バイオハザード~破滅へのタイムリミット~   作:遊妙精進

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65話 VSアーヴィング

 黒瀬、ソフィア、リカ、田島の四人はクリスたちとの合流を急ぎ、油田へと到着した。

 油田の作業員も既にマジニ化しており、到着早々戦闘が開始される。

 リカはさっきまで吸っていたキューバ産の煙草を投げ捨てハンドガンで応戦する。

 マジニはダメージを気にせず襲い掛かるが、エージェントの四人には一撃も加えることさえできない。

 チェーンソーを持ったマジニさえ登場するが、一瞬で黒瀬に倒される。

 気づけば油田入り口付近のマジニは全滅していた。

 

「意外とはやく終わったな」

「俺たちの手に掛かれば当然だ」

 

 田島は自慢気に言った。

 

「リョウ、そういえば」

 

 ソフィアが一枚の写真を黒瀬に渡す。

 

「情報収集をしてる途中、偶然見つけたんだ」

 

 黒瀬は写真を受け取って見つめる。

 写真に写っているのはダークブロンドの長髪の女性だった。

 

「これは……!?」

 

 その女性は三年前に死んだはずのジル・バレンタインに酷似していた。

 

「リョウ、どうしたの?」

 

 リカと田島も黒瀬が持っている写真を覗き込む。

 

「これって……」

 

 リカも写真の人物がジルだということに気づく。

 

「ジルだ、間違いない」

 

 三年前、スペンサー邸でジルとクリスはウェスカーと戦った。しかし、クリスたちは劣勢となり、クリスがウェスカーに殺されそうのなったところをジルは庇ってウェスカーと共に谷底に落ちていった。

 

 その後、長い期間捜索されたが、結局ジルは見つからずMIAとなってしまった。

 

「ジルちゃんはこの事件に関係してそうだな」

「ああ。アーヴィングに聞けば何かわかるかもしれない」

 

 ジルの手がかりを知る人物。逃がすわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

「クリス!」

「リョウか!」

 

 四人はマジニを倒しながら油田を進むと、船橋でクリス、シェバと合流した。

 

「シェバ、無事だったのね」

 

 リカはシェバに抱き着く。リカの目には涙が潤んでいた。同じ支部に所属しているだけあって関係も相当深いのだろう。

 

「急ぐぞ、もうじきここは爆発する!」

 

 クリスと言葉で全員の気がしまる。

 

 船橋を走って進むと、デルタチームのジョッシュ・ストーンがボートにエンジンを掛けて待機していた。

 

「ちょうどボートは二隻ある。はやく乗るんだ!」

 

 全員ボートに乗り込み、急いでその場を離れる。すぐに油田は爆発した。

 

「ヒュー! 少しでも遅れてたらやばかったな」

 

 田島は安心し座り込んだ。

 

「残念だが安心している暇はないぞ。アーヴィングが船で逃げた」

「アルファとデルタの仇を討つチャンスね」

 

 リカはハンドガンに新しいマガジンを叩き込む。

 

「少しでも抵抗するようならこれで頭を吹き飛ばしてやるわ」

 

 あまり怒らないリカは今回ばかりは許せなかった。家族同然に過ごしていたアルファとデルタがやられたのだ。アーヴィングの額に弾を撃ち込みたくてうずうずしていた。

 

「リョウ、ジルが生きているかもしれん」

 

 クリスは端末の写真を見せる。それはさっき黒瀬が見た写真と同じだった。

 

「ああ。アーヴィングが何か知っているかもしれない。聞き出さないとな」

 

 そう言っていると、アーヴィングが乗った船が見えてきた。マジニが船に装備しているガトリングガンでボートを近づけまいと撃つがクリスによって倒される。

 

 黒瀬、ソフィア、リカ、クリス、シェバは船に乗り込む。田島とジョッシュはボートで船を追う。

 

 甲板にアーヴィングが立っており、怪訝そうな顔をしていた。

 

「アーヴィング、ここまでだ!」

 

 全員がアーヴィングに向けて銃で狙いを定める。

 

「人の顔に泥を塗りやがって……」

 

 アーヴィングは黒瀬たちを睨み付ける。

 

「あいつら、誰のお陰で計画が進められたと思ってんだ。金を集めたのは俺様だぞ」

 

 アーヴィングが言うことは黒瀬たちには分からない。だが、アーヴィングの背後には必ず何者かがいる。

 

「どいつもこいつも馬鹿にしやがって……」

 

 アーヴィングが手にしていたのは注射器だった。それを首筋に打ち込む。

 アーヴィングは苦しみだし、背中からは触手を出す。

 

「なに!?」

「打ったのはウイルスか……!」

 

 リカはアーヴィングに向け発砲をする。だが、人間離れした俊敏な動きでそれを避けた。

 

「俺はな……お前らみたいなクズとは違うんだよ……!」

「おいおい、それはお前だろ」

 

 黒瀬は瞬時にアーヴィングに接近した。そしてその顔に右ストレートをぶちかます。

 

「クソ!」

 

 アーヴィングは何を思ったのか川に飛び込んだ。これほどの速度を出している船から飛び降りるのは自殺ものだ。

 だが、間もなく巨大な触手が船の甲板を叩きつける。川から出現したのは体長15メートルはあるイカのような化け物だった。

 

 頭が花弁のように割れ、その中心にいたのはアーヴィングだった。

 

『俺様をコケにしたことを後悔しろ!』

「「うるさい!」」 

 

 黒瀬とクリスは弱点を露呈させた本体に向け、攻撃した。

 

 モンスターと化したアーヴィングは苦しみ、再び川に飛び込む。

 

『みんな、どうなった!? 何なんだあの化け物は!?』

 

 ボートを運転している田島とジョッシュから通信が入る。

 

「危ないぞ離れていろ」

 

 クリスは二人にそう伝える。

 

「みんな、船には機関銃がついている。それで応戦するぞ」

 

 ただの銃ではモンスターアーヴィングには有効なダメージは与えられない。運良く甲板には固定機関銃やグレネードランチャーが設置されていた。

 

「リョウ、船のなかにこれがあったよ!」

 

 ソフィアが持ってきたのは銃剣付きのアサルトライフルだった。

 

「ありがとう、ソフィア。これで俺も戦える」

 

 黒瀬はアサルトライフルを受けとる。

 

「でもどうすんの?」

 

 例え近接武器があっても川に潜んでいるアーヴィングに攻撃を加えることは出来ない。

 黒瀬は何か手がないか考えていると、川から巨大な触手が複数出現した。

 

「これだ!」

 

 黒瀬は触手に飛び付き、川に飛び込む。

 触手を辿って泳ぐとモンスターアーヴィングがいた。

 

 黒瀬はそいつにナイフを刺す。何回か刺しただけではダメージにならない。秒間十回以上、深く刺す。

 クリスたちの攻撃もあってモンスターアーヴィングは身体を浮上させた。

 

「よし!」

 

 黒瀬はモンスターアーヴィングにアサルトライフルの銃剣を刺しながら全力で走る。豆腐のように軽く切れる。

 ダメージに耐えきれなくなったのか口から本体を出した。

 クリスたちはそこに総攻撃し、本体は弾き出されて甲板に転がる。黒瀬も一っ飛びで甲板に戻る。

 

 変わり果てたアーヴィングがそこにはいた。

 

「何を企んでいる!?」

 

 クリスはアーヴィングに銃を向ける。

 

「エクセラの奴、二流品を押し付けやがって……!」

「エクセラ……?」

 

 シェバやリカ、ソフィアはその名前に心辺りがあるようだった。

 

「実験施設はどこだ!? ウロボロス計画とは何だ!」

 

 クリスはアーヴィングに問い詰める。

 

「BSAAか、呑気な奴等だ。もうすぐ世界のバランスが変わるってのによぉ……」

「世界のバランスが変わる? ウロボロス計画のことね。何を知っているの?」

「今更知ってどうする? 手遅れなんだよ。ウロボロスが世界を変えちまう」

 

 ウロボロス計画。黒瀬もそれには聞き覚えがあった。シェバが言った通り、世界のバランスを変えるほどの計画。そんなものはただの噂だと思っていた。

 

「うおああああぁぁ!」

 

 アーヴィングは苦しみ、ばたばたと暴れる。

 

「クリス、リョウ、下がって!」

 

 シェバは危険と判断し二人を下がらせた。

 

 二人の名前を聞いてか、アーヴィングは二人の顔を見つめる。

 

「クリス? リョウ? おまえらが……」 

 

 アーヴィングは先程の痛みが嘘のようにいきなり笑いだした。

  

「何がおかしい!」

「クリス、リョウ、この先の洞窟に答えはあるぜ。お前らにとっては地獄だがな。悪くねぇ気分だ。先に逝ってるぜ! せいぜいもがいて見せな!」

「時間の無駄だ!」

 

 クリスはアーヴィングの頭に銃口を向けるが、シェバによって制止される。

 アーヴィングはすぐみドロドロに溶けて死んでいった。

 

「くそ……」

 

 クリスはアーヴィングからほとんど情報を聞けず悔しい表情だった。

 

「これからどうするの……?」

「とにかく先に進むしかない」

 

 

 

 

 

 


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