戦国†恋姫X 犬子と九十郎   作:シベリア!

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転生を司る神(自称)がうっかり九十郎(犬子と九十郎の主人公)の魂を真・恋姫†無双の世界に飛ばしてしまっていたらどうなっていたかをちょっとだけ描いた作品です。

ただの思いつきの産物です。
続きは書きません。


突発ネタ 朱里と鈴々と九十郎

昔々あるところに、たいそう仲の良い夫婦がいました。

 

「夫婦じゃねーよ、腐れ縁だよ。 張翼徳と夫婦とかどんな罰ゲームだ」

 

訂正……昔々あるところに、たいそう仲が良い男女がいました。

 

女の子の性は張、名は飛、字は翼徳、真名は鈴々といいました。

 

男の性は斎藤、名は九十郎といいました。

 

九十郎はブ男で無駄にマッチョで基本屑で、しかも基本神道無念流だけやっていれば幸せな剣術馬鹿でしたが、本当に困っている人は決して見捨てない好漢として、ご近所さんからは慕われていました。

 

鈴々もそんな九十郎を気に入り、慕っている者の1人でした。

 

ある日の事、九十郎は生地を離れ、荊州に移住しました。

 

「劉表のお膝元なら、曹孟徳が出張ってくるまで比較的安全な筈。

 長坂やら荊州争奪戦やらに巻き込まれるのは御免だが、

 適当な時期に魏のどっかに移住すれば、

 乱世に巻き込まれずに思う存分神道無念流ができるぜ、げっへっへっへっへ」

 

とか何とか言いながら、荊州の某所……司馬徽先生の私塾のはす向かいに神道無念流の道場『練兵館』を建てました。

 

わざわざ司馬徽先生の私塾を探し出し、ご近所に道場を建てたのは、このご時世にクソ真面目に勉学に励んでいる意識高い系を引っ張り込むためです。

 

九十郎は乱れた世の中をどうこうする気が全く無い屑でした。

 

最初は司馬徽先生の私塾に通う文系の人達からたいそう気色悪がられましたが、九十郎を追ってやって来た鈴々がたいそう強く、義も情も知る人であった事、私塾の生徒達が暴漢に絡まれた時……

 

「合法的に神道無念流が振るえるチャンスだぜヒャッハァ!!」

 

……とか何とか言いながら駆けつけて暴漢達を蹴散らした事もあり、私塾の生徒達からの警戒も薄れ、日を追う毎に練兵館に弟子が増えていきました。

 

練兵館はまさに順風満帆でした。

中央は汚職と腐敗に塗れ、地方では黄巾党を名乗る暴徒が現れるようになっても、九十郎は我関せずと神道無念流をやり続けていました。

 

そんなある日の事……

 

「おい翼徳、関羽はどうした?」

 

「関羽って誰なのだ?」

 

……九十郎は頭を抱えました。

 

九十郎は歴史を変えまいと思っていたのに、自分のうっかりが原因で、歴史をガッツリ変えてしまいそうになっている事に気づいたのです。

 

「おいやべぇよ、

 もうすぐ黄巾の乱が始まりそうなのに張翼徳が関雲長と義兄弟になってねえよ。

 というか面識すらねえよ。

 どうするんだよ、翼徳がいなかったら玄徳が死ぬんじゃねえのか、

 そうなったら誰が蜀を獲って三国鼎立させるなんて身体を張ったギャグをやるんだよ」

 

そして九十郎は決意しました。

今からでも遅くはない、劉玄徳が旗揚げする前に張翼徳と関雲長を義兄弟にするんだと。

 

そして心置きなく神道無念流ができる環境を守るのだと。

九十郎は歴史の流れよりも神道無念流を続ける事を優先させる屑でした。

 

「翼徳、旅に出るぞ、草の根を分けてでも関雲長を探すんだ」

 

「そんな人を探してどうする気なのだ?」

 

「お前と義兄弟になってもらう」

 

「ええ!? いくらお兄ちゃんの頼みでも、

 そんな顔も名前も知らない人と義兄弟になるなんて嫌なのだ!?」

 

「大丈夫だ、会えばきっと気に入る筈だ!

 たぶんきっとおそらくメイビー気に入る筈だ!

 というか気に入ってくれないとぶっちゃけ困る!!」

 

九十郎は嫌がる鈴々を無理矢理連れ出し、関羽探しの旅に出ました。

 

しかし、2人の旅は困難を極めました。

2人とも後先を考えたり、人の考えを読むのが苦手なタイプで、情報収集とかいう頭を使う作業ができませんでした。

関羽の情報はまるで集まらず、2人は大陸を当てもなく彷徨うばかりでした。

 

そんな2人の前に、素晴らしい助っ人が現れました。

 

「孔明、何故ここに居る?」

 

「追いかけてきました」

 

助っ人の性は諸葛、名は亮、字は孔明、真名を朱里といいました。

司馬徽先生の私塾でも一二を争う優秀な生徒でした。

 

「いや、なんでだよ」

 

「昔危ないところを助けて頂いたご恩返しがまだできていませんので。

 それに……世が乱れ、人々が苦しんでいるというのに、

 私だけ安全な場所でぬくぬくとしているなんて嫌なんです」

 

「おいやめろ、お前が荊州から離れたら玄徳が死ぬだろ! そうなったら一体誰が、

 統率3武力5知力9政治4の屑を支えながら北伐する罰ゲームをするんだ!?」

 

屑はむしろ九十郎の方でしたが、とにかく必死こいて朱里を荊州に帰らせようと説得しました。

 

しかし、何度説得をしても朱里は首を縦に振りません。

 

「最近は治安が悪い……

 ここから孔明1人で荊州に帰らせたら、途中で変なのに襲われかねんか。

 翼徳は1日でも早く関雲長や劉玄徳に引き合わせなければ拙いが、

 諸葛孔明が玄徳に必要になるのはまだまだ先だし……

 仕方ねえ、今は関雲長を探すのを優先させるか」

 

九十郎は仕方なく、断腸の思いで朱里の同行を認めました。

 

そして3人の旅が始まりました……朱里と鈴々と九十郎の長い長い旅路が始まったのです。

 

「雲長おおおぉぉぉ~~~! 頼むうううぅぅぅ~~~!!

 翼徳の義兄弟になってくれえええぇぇぇ~~~!!

 300円あげるからあああぁぁぁ~~~!!」

 

朱里と鈴々が蜀の滅亡という歴史に挑む長い戦いが……そして九十郎が北郷一刀という名の男に……主人公に挑む長い長い戦いが始まったのです。

 

「翼徳……孔明……頼む、俺に力を貸してくれ。

 あいつが秋月八雲じゃない事は分かっている。

 あいつに勝っても秋月八雲に勝った事にならない事も分かっている。

 俺が無様に失恋した過去が無かった事にならない事も分かっている。

 だけど……俺はあいつに勝ちたいんだ。

 北郷一刀に勝って、曹孟徳にも勝って、ついでに孫仲謀にも勝って、

 劉玄徳が天下を取るなんていうギャグみたいな世界を現実のものにしたい。

 俺は……俺は……」

 

朱里と鈴々と九十郎の物語が始まったのです。

 

「翼徳、孔明、俺は胸を張ってお前達の真名を呼べる男になりたいんだ」

 


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