戦国†恋姫X 犬子と九十郎   作:シベリア!

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今日の更新でおまけを含め最後になります。
皆様、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

次話、ラスト・ワンにはR-18描写がありますので、エロ回に投稿しています。
ラスト・ワンURL「https://syosetu.org/novel/107215/68.html



孔明と九十郎おまけ11『忙しい人のための超ダイジェスト孔明と九十郎』   

大江戸学園のポータルを使い、閉じかけた次元間ゲートを無理矢理押し通って戦国時代に舞い戻った九十郎。

近くで茶を飲んでいただけだったのに巻き込まれた諸葛孔明!

無茶な事をやったせいでぶっ壊れるポータル!

 

そして戦国時代では現代ニホンの武器を奪って決起した共産主義革命軍に城を囲まれ、美空と柘榴の命は風前の灯であった。

 

「うおおおぉぉぉーーーっ!! ボンタンボンタンボンタンボンタン

 ボンタンボンタンボンタンボンタンボンタンボンタンボンタンボンタンッ!!」

 

NSV重機関銃対ボンタン投擲。

いくら上杉謙信でもこれだけ装備に差があっては対抗困難、彼女達の死は刻一刻と迫っていた。

 

「(ああ、駄目……駄目ぇ……声が出ない、どうしても声が出ない……

 嫌だ! 嫌だぁっ! 誰か止めて! 誰かこの人達を止めてぇっ!

 誰でも良いから! お願い、お願い……このままじゃ、美空姉さまが……

 お義母さんが死んじゃうよぉ……)」

 

共産主義革命軍のトップに担ぎ上げられた空。

彼女は蘭丸戦のストレスで失語症になり、どこまでもどこまでも暴走する共産主義シンパ達を止められなかった。

 

燃え上がる春日山城。

次々と届く越軍の将達の……空にとっての大切な家族が討ち死にしたとの報告。

 

「(嫌ぁっ!! こんなのやだぁっ!! 死んじゃう! 皆が死んじゃうよぉっ!!

 誰かっ! 誰か来てっ! 誰か助けてぇっ!!)」

 

そんな時……共産主義革命軍の元に一通の手紙が届いた。

 

 

 

 

 

『ゴ〇ルドマンとシ〇バーマンは仲がいいから実現しないと思うけど、

 戦ったらどっちが強いの?(意訳)』

 

 

 

 

 

共産主義革命軍に届いた一通の手紙は諸葛孔明の仕組んだ罠であった。

 

共産主義革命軍は空をトップに担ぎ上げておきながら誰一人として空の言葉を聞こうともしなかった連中だ。

共産主義の理念に感銘を受け、民草の幸福を願って参加した者がいた。

空と名月の後継者争いの結果に不満を抱き、美空や名月を恨んでいる者がいた。

単純に暴れたいだけの者もいた。

 

そんなその場の都合で結びついた烏合の集の中で、心から共産主義を信じていた者達が周囲に噛みつく!

そして始まる内ゲバ! 内ゲバ! 内ゲバ!

共産主義革命軍の中で内部粛正の嵐が巻き起こり、敵に討たれる前に味方に撃たれて死亡する者が続出、全力で身内と戦いながら、形式だけ越軍と戦う集団と化した。

 

敵が目の前にいる状態で仲間割れ……その好機を見逃す程、長尾美空景虎は……上杉謙信は甘くない。

 

「越後長尾家の存亡はこの一戦にあり! 皆の者! 毘沙門天の旗に続けぇっ!!」

 

僅かに残った兵力を総動員し、決死の覚悟で挑んだ奇襲戦法が見事に決まる。

共産主義革命軍から空を奪還する事に成功した。

 

しかし、この勝利はこれから始まる孔明と九十郎の大冒険の序章に過ぎなかった。

だいたい九十郎のせいで日ノ本に訪れる混乱! 混沌! 大波乱!

果たして孔明は、九十郎は、この大ピンチを乗り切る事は出来るのか!?

 

ネタバレ・できます。

 

次回! 孔明と九十郎『共産主義+一向宗=地獄』にご期待ください!

 

頑張れ孔明! 負けるな九十郎! 日ノ本の運命は君達にかかっているぞ。

 

……

 

…………

 

………………

 

一方その頃、天草四郎は新たなる武芸者を魔人にしていた。

 

「能島村上水軍の大将! 村上武吉! どうだどうだ!

 いきなりビックネームを仲間にできたぞ、流石はボク! これは幸先が良いぞ~」

 

「いや……村上水軍って、武芸者というより、船乗りなのですが……」

 

「綾那君、綾那君、キミは視野が狭いねぇ」

 

「むむっ、もしや何か考えがあるのですか!?」

 

「その通り! 正直アテにしてた宮本武蔵は若すぎて役に立ちそうもないし、

 ニホン国内にこだわる必要も無い! これから世界進出だ!

 グローバル化の時代! ワールドワイド展開の時代だよ!」

 

「おお! 船を使って異国へ旅立つのですか!?」

 

「そうその通り! 行くぞ世界、待ってろよ柳宮十兵衛ぇっ!!

 選りすぐりの武芸者を魔人にして! お前をやっつけて!

 ぐちょぐちょになるまで犯してやるからなぁ~~っ!!」

 

天草四郎と魔人達は元気に仲間集めに邁進していた。

 

……

 

…………

 

………………

 

かくして美空や柘榴達の窮地を救った孔明と九十郎。

これにて一見落着、後はポータルを修理して帰るだけ……とはならなかった。

 

「この前蹴散らした共産主義革命軍が、

 一向宗と結びついて日ノ本全土に飛び火しているわ」

 

壊滅一歩手前の越軍では、空を奪還するのまでが限界であった。

トップを喪った共産主義革命軍は日ノ本中に離散し、この世を共産主義の楽園に作り変えようと画策していた。

 

運悪く西では大阪城建設のため、石山本願寺の立ち退き交渉が行われていた。

いくら鬼との戦いに必要だと言っても、本願寺教団の本山から立ち退けと言われては不満を抱き反発する者も多く、そこに共産主義思想と現代ニホンの最新武器という劇薬が投下された事で一気に爆発。

一向一揆の火と共産主義革命の火が悪魔合体、炎となった共産主義一向一揆は日ノ本の全てを巻き込んだ大混乱へと発展していた。

 

この窮地に九十郎はどうするのか!?

このピンチに孔明はどう立ち向かうのか!?

 

「武力鎮圧しか無いでしょう。 早急に、かつ迅速に押さえつけましょう」

 

「あの……孔明? 他人の話聞いてたか?

 ニホン中の大名が同盟を組んでもできるかどうか怪しいぞ」

 

「日本国内の兵力だけで考えるからですよ。

 足りないならよそから借りて来れば良いんです」

 

「よ、よそから……よそからって、具体的にどこから?」

 

そしてその時、美空達の元に外国の船団が漂着したとの報告が入る。

旗艦の名はゴールデン・ハインド!

船団の指揮を執る者の名はフランシス・ドレイク!

 

いかなる歴史の偶然か、九十郎が歴史に与えた影響がバタフライエフェクトを巻き起こしたのか、ドレイク艦隊の世界一周の時期、航路が盛大にズレ、九十郎達の目の前までやって来たのだ。

 

「日英同盟を組みます」

 

「……は?」

 

 

 

 

 

「イングランドに行き、女王エリザベス1世と会見して同盟を結びます」

 

 

 

 

 

「はあぁっ!? いやいやいやいや!

 馬鹿じゃねぇの!? 頭イカれてんじゃねぇの!?

 ここは赤壁じゃねぇし、日英同盟にゃ気が早すぎるぞっ!?」

 

かくして孔明と九十郎はゴールデン・ハインド号に乗り込み、イングランドを目指すこととなった。

 

孔明と九十郎は気が早すぎる日英同盟(本来の歴史では1902年)を結ぶことができるのか!?

 

ネタバレ・結べます。

 

遠くイングランドから共産主義一向一揆を制圧する兵を借りる事はできるのか!?

 

ネタバレ・借りれます。

 

次回! ドレイクと孔明と九十郎『いざ出航! 世界一周の旅路!』にご期待ください。

 

戦えドレイク! 頑張れ孔明! 負けるな九十郎! 日ノ本の運命は君達にかかっているぞ。

 

「……って、なんで俺も連れてかれてんだよ!? 一人で行けよぉっ!」

 

「貴方が英検一級で、私は英語を読めないし話せないからです」

 

「お前なら言葉通じなくても何とかなるって! 一人で頑張れよ孔明ぇっ!!」

 

「私をこの時代まで連れて来た責任、取ってもらいますからね(邪悪な笑顔)」

 

「ちくしょおおぉぉ~~っ!!」

 

……

 

…………

 

………………

 

一方その頃、天草四郎は新たなる武芸者を魔人にしていた。

 

「世界一周で有名なフェルディナンド・マゼラン!

 凄いぞボク! 村上武吉以上のビックネームを魔人にできるなんて!

 世界史の教科書じゃ世界一周中に現地民と戦って死んだって書いてあるのに、

 しぶとく生きてたなんて本当に驚きだったよ!」

 

「う~ん……船乗りと船乗りで、船乗りがダブってしまってるのです。

 有名なのはともかく、これで本当に柳宮十兵衛に勝てるのですか?」

 

「良いんだよっ!! 正直に言って世界の海を舐めてた、

 村上水軍だけの力じゃこれ以上航海を続けるのは難しい。

 だけど世界の海を知っているマゼラン提督がいれば、

 さらに旅を続けて凄い武芸者を仲間にできるに違いない!」

 

「次はちゃんと武芸者を仲間にするのですよ……」

 

「行くぞ世界、待ってろよ柳宮十兵衛ぇっ!

 選りすぐりの武芸者を魔人にして! お前をやっつけて!

 ぐちょぐちょになるまで犯してやるからなぁ~~っ!!」

 

天草四郎と魔人達は元気に仲間集めに邁進していた。

 

……

 

…………

 

………………

 

かくして、ドレイクと孔明と九十郎の長い長い旅路が始まった。

 

途中海賊に襲撃されたり、イスラム圏の国家に難癖をつけられたり、孔明が媚薬を盛られて強姦一歩手前の大ピンチになったりしたが、なんやかんやなんやかんやでイングランドに到着し、女王エリザベス1世との会見に成功した孔明と九十郎。

 

しかし、呆れる程に広い太平洋を横断するか、イスラム教国の勢力圏を通過しなければ辿り着けない日ノ本まで兵を出せと言われては、エリザベス女王もそう簡単には頷けない。

 

そこに炸裂する孔明の大論陣! 滅茶苦茶頑張って英訳する九十郎!

しかしエリザベス女王も世界史の教科書に載る英傑の一人、相手が諸葛亮孔明であろうと一歩も引かない! そして滅茶苦茶頑張って和訳する九十郎!

佐渡の砂金を使った賄賂攻勢を開始する孔明! 後ろ暗い話に巻き込まれて冷や汗を垂らしながら英訳する九十郎!

何日も何日も続く論戦に次ぐ論戦! 疲労と心労でやせ細っていく九十郎! ドレイクに同情される九十郎! ついに気力と体力の限界が来てぶっ倒れる九十郎! なんやかんやでドレイクと孔明に介抱される九十郎!

 

そしてついにエリザベス女王の説得が成功しかかったその時……イングランド王室に激震が走る。

宗教問題やネーデルランド介入、そして前スコットランド女王メアリー・スチュアートの処刑で関係が悪化していたスペインからの宣戦布告。

スペイン無敵艦隊を差し向けて海上封鎖を目論んだのだ。

 

敵は当時最強の海洋国家スペイン!

もう日ノ本への派兵どころか、国家存亡の危機である!

 

どうする孔明!? どうするドレイク!? どうする九十郎!?

 

「焼きます」

 

「……焼くって、何を?」

 

「スペイン艦隊です」

 

「す、スペイン艦隊を……」

 

 

 

 

 

「スペイン無敵艦隊を全部焼き払って勝ちますっ!!」

 

 

 

 

 

「おいおいおいおい! ここは赤壁じゃねぇんだぞっ!?」

 

かくして始まるドレイクと孔明と九十郎による大火計作戦!

 

ドレイクと孔明と九十郎は紀元前から使い古された火計なんぞでスペイン無敵艦隊を撃退できるのか!?

 

ネタバレ・勝ちます。

 

イングランド王室との同盟は結べるのか!?

 

ネタバレ・できます。

 

次回! ドレイクと孔明と九十郎『アルマダの海戦』にご期待ください。

 

戦えドレイク! 頑張れ孔明! 負けるな九十郎! 日ノ本の運命は君達にかかっているぞ。

 

……

 

…………

 

………………

 

一方その頃、天草四郎は新たなる武芸者を魔人にしていた。

 

「海洋国家スペインが誇る名提督ディエゴ・フローレス・デ・ヴァルデス!

 イングランドとの戦いに負けて国に帰り難いって言ってたから、

 魔人にして仲間にしたぞぉっ!」

 

「う~ん……船乗りと船乗りと船乗りで、また船乗りがダブってしまってるのです。

 いつになったら武芸者が来るのですか?

 これで本当ぉ~に柳宮十兵衛に勝てるのですか?」

 

「ああ、うん、流石にちょっと無計画過ぎたね。

 再起して次こそはドレイクに勝ちたいっていうリベンジ精神が気に入っちゃって。

 忍法・魔界転生が使えるのは後二回だけだし、次こそは武芸者を仲間にするよ」

 

「次こそは本当に武芸者を仲間にするのですよ……」

 

「行くぞ世界、待ってろよ柳宮十兵衛ぇっ!

 選りすぐりの武芸者を魔人にして! お前をやっつけて!

 ぐちょぐちょになるまで犯してやるからなぁ~~っ!!」

 

天草四郎と魔人達は元気に仲間集めに邁進していた。

 

……

 

…………

 

………………

 

かくして、なんやかんやでスペイン艦隊無敵艦隊は壊滅した。

 

開戦前夜、死を覚悟したドレイクが最後の思い出にと九十郎を押し倒したり、自分には全く分からない言語(英語)で愛を語り合う(ように見えた)2人を見た孔明が色々な意味で迷走したり、これが海賊流の戦い方だとばかりにスペインの軍船に乗り込んでチャンバラする羽目になったりと色々あったが、とにかくドレイクと孔明と九十郎は勝利した。

 

「……でもな孔明、スペイン語の通訳まで俺にやらせるのはどうかと思ったぞ」

 

「同じヨーロッパの言語でしたし、

 九十郎さんなら立派にやり遂げると信じていましたよ(笑顔)」

 

「無茶言うなよぉっ! 殆どぶっつけ本番で通訳させんなよぉっ!?

 しかもお前、途中から凄い早口になるし、

 古代中国の故事成語連発するしで、滅茶苦茶大変だったんだぞっ!!」

 

「九十郎さんなら立派にやり遂げると信じていましたよ(邪悪な笑顔)」

 

「(孔明め、無理矢理こっちの世界に連れて来たの根に持ってるな……)」

 

九十郎は死ぬほど苦労したが、それでも勝利の立役者となった事で日英同盟交渉も大きく進展し、共産主義一向衆鎮圧のために日ノ本への派兵を約束させた。

 

とはいえ海外遠征、それも世界の反対まで兵を送るとなれば相当な準備が必要になる。

国を挙げての遠征準備にイングランド全体が大あらわである。

 

一方、ちょっと暇になった孔明と九十郎は日ノ本からでは見えなかった世界情勢について学び始める。

そして現代ニホンあるいは現代日本の歴史と大きく離れた出来事を知った。

 

「フランシスコ・ピサロ、コンキスタドールに……失敗!?」

 

「……え? インカ帝国って滅んでねぇの?」

 

「むしろヨーロッパの技術や知識を貪欲に吸収して、

 過去に無い発展をしつつあるみたいですね……」

 

いかなる歴史の偶然か、バタフライエフェクトか、剣丞が生まれた世界でも九十郎が生まれた世界でも滅亡していたインカ帝国は、なんとこの世界では滅んでいなかった。

 

ピサロはコンキスタドールに失敗して行方不明、そしてインカ帝国の皇帝ワイナ・カパックは今なお存命中であった。

 

「新大陸には無かった疫病が大量に流入して滅んだんじゃなかったか?

 ほら、コロンブス交換って奴で。

 この時代の船って現代じゃありえねぇくらいに不潔で不衛生だからな」

 

「国全体に狂ったように水道と水洗便所を作って疫病の蔓延を食い止めたみたいです。

 あまりにもトイレが多すぎるから、

 ヨーロッパの人達はカパック皇帝をベ〇キマンって呼んでるとか」

 

「そのうちカパックがキレて攻め込んでくるんじゃねぇの?」

 

さておき、イングランドから日ノ本に派兵するにあたって、最大の懸念点は航路の確保である。

 

アフリカ大陸を回ってインド洋を横断する東回り航路は、途中にキリスト教国と対立するイスラム国家の勢力圏を通過する必要があり、大小さまざまな軋轢や妨害が予想される。

 

一方、南アメリカ大陸を回って太平洋を横断する西回り航路は、途中で水や食料を補給する拠点が無く、広すぎる太平洋を越える前に深刻な食糧難が予想される。

ドレイク船団はたった5隻の船団であったので必要とされる物資が少なく、ギリギリ水や食料の補給に成功したものの、共産主義一向衆を武力鎮圧できるだけの規模の兵力を運ぶとなると必要とされる物資は多くなり、補給の難易度も格段に跳ね上がるのだ。

 

八方塞がりかとドレイクや九十郎が頭を抱えたその時、諸葛孔明に悪魔的発想がひらめいた。

 

「……天下三分します」

 

「……は?」

 

 

 

 

 

「日ノ本、イングランド、そしてインカ帝国で大同盟を組み、天下を三分割します」

 

 

 

 

 

「気でも狂ったのか孔明ぇっ!? 今は三国志の時代じゃねぇし、

 ワイナ・カパックが強いのはC〇vilizationだけだぞっ!」

 

かくして、孔明のゴリ押しにより急遽組まれるインカ帝国行き外交使節団!

1494年のトルデシリャス条約、1529年のサラゴサ条約により、スペイン・ポルトガル間の条約で世界の支配権が勝手に定められた事もあったが、今度は諸葛孔明が日ノ本、イングランド、インカ帝国の三国で似たような事をしようというのだ!

 

しかし、インカ帝国はフランシスコ・ピサロが色々やらかしたせいでヨーロッパのキリスト教国に良い印象は抱いていない!

いや、いっそ恨んでいると言っても過言では無かった!

 

果たして孔明にワイナ・カパックの怒りや恨みを氷解させる妙案はあるのか!?

 

ネタバレ・ありませんでした。

 

日ノ本、イングランド、インカ帝国の大同盟は結べるのか!?

 

ネタバレ・できます。

 

次回! ドレイクと孔明と九十郎『新大陸』にご期待ください。

 

戦えドレイク! 頑張れ孔明! 負けるな九十郎! 日ノ本の運命は君達にかかっているぞ。

 

……

 

…………

 

………………

 

一方その頃、天草四郎は新たなる武芸者を魔人にしていた。

 

「はぁ~っはっはっはっはっはぁっ!! 今度の魔人は凄いぞっ!

 世界史の教科書に載ってるビッグネーム……フランシスコ・ピサロだぁっ!!」

 

「う~ん……船乗りと船乗りと船乗りと船乗りで、

 またまた船乗りがダブってしまってるのです。

 ポーカーならフォーカードですけど、

 綾那達が探しているのは柳宮十兵衛と戦えるような武芸者なのですよ。

 これで本当に本当おおぉぉ~~っに、柳宮十兵衛に勝つ気なのですか?」

 

「……ごめん、何かテンション上がっちゃって。

 インカ帝国に叩き出されて、復讐したいっていうリベンジ精神も気に入っちゃってさ。

 忍法・魔界転生も次で最後だし、最後の1人は絶対に絶対に武芸者にするよ」

 

「どうせ次も船乗りなのです、船乗りのファイブカードが完成するのですよ……」

 

「行くぞ世界、待ってろよ柳宮十兵衛ぇっ!

 選りすぐりの武芸者を魔人にして! お前をやっつけて!

 ぐちょぐちょになるまで犯してやるからなぁ~~っ!!」

 

天草四郎と魔人達は元気に仲間集めに邁進していた。

 

……

 

…………

 

………………

 

インカ帝国との同盟交渉は、当然のように難航した。

 

フランシスコ・ピサロによる攻撃、コロンブス交換による疫病の蔓延、そしてヨーロッパから次々やってきては、現地民を奴隷扱いする、キリスト教的価値観を押し付けて異教徒を様々な残虐行為で苦しめる……そういった様々な積み重ねがインカ帝国の皇帝ワイナ・カパックの態度を硬化させていた。

 

「案の定と言うか、ある意味当然と言うか、

 イングランド王室の連中は苦戦してるみてぇだな」

 

「しかし、日本人はヨーロッパ人ではありません。

 肌の色が違う、使う言葉も違う、キリスト教の価値観も持たず、

 新大陸の征服、現地民の誘拐、奴隷化もしていません」

 

「そこが狙い目か」

 

「はい、今は粘り強く何度でも対話を続けます。

 信を得られた頃合いを見て、利を持って説き伏せましょう。

 なので翻訳の方は頑張ってくださいね」

 

「インカ帝国の言語をぶっつけ本番で通訳させるお前の神経が信じられんよ、俺は」

 

「同じアメリカ大陸の言語ですからどうにかなりますよ(笑顔)」

 

「うん、英語ってイギリスの言語だからな、ユーラシア大陸が発祥。

 人類誕生の頃から全然交流の無い新大陸の言語とは全然似てねぇんだよ」

 

「九十郎さんなら立派にやり遂げると信じていますよ(邪悪な笑顔)」

 

「孔明め、無理矢理こっちの世界に連れて来たの根に持ってるな……」

 

こうして始まるインカ帝国の人々との交流!

 

互いの文化を語り合い、互いの歴史を語り合い、異国の品々を交換し合い……少しずつ、しかし確実にワイナ・カパックの荒んだ心は和らいでいき、孔明と九十郎に心を開くようになっていった!

途中、現地住民を拉致して奴隷にしようとした西洋人を(直接ブチ殺すと後で外交問題になるので)石兵八陣のちょっとした応用で迷子にしてやったり、神殿の奉納した黄金や宝玉を勝手に持ち去ろうとした西洋人を(誰が殺したかバレると外交問題になるので)名探偵のいない金〇一少年の事件簿風の連続密室猟奇殺人事件(謎の怪人に襲われた風の演出つき)に巻き込んで追い返したりして、九十郎達とワイナ・カパックの距離は近づいていった!

 

こうして全てが上手くいくかと思われたその時……事件が起きた!

 

「……あ、やっべ誤訳した。

 これじゃ俺個人がワイナ・カパックに求婚してるみてぇじゃねぇか」

 

……九十郎が翻訳をミスったのだ!

 

かつて諸葛孔明が馬謖に街亭防衛を任せて盛大に失敗したのと同じように、孟達に内乱を起こすように仕向けて見事に失敗したのと同じように、九十郎ならインカ帝国の言語・通称ケチュア語の翻訳も十分やれると過大評価して無茶ぶりし、見事に失敗したのだ……と、いう事にしておこうと後に孔明は語っている。

 

この時、九十郎が翻訳をミスった本当の原因については、ここでは語らない事にする。

 

「ま、まぁ、外交使節団の翻訳担当がいきなり皇帝陛下を口説き始めても、

 どうせ誰も本気にしないだろ。

 素直に誤訳ですごめんなさいって……いや、黙ってりゃバレやしねぇかな……」

 

「おい九十郎、何やら町が騒がしいのだが、何か知らないか?(英語で喋ってます)」

 

「ドレイクか? いや、俺は何もしてないぞ、本当だぞ(英語)」

 

「……その顔は何か心当たりがある顔だな? 何を知っている?

 早く話せばそれだけ女王陛下の慈悲もあるぞ(英語)」

 

「おいおい、俺が何かやらかした前提で話すなよ。

 ちょっと翻訳ミスっただけで騒ぎになるような真似はしてねぇよ。

 騒がしいってどういう感じだよ? 殺気立ってるのか?(英語)」

 

「いや、敵意や害意の類は感じられん。

 むしろ喜ばしいという感じがあるな、皆で着飾って、街も飾り立てていた(英語)」

 

ドレイクと九十郎がワイナ・カパックから提供された宿舎の窓から外を見る。

 

「おーおー、旗だの横断幕だの出てるなぁ。 昨日まで無かったよな、ああいうの(英語)」

 

「何と書いてあるんだ?(英語)」

 

「お前らも少しはこっちの言葉を覚えろよな……(英語)」

 

「嫌だ、面倒臭い。 九十郎が一生私の面倒を見てくれ(英語)」

 

「はいはい分かったよ。 訳してやるからちょっと待て(英語)」

 

九十郎がノートをペラペラめくりながら横断幕の文字を翻訳する。

 

当然ながら、ケチュア語の辞書なんて物は存在しない。

九十郎が持っているのはイングランド王室の伝手で集められるだけ集めたインカ帝国に関する資料から言語学的な部分を抜き出して写本したお手製のノートである。

 

現代ニホンのトップエリートを集める大江戸学園の入学試験を通過するだけあって、九十郎の地頭は決して悪くない。

ぶっつけ本番でスペイン語やケチュア語の通訳をやらされて、片手で数えられる程にしか誤訳をしていないのは、九十郎の地頭が珍しく役に立ったためかもしれない。

 

そして数十秒後……九十郎が翻訳用のノートをばさっと落とした。

膝をガタガタと震わせて、冷や汗が止めどなく流れていた。

 

「おい、何をやらかした?(英語)」

 

「け……けけ、けっこ……結婚おめでとうございます、皇帝陛下……だと?(震え声)」

 

「日本語で言われても分からん! 英語で言え、英語で!(英語)」

 

「結婚おめでとうございます、皇帝陛下……(英語・震え声)」

 

「おや、ワイナ・カパックが結婚か。 それはめでたい事だな。

 それで、それならどうしてお前が震えるのだろうな?(英語)」

 

「あ、いや……ちょっと翻訳ミスってだな……(英語・震え声)」

 

かくして、翻訳に失敗してワイナ・カパックに求婚してしまった九十郎!

大いなる勘違いによってインカ帝国は国を挙げての結婚祝いムードになってしまう!

 

「ちょっと待って!? ちょっと待って!? お願いだから待って!?

 なんでワイナ・カパックの好感度こんなに高いの!?

 俺何かやった!? 俺、また何かやっちゃいましたぁっ!?(日本語)」

 

混乱する九十郎!

 

「ふざけるなぁっ!! 九十郎は私の夫だぞ!

 こんな婚姻は無効だ! 重婚じゃないかっ!!(英語)」

 

「いやお前の夫でもねぇよっ!!(英語)」

 

憤るドレイク!

 

右往左往している内にどんどん進んでいく結婚式の準備!

進退窮まった2人が駆け込んだ先は……

 

「孔明ぇっ! 助けて孔明ぇっ!!(日本語)」

 

「朱里! なんとかしろっ!!(英語)」

 

……駆け込んだ先は諸葛孔明のもとであった。

 

「え? 婚姻すれば良いのでは?(日本語)」

 

「いやいやいやいや、流石に無茶だろ!? ワイナ・カパックだぞ!

 何でインカ帝国の皇帝陛下が高々一通訳と結婚するんだよ!?

 意味が分からねぇし笑えねぇよっ!?(日本語)」

 

 

 

 

 

「……にこっ(無駄に良い笑顔)」

 

 

 

 

 

「こ、孔明……お前、まさか……(日本語)」

 

「まあまあ、婚姻同盟なんて紀元前から使い古されてきた手じゃないですか。

 時間をかければかけるだけ日本の国土が荒れてしまいますし、

 たぶんこれが一番早いと思います(日本語)」

 

「孔明てめえぇっ!!(日本語)」

 

「おい! 2人共何を話している!? 私にも分かるように話せっ!!(英語)」

 

かくして訪れる九十郎ご一行空中分解の危機!

果たして九十郎はワイナ・カパックとの婚姻を回避できるのか!?

 

ネタバレ・駄目でした。

 

果たして九十郎はワイナ・カパックのま〇こをカパックしてしまうのか!?

 

ネタバレ・ヤッちゃいました。

 

果たしてワイナ・カパックを説き伏せ、日ノ本、イングランド、インカ帝国の大同盟は結べるのか。

 

ネタバレ・できました。

 

次回! カパックとドレイクと孔明と九十郎『九十郎の大脱走』にご期待ください。

 

進めカパック! 戦えドレイク! 頑張れ孔明! 負けるな九十郎! 日ノ本の運命は君達にかかっているぞ。

 

……

 

…………

 

………………

 

一方その頃、天草四郎は新たなる武芸者を魔人にしていた。

 

「これが最後の忍法・魔界転生ぉっ! これが最後の魔人っ!!

 世界史の教科書に間違い無く乗る超々ビッグネーム……

 その名はレオナルド・ダ・ヴィンチだぁっ!!」

 

「ついに……ついに船乗り以外が仲間になったのです!!

 成長したのですね、綾那は感動しているのです!」

 

「やだなぁ、いくらなんでも船乗りのファイブカードを揃える程の馬鹿じゃ無いって」

 

「物凄いおばあちゃんだったのですけど、大丈夫なのですか?」

 

「そこだけは問題無い。

 私の忍法・魔界転生は対象の肉体を全盛期の年代で再生させるからね。

 うん、そこだけは問題無いよ、そこ『だけ』は」

 

「……で、戦えるのですか?」

 

「えっとね……あの有名なモナ・リザとか、最後の晩餐を描いた凄い人でね。

 プロペラとかパラシュートとか戦車とかの設計とかもやってて、

 様々な分野に手を伸ばした万能の天才と呼ばれていて……」

 

「……で、戦えるのですか?」

 

「……む、無理じゃないかな~」

 

綾那と天草四郎との間で痛々しい沈黙が流れた。

 

「とにかくっ! 選りすぐりの武芸者……武芸者じゃないけど、

 とにかく魔人は集めたぞ! 待ってろよ柳宮十兵衛ぇっ! お前をやっつけて!

 ぐちょぐちょになるまで犯してやるからなぁ~~っ!!」

 

「もう綾那が全員やっつけるしかないのですよ……」

 

こうして天草四郎の魔人集めの旅は終わり、一行は江戸城に設置されたポータルを目指して出航した。

 

……

 

…………

 

………………

 

共産主義一向衆の武力鎮圧は、意外な程に上手くいった。

 

九十郎達がヨーロッパや新大陸でグダグダやってる間に剣丞が日ノ本を駆けずり回り、有力大名達を説き伏せて同盟関係を結び、現代ニホンの武器を有する共産主義一向衆を相手に劣勢ながらも粘り強く抗戦を続けていた。

 

そこにインカ帝国の全面協力によって補給問題を解決した英国海軍の船団が現れ、共産主義一向衆に向けて大砲を一斉射!

さらに船内からはインカ帝国の伝統の戦装束に身を包んだ戦士達が現れる!

意味の分からない装束の戦死達が、意味の分からない言語で雄たけびを上げながら突撃してくる姿に、基本信心深いと言うか、迷信に影響を受けやすい共産主義一向衆を恐れおののかせた!

 

さらにさらに! 一足先に日ノ本に戻っていた天草四郎と愉快な仲間達も加勢し、その恐るべき超能力によって共産主義一向衆を蹴散らしていった!

 

さらにさらにさらに! 忍法・魔界転生によって魔人と化したレオナルド・ダ・ヴィンチが超頑張って破損した次元間ポータルの修繕に成功!

再び戦国時代と大江戸学園を繋ぐ次元の扉が開通したのだ!

 

「勝ったッ! 第三部完!」

 

こうして戦国時代で起きた全ての問題に解決の目途が立ち、元の世界への帰還も可能になり、全てが終わったか終わったかに思えた。

 

全てが終わり、後はそれぞれの日常に回帰していくだけだと誰もが思った。

 

「じゃあ、ボク達は一足先に大江戸学園に帰ってるね」

 

「おう、ポータル直してくれて本当に助かった」

 

「お礼ならボクにじゃなくて、ダ・ヴィンチに言ってあげて」

 

「しかし何でレオナルド・ダ・ヴィンチが生きてたんだろうな。

 確か生没年1452年から1519年だったろ? とっくの昔に死んでなきゃおかしいだろ」

 

「理由は良く分からないけど、

 ボクらの世界よりも遅く生まれて、長生きもしてたみたい。 何か心当たりとかある?」

 

「う~ん……まあ、ワイナ・カパックが生きてた時点で今更かもなぁ……

 あいつもあいつで本来は死んでなきゃおかしいし」

 

「まあまあ、おかげでボクらも元の世界に帰れるんだから良しって事でね。

 細かい事は気にしない、気にしない」

 

「そうだジェロニモ、犬子達に手紙を書いたから渡しておいてくれ。

 こっちでどういう事があったか、大体書いておいた。

 後処理とか色々あるから俺が戻れるのは一ヶ月後になると思うが、

 必ず戻るから心配すんなって」

 

「分かった、ちゃんと渡しておくよ」

 

九十郎が天草四郎に手紙を渡す。

 

天草四郎はこれから大江戸学園執行部を襲撃して柳宮十兵衛を強姦しようとしている犯罪者予備軍であるが、九十郎は基本的にクズなので気にしていない。

 

「じゃあ柳宮十兵衛へのリベンジマッチ、頑張れよ。

 パートタイム火付盗賊改方として大っぴらに応援はできねぇけどな、

 あのいけ好かない柳宮に吠えヅラかかせるのは中々面白そうだって思ってるよ」

 

いっそ内心では勝ってほしいとすら思っていた。

倫理観ゼロどころかマイナスである。

 

だから貴様は九十郎なのだ。

 

「何なら、キミが戻って来るまでリベンジマッチは待っていようか?」

 

「それはやめとけ、俺も立場上止めに入らにゃならなくなるし、

 あの柳宮十兵衛相手につけ入る隙を晒す事にもなりかねん。

 やるならポータルが直った今のタイミングがベストだろ?」

 

「そうかい? そうかもね。

 それなら……お言葉に甘えて、思いっきりブチかましてくるよ。

 この時代、この世界を駆け回って集めてきたボクの最強メンバーでねっ!!」

 

そして天草四郎は忍法・魔界転生で魔人化させたこの時代の英雄・英傑達を呼び集める。

 

本多忠勝!               ←戦国最強と畏れられる猛将

村上武吉!               ←船乗り

フェルディナンド・マゼラン!      ←船乗り

ディエゴ・フローレス・デ・ヴァルデス! ←船乗り

フランシスコ・ピサロ!         ←船乗り

レオナルド・ダ・ヴィンチ!       ←芸術家、科学者、技術者

 

「……何度見ても最強には程遠い面子なのです」

 

本多忠勝こと綾那は既に負け戦ムードである。

 

「綾那、もうこうなったらキミだけが頼りだよ。 頑張って」

 

「やるだけやりますけど、負けても綾那のせいにしないでほしいのですよ」

 

こうして天草四郎と愉快な仲間達は次元間ゲートを通り大江戸学園へと戻っていった。

九十郎達も次にポータルが開く1ヶ月以内に共産主義一向衆との戦いの後処理を済ませようと気合を入れ直す。

 

そして……

 

……

 

…………

 

………………

 

天草四郎によるリベンジマッチ!

後に第二次魔界転生事件と呼ばれる戦いがついに始まった!

 

ポータルを再起動し、次元間ゲートが開いた直後に大江戸城に突撃!

戦国時代側にポータルを直せる人物がいるとは想像できないだろうという天草四郎の予測は見事に当たり、柳宮十兵衛の意表を衝く事には成功した!

 

意表を衝く事『には』成功した!

 

「すみませ~ん、柳宮十兵衛さんいませんか~?

 え? 今日は来てない? じゃあ、どこに……分からない?

 しょうがない、本人に電話して聞くか……」

 

そして天草四郎はガラケーを取り出して柳宮十兵衛の番号をプッシュする。

 

「あ、十兵衛? ボクだよ、ジェロニモ。

 そうそう、ポータル直ったから帰ってきちゃった。

 それはそうと今から魔人連れてキミを襲撃しようと思ってるんだけど、今どこ?

 え、本土にいるの!? しょうがないなぁ~、いつ戻るの?

 土曜日ね、じゃあ土曜日にどっかで待ち合わせしよう」

 

……と、いう訳で当の本人に襲撃を知らせてしまったため、奇襲効果は消え失せた。

 

綾那は『これはもう駄目かもしれないのです』と言いたげな味わい深い表情になっていた。

 

……

 

…………

 

………………

 

天草四郎によるリベンジマッチ!

後に第二次魔界転生事件と呼ばれる戦いがやっと始まった!

 

柳宮十兵衛が戻って来るまで、エン(大江戸学園内で流通している通貨)を稼ぐためにコンビニやファミレスでアルバイトに勤しむ魔人達の姿は実に滑稽だったが、とにかく戦いは始まった!

 

これでも一応は大江戸学園の生徒である天草四郎はともかく、他6名の魔人達はいわゆる不法侵入者になるのだが、それでも普通にアルバイトができる所が大江戸学園の笑えるところである。

 

「行くぞ柳宮十兵衛ぇっ!! これが戦国時代で集めてきたボクの最強メンバーッ!!

 この人数で袋叩きにすればいくらキミでもひとたまりも無いだろっ!!」

 

「ジェロニモ、最強の後にカッコ笑いって付けるの忘れてるのですよ」

 

「最強メンバーなのっ!! 誰が何と言おうがこれが最強なのっ!?」

 

「おお、怖い怖い。 怖いからこちらも増援を呼ぶとしようか」

 

柳宮十兵衛が呼子を鳴らすと、近くに隠れていた徳河吉音、徳河詠美、大岡想、遠山朱金、長谷河平良、鬼島桃子、そして粉雪が次々と駆け付けて来る。

合計8名の大江戸学園の剣客達が天草四郎と6人の魔人達を取り囲んだ。

 

「……なっ!? 助っ人を呼ぶなんて卑怯だぞぉっ!!」

 

天草四郎は自分の事を棚に上げて柳宮十兵衛を非難した。

 

「問答無用っ! 覚悟ぉっ!!」

 

しかし、柳宮十兵衛と7人の剣客達は聞く耳を持たずに天草四郎達に飛び掛かる。

そして大江戸学園では日常茶飯事ともいえる混戦、乱戦、チャンバラが始まった。

 

本多忠勝・通称綾那はまさに三面六臂のような大暴れをしたが、他のメンバーは陸に上がった河童ならぬ陸に上がった船乗りとそもそも殴り合いに向いてない芸術家兼技術者、あっという間に大江戸学園の剣客達にボコボコされ、次々と倒れ伏し、魔人ち〇こに経文コンドームを被せられ、逆レ〇プされていった。

 

こっちは18禁版ではないで詳細は省くが、まるでエロ漫画のような情景の中で、魔人達は次から次へと魔人エキスをヌキ取られ、人間に戻されていった。

 

天草四郎は柳宮十兵衛との一騎打ちで手一杯、その間に綾那の元に残り7人の剣客達が殺到し、ついに綾那までもが組み伏せられてしまう。

いくら本多忠勝が強いと言っても、いくら魔人化により超能力に目覚めていても、現代ニホンのトップエリートを集めた大江戸学園の上澄み中の上澄みとも言える7人の剣客達が同時に来られてはひとたまりも無かったのだ。

 

そしてエロ漫画のような光景が再び繰り返され、綾那もまた魔人エキスをヌキ取られ、人間へと戻される。

 

「はぁ……はぁ……くそぉ、何でそんなに強いんだよぉ、柳宮十兵衛ぇ……」

 

「ぜぇ、ぜぇ、ふぅ……悪いな、ここまでして私の身体を求められて、

 悪い気はせんのだが……諦めろ! 私にレズッ気は無いっ!!」

 

柳宮十兵衛の一喝が、柳宮十兵衛の剣閃が、天草四郎を捉えた。

勝負あり……である。

 

こちらは18禁版ではないので細かい描写は省くが、天草四郎も他の魔人達と同じく、魔人から人間に戻す行為が始まる。

 

「お前が望んだ結果では無かろうが……

 努力賞くらいはくれてやる、これで満足しておけ」

 

こちらは18禁版ではないので詳細は省くが、行為の相手は柳宮十兵衛だ。

 

「ああ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ……こんなの望んでいない、こんなのは嫌だ。

 ボクはキミに組み伏せられたいんじゃない、組み伏せたいんだ。

 ボクはキミに犯されたいんじゃない、犯したいんだ。

 キミのその何が起きても変わらない堅物顔をぐちゃぐちゃにしてやりたいんだ」

 

エロ漫画のような情景の中で、天草四郎はうわ言のように嫌だ嫌だと繰り返す。

 

「分かった分かった、分かったから早く人間に戻ろうな」

 

「違う……違う! 違う違う! 違う違う違うぅっ!! 分かってない!

 キミは私の心を何一つとして分かってない! 見ていない!

 見ようともしていないっ!! ボクはキミに勝ちたい! キミだから!

 柳宮十兵衛だから勝ちたい! 柳宮十兵衛に勝ちたいっ! 勝ちたいんだぁっ!!」

 

最後の瞬間は着実に近づいていた。

綾那達6人の魔人と同じように魔人ち〇こから魔人エキスをヌキ出され、人間に戻る時は刻一刻と近づいていた。

 

しかし……

 

「嫌だぁっ!! 嫌だぁっ!! このまま終わるなんて嫌だぁっ!!

 このままイカされるなんて嫌だぁっ!! ボクはまだ何一つできていない!

 まだ何も成し遂げちゃいないんだぁっ!! ボクは……ボクはぁっ!!」

 

天草四郎が叫ぶ、魂の底から絞り出すように叫ぶ。

身体の奥底に眠る力の全てを絞り出すように、魂の炎を燃やし尽くすように叫ぶ。

 

しかし、叫ぶ程度でこの劣勢極まりない戦況を逆転できる程、世の中は甘くない。

 

 

 

 

 

世の中は甘くは無いのだ……天草四郎が普通の人間であれば。

 

 

 

 

 

柳宮十兵衛は見誤っていた。

柳宮十兵衛は知らなかった。

柳宮十兵衛は気づかなかった。・

 

かつて天草四郎が試作型ポータルを使いって戦国時代へ逃げ延びた時、戦国時代生きる天草四郎と、大江戸学園の天草四郎の魂が融合し、1つの肉体に2人分の魂が混在する状態になった(おまけ6)。

サイキックとはすなわち魂のパワーだ、魂が2人分あれば、そのパワーも2倍になる。

今までは2人分の魂が上手く混ざり合っていなかった故に、1人分のパワーしか引き出せていなかったのだ。

 

しかしこの時、この瞬間、柳宮十兵衛に勝ちたいという妄執にも似た強い想いが、強すぎる想いが2人分の魂の統合を促し、天草四郎のサイキック能力を2倍に……いや、それ以上に強化した。

 

そして柳宮十兵衛が用意した経文コンドームは、普通の能力の魔人であれば十分に抑え込むだけの性能があったが、2人分の魂を持ち、通常の2倍以上のパワーを持った超魔人を抑えるだけの性能は無い。

 

「ボクは……ボクは……勝ちたい! 勝ちたい! 勝たあああぁぁぁーーーいぃっ!!!」

 

柳宮十兵衛が異変に気付いたその直後……天草四郎の魔人ち〇こを包んでいた経文コンドームがバラバラに千切れてしまった。

 

……

 

…………

 

………………

 

「……ジェロニモの奴、やりやがった」

 

江戸城に設置されたポータルの前で、斎藤九十郎が苦々しい表情で項垂れていた。

 

戦国時代と大江戸学園を繋ぐ次元間ゲートは、1ヶ月に1度、約10分間しか開かれない。

ずっと繋ぎっぱなしにすると、ニホン経済に悪影響を与えかねない程に膨大なエネルギーを使ってしまうからだ(最終回)。

 

そして今日は天草四郎と愉快な仲間達が大江戸学園に戻ってから1ヶ月後、もう一度次元間ポータルが開く予定の日だ。

 

「要するに犬子達が大ピンチって話っすよね?」

 

「ああ、そうだよ」

 

約1週間前、ほんの一瞬だけ次元間ポータルが開いた。

開いた時間は本当に一瞬で、人や物を通す事は不可能な時間……短い電子メールを一通分送るのが限界の、本当に本当に短い時間だった。

 

その一瞬の時間で、九十郎のデバイスが一二三からのメールを受信した。

そのメールには、驚くべき事がいくつも書かれていた。

 

柳宮十兵衛が天草四郎と愉快な仲間達をボコボコにして、あと一歩の所まで追いつめた。

最後の最後で天草四郎が謎の超パワーに目覚めて、逆に柳宮十兵衛達を蹴散らし、柳宮十兵衛を強姦した。

天草四郎はその後暴走し、理性を喪い、大江戸学園を徘徊し、女の子を見ればすぐさま押し倒して強姦する危険な存在になってしまった。

大江戸学園の剣客達が何度か戦いを挑んだが、まるで歯が立たずに負け続けている。

妊娠率100%の魔人ち〇ぽを振るい、女を犯す度にセ〇ジュニアのような天草四郎の分身が増え、天草四郎自身の力も増していき、強姦件数は日を追うごとに増えている。

ついには学園全体に非常事態宣言が出され、犬子達は事前に用意していた防衛拠点・通常風雲真田城に立て籠もり、天草四郎及び天草ジュニア達の攻撃に耐え忍んでいる状態だ。

 

……一二三からのメールには、要約するとこのような事が書かれていたのだ。

 

「……このままじゃ犬子達まであいつにヤられるのも時間の問題だ。

 その前に俺達がどうにかするしかねぇ」

 

江戸城のポータルの前には、九十郎が集めた対天草四郎戦のための助っ人達がいた。

 

「犬子を、一二三を、粉雪を守りてぇ。 いや……俺の嫁を守るのも大事なんだが、

 それ以上にジェロニモを、俺のダチ公を止めてやりてぇ。

 あいつは目についた女を無差別に襲うような危険な奴じぇねえ。

 何が起きたかは分からねぇが、暴走して、自分で自分を止められねぇんだ」

 

九十郎は天草四郎を想い、ギュッと拳を握り締める。

 

「美空」

 

「まあ、良いんじゃない。

 1週間で集められるだけ集めたこの兵力で、天草四郎をボッコボコにしちゃいましょう」

 

「柘榴」

 

「御大将がやるって言うなら、犬子達を助けるためなら、

 この柿崎景家、いかなる艱難辛苦も厭わねーっすよ!」

 

「ドレイク」

 

「はっ、海賊の持ち物に手を出す事がどれほど愚かな事か、

 天草四郎とかいうのにたっぷりと思い知らせてやろうじゃないか(英語)」

 

「カパック」

 

「置いていこうなんて言ったら、本気で恨みますよ。 私の夫の物は、私の物と同義です。

 インカの王として、完膚無きまでに叩き潰してしまいますから(ケチュア語)」

 

「それと……孔明」

 

「………………」

 

孔明は無言のままそっぽを向いている。

 

「孔明ぇ!? 孔明さん!? 諸葛孔明さん!?」

 

「朱里と呼ぶまで返事しません」

 

「ええ~……その話まだすんの?」

 

誤魔化すような態度に、孔明が深々とため息をついた。

 

「……2回も私を抱いた癖に」

 

「わっーっ! わぁーっ! その話は無し! その話は後でゆっくりしよう!

 後で土下座でも何でもするから今だけはやめてくれぇっ!!」

 

「……土下座なんて欲しくないですよ、もう」

 

孔明はぷくーっと頬をふぐのように膨らませている。

 

「朱里、九十郎を困らせるのはその辺にしときなさい。

 九十郎の女関係の清算は犬子達を助けた後でゆっくりとしましょう」

 

「そーっすね、柘榴達に何の相談もせずに嫁を増やした九十郎には

 色々と言いたい事があるっすけど、それは犬子達も交えてゆっくりじっくりとするっす」

 

「……いや、あの、マジですまん」

 

九十郎の未来は早くもお先真っ暗である。

 

だから貴様は九十郎なのだ。

 

そんな事を話している間に、大江戸学園と戦国時代を繋ぐ次元間ポータルが開かれる時間になった。

 

「美空、柘榴、ドレイク、カパック、しゅ……孔明。 行くぞぉっ!!」

 

かくして大江戸学園を揺るがす大事件、第二次魔界転生事件に九十郎達が参戦する!

果たして九十郎は犬子達の窮地を救う事はできるのか!?

 

ネタバレ・救います。

 

果たして暴走する天草四郎を止める事はできるのか!?

 

ネタバレ・勝ちます。

 

次回! カパックとドレイクと孔明と九十郎『珍しく間に合う救援』にご期待ください。

 

進めカパック! 戦えドレイク! 頑張れ孔明! 負けるな九十郎! 大江戸学園の運命は君達にかかっているぞ。

 

……

 

…………

 

………………

 

大江戸学園へ舞い戻り、天草ジュニア達をほぼ全滅させ、陥落寸前だった風雲真田城の救援に成功した九十郎達であったが、天草四郎は文字通り桁違いの強さだった。

 

大江戸学園の名だたる剣客達が力を尽くし、戦国時代の名将・知将達が知恵を尽くしてもなお、その恐るべき超能力に対抗する事はできなかった。

 

1人、また1人と力尽き、組み伏せられ、強姦されていく中で、諸葛孔明とワイナ・カパックが最後の賭けに出る。

 

だがしかし……抵抗も空しく、ついに孔明すらも天草四郎に強姦されてしまう。

 

こちらは18禁版ではないので詳細は省くが、ここまで頑強に抵抗してきた孔明を、三国時代最強の軍師である孔明をついに犯したのだと勝ち誇る天草四郎。

 

その高笑いが学園中に木霊したその時……

 

「……ああ、安心しました」

 

……孔明はそう言って安堵したのだ。

 

「何だ……何が起きているんだ!? どうして孕まない!? どうして!?」

 

「いくら妊娠率100%の魔人ち〇こと言っても、

 動く死体を妊娠させるのは無理だったようですね。

 さっきから貴女がヘコへコと腰を振っていた相手はとっくの昔に死んでいた。

 魂を生贄に捧げた、動く死体に過ぎなかったんです」

 

「な、何ぃっ!?」

 

「そしてもう一つ、時間稼ぎに付き合ってくれてありがとうございます。

 私とカパックさんが用意した切り札は、

 発動さえすれば強力ですが物凄く時間がかかるんです。

 だから誰かが身体を張って、時間を稼ぐ必要がありました……」

 

そして孔明は、懐から2枚の呪符……いや、2枚のカードを取り出した。

 

「私は既に! このカードの効果を発動させていたっ!!」

 

「な……なんだってーー!!」

 

 

 

 

 

「トラップ発動! 生贄の祭壇っ! 人々の魂を生贄に……降臨せよ!

 太陽の神! インティッ!!」

 

 

 

 

 

インカ帝国に伝わる太陽神にして帝国の始祖……強大な神格を持った神が大江戸学園に降臨した。

遊〇王カードの生贄の祭壇とは全然別の効果だが、気にしてはいけない。

 

「そ……そんなのアリかよおおぉぉーーっ!?」←天草四郎

 

「太陽神インティで天草四郎にダイレクトアタック!」

 

「モクテスマ・ディフェンス! アステカ・ドロップ! アステカ・セントーン!

 アステカ・ヘッドバット! アステカ・ニー・ドロップ!」

 

「ギャアアアァァァーーーッ!!」←天草四郎

 

「さらに! 速攻魔法発動! 封神台っ!

 アドバンス召喚したモンスターをゲームから除外し……召喚コストを踏み倒すっ!!」

 

「そ……そんなのアリかよおおぉぉーーっ!?」←インティ

 

「神を解体し! 神への生贄とされた魂は……全て元に戻るっ!!」

 

「ギャアアアァァァーーーッ!!」←インティ

 

こうして諸葛孔明は天草四郎とついでに太陽神インティを撃破したのだった。

 

なお、天草四郎は反省文の提出と一定期間の奉仕労働を条件に復学したことも付記しておこう。

年単位で行方不明になり、戻ってきたと思えば学園を揺るがす大事件をやらかしてなおこの程度の罰で復学できるところが大江戸学園の笑えるところである。

 

……

 

…………

 

………………

 

天草四郎を撃破し、全てに決着をつけたかに見えた九十郎達に最後の試練が訪れる!

 

「ふふ……ふふふ……うふふふふっ!」

 

大江戸学園の女子寮で、雫が悪役っぽく笑っていた。

 

「蘭丸戦の前から九十郎さんと結ばれた人達・通称国内組」

 

犬子、柘榴、一二三、粉雪、そして美空を示す駒を並べる。

 

「蘭丸戦の後に九十郎さんと結ばれた人達・通称海外組」

 

諸葛孔明、フランシス・ドレイク、そしてワイナ・カパックを示す駒を、国内組に相対するように並べる。

 

「九十郎さんの妻としての序列で争いが起き、亀裂が生じています……

 この亀裂を押し広げ、決定的なものにして、争いを起こさせる……

 国内組が勝つにせよ、海外組が勝つにせよ、

 醜い争いを続ける皆に九十郎さんは愛想を尽かすのは必定。

 そして誰も信じられなくなり、誰も愛せなくなった九十郎さんに私が優しく……

 くっくっくっ……ふはははははぁっ!! はぁーっはっはっはっはぁっ!!

 そして私が! 黒田官兵衛が最後の最後に笑ってみせますっ!!」

 

そして雫が悪者っぽい笑い声を響かせていた。

あんまり似合わないその有様は、一向に進まない九十郎との仲に対する彼女の焦りが呼んだものなのかもしれない。

 

とはいえ雫の裏工作は最後の最後の一押しに過ぎない。

国内組、海外組の軋轢は彼女が何かをするまでもなく深刻なものになっていた。

 

「私が九十郎のたった1人の妻だ。

 極東のイエローモンキー共と同等だなどと認められるか(全自動翻訳機装着済み)」

 

「インカの皇帝として、国家の象徴として、序列に関しては譲れません。

 事実婚の1人や2人は黙認しますが、

 正式な妻としての身分は諦めてください(全自動翻訳機装着済み)」

 

フランシス・ドレイクもワイナ・カパックも自分こそ九十郎の1番の妻……正妻だと言って譲らない。

しかもドレイクに関してはキリスト教的価値観で一夫多妻にすら否定的だ。

 

「ドレイクさん。 九十郎がさ、今日の晩御飯は皆が好きなものにしてくれるって。

 一緒に食べようよ」

 

「何のつもりだ? 和解……でも求めているのか、イヌっころ」

 

「九十郎の事が好きになったんでしょ? 一緒に旅をして楽しかったんでしょ?

 この楽しい時間がいつまでも続けば良いのにって思ったんでしょ?

 分かるよ、犬子も同じだったから。 本当はさ、犬子も同じ事を考えてるから。

 九十郎と2人で浪人生活していた頃が凄く楽しくて、凄く懐かしくて、

 もう一度あの頃に戻りたいって思った事は、1度や2度じゃない」

 

「………………」

 

「でもね、ドレイクさん。 犬子はね……辛い事も、楽しい事も、悲しい事も、

 嬉しい事も、九十郎との思い出だって、皆と分かち合いたいとも思ってる。

 これだって犬子の偽りの無い本心だよ。

 ドレイクさんだって九十郎が選んだお嫁さんなんだから。

 これから家族になる人だから」

 

「ふ……そいつは叶わん願いだな。 『九十郎』は私がもらう……!!」

 

「『分かち合おう』とは思わないの?」

 

「『独占』だ」

 

「『殺し合い』になるよ」

 

「何を今さら」

 

こうした幾度かの話し合いの末……ついに犬子の目が人殺しのそれになる。

 

自分から九十郎を奪おうとする者は、例え神でも許さない。

かつて拾阿弥を斬殺し(第7話)、かつて罪の無い織田兵達を殺戮した(第168話)、人殺しの目をしていた。

 

「後からしゃしゃり出た連中がふざけた事を言うじゃないわよ!

 九十郎の正妻は柘榴よ! これに関しちゃ騎士様でも皇帝様でも譲る気は無いわっ!」

 

「いや、あの……正直、柘榴は本当に九十郎の正妻で良いのかって思って……」

 

「そう思ってても今は言うんじゃないんだぜっ!」

 

犬子以外の国内組も正妻は柘榴だと譲ろうとしない。

しかも当の本人が『自分なんかが九十郎の正妻で良いのだろうか?』と揺らいでいるのが話をややこしくしていた。

 

九十郎の正妻の座を巡る軋轢は日を追うごとに激しさを増していき、いつしか血を血で洗うような惨劇にさえなりかねない、危険な状態になりつつあった。

 

 

 

 

 

「もう面倒臭いから殴り合いで決めちゃおうよ。

 最後まで立ってた人が正妻で良いんじゃない?」

 

 

 

 

 

そしてついに、そんな一二三の斜め上の提案に全員が頷いてしまう。

 

かくして始まった斎藤九十郎の正妻戦争!

果たして九十郎の正妻の座を勝ち取るのは誰になるのか!?

 

ネタバレ・柘榴です。

 

果たして雫の悪巧みは成功するのだろうか!?

 

ネタバレ・駄目でした。

 

次回! カパックとドレイクと孔明と九十郎『正妻戦争』にご期待ください。

 

進めカパック! 戦えドレイク! 頑張れ孔明! 負けるな九十郎! 大江戸学園の運命は君達にかかっているぞ。

 

……

 

…………

 

………………

 

正妻戦争は初っ端からグダグダになった。

 

開幕直後に一二三が国内組を裏切り、犬子、柘榴、粉雪、美空が轟沈。

ほぼ同時に孔明が海外組を裏切り、ドレイクとカパックがKOされた。

 

「一二三ぱーんち!」

 

「孔明きーっく!」

 

ラ〇キーマンかなと見間違うようなへなへなパンチとよわよわキックが炸裂する。

一二三も孔明も全くの無傷である。

 

「とうっ! 下駄投げっ!!」

 

一二三の下駄が未来に向かって(具体的には明後日の方向に)飛んだ。

 

「はあぁっ! 軍師ビームっ!!」

 

孔明の羽扇からビームが……出なかった。

一二三も孔明も全くの無傷である。

 

「お前ら……夕飯作ってるから、あんまり埃を立てるなよ」

 

そんな2人のじゃれ合いを横目に見ながら、九十郎はため息をつく。

 

本当に血で血を洗う惨劇になったら止めに入ろうと思っていたものの、死人が出かねない程の強硬派だった犬子とドレイクが倒れた時点で九十郎は勝負の行方に興味を失い、全員分の食事の用意を始めていた。

国内組にも海外組にも愛想を尽かす程に勝負を泥沼化させようとした雫の思惑も、この時点で粉砕されている。

 

凄惨な殺し合いを回避してくれた2人を感謝したい気持ちもありつつ、孔明はともかく一二三に感謝するのは癪だなという気持ちもあった。

 

諸葛孔明は敵の中に内通者を仕込むのが得意技だ。

その諸葛孔明を相手に、表裏比興と書いてクソヤロウと読む真田昌幸をぶつけるのはハナッから無謀だったのかもしれない。

 

この後、夕食ができるまでに決着がつかず、一二三と孔明の同着優勝という事で正妻戦争は幕を下ろす。

 

「犬子……生きてるか?」

 

ケツにカ〇チョーくんが突き刺さったドレイクがのっそりと起き上がる。

 

「何? 第二ラウンドって言うのなら相手になるよ」

 

犬子のケツにもカ〇チョーくんが突き刺さっていた。

 

「次か……もし次があるのなら……」

 

「そうだね、次があるなら……」

 

 

 

 

 

「次はあの2人は抜きでやろう」

「次はあの2人は抜きでやろう」

 

 

 

 

 

何かが通じ合ったドレイクと犬子が、がっちりと握手をした。

2人の視線の先では、仲良くじゃれ合っている一二三と孔明、そして悪巧みが破綻した事を悟って頭を抱えている雫の姿があった。

 

例え前田利家とフランシス・ドレイクがチャンバラを初めても、その2人の尻にカ〇チョー君が突き刺さっても、何故か仲直りをしても、大江戸学園ではよくある光景である。

 

大江戸学園に冒険の種は尽きまじ!

経験点と成長点を受け取り、次の冒険に備えるのだ!

 

優勝者の権利として一二三と孔明が九十郎にご褒美エッチを要求し、九十郎は孔明を初めて『朱里』と呼べるようになるのだが……それはまた別のお話である。


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