バイオハザード~破滅へのタイムリミット~   作:遊妙精進

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今回からはCODE:Veronica編ですが、ストーリーはかなり適当です。
理由……今回の話は主人公が、あるオールバックの男と会うのが目的なので。面倒くさかったわけではありませんよ?


2章 CODE:Veronica
7話 ロックフォート


 あの事件から三ヶ月が経った。

 

 あの事件の後、日本に帰ってからテレビを付けると、ラクーンシティのニュースで持ちきりだった。

 そりゃそうだろう。第二次世界大戦以降、使われなかった核兵器を自国に放ったのだ。その事件の被害者は十万人。そして、その事件を起こしたのは、世界で知らぬ者などいないほど有名なアンブレラだ。

 

 事件の全貌が明るみになり、アンブレラ社の株は暴落、政府から業務停止命令が下されるが、アンブレラは反抗し、裁判になるまでに至った。

 

 ラクーンシティの生き残りの人たちは予想以上に少なかったが、その人々はラクーンシティで起こった地獄を世界に語った。

 世間の人たちは、核兵器を使うこともなかったなどと政府に批判しているが、あの地獄を味わった者としては、核兵器を使う判断は懸命だったのかもしれない。

 

 

 

 十二月、季節は冬だ。すっかり冷え込み、防寒具が欠かせない。東京でも雪が降って俺たちの交通手段を無くし、学生や出勤の人々を困らせることも少なくない。

 

 

 あれから俺は日本へ帰り、クリスさんやクレアのようにヨーロッパに渡ることもなく、高校生活を送っている。

 

「~であるからして――」

 

 教師の授業が続くが、俺は聞く気はない。既に高校で習うことは、網羅している。学年一位を保ち続けているので、俺が寝ていても、教師が口出しすることは少ない。

 

「ん?」

 

 授業中、ポケットにある携帯電話が震えた。メールを受信したようだ。

 

「誰だ?」

 

 俺のメールアドレスを知っている人物は限られている。大方、クレアの定期報告だろう。

 ポケットから携帯を出してメールを開くと、予想とは違い、『レオン』と書かれてあった。

 

「…………」

 

 レオンさんからは前に一通だけメールが着たことがあった。内容は、何か脅されちゃったんでアメリカ政府のエージェントになります。心配しないで、的なメールだった思う。

 

 取り敢えず、下にスクロールする。

 

『クレアがアンブレラに捕まった。囚われている場所の地図も送る。行かなくても良い。クリスも向かうらしいから。それとお前、アンブレラから監視されてるんだって。気を付けろ』

 

「…………」

 

 ちょ、理解が追い付いてないんですけど。クレアが囚われた? これは分かる。クレアの事だから兄のクリスさんを探すために直接、ヨーロッパのアンブレラ社に潜入したんだろう。でも俺がアンブレラから監視されているってのはなんだよ。あれか? ラクーンシティでアンブレラの兵士を倒しすぎたから、俺を捕まえるチャンスを狙ってんの?

 

 一番下までスクロールすると、クレアが囚われている場所があった。ロックフォートという孤島のようだ。

 

「ん~」

 

 少し考える。

 行かなくても良いと書かれてあるが、クレアは大事な仲間だ。仲間のためなら例え火の中、海の中、どこへでも行ってやる。

 

「先生! 腹が痛いんで早退します!」

 

 俺は荷物をまとめ、教室を飛び出た。

 

 

 

                    

 

 

 

「ここがロックフォート島か」

 

 俺はヘリをチャーター、もとい盗んでロックフォート島まで来た。ヘリの持ち主、ごめんなさい。

 

 上空から見る限り、ロックフォート島の施設は爆破されたようにボロボロだ。クレアは無事なのか?

 

 それにしても、本当にヘリで来て良かった。ロックフォート島は、断崖絶壁の島だ。船で来ていたら、あの崖をロッククライミングしなければいけなかった。流石にそんな奴はないだろう。

   

 俺はヘリを広場に着陸させ、降りる。

 

「さーて」

 

 ゾンビ一匹、俺の方に近づいてきた。背中にクロスさせて掛けてある木刀二本の内、一本を取る。

 

「アー」

 

 ゾンビは俺を掴もうとするが、俺は木刀を振って頭を叩き潰した。

 

 どうやらここもバイオハザードが発生しているようだ。ゾンビを相手をするのは、約三ヶ月振りだが、その間に準備をたくさんしておいた。

 刃渡り三センチメートルのダガーナイフを上着の内側に三十本、右腰と左腰に短刀二本とサバイバルナイフ二本、後ろ腰には手榴弾四個、両太もものホルスターにハンドガン二丁、背中には木刀二本。

 

 いや、まぁ、こんな装備を持っているのは、冬休みにヨーロッパに行って、クリスさんと合流する予定だったんだよ。ま、日本で簡単に銃が手に入るとは思ってなかったが。

 

「アアアアア」

「グオオオオオ」

 

 そうこうしている内にゾンビが十体ほど歩いてきた。

 

「よし! やってやるよ!」

 

 背中からもう一本、木刀を出し、ゾンビたちに向ける。   

 

「だああ!」

 

 ゾンビの群れに突っ込み、頭を次々と叩き潰していく。ゾンビはゾンビ。鈍い奴らに負けていられない。

 

 

 一分もしないでゾンビの死体の山が出来た。ゾンビの死体っておかしいけど、俺がゾンビって呼ぶのはただの仮称だしな。こいつら本当は死んでないし。  

 

 歩きながら無線機で呼び掛けるが誰も反応しない。クリスさんも来ているはずだが……

 

 俺は、ゾンビを倒しながら建物の中に入る。外のあの惨状だと、化け物以外は生きていないだろう。建物の中にはクレアを含め、生き残りがいるかもしれない。

 

 

 

                     

 

 

 

 建物の中をしばらく探索を続けていると、近くから男の声が聞こえてきた。

 

「もうここから脱出してもいいんじゃないか?」

 

「隊長の命令だからな。ここに残ってるのは俺たちと隊長だけか」

   

 俺は壁に身を隠す。そっと確認すると、武装をしている金髪と黒髪の男が二人、手にはアサルトライフルが握られている。服にはアンブレラのマークはなく、別の部隊かもしれない。もしかしたら、この島のバイオハザードを起こした人物かも。

 

 俺は二人に後ろからこっそり近付き、ホルスターから銃を取って銃口を金髪の男の頭に突き付けた。

 

「銃を置け」

 

 男二人は床に銃を置き、両手をあげた。

 

「あんたら何者だ」

「へ、まだ生き残りがいたとはな……」

「答えろ!!」

 

 まあ、答えなくても撃つ気はないが。その代わり殴るけど。

 

「それより後ろを見た方がいいぜ」

 

 男にそう言われ、後ろに殺気を感じた。

 

「クソ!」

 

 腰の短刀を抜き、振り向き際に後ろにいる奴を斬ろうとするが、ナイフでガードされた。

 

「初めましてだな。クロセ・リョウ」

 

 金髪オールバックで、サングラスを掛けている男は、何故か俺の名前を知っていた。

 

「武器を置け!」

 

 男二人は、この隙に銃を拾い、俺に向けた。

 

「はぁ……」

 

 俺は溜め息をつき、覚悟を決め、後ろに振り返る。金髪の男のアサルトライフルの銃身を真っ二つに斬り、一歩踏み込んで黒髪の男の顎に掌底を喰らわせる。金髪の男は銃を捨て、ナイフで斬りかかってくるが、俺は避け、短刀で男の親指を斬った。

 

「ぎゃああああ!!」

 

 金髪の男はナイフを床に落とし、親指を抑える。俺は回し蹴りで男を気絶させた。

 

「やるな」

 

 このオールバックの男、何故か戦いに介入してこなかった。仲間などどうでもいいのか?

 

「それで、何で俺の名前を?」

「私だけじゃない。他の人物も知っているさ。ラクーンシティをアリス、ジル、その他と共に脱出した。君の戦闘データはアンブレラにあったよ」

 

 戦闘データ……

 

「ネメシスか」

 

 ネメシスとは、アリスさんをストーカーしていた化け物だ。最後は何故か俺たちの味方になってくれたが、ヘリに潰され死んでしまった。

 

「ああ。本来ならネメシスをアリスと戦わせて戦闘データを取るつもりだったらしいが、思わぬ介入者がいてね。それが君だ」    

「あの時戦ったせいでアンブレラに興味を持たれたということか」

「アンブレラ以外にもな」

「アンタ、名前は?」

「アルバート・ウェスカー。君の友達のクリスの元上司だ」

 

 クリスさんの元上司といえば、S.T.R.A.S.の人間か。

 

「あんたがS.T.R.A.S.を壊滅させたのか……」

「そうだ……と言えばどうする?」

「倒す!」

 

 俺はウェスカーに一歩前身し、短刀でウェスカーの腹を斬ろうとする。

 

「遅いな」

 

 ウェスカーは首を鳴らした。といつの間にか背後に回っていた。

 

「な!?」

 

 速い!? 

 俺は振り向こうとするが、背中を殴られて吹っ飛び、壁にぶつかった。

 

「がはっ! げほげほ!」

 

 まるで車に跳ねられたかのような衝撃だ。

 すぐに立ち上がろうとするが、またもやいつの間にかウェスカーは接近し、俺の頭を掴んで壁に叩きつけた。

 

「その程度か?」

「くそ!」

 

 俺は服からダガーナイフを取り出し、ウェスカーの太股に刺す。ウェスカーは俺の頭から手を離した。その隙を狙い、ウェスカーの頭に回し蹴りを食らわせた。

 

 それでもウェスカーは倒れず、体操選手のように縦回転して体勢を立て直した。

 

「やるな」

 

 ウェスカーは足に刺さったナイフを抜き、俺の頭目掛けて投げた。

 

「うお!?」

 

 首を傾け避けるが、頬から血が少し出てきた。かすったようだ。

 

「お返しだ!!」

 

 俺はウェスカーに短刀を投げる。投げると同時に、服から五本のダガーナイフを出して、続けて投げた。

 

「ふっ」

 

 ウェスカーは少し笑うと、飛んでくる刃物を全て軽々と避ける。

 

「めんどくさくなりそうだな」

 

 背中から木刀二本を取り出し、ウェスカーに向かって走る。

 

「らああ!」

 

 木刀をウェスカーに振りかざすが、俺の行動を読んでいたかのように避け、脇腹を殴った。

 

「ぐっ!?」

 

 またもや吹っ飛ぶが、すぐに体勢を立て直し、木刀を回転させて投げる。ウェスカーは体をのけ反らせて避けるが、俺はその瞬間に近付き、体を横に回転して勢いをつけて、木刀をウェスカーの頭に叩きつけた。

 

「ガキが……」

 

 サングラスが外れ、ウェスカーの目が見えた。まるで、爬虫類のような目だ。ウイルスの影響か?

 

「この!」

 

 木刀をウェスカーの頭の上に降り下ろそうとするが、腕でガードされた。木刀は折れ、使い物にならなくなった。お土産屋で買った物だからしょうがないか。

 

「あんたの強度が高いことはよ~くわかったよ」

 

 俺は木刀を捨て、サバイバルナイフを取って構える。

 

「ガアアア」

「ウアアアアア」

「オオオオ」

 

 俺たちがいる部屋にゾンビの大群が突っ込んできた。その数、三十体以上。人間の匂いに釣られてやって来たのだろう。

 

「ふっ、ではこいつらの相手はお前に譲るとしよう」

 

 ウェスカーはそう言い、走って逃げていった。

 

「あんにゃろ!」

 

 俺もすぐこの部屋から離れたいが、ウェスカーの部下が足元で気絶している。見捨てるわけにはいかない。

 

「来い!」

 

 ゾンビの大群は、真っ直ぐ俺に向かってくる。

 

 

 

 

 

 




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