バイオハザード~破滅へのタイムリミット~   作:遊妙精進

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展開が早い!!


8話 T-Veronica

「はあ……はあ……」

 

 床には、ゾンビが何十体も倒れている。殺ったのは俺だ。

 

 ウェスカーの部下二人はまだ気絶している。だが、起きるまで面倒を看とくわけにもいかない。仲間になってくれるなら別だが、どうせ裏切るよ。助けたのは、俺の目の前で死んでほしくなかっただけだ。後は勝手にしろ。

 

 俺は部屋を出て、探索を再開する。

 道中、ゾンビがいたが数体ずつなので、手間取ることなく倒していく。

 

 しかし、武器も大分減った。これからは節約するために素手で戦おう。

 

「シャアア!」

 

 そんなことを考えていると、ハンターが出てきた。

 

「言ったそばから!」

 

 ダガーナイフを二本出し、一本をハンターに投げる。もちろん軽々と避けられるが、避けた先にもう一本投げた。

 

「グギャ!」

 

 ダガーナイフはハンターの頭に刺さり、ハンターは絶命した。

 

「もう慣れてんだよ」

 

 今頃、ハンター程度に負けるわけにはいかない。銃弾を避けるほどの反射神経だが、頭はそれほど良くないのだ。

 

 

 

                    

 

 

 

 一時間ほど探索すると、戦闘機がある部屋を見つけた。しかし、その戦闘機は今にも飛び立とうとしている。

 

「ウェスカーか!?」

 

 俺はコックピットのガラスにダガーナイフを投げる。当然ながら弾かれるが……

 

「リョウか!?」

 

 その声には聞き覚えがあった。

 

「クリスさん!?」

 

 クリスさんはフロントガラスを開け、その姿を見せた。何ヵ月振りに会っただろうか。

 

「クレアは!?」

「南極だ。乗れ」

 

 俺は戦闘機の後部席に乗る。すぐに戦闘機は飛び立ち、南へ向かう。クリスさんは元空軍なので、戦闘機の運転などへっちゃらだろう。

 

「何故、クレアは南極に?」

「さぁな。俺も聞いただけだ」

「誰に?」

「ウェスカーという男だ。俺の敵だよ」

「クリスさんもウェスカーに会ったのか?」

「リョウもか。ウェスカーも南極へ向かっているだろう」

 

 ウェスカー、まだ勝負が決まってない。次こそは倒す。

 俺たちは、ロックフォート島を後にした。

 

 

                    

 

 

 

「ここか」

 

 南極の基地が見えてきた。

 

 ここに来るまでの間、クリスさんから色んなことを聞いた。ウェスカーが、S.T.R.A.S.を誘い出して、チームを壊滅させたことやT-Veronicaウイルスのことも。アレクシアという奴は、そのT-Veronicaウイルスを使って世界征服をしようと企んでいるらしい。

 

「ここにクレアが……」

 

 どうでもいいが、南極には初めて来た。いや、当然か。

 着陸し、戦闘機から出る

 

「寒っ!!」

 

 さすが南極だ。すでに凍死しそう。

 

「早く中に入るぞ」

 

 俺とクリスさんは走って基地の建物の中に入った。

 

「ふう。温かい」

 

 暖房がついている。しかし、人の気配はしない。

 

「どうする?」

「手分けして探そう。ウェスカーには気を付けろ」

「オーケイ」

 

 クリスさんと分かれて行動する。ま、そっちの方が効率が良い。

 進むが、困ったことにドアが開かない。

 

「鍵を探すか?」

 

 とも思ったが、めんどくさいので蹴り破る。ドアは一撃で開いた。てか、この状況で鍵を探すなんて嫌だよ。蹴り破った方が十倍早い。

 

「アアアアア」

「オオオオ」 

 

 部屋の中にはゾンビが五体。この基地でもバイオハザードが発生しているようだ。

 

「全く、バイオハザードばっかりだな」

 

 俺はすぐ近くにいたゾンビの顔にパンチする。ゾンビは怯み、俺はその隙に後ろに回ってゾンビの頭を両手で掴み、横に捻る。ボキッ!!と爽快な音が首からし、ゾンビは倒れた。次に、作業服に身を包んだゾンビの腕を掴み、捻って床に倒す。倒れた作業服ゾンビの頭を踏みつけ、近づいてくる戦闘服ゾンビに上段蹴り。戦闘服ゾンビは壁にぶつかるが、すぐに俺の方へ再び来ようとする。俺は戦闘服ゾンビの頭を掴んで壁に叩きつけた。

 

「アアアアア」

 

 残るは二体。俺はダガーナイフを投げ、頭に刺さってゾンビは倒れた。

 

「ふう……」

 

 今頃だが、高校生がこんなことして良いのだろうか。普通なら、ギャーと叫んで一目散に逃げ、いつの間にか死んでるのがオチじゃないか? やっぱ俺もイカれてるんだろうな。

 

「泣けるぜ」

 

 

 

                   

 

 

 

 探索し続けると、クリスと再び合流した。

 

「何か手掛かりは?」

「何も。あのドアの先は?」

 

 俺は近くにあるドアを指差す。

 

「いや、まだ行ってない」

 

 俺はドアを蹴り破り、その先へと入る。

 

「なんだここ?」

 

 俺たちが入った部屋は、まるで洋館の玄関だ。

 

「ここは……」

 

 クリスさんは嫌な顔をした。

 

「知っているのか?」

「ああ。嫌な思い出だ。多分、設計士が同じなのだろう」

 

 そういえば、ラクーンシティでティモシーが、ジルさんに向かって洋館事件がどうとか言っていた。その洋館に似ているのだろう。

 

「う、うぅ」

 

 誰かの呻き声が聞こえた。

 

「クレアか!?」

 

 クリスさんは走って声の聞こえた方に向かう。俺も続くと、クレアが柱に謎の緑の物体で身動きが取れないようになっていた。

 

「リョウ、ナイフを」

 

 俺はクリスさんにナイフを一本渡し、謎のヌメヌメした物体を一緒に切った。

 

「クレア、大丈夫か!?」

 

 クレアを開放し、横にする。

 

「兄さん……?」

「ああ。俺だ。リョウも一緒だぞ」

 

 クレアは俺の方を見た。

 

「頼りになるわね。うっ!」

 

 クレアは苦しみだした。

 

「クレア!?」

「毒に……化け物にやられたの」

「分かった。リョウ、クレアを見といてくれ。俺は血清を取りに行く」

「気を付けろよ」

 

 

 

                    

 

 

 

 しばらくすると、クリスさんは血清を手に戻ってきた。

 血清をクレアに刺すとみるみる顔の色が良くなっていった。

 

「ありがとう、兄さん、リョウ」

「よし、早くこんなところから脱出するぞ」

 

 クリスさんは、クレアを立ち上がらせる。

 

「待って、まだスティーブがいるわ」

「スティーブ?」

「ええ。一緒に孤島から逃げてきたの。怪物に襲われたときに離れ離れになったの」

「なら探さないとな」

 

 スティーブ君とやらがこの基地のどこかに。探さないわけにはいかない。クレアの仲間だ。

 

「ハハハハハハハ」

 

 上の方から下品で甲高い笑い声が聞こえてきた。

 

「アレクシア!」

「あいつが!?」

 

 金髪で黒いドレスの女。どこからか怪しさを感じさせる。

 

「虫けらに相応しい死に場所へ今から案内してあげるわ」

 

 アレクシアは意味深な発言をし、去っていった。

 

「もしかしたら彼女がスティーブを!」

「追いましょう!」

 

 俺たちは二階に昇り、アレクシアを追おうとするが、壁から大きな触手が突きだし、俺たちの足場を崩した。

 

「どわっ!?」

 

 俺とクリスさんは一階に落ちた。

 

「いて~」

 

 腰を打ち付けてしまった。

 

「クリスさん、大丈夫か!?」

「くそ! 足が……。クレア、アレクシアを追うんだ!」

「で、でも……」

「大丈夫だ。クレア、俺がクリスさんに付いてる」

「……頼んだわ」

 

 クレアは走ってアレクシアを追った。

 

「あー、痛ー」 

 

 腰が……痛い。

 

「何が大丈夫だよ」

「全くだな」

 

 俺は床に寝っ転がった。

 

 

 

                    

 

 

 

「とうとう見つけたぞ。アレクシア、一緒に来るんだ」

 

 俺たちは、しばらく休んでいると、この場所にウェスカーとアレクシアが現れた。アレクシアは、隠し扉から出てきたのだ。

 

 俺とクリスさんは柱に身を隠す。 

 ウェスカーは階段を昇る。

 

「お前は素晴らしいウイルス、T-Veronicaウイルスを作った。そして、そのサンプルは、お前の体内にしかない。それが欲しいんだ。さぁ!」

「私が欲しいですって? できるもんならやってみなさい」

 

 アレクシアは階段を下りると同時に体が発火し始めた。そして、炎が消えると、アレクシアの肌は灰色になった。

 やはり、アレクシアも感染者だったようだ。しかし、その力をコントロールしているように見える。

「力づくでも連れていくぜ」

 

 ウェスカーとアレクシアは戦いだした。アレクシアは、ウェスカーに血を飛ばし攻撃する。アレクシアの血は空気に触れると発火し、周りには炎の渦が出来始めた。

 ウェスカーも人間業ではない攻撃を繰り出し、アレクシアを倒そうとする。

 

「リョウ、避けろ!」

 

 アレクシアの血が、俺たちが隠れている柱の方に飛んできた。

 

「うお!?」

 

 柱から飛び出して血を避けるが、ウェスカーとアレクシアに隠れていた事がバレてしまった。

 

「クリス! リョウ!」

「ウェスカー!」

 

 ウェスカーは俺たちに襲いかかろうとするが、アレクシアの攻撃で止められる。

 

「クリス! 優秀な部下だったお前に、ここは任せよう」

 

 ウェスカーはそう言って扉から出ていった。

 

「自分で相手をしろよ!」

 

 まさか、こんな化け物を相手しなくちゃならないとは……

 

「リョウ! ウェスカーを追ってくれ。アレクシアの相手は俺がする」

「……分かった!」

「深追いだけはするなよ!」

 

 俺はアレクシアがクリスさんに攻撃している最中に部屋を出た。

 

「待て!」

 

 俺は逃げるウェスカーの背中にナイフを投げる。しかし、簡単に避けられた。

 

「リョウ、この俺に敵うと思うか?」

「思うね。アンタを倒してくっさい牢屋の中にいれてやるよ」

「やれるもんならな」

 

 ウェスカーは一瞬で、俺の懐に入る。胸を殴ろうとするが、腕をクロスさせてガード。しかし、威力が高く腕の骨が悲鳴をあげる。

 

「この!」

 

 俺はウェスカーの足の甲を思い切り踏み抜いた。さすがに効いたようで、その顔を歪ませる。そして、顎に掌底、ウェスカーは後ろによろめく。直ぐ様タックルをして、よろけを継続させる。上段蹴り、ローキックと蹴り技を続け、ついには、胸ぐらと腕を掴んで投げ、床に叩きつけた。

 

「まさかここまでやるとはな……」

 

 しかし、ウェスカーは何事もなかったのかのように起き上がった。

 

「頑丈な奴……」

 

 ここまで効かないとすると、生身の人間では倒せないということか?

 

「次は俺の番だ」

 

 ウェスカーは構えた。

 俺はガードするが、ウェスカーの目にも止まらないラッシュで体全体が悲鳴をあげる。素手のはずなのに、金属バットで叩かれているような痛みだ。

 反撃の隙を伺うが、速すぎて止められそうにない。

 

「クソ!」

 

 俺は右手を後ろ腰に伸ばし、手榴弾を取る。ピンを抜いて、床に落とした。

 

「ちっ!」

 

 ウェスカーは直ぐ様、俺から飛び退いた。

 

「それを待ってた!」

 俺は落とした手榴弾を取って、ウェスカーに投げつけた。俺は近くのドアを開け、身を隠す。すぐに爆発が起こり、身を隠していたドアが外れ、爆風で吹き飛んだ。

 

「いてて……」

 

 すぐに立ち上がり、周りを見るが、ウェスカーの姿はなかった。起爆する前に、超人的なスピードで逃げたのだろう。

 

「次は決着を付けてやる! ……ありゃ?」

 

 俺はぐらつき、床に倒れた。体がまだ痛い。少し休もう。そしたら……

 

「うっ」

 

 俺の意識は途絶えた。 

 

 

 

 

 




次回で二章は終了です
明日も投稿予定

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