バイオハザード~破滅へのタイムリミット~   作:遊妙精進

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今回で7章最終話です


42話 救えた命、救えなかった命

 黒瀬達の乗るヘリ、はレオン達のいるロス・イルミナドス教団の本拠地へと向けて出発した。

 

「で、アンタは?」

 

 合衆国のヘリパイロットはルイスへ問い掛けた。

 

「ルイス・セラ、ハンサムなプーさ」

 

 明らかにそれだけではわからないだろうと黒瀬は思い、付け加える。

 

「テロリスト共に仕えてた元研究員だ。良心が痛んで抜けたんだってよ。事件が解決したら政府につき出すつもりさ」

「おいおい、逃がしてくれないのか?」

「当たり前だ。どうあってもテロリストの“元”研究員なんだから」

 

 そして、ルイスはプラーガの支配種のサンプルをエイダという女性に渡そうとしていた。エイダがどういう女性かは知らないが、その背後にはウェスカーがいる。サンプルがウェスカーの手に渡れば、悪用されるのはほぼ間違いなしだ。

 

「まぁ、この事件は公にされることはないだろうし、牢屋にはいれられないだろうから安心しとけ」

「仕方ないな。俺のせいで村がああなった責任もあるし」

 

 この事件が解決した後、村や古城に部隊が投入され、生き残りのガナードは殲滅させられるだろう。黒瀬は彼らの冥福を祈る。

 

「島が見えてきたぞ」

 

 マイクは高度を上げ、島の崖を上がる。

 ヘリの下には大量のガナードが武器を構えて歩いていた。黒瀬は物陰に隠れているレオンを発見する。

 

「マイクだ。援護するぞ」

『スゴいのできたな。頼りにしている』

 

 レオンの声は元気そうだ。

 

「よし、しっかり掴まっておけ」

 

 マイクは高度を上げ、ヘリの側面に取り付けられているガトリングを発射する。凄まじい閃光と音を響かせながら、弾丸はガナードの集団へと飛翔する。ガナードもヘリの存在に気づくが、避ける暇もなく、その体をただの肉の塊へと変えていった。

 

「うわ、B級映画みたいにグロいな」

 

 流石はガトリング。秒間何百発という攻撃で、その弾が一発でも当たれば人を肉塊に出来る威力。その光景は目に置いときたくないほどだ。

 

 ミサイルも発射し、隠れている敵も遮蔽物ごと一気に吹き飛ばす。

 

「いつになったら降りれる?」

 

 黒瀬は今すぐにでも木刀を抜いて戦いたいが……

 

「降りる? バカ言え。今降りたら敵ごとミンチにしちまうぞ」

 

 確かにそうなってもおかしくないほどの銃撃だ。それに、黒瀬が戦うよりもヘリに任せておいた方が、殲滅スピードは早いだろう。

 高射砲も破壊し、ある程度敵を殲滅した。

 

『帰ったら一杯やるか』

 

 レオンもマイクの働きぶりを認めているようだ。

 

「いい店があるんだ。皆で行こうぜ」

 

 マイクがそう言った直後、黒瀬は気付く。ガナードがロケットランチャーを構えてヘリを狙っていた。

 

「マイク!」

 

 だが時すでに遅し。ロケットランチャーは引き金を引かれ、後部からバックファイアを噴かす。

 

 ────クソ!

 

 黒瀬は咄嗟の判断でヘリのコントロール・スティックを掴み、素早く引いた。ヘリは傾くが、すぐに爆発と揺れで操縦が効かなくなる。どうやら機体の尾の部分に被弾したようだ。

 黒瀬はドアを開け、真下を見る。真下には青い海。

 

「クソ、操縦が……」

 

 マイクはあわてふためいている。ルイスに至っては何故か無表情だ。死を悟っているのかもしれない。

 黒瀬はナイフを取り出し、マイクに付けられているシートベルトを切る。そしてルイスとマイクの襟首を掴んだ。

 

(一か八か!!)

 

 このまま飛び降りても崖に衝突する恐れもある。例え海に飛び降りたとしてもそこにヘリが墜ちてくる可能性もある。ただわかることは、機内にいたら確実に死んでしまうことだ。

 

「うおおおお!!」

 

 黒瀬はルイスとマイクを引っ張って火を噴き上げているヘリから飛び降りた。そのまま崖に衝突することはなく、海へと激突した。水面に叩きつけられたことにより、背中が若干痛むが、それよりもコントロールの効かなくなったヘリの確認だ。

 ヘリはくるくると回転し、崖に衝突して大爆発を起こす。

 黒瀬は安堵の息を漏らす。考えていた事態にはならなくてすんだ。

 

「ぶっはぁ!!」

「ぶほ!」

 

 沈んでいたルイスとマイクが水面へと上がってくる。

 

「鼻に水がっ!?」

「溺れるわ!!」

 

 二人ともリアクションが派手だ。

 

「崖まで泳ぐぞ!」

 

 波もそれほど強くなく、簡単に崖の下に着いた。

 

 直ぐに無線機が使えるかどうかを確認する。流石は合衆国エージェントが使う無線機だ。今の時代の無線機は高度な防水仕様に、あれほどの衝撃を喰らってもまだ普通に使えるほど素晴らしい。。

 

「ハニガン、ヘリが墜落した。パイロットは無事だ。もう一機よこしてくれないか?」

 

 まさかこの数時間の間に、乗っていたヘリが二回も墜とされるとは思っていなかった。ヘリ恐怖症になってしまいそうだ。

 

『怪我はないわね? 仕方無いわ。近くでパトロールしているヘリを向かわせるわ』

「ああ、頼んだ」

 

 黒瀬は無線機をしまう。

 

「で、姉ちゃんは何だって?」

 

 ルイスは服を絞りながら言った。

 

「近くのヘリを呼ぶんだって。まぁ、正直船が良いんだけど」 

 

 次も墜とされてしまわないか心配だ。

 墜とされたヘリの操縦士、マイクは限りなく広がる海を見つめ、呟いた。

 

「ああ、生きて帰れたとしても始末書ものだ……」

 

 気を落としすぎである。まずは今命があることを喜ぶべきではないだろうか?

 

「ここにいても何も始まらないから、進もうぜ。そこに洞窟があるし」

 

 黒瀬が指を指した方向には、かなり大きな洞窟の入り口があった。

 

「地上に通じているかもしれない。調べよう」

 

 黒瀬たちは立ち上がり、海水を含んで重たくなった服から水を滴らせながら洞窟の中へと入った。洞窟には、松明が壁に掛けられており、明らかに人の出入りがある空間だ。

 

「これなら地上に通じているかもな」

 

 期待に胸を膨らませながら進む。だが当然、簡単に地上にたどり着けそうにはなさそうだ。

 

『いたぞ!』

『殺せ!』

 

 武装したガナードが現れ、ボウガンで攻撃を仕掛けてくる。

 

「隠れろ!」

 

 岩に背中を隠し、様子を伺う。

 

「敵は……八人だな」

 

 その内、四人がボウガン装備だ。黒瀬たちが隠れている岩に矢を放っている。

 

「道は一本、やることは一つだな」

 

 マイクはハンドガンを取り出した。

 

「へぇ、やる気になったか?」

「ああ。四人で酒を飲む約束をしたしな」

 

 四人、この事件に関わった黒瀬、レオン、ルイス、マイクの四人だ。

 

「それなら死ぬわけにはいかないな。俺とマイクで敵を引き付ける。リョウは先に進んでくれ。やれることがあるはずだ」

 

 ルイスも銃を構えた。

 

「分かった……死ぬなよ」

 

 黒瀬は立ち上がり、ダガーナイフを四本抜いてボウガン装備のガナードの手首に投擲した。もちろん命中し、四人は怯む。

 その隙に一直線の道を一気に駆け抜ける。怯んでいないガナードが、斧やスタンバトンで攻撃してこようとするが、ルイスとマイクの援護射撃により、その攻撃が黒瀬に届くことはなかった。

 残りの道を駆け抜けて階段を昇ると、予想通り地上に着いた。外はまだ暗いが、そろそろ夜明けのはずだ。

 

 パシュッと軽い音が聞こえ、赤いチャイナドレスの女性が、宙を移動していた。

 

「エイダ!?」

 

 エイダもこの島に来ていたようだ。だが、驚くべき問題はそれだけではなかった。上の足場には、黒瀬が知っている人物がいた。

 短い金髪の男。その男とは昔、南米で共に戦ったことがある。

 

 ────まさか!?

 

 黒瀬はその正体を確かめるために壁を走って上へと上がり、エイダの隣に着地した。

 

「あら、あなたも来ていたの?」

 

 エイダは冷静沈着だが、黒瀬はそうもいかなかった。そこにいた男の名は――ジャック・クラウザー。

 南米で生物兵器を所持していた人物を倒すために共に戦い、そして謎の事故により死亡した人物。まさか生きているとは……。

 しかし、クラウザーの左腕は寄生体になっており、彼からは凄まじい殺気が伝わってくる。

 

「クラウザー……ウィルスに頼ったのか……?」

 

 クラウザーは黒瀬の顔をじっと見て、何かを思い出したかのように笑う。

 

「リョウか。今日は懐かしい奴に良く会うな」

「答えろ!」

 

 あの時、ウィルスの怖さを知ったはずだ。あの事件の首謀者はウィルスに頼った所為で儚い結末を遂げた。あの光景をクラウザーも見ていたはずだ。

 

「俺の価値観はあれから変わったのさ。マヌエラの力を見ただろう? ウィルスは、人も! 世界も! 簡単に変えることが出来る! 俺はその力が欲しかったのさ!」

「そんな理由でウィルスに手を出したのか!!」

 

 かつての仲間がウィルスに囚われている。もちろんそれはクラウザーだけではない。黒瀬もレオンもそうだ。クラウザーとレオンたちとの決定的な違いは、その力を、その驚異を、否定するか、利用するかだ。

 

「ちょうど良い。貴様もエイダと共に葬ってやろう。貴様が嫌っているウィルスの力でな!」

 

 もう、クラウザーの耳には誰の言葉も届かないだろう。

 

「彼、あなたを殺すみたいだけどどうするの?」

 

 エイダが尋ねる。

 

「もちろん倒す。ジャック・クラウザー! 現時点から、お前をB.O.W.と見なし、処理する!」

「やれるものなら」

 

 クラウザーは、寄生体と化した左腕で真っ直ぐと黒瀬の胸を狙って殴りかかるが、黒瀬の怒りは既に頂点に達しており、そんな攻撃など簡単に見切れた。

 

「らあああぁぁ!!」

 

 突き攻撃をしゃがんで避け、クラウザーの顎にアッパーを喰らわせる。すぐにその胴体にラッシュを加え、顔面を殴り付けた。

 黒瀬が優勢に見えたが、あまりに熱が入っていた所為で、クラウザーが投げた閃光手榴弾に対応出来ず、目と耳を麻痺させてしまう。

 黒瀬の身体が殴り付けられ、倒れたところで肋骨を踏まれる。

 

「ククク、その程度か、クロセ・リョウ。だが、パンチは効いたぞ」

 

 目が治り、正面を捉える。クラウザーは寄生体を硬化させ、今にも黒瀬の胴体を貫かんとしている。

 

「あら、私がいるのをお忘れ?」

 

 エイダがボウガンの矢をクラウザーに放つが、矢は右手で捕まれる。

 

「残念だったな」

「そうでもないわ」

 

 クラウザーが掴んでいた矢は爆発し、クラウザーは吹き飛んだ。黒瀬はクラウザーから解放される。

 胸を踏みつけられていた所為で息がしずらいが、今はそれどころではない。クラウザーとの距離を縮め、また顔面を殴りつけた。

 

「クラウザー! まだ殴り足りないぞ!」

 

 ローキックからの助走なしの飛び蹴り。軽いフットワークで起き上がり、側面に回り込んで三発、顔を殴り付けた後に首を肘で抱え、床に叩きつけた。

 

「ぐぅ……!」

 

 クラウザーは元軍人だが、昔のような動きをしていない。寄生体に身体を乗っ取られようとしているのかもしれない。

 しかし、クラウザーの反撃。閃光手榴弾を床に落とした。黒瀬は目を瞑り、耳を塞ぐが、それでも一瞬の隙が出来る。クラウザーはその隙を逃がさず、黒瀬に攻撃を仕掛けた。

 硬化させた寄生体で黒瀬の上半身を斜めに斬り上げ、右手首を真っ二つに斬り落とす。

 

「──あっ、がぁ!?」

 

 斬られた胸と手首から、血が霧のように噴き出す。流石に気を失いそうな痛みだが、黒瀬は歯を食い縛り、切断された腕でクラウザーの顔面を殴った。

 そしてまた、気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

「リョウ、無事か!?」 

 

 目を開けると、目の前にはルイスの顔があった。

 

「ったく、こんなところで昼寝とは良い度胸だな」

 

 マイクも無事だ。二人ともボロボロだが。

 右手を見ると、ちゃんと右手は生えていた。胸の傷もない。夢だったのか? そんなはずはない。確かに手首を切断され、胸を斬られた。ヒーリング能力で再生したのだろう。

 

(手まで生えてくるとは……トカゲか俺は?)

 

 近くを見渡すと、クラウザーが倒れていた。動きそうにない。

 黒瀬が殴った時に倒したのか、はたまた気絶した後にエイダが倒してくれたのか、それはわからない。エイダの姿もない。

 

「リョウ、さっきレオンと連絡を取ったんだ。プラーガは除去し、サドラーとの最終決戦に挑むらしい」

「そうか。参加したいが……」

 

 今回は身体を張りすぎた。傷が回復しているといっても、身体がダルいことには変わりはない。

 

「ヘリの降下ポイントで休んどくよ」

 

 レオンならサドラーを倒してくれる。レオンの強さは黒瀬も認めている。

 黒瀬はハニガンにヘリの降下ポイントを聞こうと無線機を取り出したとき、ドコォン!! と何かが扉を破った。

 

「何だ!?」

 

 破られた扉の方を見ると、大男が二枚刃のチェーンソーを持って、こちらを凝視していた。

 

「あいつは……?」

 

 大男は黒瀬たちを目標に決めたのか、二つのチェーンソーの重量をものともせずに振り回し、黒瀬たちの元へと走ってくる。

 

「ヤバイな……」

 

 マイクとルイスは巨大チェーンソー男に向けて何度も発砲するが、まるで効いていないかのように走るのを止めない。

 

「あんなのと戦いたくないな。逃げるぞ!」

 

 流石の黒瀬でも、近接戦闘が仕掛けられない敵には分が悪い。それに、この数時間で傷を治しすぎたせいか、身体が想像以上にキツイ。

 黒瀬たちは取り敢えず走る。

 

「おい、ハニガン。ヘリはまだか!?」

『今そっちに向かっているわ。ヘリのパイロットと無線を繋げるわね』

『よお、俺をなしで任務に出たかと思ったら、そんな島で遊んでいたとはな!』

 

 その声は、黒瀬が聞いたことのある声だった。

 

「その声、カークか!?」

『俺以外に誰がいるんだよ?』

 

 この声の主は、B.S.A.A.の優秀なヘリパイロット、カーク・マシソン。どうやら彼が救援に駆けつけてくれるようだ。

 

『ボクもいるよー』

 

 またもや聞き慣れた声。

 

「平野も一緒か!」

 

 平野コータは、B.S.A.A.の狙撃手だ。共に六年前のカントウ事件を生き抜き、流れるようにB.S.A.A.に志望した。

 

『そろそろで着く。それまで我慢しといてくれ』 

「オーケー! でもロケットランチャーには気を付けてくれよ。ヘリがトラウマになりそうなんだ」

 

 黒瀬は無線を切り、ルイスたちに状況を説明しようとするが、無線がかかる。

 

『リョウ、聞こえてる?』

 

 エイダの声だ。

 

「ああ。何だ?」

『もうそろそろでその島は爆発するわ。早く逃げた方がいいかも』

「でもレオンがまだ……」

『レオンと大統領のお嬢さんなら大丈夫よ。上手く脱出出来るように手を加えておいたわ』

「そうか、ありがとな。でも、何で俺たちに手を貸すんだ?」

 

 エイダの上にはウェスカーがいる。そもそもエイダには黒瀬たちを助ける義理なんてないのではないか、黒瀬はそう考える。

 

『同じラクーンシティの生き残りとしての情が湧いちゃったのかも?』

 

 エイダは無線を切った。

 黒瀬には、エイダが心からの悪い人物ではないことが分かる。しかし、何故そんな人物が今回のような仕事をしているのか。だが、今はそんなことを考えている時間ではない。

 

 黒瀬はマイクとルイスに状況を説明した。

 

「ヘリが来るまで逃げれば良いんだろ?」

「そういうことだな」

 

 巨大チェーンソー男は持久力を衰えずに黒瀬たちの元へと向かってくる。

 黒瀬はレッグホルスターからハンドガンを抜き、巨大チェーンソー男の近くにあるドラム缶を撃ち抜いた。ドラム缶は爆発を起こす。それでも巨大チェーンソー男を倒すのには至らず、膝をついただけだった。

 

「時間稼ぎにはなったはずだ」

 

 黒瀬たちは、カークが見つけやすいように高いところまで走る。しかし、その終着点は崖だった。

 

「クソ、行き止まりかよ!」

 

 エイダの言った島が爆発する時間まであとどのくらいだろうか。残されている時間は少ない。

 巨大チェーンソー男は、あと少しで島が爆発するとも知らずにチェーンソーを振り回し続けて、黒瀬たちへと近づく。

 

「やるしかないな」

 

 あのチェーンソーの攻撃を掻い潜り、刀で首を斬れれば良いが、そんな体力もない。チェーンソーに切られて今の身体の状態で回復するとも限らない。そもそもチェーンソーに切られたくない。

 黒瀬はナイフを投擲するが、当然奴には効かない。

 

「クソ、どうするってんだ!?」

 

 マイクとルイスも巨大チェーンソー男を近づけまいと撃ち続けるが、ものともせずに近づいてくる。

 

『こんなときにヒーローのご登場?』

 

 その声のすぐあとに、発砲音が聞こえ、巨大チェーンソー男が怯んだ。

 ヘリが黒瀬たちのいる崖へと向かってきていた。平野はヘリから身を乗り出し、ライフルを構えてまた撃った。弾丸は吸い込まれるように巨大チェーンソー男に命中する。

 

『こんな体勢でも命中させられるって……ボクって天才!?』

「そうだな、天才だよ!」

 

 ヘリは瞬く間に崖へと到着し、機体を横へと傾けた。

 

『ロケットランチャーには気を付けてるぜ。俺は何があっても墜落しない!』

「だってよ、マイク。このヘリパイロットは何があっても墜落しないらしい」 

「俺だって墜落しないと思ってたわ!」

『……! 三人とも早く! 奴が……!』

 

 巨大チェーンソー男はまだ立ち上がり、チェーンソーを振り回す。

 

『喰らえ!』

 

 平野はライフルを連続で撃ち、命中させるが、それでも倒れそうにない。

 

『なんてタフさ……でもこれなら!』

 

 平野が取り出したのは、ロケットランチャーだった。

 

『ごめんね、黒瀬。良いところはボクがもらっていくよ!』

 

 平野はロケットランチャーの引き金を引いた。ロケット弾は真っ直ぐ飛翔し、巨大チェーンソー男の腹部へと命中。大爆発を引き起こした。

 その場に残っていたのは、チェーンソーの欠けた刃だけだった。

 

『流石はRPG7! 対人兵器じゃないけど、その威力はやっぱすごい! 撃ってみたかっただけだけどね』

 

 地面が揺れる。さっきまでいた施設が爆発していた。

 

『え!? ボクが撃ったせいで!?』

「違うわ」

 

 三人はヘリへと乗り込んだ。

 

「じゃあ出すぞ」

 

 ヘリは爆発に巻き込まれないように、すぐにその場を離れた。

 

「ルイス、教団が潰れる姿を見れて良かったな」

「ああ。一生忘れないぜ」

 

 でも、結局教団を潰したのはレオンだ。黒瀬は自分は何も出来なかったと悲観する。

 

「それは違うな」

 

 ルイスは黒瀬の肩を叩いた。

 

「お前がいなければ俺は古城でサドラーに殺されてた」

「そうだな、俺もリョウがいなければヘリと一緒に墜落してた」

 

 二人の顔は笑顔だった。

 

「そうだな。俺でも……役に立てたんだな」

 

 本来の任務はレオンが遂行してくれた。でも、自分だからこそ救えた命もあった。そして結局救えない命もあった。

 

(クラウザー……)

 

 彼とはどこで道を違えたのか。彼は自分の間違いに気づけなかったのだろうか。昔の戦友が死んだことには代わりはない。でも、それでも、進み続ける。これ以上のバイオテロに、ウィルスに囚われない人間が増えないように……

 

 

 

 

 

 

「よお、レオン」

「どうも、リョウ」

 

 ハニガンの連絡で、レオンとアシュリーの元へと向かうと、水上バイクに乗っている二人の姿があった。

 

「今からマイクのおすすめの店に、彼のおごりで飲みに行くんだけど、乗ってく?」

「そうだな、ちょうど飲みたい気分なんだ」

 

 レオンもアシュリーもボロボロだった。

 

「レオン、これからも宜しくな」 

「ああ、当たり前だろ」

 

 ウィルスは増殖を続ける。バイオテロも増え続ける。でも、だからこそ、戦う、戦い続ける。ウィルスがこの世から消滅するまで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は8章リベレーションズ編となります

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