快以外の何物でもなかったからだ。

 

 魔法薬学の教室に入ると、ムワッとした熱気が肌に感じられた。ハーマイオニーは前のテーブルに座って、教科書を取り出した。それからしばらくして、教室は生徒でいっぱいになった。ハーマイオニーの隣にはミリセントがカバンを置いて座った。人目を忍んで後ろを確認してみると、他の席はどこも埋まっており、いつものようにハーマイオニーは最後の選択肢であった。しかし、ハーマイオニーはそれでも構わなかった。少なくともミリセントは他の生徒とは違って礼儀正しかった。口をあまり聞いてくれなくても、悪口を言わないでいてくれるだけで満足だった。

 

 スネイプは滑るようにして教室に入ってくると、正面から生徒たちを見渡した。すると、今まで散々騒いでいた生徒達は一瞬にして口を閉じ、教室に沈黙が訪れた。

 

 スネイプは教卓の端をつかんで前屈みになり、生徒の顔をじっくりと見つめながら話し始めた。

 

 「もしも我輩に決める権利があったならば」スネイプは一度口を閉じると、再びゆっくりと冷えた声を出した。「昨年、お前達の半分を留年か退学にしていただろう」

 

 スネイプの黒い目がグリフィンドール生の集まるテーブルを向く。

 

 「校長は、フクロウの試験に落ちるまでは思春期の子供達を寛大な目で見るべきだとおっしゃった。だが、我輩は傲慢と堕情と無能に我慢する気はない」

 

 ロングボトムがベソをかく音は、静まり返る教室によく響き、それに続くように何人かの生徒が唾を飲み込む。

 

 「魔法薬学は非常に複雑だ。ふざけた態度をとる生徒には厳罰を与える。肝に銘じておけ」

 

 スネイプは素早く振り返ると、杖を振って黒板に魔法薬を作るための手順を書き始めた。

 

 「今日は昨年度の復習から始める。教科書の5ページを開け。それが吹き出物を治すのに役立つことは勿論覚えているな? さあ、準備に取り掛かれ!」

 

 ハーマイオニーは小さく笑みを浮かべると、素早く準備を始めた。

 

 

 「プロテゴ! 護れ!」

 

 ハーマイオニーはロックハートの授業に失望して以来、独学で魔法を学んでいた。宿題に取り掛かるのと並行して図書館で知識をかき集め、夕食後に誰もいない教室に忍び込んで実際に魔法を使うのだ。

 

 地下牢の教室はハーマイオニーにとって最高の場所だった。普段魔法薬学の授業で使われるその教室は、学生があまり近寄らない場所であり、なおかつスリザリンの寮から5分とかからない距離に位置していたからだ。

 

 「プロテゴ! 護れ!」

 

 本には魔法が成功したとしてもシールドはほとんど目に見えないと書かれていた。しかし、何度も練習しているうちに、腕を通じて杖へと流れていくエネルギーが感じられ始め、歪だが盾を展開させられているという実感できるようになった。

 

 だが、その盾はやはり歪で不完全なものであり、長い間展開しようとすると腕が震え始め、汗が額から流れ落ちる。ハーマイオニーは長いため息をつくと、魔法を霧散させた。

 

 時計を一瞥すると、フリットウィックが定期的に開催している呪文クラブが始まる10分前だった。ハーマイオニーがそのクラブを建設的なものだと思ったのは1年生の時のほんの僅かな間だけであったが、フリットウィック自身は優秀な先生であり、クラブには何度か参加していた。

 

 ——フリットウィック先生なら手伝ってくれるかもしれない。

 

 ハーマイオニーは本を片付けてバッグにしまうと教室を出た。

 

 地下のホールにやってきても、ほとんど生徒を見かけることはなかった。大部分の生徒は寮やどこか明るい場所で楽しんでいるのだろう。レイブンクロー生ならば図書館にいるかもしれないが。

 

 出来るだけ人気のない場所を通って呪文学の教室にやって来ると、ハーマイオニーは目立たないように教室を見渡した。集まる生徒達は昨年とほとんど変わらないメンバーだ。ハーマイオニーは空いているテーブルを見つけて、床にバッグを置き、席に着く。

 

 一番前のテーブルに座っているのはレイブンクローの監督生だと思われるブロンドの髪の女の子だった。女の子(記憶が正しければペルーナ)は、よく手入れのされた制服を着るパーシー・ウィーズリーと軽く談笑していた。

 

 ——ウィーズリー家の双子だわ

 

 教室の入り口を見ると、問題児で有名な2人がニヤニヤと教室を見ていた。パーシーはレイブンクローの女の子に気を取られているようで、まるでワルツを踊るようにしてウキウキと教室に入ってきた双子の兄弟に気がついていない。

 

 双子はパーシーと女の子の後ろにそっと移動して、パーシーの肩を軽く叩いた。

 

 「うわ、なんだ!」パーシーは驚いて叫び、双子は笑って素早く離れる。「お前達、ここで何をしているんだ!?」

 

 「パーシー、同じことを僕たちも聞きたいね」

 

 「ここで何をしているんだ、パーシー?」

 

 パーシーは胸を張って答える。「僕は監督生だ。だからフクロウの試験で優秀な成績をとるために、ここで呪文学の勉強をしに来ているんだ」

 

 「いやいや、そんなことが理由の訳がない」双子は同時に言った。

 

 「僕は専門的な知識も学びに来ているんだ。首席を目指しているし、ほら、校長の目に止まるように活動の幅は広げなくてはいけないから」

 

 双子はお互いを見つめて交互に喋った。

 

 「なあ、ジョージ?」

 

 「なあ、フレッド?」

 

 「これは面白いかもしれないぞ」

 

 「親愛なる兄弟には他に理由があるようだ」

 

 「実に面白そうだ」

 

 パーシーは焦ったように後ろの方の席を身振りで示した。

 

 「お前達も参加するつもりなら早く席につけ」

 

 「いいや、パーシー」双子の1人は指を振って言った。「我々はミス・クレアとお話をしたいだけなんだ」

 

 「とても可愛らしい女の子だ」

 

 「それに美しいブロンドの髪!」

 

 「魅惑的なレイブンクロー生!」

 

 「我が兄弟のお姫様!」

 

 パーシーの頬は真っ赤に染まり、まるでリンゴのようだった。「お前達、いい加減にしろ!」

 

 「おっと、我々の重要な議論を邪魔しないでくれパーシー」

 

 「では、ミス・ペネロピーにお聞きしますか、実際のところ我が兄弟はどうなんですか?」

 

 「えっと......」頬をバラ色に染めたクレアは、ぎこちない態度で言った。「そろそろクラブを始めなくちゃ」

 

 ハーマイオニーは1人で席に座っていたが、青いネクタイの小さな女の子と白みがかったブロンドの髪の女の子が滑るようにして横に座った。

 

 「誰か、ここに座りますか?」

 

 ハーマイオニーは何か言おうと口を開いたが、何も思い浮かばず、すぐに口を閉じて小さく首を横に振った。

 

 「はい、では、フリットウィック先生は遅れるとのことなので、私が代表してクラブを始めたいと思います」ペネロピーは立ち上がって、集まる生徒の注意を集めた。

 

 「今日は物を活発に動かすことを学ぶ予定です。意思通りに物を動かすというのは簡単なことですが、それは重要な基礎であり、色々な場面で役立つことになります。では、最初にウォーミングアップ的なものとして、物をダンスさせることから始めましょう。出来るだけ洗練された動きを意識してください。呪文はタラントアレグラです」

 

 数十秒後、ウィーズリーの双子はフリットウィックの机の物に魔法をかけ、教室の至る所で羽ペンや羊皮紙などを躍らせ始めた。

 

 「フレッド!ジョージ!それを早く止めろ!」

 

 「止めろだと、パーシー?」

 

 「愛が止まることはないぞ、パーシー?」

 

 「お前らいい加減に――」

 

 「ほっほっほっほー」

 

 その時、教室の入り口から甲高い笑い声が響き、目線をやると、満面の笑みを浮かべたフリットウィックが立っていた。

 

 「素晴らしい! 実に素晴らしい!」

 

 フリットウィックは楽しそうにステップを踏むと、自分の机の上に乗り、双子に混ざって物をあちこちで踊らせ始めた。

 

 「今日のクラブはとっても、楽しいわね」混沌に満ちた教室を見て、隣の女の子たちはクスクスと笑い声を上げる。

 

 ハーマイオニーは眉をひそめると、杖とノートを取り出してフリットウィックの机の元へ移動した。

 

 「フリットウィック先生、先生に質問があります!」ハーマイオニーは周りの騒ぎ声に負けない様に大きな声で言った。

 

 「あー、ミス・グレンジャー」フリットウィックは小さな体を少しかがめながらハーマイオニーを見下ろした。「楽しんでますか?」

 

 「あー、いえ。私は呪文を唱えていないです」

 

 「では、唱えなさい。ほら、楽しいですよ!」

 

 「しかし、先生……私は質問があって来たんです」

 

 「勿論答えましょう。でもその前に楽しみましょう! はい、唱えて!」

 

 ハーマイオニーは溜息を吐いて、杖を取り出した。「タラントアレグラ」

 

 ハーマイオニーのノートはフリットウィックの机の上でゆっくりと立ち上がり、回りだした。

 

 「うーむ……少し元気が足りないようだ。もう少しリズムを加えてみてみるといいかもしれない」

 

 「先生、お願いします。私は盾の呪文について聞きに来たんです」

 

 フリットウィックはキーキー声を出した。「盾の呪文? それは5年生で学ぶものですよ?」

 

 「ええ、でも私は学びたいのです」

 

 「どういう訳で貴方は学びたいんですか?」

 

 「それは……盾の呪文は非常に意味のある呪文であるのに、5年生になるまで学べないのは勿体ないと思ったからです」

 

 「しかし、そうは言っても習得するのはそう簡単な事じゃありません。多くの魔力を必要としますし、コントロールすることだって難しい。貴方が思っているよりも、多くの困難があるのです」

 

 「盾の呪文が難しいことは知っています。私が知りたいのは、どうやったら強固な盾を持続して展開できるかです」

 

 ウィーズリーの双子が大きな笑い声を上げた。チラリと視線を向けると、双子は呪文をかけた物を使ってパーシーに攻撃を加えていた。パーシーが罰してやる!と叫ぶと、双子は再度攻撃を加えた。それを見ていた生徒たちは何を思ったのか、自分たちも動かしていた物を使って他の生徒に軽い攻撃を仕掛け始め、教室は小さな戦争状態になった。

 

 「その答えは1つです。呪文から自分を守ってくれる盾をしっかりと思い浮かべることです」

 

 フリットウィックはハーマイオニーにウィンクすると、自分に突進してきた教科書に向かって杖を向けた。

 

 「プロテゴ! 護れ!」

 

 ハーマイオニーの前に微かに緑色に光る壁のようなものが現れ、それにあたった教科書はドンっと鈍い音をたてて地面に落ちた。

 

 「ミス・グレンジャー、盾の呪文は非常に強力です。しかし、習得するのが困難で、その上完全ではないと頼りない。貴方が習得するのは早すぎると思いますよ」

 

 ハーマイオニーは完璧なプロテゴを直で見れたことに興奮を感じるとともに、自分の楯が所詮お遊びであったことに気が付き、大きな失望を感じた。

 

 

 

 

 


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