バイオハザード~破滅へのタイムリミット~   作:遊妙精進

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5話 アンブレラ

「リョウ! 大丈夫なの!?」

 

 学校の中から、アリスさん、カルロスさん、ジルさんと、女の子が出てきた。ジルさんとカルロスさんは、無事化け物を追い払えたようだ。この女の子が娘さんとやらだろうか。

 

「ああ。大丈夫。まだ少し痛むけど」

 

 腹の傷は大分血が止まっていた。

 

「体が痒いとか熱があるとかはない?」

 

 アリスさんが駆け寄る。

 

「特にないですけど」

「運が良いわね。感染してないみたい。あなたにはt-ウイルスへの抗体あるのよ」

 

 感染……あの化け物に刺されたときか。じゃあ俺に抗体がなかったら今頃ゾンビになってんのか。

 

「あれ? アリスさん、傷は?」

 

 アリスさんの腕も、あの化け物に貫かれたはずだが、傷が残っていない。

 

「もう治ったわ。私の身体、ちょっと特殊でね。アンブレラのせいなんだけど。リョウも傷が治ってるじゃない」

 

「俺は人よりほんの少し回復が速いだけですよ」

 

 腹の傷はあと一時間もすれば完全に治るだろう。俺も何で傷が速く治るかは知らないが。

 

「それで、その子が目的の?」

 

 女の子はジルさんの後ろに隠れている。

 

「ええ。ほらアンジー、自己紹介」

「アンジェラ・アシュフォード、アンジーて呼んで」

「クロセ・リョウだ。よろしく、アンジー」 

 

 

 

                    ☆

 

 

 

 アリスさんは公衆電話でチャールズ・アシュフォードに連絡し、伝えられた場所へ俺たちは向かっている。

 

「それにしてもまさか核を撃つとは」

 

 チャールズさんの話に寄ると、夜明けに滅菌作戦と称してこのラクーンシティに核ミサイルが発射されるらしい。

 

「全くよ。何の避難命令もしないままなんて」

 

 それもそうだ。空からヘリで呼び掛けをすればいいのに。

 

「生存者がいたとしても外に出したくないんじゃない? 感染している可能性もあるしね。それに外にゾンビがたくさんいるから、他に生存者がいたとしても私たちみたいに武器を持ってないと行動できないわ」

 

 まぁ確かに。

 

「クソッ、死んでいった仲間たちは犬死にかよ」

「話はそこまでにした方が良さそうね」

 

 前からゾンビが二十体ほど歩いてきていた。

 

「こっちの弾はほとんど残ってないぜ」

「私もよ」

「無駄撃ちは出来ないわね。正確に頭を狙いましょう」

 

 俺は先頭にいたゾンビを掴んで投げる。

 

 アリスさんたちも進みだし、アンジーを守りながら戦う。

 

 俺はナイフを二本取り出し、正確にゾンビの喉を切りつけていく。

 

「ガアアァァ」

 

 一匹のゾンビが近づいてきたが、カルロスさんが頭を撃って倒してくれた。

 

「ありがとう!」

「背後にも気を付けろよ!」 

「ハンターが来たわよ」

 

 見ると、ハンターが三体、しかも全部俺の方に走ってきた。

 

「この!」

 

 ハンターの爪攻撃をナイフで抑え、もう一本のナイフで頭を刺す。

 二体、俺の両脇から腕を突き伸ばして攻撃しようとしたが、俺は後ろに飛び退き、ナイフを両方ともハンターに投げた。

 

「キシャアア」

 

 一匹は頭に刺さり死んだが、もう一匹は肩に刺さった。

 ハンターは怒ったような表情で、腕を突き伸ばした。

 

「よっ」

 

 俺はハンターの攻撃を避け、肩に刺さっているナイフを掴み、ハンターを蹴った。

 ナイフは、ハンターが後ろに下がる勢いで抜けた。

 

「シャアア!」

 

 叫ぶハンターの頭にナイフを刺す。ハンターは絶命した。

 

「やるじゃない」

 

 アリスさんが、俺に近寄ってきていたゾンビたちを殴り飛ばす。

 

「道は開けたわ! 行きましょう」

 

 俺たちは走り抜ける。

 

 

 

                     ☆

 

 

 

「ジルさん、カルロスさん、そういえばあのストーカーはどうなったんですか?」

 

 もうそろそろで目的地に着く頃、俺は思い出し、二人に尋ねた。

 

「撒いたわ。でもきっと生きてる」

「ったく、何であの化け物はジルを狙うんだ?」

「多分、私が知っている情報を外に漏らさせないようにするためよ。色々とアンブレラの秘密を知っちゃったから」

 

 ジルさんも色々とあったんだな。その色々で、こんなに雰囲気が変わったんだろうか。前に会ったときよりも大人っぽくなってる気がする。

 

「パパに早く会いたいよう」

 

 アンジーは心配の声をあげた。

 

「ええ、きっと大丈夫よ。早くこんなところ脱出して、パパに会いましょう」

 

 アリスさんは、アンジーの頭を撫でた。

 

「リョウもお母さんやお父さんに会いたくなった?」

 

 とジルさん。

 

「いや。父も母も既に死んじゃってますからね」

「ごめんなさい……。嫌なことを聞いて」 

「いやいや。俺も気にしてないし。死んだのが結構昔のことだから」

 父と母は、俺が中学一年生の頃に交通事故で死んだ。まぁ、死んですぐの時は何が何だかだったが、今はそれが全然ない。

 

「んじゃ、リョウは今親戚の家にいるのか?」

 

 カルロスさんが辺りを警戒しながら言う。

 

「いいや。もともと住んでたマンションに一人暮らし」

「へえ。バイトでもしてんのか?」

「何も。金は、夜に外に出て、不良から巻き上げてるよ」

 

 夜、俺に絡んでくる不良を逆にボコして金を取る。それとか、不良に絡まれてる人を助けて不良から金を取る。要は、不良は俺の収入源なのだ。

 

「リョウ……そんなことしてたの?」

 

 あ、やべ。ジルさん、警察だった。

 

「ここから脱出したらお説教が必要のようね」

「アハハ、お手柔らかに……」

 

 

 

                    

 

 

 

「皆、見えてきたわよ」

 

 アリスさんが指を差す。とても大きいビルの広場にヘリが止まっているらしい。ここからでもヘリのプロペラが見える。

 

「あれを奪うのか」

 

 俺たちは車の陰に身を隠す。完全武装した兵士が二人。フルフェイスヘルメットをしていて顔は見えない。

 

「敵はアンブレラの兵士よ」

「へ、味方を倒すハメになるとはな」

 

 そういえば、カルロスさんはアンブレラの部隊の一員だったな。

 

「私があのビルに昇って敵を倒していくわ。あなたたちは正面から移動して。もちろん銃は使わないでね」

 

 スニーキングか。

 俺はサイドパックから双眼鏡を取り出し、ビルの屋上を見る。

 

「スナイパーがいる」

 

 ライフルを持った兵士が伏せていた。

 俺はアリスさんに双眼鏡を渡す。

 

「そうね。私があのスナイパーを倒したら、ライトを照らして合図を送るわ。それで動き出して」

「了解」    

 

 

 そして十五分ほどが経つと、ビルの屋上から、光が三回点滅した。

 

 

「合図だ。行こう」

 

 俺とカルロスさんは先行する。ジルさんは、アンジーを守りながら後ろから着いてきている。

 

「リョウ、俺が右をやる。お前は左だ」

「オーケー」

 

 俺とカルロスさんは兵士二人の前に飛び出す。

 

「な!?」

 

 兵士の顎をアッパーするが、顎をきちんと守られていて、手が痛い。

 

「こんにゃろ!」

 

 俺は一回転し、兵士に蹴りを喰らわせる。兵士は吹っ飛んで、壁にぶつかった。

 

「き、貴様……」

 

 兵士は直ぐに立ち上がる。兵士は銃を落としてしまったので、ナイフを出した。

 

「喰らえ!」

 

 斬りかかってきたが、避けてその腕を掴まえ、背負い投げで制する。

 

「やるな」

 

 カルロスさんも兵士を倒し終わった。

 

 俺は倒した兵士からアサルトライフルを盗った。

 

「よし、武器もゲットしたことだし、行くとするか」

 

 広場の方から銃声が聞こえてきた。アリスさんが戦っているんだろう。

 

 カルロスさんは敵から奪った銃を構え、走っていく。俺も使わないだろうが、取り敢えずアサルトライフルを持って走る。

 

 広場に出ると、アリスさんが戦っていた。

 

「貴様らも仲間か!?」

 

 兵士が二人、銃を撃ってきたが、俺は走りながら避け、手に持っている銃を敵に投げた。

 

「ぎゃ!?」

「うげ!」

 

 銃は跳ね返り、もう一人の敵にも当たった。

「よし!」

 相手が怯むその短い間に、俺は距離を詰め、兵士に飛び蹴りを喰らわせる。そしてすぐに立ち上がり、もう一人の兵士と格闘。

 

「ガキのくせに舐めるなよ!」

 

 アサルトライフルは不利と思ったのか、ハンドガンを取り出し、俺に撃つが、横にステップして避ける。

 

「お前……弾丸を普通に避けるなよ!」

 

 兵士は銃を撃ち続けるが、俺はそれを全弾避ける。

 

「くそが!」

 

 弾がなくなり、ナイフで攻撃してくるが、スライディングで相手の後ろに回り、兵士の胴に両腕を回して持ち上げ、俺の体を後方に反り返る。兵士は頭を地面にぶつけた。バックドロップとかベリー・トゥー・ベリーなどと呼ばれる技である。もちろん死なない程度に殺ったよ。

 

「死ね」

 

 背後から敵が俺をナイフで刺そうとしたが、前にジャンプして避ける。

 

「痛ッ!」

 

 完全に避けきれなく、降り下ろしたナイフが、背中をかすってしまった。

 

 俺は距離を詰め、敵のナイフ攻撃を避けてから、顎に上段蹴りを喰らわせる。その反動で敵は後ろによろめき、その隙を狙って回し蹴り。これも死なないように殺ったよ。

 

「今すぐ膝をつけ!」

 

 俺は全方位から囲まれてしまった。一人一人に時間をかけてしまったのが失敗だったようだ。

 

 周りを見ると、カルロスさんもジルさんも手をあげて降参していた。

 

「クソ……」

 

 ここまでのようだ。

 俺は手をあげて膝を着いた。

 

   

   




次回で一章は最後です

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