蛇寮のハーマイオニー   作:強還元水

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第十七章 トムのアドバイス

 『大丈夫です。トム、ポッターの調査をしてきました』

 

 『君は生き残ったみたいだね。調査は上手くいったかい?』

 

 『ええ。ポッターは継承者じゃありませんでした』

 

 『……。しかし、君は彼がパーセルタングを話したと言ったじゃないか』

 

 『でも、ポッターじゃありませんでした。彼は自分が継承者じゃないと言い、私はそれを信じました』

 

 『ハーマイオニー、人は嘘をつくんだ。それにポッターはグリフィンドールだ。彼らは名誉を守るために嘘をつく。彼に磔の呪文を試したか?』

 

 『彼は嘘をついていませんでした。私は彼の目を見て、確信しました』

 

 トムは珍しく時間をおいた。

 

 『ハーマイオニー、君は開心術が使えるのか?』

 

 『それは何でしょう?』

 

 『希少な魔法だ。君がその名前を知らなかったことは驚くべきことじゃない。僕自身、数年前まで学ぶことがなかった』

 

 『その魔法は何をするためのものなんですか?』

 

 『いわば、人の心を読める魔法だ』

 

 『人の心を読むことが可能なんですか?』

 

 『ああ。そして、その魔法に対抗する魔法もある。それで、君はポッターの心の中を覗いたのか?』

 

 『いいえ。私は……ポッターを信じたんです』

 

 『ハーマイオニー、よく思い出してくれ。それは単なる直感じゃないかもしれない。何か感じるものはなかったか?』

 

 『私は……彼が感じていることを自分が感じるような感覚がしました。継承者に怯え、それから周りの視線に戸惑いを感じている。……これはポッターの心の中なんですか?』

 

 『彼は偽造したかもしれない。君を騙したのかも』

 

 『トム、彼はそんなに長けた魔法使いではないわ』

 

 『しかし、パーセルタングを話す。彼を過小評価することはできないだろう。彼は特別な何かを持っている……』

 

 『特別といえば、ポッターは死の呪いを受けて生き残りました』

 

 『死の呪い?』

 

 『はい。彼はほとんど赤ん坊の頃に死の呪いをかけられたんですが、生き残りました。そして呪いを唱えた闇の魔法使いを討ち滅ぼしました』

 

 『ハーマイオニー、誰も死の呪いから助かることはできない。それは不可能だ』

 

 『しかし、ポッターは生き残っています』

 

 『生き証人はいるのか?』

 

 『いません。しかし、その闇の魔法使いは死の呪いで多くの人々を殺しましたし、ポッターの両親も死の呪いで殺されました』

 

 『それだけでは可能性にすぎない。死の呪いは誰にも防げない。しかも、それがダンブルドアのような魔法使いではなく、赤ん坊だなんて』

 

 『そう言われても困ります。ポッターの額には傷跡があり、死の呪いを受けた印があるんです』

 

 『興味深い話だ。彼は赤ん坊の時に闇の魔法使いを破った。そしてパーセルタングを話す。継承者に相応しい要素が揃ってる』

 

 『それでも、彼は継承者じゃない。全く見当がつかないですけど、別の人です』

 

 『君はまだ調査を続けるべきだ』

 

 『どのように?』

 

 『僕も手伝う。それに、少なくとも怪物から身を守る術を教えることができる』

 

 『本当に? お願い出来ますか?』

 

 『もちろん。君はどんな呪文を知ってる?』

 

 『2年生になってから盾呪文、全身金縛り術、凍結呪文、武装解除術、切断呪文を覚えました』

 

 『素晴らしい。でも、攻撃的な呪文は覚えていないようだね。君の最も攻撃的な魔法は、少し切る程度のものにすぎない』

 

 『狙いを定めれば、切断呪文は強力な魔法になります』

 

 『ああ、その通りだ。しかし、敵対者と対決している時に、果たして狙いを定められるだろうか? どう思う?』

 

 『分かりませんが、多分大丈夫だと思います』

 

 『そう思うのは、君が実際的な戦闘をしたことが無いからだ。これからのことを考えれば、もっと役に立つ魔法を学ぶべきだ』

 

 『どんな魔法があるんですか?』

 

 『幾つか思いついている。そのほとんどの魔法は、君のレベルを超えている。しかし、僕のサポートと君の努力があれば、習得することは可能だ。何か書き留められるものはあるか?』

 

 ハーマイオニーは自分の机に目をやった。そこにあるほとんどのノートは授業用のノートで使われている。ハーマイオニーはトランクから新しいノートを取り出そうと立ち上がったが、パーバティーのノートがあるのに気がついた。ほとんど何も書かれておらず、新しいノートとして十分使える。ハーマイオニーは机に座ると、使っていた羽ペンにインクを染み込ませた。

 

 『準備出来ました』

 

 『コンフリンゴ 爆発せよ 対象にしたものを爆発させる。

 エクスパルソ 爆破 物を爆破させる。爆破の程度は術者の力と加減による。

 ボンバーダ 砕けよ 小さいものを爆破する。

 レダクト 粉々 対象物を粉々にする。

 

 これらの魔法は学校で学ぶものがほとんどで、厳しい状況下で使われるものではない。しかし、知っておくと便利だ。

 君が敵と1対1で闘う場合、以下の魔法をお勧めする。

 

 ステューピファイ 麻痺せよ 対象を失神させることができる。また、呪文自体にも相当の力があり、対象を吹き飛ばすことも可能。

 インカーセラス 縛れ 対象にローブを巻きつけ、縛り上げる。首に巻きつけ、窒息させることも可能。

 

 それからいざという時には、クルーシオ 苦しめ を使うことを勧める。が、一部の人は反対するかもしれない。

 もしも時間に余裕があるなら、真実薬を調合するといい。複雑な魔法薬だが、君ならば調合することができるはずだ』

 

 ハーマイオニーは急いでノートに走り書きをした。

 

 『ありがとう、トム』

 

 『役に立てて嬉しいよ。それから、ハーマイオニー。ポッターには注意し続けるべきだ。僕はまだ、彼を信用していない』


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