ダンジョンに牙狼がいるのは間違っているだろうか   作:ザルバ

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ぶっちゃけ駄文です


第22話

 ティオナとの一戦があった翌日、ベルはアイズと訓練をしていた。

「ふっ!」

 アイズがサーベルを振るいベルに一撃与えようとするがベルは牙狼剣で捌いていた。

「ふっ!」

 ベルがアイズが振り下ろしたサーベルを牙狼剣で受け止めるとそのまま回して下へと抑える。そして右反転回しゲルをアイズへと叩き込もうとする。

「くっ!」

 アイズは右腕で受け止めるが吹っ飛ばされる。

「はっ!」

 ベルは剣の地肌を合図に向けると一気に振り抜く。剣の振りによって発生した突風がアイズのバランスを崩す。

「はぁっ!」

 ベルはアイズに向かい跳び、牙狼剣の鞘を突く。

「っ!」

 アイズは自分の身体を後ろに倒し、右足を蹴り上げる。アイズはベルの鞘を蹴り、ベルから一本取れると思った。しかしアイズの予想は外れ、ベルは鞘から手を放していた。

 そのためベルはバランスを崩すことなかった。そしてベルはアイズを押さえつけ、喉元に刃を突き立てる。

「………」

「俺の勝ちだね。」

 ベルはそう言うとアイズの上から退け、アイズに手を伸ばす。アイズはその手を取り立ち上がる。

「また負けた……」

「気にすることはないよ。俺だって何度も負けたことがあるんだから。それに負けてからじゃないと気付けないことだってあるしね。」

「……うん。」

 二人はそう話しながら歩く。

「「……………」」

 ヘスティアとリリはそんな光景に不貞腐れていた。

「ははは、昨日と言い今日と言い、彼はすごいね。ねえ、アスフィ?」

「ええ……」

 二人の訓練の様子を見ていたヘルメスはアスフィに話しかけていた。

「本当に面白いよ、牙狼ってのは。僕も一度だけあったことがあるけど、面白いね。」

「牙狼に会ったことがあるのですか?」

「ああ。あれは……確か初代だったかな?」

 

 昼となりベルは気分転換に散歩をしようと思ったがなぜかヘスティア、リリ、アイズ、ティオネ、リュー、アスフィが付いて来た。

「散歩じゃなくてこれじゃあピクニックだね。」

『……………』

 ベルが口を開くが誰もしゃべろうとはしない。

 が、ベルは気にしなかった。

「そういやザルバ、ザルバはここに来たことがあるの?」

「ああ、あるぜ。……あ!」

「どうかした?」

「悪いベル。少しワガママを聞いてもらってもいいか?」

「いいけど……なんで?」

 ベルが問うとザルバは答えた。

「少し墓参りにな。」

「わかった……で、なんでヘルメス様は後ろから追尾しているんですか?」

『え?』

 ベルが後ろを振り向くとそこにはヘルメスの姿があった。

「おっと、気づいてたのかい?」

「ええ、最初から。」

「あらら、こりゃとんだドジを……実はちょっと君とザルバが気になってね。面白そうになっているから付いて行ったんだよ。」

「面白そう?」

 ヘルメスの言葉にベルは首を傾げるとヘルメスはベルを少しばかり理解する。

「あー、なるほど。君って鈍い方だね。」

「鈍い、ですか?俺は敵の気配とか敏感な方ですけど。」

「いや、そっちじゃないんだよ。」

「???」

 ベルは首をかしベルトヘスティア、リリ、アイズ、ティオナ、リューは溜息を吐いた。

「まあ、君たちも疲れているだろ?ここを少し行ったところに温泉があるんだけど良かったら行くかい?」

『行きます!』

 ヘルメスの提案に女性陣は乗った。ダンジョンにいる間は当然風呂に入れない。風呂に入れないため特に女性の冒険者は香水を使い臭いを消す。風呂に入れるのであれば乗らないわけにもいかないのである。

「ベル君、君も来るかい?」

「混浴はマズイでしょ。」

「大丈夫。ちゃんと男女に分かれているから。」

「じゃあ入ります。」

 ベルもヘルメスの話に乗る。

「じゃあご一行温泉へごあんな―い。」

 ヘルメスの後に付いて行き、一同は温泉へと足を運んだ。

 

「あの神……騙しやがったな。」

 ベルは風呂に浸かりながらそう呟いた。即席で作られた入り口では確かに男女に分かっていた。だが、それは入り口だけであり結局は同じところに入っているのである。

「なっ!べ、ベベベベル君!なんで君がここにいるのさ!」

「べ、ベル様!」

 ヘスティアとリリは胸を隠しながら取り乱す。

「……よく鍛え抜かれている身体。」

 アイズは少し恥じらいながらもベルの肉体をよく見る。

「わー、すっごい筋肉。あんだけの力も納得できるね。」

「本当ね。」

 ティオネとティオナは至近距離ベルの身体を見る。二人は自分の身体を隠すことはしない。

「全くあの人は……」

 アスフィは頭を抱える。

「まぁ……あの神は余り悪戯が過ぎる様だな。ベル。」

「わかってる。」

 ベルはそう言うと風呂から上がろうとする。

「えー、一緒に入ろーよ。」

 ティオナはベルの腕に抱き付く。

「いやいや、流石にマズイでしょ。男一人に女性大勢って。まあ、それ以前に女性と一緒ってのも問題だけど。」

 ベルはそう言うとやんわりとティオナを離す。

「あ、それと……」

 ベルは近くにあった石を手に取ると木に向け投げる。

「覗きは犯罪ですよ、ヘルメス様。」

 バキッと枝が折れると共にヘルメスが落ちてきた。

「じゃ、後はご自由に。」

 ベルはそう言うとその場をそそっくさと去って行った。

「ベ、ベル君裏切ったな!あ、みんなちょっと待って。話せばわか……ギャァアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 ヘルメスの断末魔の様な声をベルは小鳥の大合唱と頭の中で無理矢理変換させ、その場を後にした。

 

(そういやさっきリューさんの姿が無かったな。フードも深く被っていたし、何か理由があるのかな?)

 ベルはそう思いながら適当に歩いているとある場所に辿り着いた。そこは砂山にボロボロの旗が立てられ、大剣、剣、斧、弓、杖といろんな人が使っていたであろう武器が突き立てられていた。武器には錆が入っており、まともに使えない物ではあるが年期もあった。

「ザルバ……」

「ああ、墓だな。結構使い込まれていたところから見て、かなりのベテランだ。それに……」

 ベルは後ろを振り向く。そこには手にいっぱいの花を手にしているリューの姿があった。

「ベルさん……どうしてここに?」

「ちょっとありまして。それよりもリューさん、もしかして此処は……」

 ベルの言葉にリューは頷いて言った。

「私が所属していたファミリアの墓です。ミア母さんから時折暇を貰ってここに来ています。」

 リューはそう言うと武器一つ一つに花を手向けていく。そしてリューは語り始めた。

「昔、敵対していたファミリアの罠に嵌められ、私以外の団員は皆、殺されました。」

 リューは彼女たちに祈りを捧げるとベルも祈りを捧げる。

「ベルさん、聞いてもらえますか?」

「俺でよければ。」

「私は、ギルドのブラックリストに載っています。敵のファミリアを壊滅させたのです。」

 リューはそう言うと大剣の柄頭を握る。

「闇討ち、奇襲、罠。仲間たちの敵を討つために、手段を厭わず、激情のままに。そして私は力尽きました。全ての物に報復した後、誰もいない、暗い路地裏で。愚かな行いをした者にはふさわしい末路だった。けれど……ジルが私を見つけてくれました。」

「それで豊饒の女主人に……」

「はい。ミア母さんは全てを知った上で受け入れてくれました。耳を汚す話を聞かせて、すみません。」

「………そんなことないですよ。」

 ベルはそう言うと地面に胡坐を掻いた。

「ベルさん?」

「リューさん、俺はリューさんが間違ったことをしたとは思いません。」

「何故、そう言うのですか?」

 リューが問うとベルは言った。

「俺も過去に人を殺したことがあります。まあ、相手は悪人なんですけど。でも俺は許せなかったんです。でもそのことに後悔はしていませんが、罪の意識はあります。でも、それでも俺たちは生きていかないといけません。リューさんを生かしてくれた仲間のためにも、この手で殺めてきた者たちのためにも。」

「………」

 ベルの言葉にリューは驚かされた。まだ自分よりも若干若い子がこんなことを口にすることに。

 そんな時ベルは懐から魔導筆を取り出し、筆の部分を引っ込め笛に変えると“英霊の鎮魂歌”を吹き始めた。リューはその音楽を静かに聞いた。

 過去幾千もの戦いの中で散った者たちを称え、その魂が安らぐように祈りを捧げベルは吹く。

 ベルは吹き終わると懐に魔導筆を収める。

「俺に今できるのはこれくらいです。」

 ベルはそう言うとそこから立ち上がり、去って行った。

「………ありがとうございます、ベルさん。」

 リューはベルの背中を見ながらそう言った。

 

 午後になり、ベルはファミリアのメンバーとリューとアスフィ、ボロボロで顔にタンコブと青たんを作ったヘルメスと共にこの十八階層で最も高く、全てを見張らせる山に行く道を歩いていた。

「それにしてもザルバ君、君がベル君に頼んでまで行きたいのはどこなんだい?」

「ああ、神龍の所だ。」

「神龍だって!?」

 ザルバの言葉にヘスティアだけでなく全てのものが驚いた。

 神龍とは龍の祖たる存在と言われている龍であり、大昔に死んだ龍である。

 ベルたちは山の頂上にある小さな墓に辿り着いた。

「ザルバ、ここ?」

「ああ、そうだ。」

 ザルバがベルの言葉にそう答えるとアスフィが問う。

「ザルバさん、どうして神龍の墓がここにあることを知っているのですか?」

「ああ。少し大昔の話だが、神龍と当時の牙狼は共に戦ったことがあるんんだ。」

「何故共に戦ったことがあるのですか?」

「あの時まさに悪魔の化身と行っていいほどのモンスターがいてな、牙狼は一人で立ち向かった。だがあまりの強さに屈しそうになった。そこへ神龍が来たんだ。ともに力を合わせ、そのモンスターを倒したのを今でも覚えている。だが神龍はその時に負った傷が悪化し、そして死んだ。こいつが静かに眠れるように、モンスターも寄り付かないこの階層に墓を建てたんだ。」

 その言葉を聞くと一フォウは自然と祈りを捧げた。

 その時、突如ダンジョンが揺れた。

 


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