戦国†恋姫X 犬子と九十郎   作:シベリア!

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犬子と柘榴と九十郎第93話『呑牛の術

「さぁさぁ寄ってらっしゃい! 見てらっしゃい!

 世にも珍しく、とっても楽しい見世物でござ~いっ!!」

 

姫野と小波が大通りを歩いていると、そんな陽気な声が耳に届いた。

 

「お、大道芸人だし。 小波、ちょっと見てくし」

 

「姫野、我々には無駄な時間が無いと言ったのはそちらだぞ」

 

「一番時間を浪費してる理由はお前が姫野の顔と名前を忘れるからだし」

 

「失敬な、私がいつ貴女の名前を忘れたと」

 

「昨日も一昨日も全く同じ台詞を吐いてたし」

 

そして昨日も一昨日も小波は見事なまでに姫野の顔と名前を忘れている。

夢の中にすら助けに行った姫野もこれでは浮かばれまい。

 

ちなみに、当然のように小波は夢の中で姫野に助けられた事を忘れている。

 

「しかし、もうあまり時間が……」

 

「んな事小波に言われなくっても分かってるし。

 でも、こういう今にも戦が始まりそうな時、一番警戒しなければならないのはどんな奴?」

 

そう言われて、小波ははっと気がつき、服部半蔵の……冷徹なる忍びの顔になる。

 

越後の龍と畏れられた長尾美空景虎の後継者を決める戦いがもう間も無く始まるのだ、

当然、他国の目も向けられている筈だ。

 

そして他国の内情を探るため、草を送り込む場合良くあるのは……行商人か旅芸人に変装させるのが常套手段だ。

 

「少し、見ていきましょうか」

 

「うんうん、そうするし。 小波も少しは話が分かるし」

 

ニコニコと能天気に笑いながら姫野は見物客の中に紛れる。

表面上は能天気に笑っているが……当然、姫野には一切の油断は無い。

 

姫野と小波は隣り合って、手と手をぎゅっと握り合いながら見物を開始する。

最近、手を握っていると多少は忘れるまでの時間を延ばせる事が分かったからだ。

 

「これよりお見せしますは~、世にも奇妙な物語~。

 種も仕掛けも無い本物の怪異をごらんくださ~い」

 

細身の女性が大きな大きな黒牛をぱんっぱんっと叩いて見せる。

女性の10倍も20倍も大きく重そうな牛であった。

 

小波の目にも、姫野の目にも、その他の群衆の目にも、その牛は何の変哲も無い普通の牛のように見えた。

 

しかし……

 

「(なんだ……胸の奥がざわざわする……?)」

 

「(武術の心得はあまりなさそうだけど……何か胡散臭い感じがするし。

 まるで……まるで……良く分からないけど、言動の端々が胡散臭いし)」

 

2人は無意識の内に身構えていた。

へらへらと笑う細身の女性に対し、奇妙な違和感のようなものを感じた。

 

「今から某……この大きな牛を丸呑みにしてみせま~す」

 

そして細身の女性はいきなりステーキ……もといいきなりとんでもない事を言い出した。

 

群衆がざわめく。

『何言ってんだあいつ』とか『無理だろ』とか『頭イカレてるんじゃねーか』とか、そんな声が周囲から聞こえてくる。

 

「この牛ちゃんね、結構高かったが故に。 この芸に失敗すると素寒貧になるが故に。

 見事成功しましたら、見物料をたっぷり投げてくださいね~」

 

しかし、細身の女性はへらへらと笑ったままだ。

 

「さて、それじゃあ早速……」

 

へらへらと笑ったまま黒牛の尻のほうに回り……

 

「……がぶりんちょっ」

 

腹這いになって牛の背に乗っかった。

少なくとも小波と姫野の目にはそう見えた。

 

だがしかし、他の群衆は揃って目を大きく見開き、感嘆の声をあげていた。

まるで信じられない芸が目の前で披露されたかのように。

 

『何だあれ!?』『信じられねぇ』『あいつどんだけ口がでかいんだ』『本当に丸呑みする気かよ!?』『あいつ人間じゃねえ』

 

そんな声が周囲から聞こえて来た。

 

「さあてそれじゃあ、もっともっと飲み込みますよ~」

 

細身の女性が腹這いになりながら、ずりずりと黒牛の背を這って前に進んでいく。

それは床オナにも見えなくも無い艶めかしい所作であった。

群衆の驚きや戸惑いの声がどんどん大きくなっていく。

 

「な、何あれ……何なの……?」

 

姫野が思わず戸惑いの声を出す。

いきなり黒牛の背中に腹這いに乗っかる女性も謎だが、周囲の反応はもっと謎だ。

 

「幻術……姫野、これは幻術です。 どうやっているかは謎ですが、

 おそらく周囲の者に牛を呑み込む幻覚を見せているんです」

 

小波が小声で姫野に耳打ちをする。

 

「そ、そっか……姫野達だけ幻を見てないって事か……」

 

姫野もひそひそ声で小波に言う。

 

その瞬間、牛の背に乗る女性の瞳が、まるで獲物を見定める猛禽類のように細まった事に、まるで極上のディナーを前にしたかのように涎を流した事に、小波も姫野も気がつかなかった。

 

「……よいしょっと」

 

細身の女性はそのままずりずりと牛の背を這っていき、頭の上まで到達すると、くるっと回って地面に着地した。

 

群衆がさらにさらに大きくどよめく。

『すげぇ!』『やべぇ!』『パネェ!』『マジでやりやがった!』そんな歓声にも似た声で一杯になった。

 

しかし、小波と姫野の目には、普通に女性と黒牛が立っているように映っていた。

 

「はい、見物料はこちらにお願いしま~す。

 某腹ペコであるが故に、某とてもとても腹ペコであるが故に、

 たっぷりたっぷり恵んでくださぁ~い」

 

『まだ食う気かよ!?』なんてツッコミの声があったが、群衆は割と素直に見物料として小銭や野菜、米等を取り出し、女性の足元にある籠に投げ入れていく。

 

「ううん……野菜やお米より、金子の方が良いのですけど……

 まあ、贅沢は言えませんかねぇ」

 

そんな事を小さく呟きながら、女性が籠を覗き込む。

小波と姫野も、怪しまれない程度の額を財布から取り出し、籠の中に投げ入れた。

 

「あんまり少ないと、襲って食ぁ~べちゃ~うぞ~」

 

女性がへらへらと笑いながら、猛獣が威嚇するポーズで周りにアピールする。

当然、群衆の誰も本気で食われるとは思っていない。

姫野も小波も食われるなんて少しも思わない。

誰も彼もが今の女性の言葉を、冗談として聞いていた。

 

「はいっ! 本日はこれにて店じまい! ありがとうございましたぁ~」

 

女性が最後までへらへらと笑い、黒牛を引っ張ってどこかへと去っていった。

さっき丸呑みにした筈の黒牛を連れて帰っているというのに、群衆の誰もそれに違和感を覚える者はいなかった。

 

「どうします、追いますか?」

 

「部下を1人つけて、尾行させるし」

 

姫野は特別な訓練を受けた者にしか聞こえない、特殊な加工が施されている笛を吹く。

1分もしない内に、風魔忍軍の1人が姫野達の前に現れる。

 

「……と、言う事だし。 分かった?」

 

「御意」

 

部下に自分達が見聞きした事を簡単に伝え、しばらく動向を探るように命じ、姫野と小波は本来の任務に戻っていった。

 

そして……

 

……

 

…………

 

………………

 

「こんにちは、お二方ぁ~……」

 

その日の夕刻……

 

有力者の館に忍び込み、密談を盗み聞きして。

姫野の事をド忘れした小波を連れて戻り、剣丞に頭なでなでさせて。

空陣営の参加者の陣地に偽手紙を仕込んで、姫野の事をド忘れした小波を連れて戻り、剣丞に頭なでなでさせて。

戦場になりそうな場所を下見し、罠もしこたま仕込み。

姫野の事をド忘れした小波を連れて戻り、剣丞に頭なでなでさせて。

 

なんやかんやで日が暮れた頃……早朝に大道芸をしていた細身の女性が姫野と小波の前に現れた。

 

へらへらと……いや、にたにたと気色の悪い笑みを浮かべていた。

 

「貴女は、今朝の……」

 

「何でこいつの事は覚えてて姫野の事は3回も忘れるし……」

 

姫野が周囲を見回す。

部下の1人に尾行を命じていたから、近くに来ている筈だ……と。

 

「ああ、あの娘を探しているのでしたら……ここに居ますよ」

 

細身の女性が自分のお腹をぽんぽんと撫でる。

姫野も、小波も、そいつが何を言おうとしているのか理解できなかった。

 

「とても美味しかったですよ。 おやつ代わりとしてはとても上等でした。

 何せ某、ここ最近はとっても不味い物しか口にしていなかったが故に」

 

そして細身の女性は懐から簪を取り出す。

紅く血で染まった簪を……

 

「それは!?」

 

姫野はそれが、さっき尾行を命じた部下の物だと気づいた。

 

「いえ、おやつと言うよりも食前酒か、前菜ですかねぇ。

 あの娘の血はとてもジューシーな味わいでしたよぉ。

 心臓のコリコリとした食感もとても素敵でした。

 骨髄をちゅーちゅーと吸うのも久々でした。

 お二方はきっと……もっともっと美味しいのでしょうねぇ」

 

じゅるりと、女性が涎を拭いた。

 

姫野は気づいた、気づいてしまった。

こいつに部下は殺された……いや食われたのだと。

 

「あんた……何者だし?」

 

姫野が身構えながらそう尋ねる。

素直に教えてくれるとは思わなかったが……

 

「加藤段蔵」

 

予想に反して、その女性は……段蔵は自らの名を名乗った。

 

「貴女達2人を、食べに来ました。 いえ、某は特異体質でしてねぇ。

 人間の肉以外、どんな食べ物も身体が受け付けないのですよ」

 

そして宣言した。

お前達を食うと。

 

ぞくりと2人の背筋に怖気が走る。

一瞬、2人は自分が俎板の上に乗せられた鯉になったかのような錯覚に襲われる。

 

そして確信する。

こいつは本気で自分達を食す気だと。

こいつは本気で自分達を食材だと思っていると。

 

「ただの大道芸人じゃあなかった訳だし」

 

「ああ、アレですか。 あれは美味しいのと美味しくないのを見分けるためですよ。

 超能力者はとても美味しいが故に。 脳ミソが美味しぃ~んですよぉ、とてもとても。

 最近は路上にころがる犬のクソのよう不味いものばかり口に詰め込んでいたが故に、

 今はとてもとてもグルメな気分なのですよ」

 

「小波、路上にころがる犬のクソの味って想像できるし?」

 

「できません、したくもありません」

 

「そりゃそーだし。 むしろ想像出来たらドン引きだし」

 

小波が忍者刀を抜き、姫野が両手に苦無を握る。

愛用の小太刀は今朝剣丞に渡してしまって無いが、武器の1つや2つ減っている程度では、風魔小太郎の戦闘能力は微塵も下がらない。

 

「ではでは、この世の全ての食材に感謝を込めて……」

 

段蔵が舌なめずりしながら両手を合わせた瞬間……

 

「……やれ」

 

姫野が冷徹、かつ冷酷にそう告げると、周囲の物陰から10本の投擲用に作られた短槍が飛び交い、その全てが脳天や心臓、喉や腎臓等、人体の急所へと吸い込まれるように突き刺さった。

 

「あ……が……な……っ」

 

段蔵が呻き声と共にばたんと倒れ伏す。

そして先程短槍が飛び出した物陰から、町娘や浮浪者に変装した風魔忍軍の構成員が出て来た。

 

「獲物の前で舌なめずりする程、姫野は抜けてないし。

 風魔忍軍は連携が命。 定時連絡が急に途絶えたら警戒するに決まってるし」

 

御家流を使う相手と戦う時は、精神を集中させる時間を与えるのは悪手……姫野は会話をしながら部下達が奇襲を仕掛ける準備を整えるのを待っていたのだ。

 

「頭領、ヤツは一体……」

 

段蔵に短槍を投擲した忍者の一人が姫野に駆け寄ってくる。

 

「加藤段蔵って名乗ってたけど、飛び加藤にしちゃ弱すぎるし。

 たぶん別人が名を騙ってただけだと思うし」

 

「死体の処理は?」

 

「一応、持ち帰って調べてみるし。

 身元が分かる物を持ち歩く位抜けてれば助かるけど……」

 

姫野が無警戒に倒れ伏す段蔵に近づいていったその時……異変が起きた。

 

「いやですねぇ、飛び加藤ですよ、某は。

 本当に本当に飛び加藤ですよ、信じてもらえないかもですけれど」

 

喋る筈の無い遺体が喋り、その場の全員が身構え……ぐじゅるるるっ!! と、奇怪な音と共に単槍が空けた10の風穴から醜悪な肉の触手が飛び出した。

 

「なっ!?」

 

「ぐわぁっ!?」

 

「ぎゃあぁっ!!」

 

「が……あぁ……」

 

段蔵の額に短槍を投げた者は額に、段蔵の心臓に短槍を投げた者は心臓に、段蔵の喉に短槍を投げた者は喉に……寸分たがわずに突き刺さり、モズの早贄のように貫通していた。

 

そしてその直後、風魔忍軍達を刺し貫いた触手が、ぐじゅるぐじゅると醜悪な音と匂いを出しながら人間の体液を吸い上げる。

数秒もしない内にまるで中身を吸い取られたブドウの皮のようにしわくちゃになり、10名の風魔忍軍達が残らず絶命した。

 

「な……なに、これ……」

 

「こいつ……人間を吸って……飲み込んだ……!?」

 

姫野と小波が戦慄する。

そして段蔵は伸ばした触手をまるで掃除機のコードのように体内に収納しながら、ゆっくりと立ち上がる。

 

「悪くない味でしたよ。 ちょっと空腹でふらふらしてたのが一気に回復できました。

 でも、この食べ方は良くないですねぇ、色んな味が混ざって味が良く分からない」

 

血と肉と骨と内臓をぐしゃぐしゃのムースにしたモノをぺろりと平らげ、比喩表現で無く全身で人間の味を堪能した段蔵がにたぁ~っと笑う。

 

「姫野、ここは一時引きましょう。 明らかに異常です、アレは」

 

小波が姫野を庇うように身を乗り出してそう告げる。

しかし、姫野は俯きながらぶるぶると震えていた。

 

「お前……お前は……」

 

その目に宿った感情は『恐怖』ではなく、『嘆き』や『悲しみ』でもなく……『怒り』。

 

その殺し方に見覚えがあった。

人間に触手を突き立て、ちゅーちゅー吸って平らげるその殺し方を見たのは2度目であった。

 

その殺し方は……

 

 

 

 

 

「私のお父さんとお母さんを殺した……あの時の肉塊いいいぃぃぃーーーっ!!」

 

 

 

 

 

その殺し方は、姫野の父と母を殺したやり方と全く同じであった。

あの時、姫野の両親は見ただけでSANが削れそうな肉塊から伸びた触手に刺し貫かれ、吸い殺されたのだ。

 

「う~ん……?」

 

段蔵が興味深そうに怒りに満ちた姫野の顔を覗き込み、額をぽりぽりと掻いて……

 

「ああ、某が食事した時の目撃者ですかねえ?」

 

どろりと、段蔵が溶けた。

見た目は若い女性だった段蔵が、まるで生魚を猛暑の中で何日も放置したような鼻が曲がる程の悪臭と共に、見ただけでSAN値が削れるような赤黒い肉塊へと変わった。

 

その姿はかつて姫野の両親を惨殺した異形と瓜二つ……いや、そのものズバリであった。

 

「両親の仇ぃっ!!」

 

姫野が憤怒の表情で苦無を何本も投げる。

苦無がザクザクと肉塊に突き刺さり……何の痛痒も感じていないかように、肉塊はぺっと己の身体に突き刺さった手裏剣を吐き捨てた。

 

「お前を殺した所で、堅物だけど頼りになるお父さんも、

 ドン臭かったけど優しかったお姉ちゃんも、

 いつもハジケてたお母さんも返ってこない……けどっ!!」

 

「仇討ち……ですか?

 正直某、貴女がどこの誰なのか全くまぁ~ったく覚えてないのですがねえ」

 

段蔵が人を小馬鹿にしたような嘲笑の笑みを浮かべた。

 

「そうよっ!! 私の大事な大事な家族の痛みと苦しみを味わえ!!

 大事な大事な家族を奪われた私の悲しみを味わえ!!

 そうじゃなきゃ……そうじゃなゃあ! 私の気が済まないのよぉっ!!」

 

姫野がそう叫ぶと、見ただけでSAN値が削れそうな醜悪な体表から何個も何個も口が浮かび出て、一斉にゲラゲラと大きな声で笑い始める。

 

「いいですとも! ああ、いいですともっ!! 復讐? 仇討ち? 大いに結構!!

 何せ某……グルメであるが故に!

 強い強い感情を抱きながら死んだ人間はとてもとても甘美な味であるが故に!!

 ぐしゃっと潰してぇ! 脳味噌をちゅーちゅー吸うとぉっ!

 実に実にじぃっつにぃ! 美味であるが故にいいいぃぃぃーーーっ!!」

 

「もう喋るなしっ!!」

 

姫野がさらに手裏剣を投げつける。

しかし、段蔵はゲラゲラと高笑いをしながらそれを受け、ぺっと吐き捨てた。

 

「効いちゃいないか……」

 

全く堪える様子が無いのを確認すると、姫野が舌打ちをする。

火薬玉や、鉄菱、鎖鎌といった武器を隠し持っているが、この様子では手持ちの武器で殺すのは難しいと認めざるを得ない。

 

「姫野、奴は何者ですか?」

 

「小波には関係ねーしっ!! これは姫野の仇討ちだしっ!

 巻き込まれたく無かったら離れてろだしっ!」

 

仇敵を目の前にしながら、有効な手立てが何一つ思い浮かばない焦りからか、姫野は思わず声を荒げてしまう。

 

「しかし、期間限定とはいえ、味方同士で……」

 

「うるせーしっ! 関係無い奴は引っ込んでろだしっ!!」

 

姫野が更に声を荒げ、懐から取り出した鎖鎌をブーメランのように投げつけ、醜悪な肉塊と化した段蔵に深々と突き立てる。

 

しかし、やはり段蔵は全く痛がる様子も無く、苦しむ様子も無い。

 

「ふふふ……良いのですかな、こんな迂闊な事をして?

 某、釣りも得意であるが故に」

 

それどころか、突き刺さった鎌を引っ張り、鎖を握る姫野を自分の方へと引き寄せようとしていた。

 

「く……このっ……」

 

姫野も引っ張られまいと両足に力を籠めるが、段蔵はまるで巨象のように重く、力も強く、どんどん距離が縮まっていく……激高し、焦り、冷静な判断力を失いつつある姫野には、鎌に繋がった鎖を手放すという発想すらも浮かばない。

 

「……呑牛の術」

 

肉塊が能力を発現させた瞬間、空間そのものが飲み込まれた。

 


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