ダンジョンに牙狼がいるのは間違っているだろうか   作:ザルバ

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第19話

 十三階層からザルバを頼りにダンジョンを下へ下へと降りていた。途中何度もモンスターに出くわしたがベルが対処して被害を最小限に留めた。ポーションは主にベルが使うことになったが、ハイポーションや万能薬はまだ残っていた。

「こうまでモンスターが来ると冒険じゃなくて一種の作業って感じがしてきたよ。」

 モンスターを倒し、牙狼剣を鞘に納めたベルがそう口にするとザルバは言った。

「お前の場合は規格外だからな。そうなるのかもな。」

「ですがリリ達にとってはこの時点で冒険ですよ。」

「だな。」

 リリの言葉にヴェルフが頷きながら相槌を打つ。

「…と、どうやらお出ましみたいだね。」

 ベルがそう言うと目の前に三匹のミノタウロスの姿があった。

「おいおい……コイツは……」

 ヴェルフは冷や汗を掻く。しかしリリはそれに反し安心していた。

「さて……」

 ベルは牙狼剣を抜刀するとゆっくりとミノタウロスへ近づく。

「片付けるか。」

 ベルはそう言うとミノタウロスへと跳びまずは一匹を縦に切り裂く。残りの二体は突然のことに反応できなかった。

「ふっ!?」

 ベルは横一線に牙狼剣を振るい、二体同時に倒した。

「なっ!?」

 ヴェルフは驚き、リリは尊敬の眼差しでベルを見た。

 Lv.6の実力は伊達ではなかった。

 

 ベルたちは順調にダンジョンを降り、遂に階層主がいる十七階層にまで到達した。階層主がいるのが理由なのか、十七階層は虹が掛かったように明るかった。

「ベル様、ゴライアスは先に遠征に言っているロキ・ファミリアが討伐しているはずです。」

「……そうもいかないみたいだよ。」

「え?」

 ベルの言葉にリリは間抜けな声を出す。ソシエベルの言葉に応えるように壁からゴライアスが姿を現した。

「二人共、下がってて。」

 ベルはそう言うと牙狼剣を抜刀し、牙狼の鎧と轟天を召喚する。

 ゴライアスは右腕を大きく振るい牙狼と轟天を押しつぶそうとするが轟天は左に跳び回避するとゴライアスの左手の甲に乗り、頭に向かい走り出す。

「轟天!」

轟天は雄叫びを上げ、走りながら牙狼剣を牙狼斬馬剣へと変える。

「うぉおおおおおおおお!」

 ゴライアスに反撃する暇も与えず牙狼は牙狼斬馬剣を振る。

 一瞬で勝負は決した。牙狼は轟天と共に地面に降りると同時にゴライアスの頭が身体から切り離され、地面に落ちた。

 ベルは牙狼の鎧と轟天を召還する。

「てっきりもう少し手応えがあるかと思ったけど……やっぱ俺のレベルのあるからかな?」

 牙狼剣を鞘に納めたベルが二人に問うと二人は無言で頷いた。

 

 ゴライアスを倒し、ベルたちは安全階層と呼ばれている十八階層へ来ていた。

「本当に明るい……ダンジョンに大穴でも開けているんじゃないのかな?」

 ベルが天井を仰ぐように見る。そこには光り輝く水晶で埋め尽くされていた。

「確かにお前さんがそう思うのも無理ないな。てか、本当に冒険者になって日が浅いのか?俺にはさっきの実力でベテランみたいに見えるぜ。」

 ヴェルフがそう口を開くのも無理はなかった。

 異例のタイムレコードによるランクアップ。魔法を持っているわけでも、特別な種族でもないヒューマンのベルがほぼ一人でダンジョンのモンスター相手に無双をしていた。

「確かにヴェルフ様の言いたいことはリリにもわかりますが、事実です。ヘスティア様の証言も取ってますから。」

 その言葉を聞くなりヴェルフは一応納得した。

「ところでどうする?目的の場所はここだから少し休んでもいいけど……」

 ベルがそう言うとヴェルフは挙手をした。

「ちょっとヤボようがあるから個人的に行きたいところに行ってもいいか?」

「いいよ。でも下手に変なところに行かないでよ。俺も探すの困るから。」

「わかった。んじゃ。」

 ヴェルフは手を振りながらその場から離れた。

「リリは?」

「私はベル様が行きたいところに行きます。」

 リリの言葉にベルは頷きながら「わかった。」と答え、町の方へと足を運んだ。

 

 町は木の柵で囲まれており、入り口には「ようこそ同業者」と文字が大きく書かれていた。

 その町はリヴィラ。冒険者が作った町である。

 ベルたちは町の店を見て何かないかと物色をしてみるが店に置いているのはどれも良い品とは言えない物ばかりであった。ボロイ鞄や小さい砥石、香水などと言った物が売られているがどれも地上の値の倍は軽く超えているものばかりである。

「人の足元見ているばかりだね。まぁ、ここに来るまでに本来ならいろんなものが消費されるだろうからそうなんだろうけど。」

「けどこれは流石に……お腹が空いていてもここじゃ食べられませんね。」

 二人がそう話しているとザルバがある提案をした。

「だったら自炊したらいいんじゃないか?」

「「ああ。」」

 二人は手をポンッと叩き納得する。

「ここら辺に食べられそうなモンスターいるかな?」

「試してみましょう、ベル様。」

 二人はそう言うとリヴィラを後にした。

 


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