バイオハザード~破滅へのタイムリミット~   作:遊妙精進

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嫌な取材/大学の先生

「おすおーす、元気にしてた~?」

 

 女性が黒瀬に向けて手を振った。

 その女性の顔を見た途端、黒瀬の顔が曇る。

 

「何で記者さんがここに?」

 

 佐藤リコ、通称記者さんは、カメラを掲げてB.S.A.A.本部までやって来た。

 

「あれ~? 聞いてなかった? 今日取材に来ると言ってたんだけど……」

 

 黒瀬は首を傾け、記憶を巻き戻す。

 確か、カークがそんな事を言っていた。

 

「じゃあ、受付に行ってください。案内されるはずです」

 

 黒瀬はこれから開発中のバイオスキャナーの実験を行わなければならない。

 

「いやいや、私が取材するのは君だよ」

 

 佐藤はビシッと黒瀬に指を差した。

 

「……は?」

 

 黒瀬は凍り付く。

 

「だから、取材相手はリョウくんなの。聞いてなかったの? オブライエン代表が伝えとくって言ってたけど」 

「なんだとぉぉぉ!?」

 黒瀬は絶叫に近い声をあげ、またもや記憶を巻き戻す。

 

 確か、あれは三日前……

 

 

 

 

 

 

『こちら“フォークボール”聞こえるか?』

 

 海中での任務中、オブライエンから通信がきた。

 

 

「こちらリョウだ。どうした、オブライエン?」

 

 フルフェイスマスクを着用しているので、声はこもっているが、はっきりとオブラエインに聞こえるはずだ。

 

『駄目じゃないか。折角のコードネームがあるだろ?』

「コードネーム? ああ、“ブラックレッド”か。嫌だよ、そのまんまじゃん」

 

 黒瀬の髪の色が黒、目の色が赤ということで付けられた簡易的なコードネーム。

 

『しかしだなぁ、やはり任務中は使ってほしいものだ』

「嫌だね。そもそもオリジナル・イレブンでも使ってるのはオブライエンとジルくらいだぞ?」

『だからこそ使ってほしいんだよ。君の行動は部下にも影響力があるからな。君やサエコの真似をして刀を使うと言っているメンバーが出てきているんだぞ?』

 

 黒瀬は言葉を詰まらせた。オブライエンの言う通り、黒瀬や毒島が刀を使い、B.O.W.を倒すことで自分も、というメンバーが増えてきている。

 

「でも言っとくけどなぁ、俺が使ってんのは刀じゃなくて木刀だ。別にリーチがあるんならバールでも良いんだぞ?」

『どっちでも良いだろう? 私が言いたいのはB.O.W.に近接戦を仕掛ける者が君たちのように増えてはならないことだ。ゾンビなら未だしもハンターやリッカーにまで近接戦を仕掛ける者までいたらどうする?』

「それ……明らかに俺だけじゃないだろ。オリジナル・イレブンのほとんどが出来るぞ」

 

 クリスもパンチで敵を殴り飛ばすし、ジルも敵の急所を的確に攻撃して倒す事ができる。

 

『まぁ、君たちの力は認めているのだがねぇ……』

「んじゃ、良いじゃん。そもそもB.O.W.を実際に見て近接戦を仕掛ける奴自体少ないから安心しとけ」

 

 B.O.W.とひとまとめしても種類は様々。リッカーは出来るだけ触りたくないと黒瀬も思っている。

 

「んで、話は?」

 

 黒瀬は脱線したレールを戻し、本題に入ろうとする。

 黒瀬は今海中。話しすぎると酸素が減ってしまう。

 

『それがなぁ――』

 

 オブラエイン続けるが、黒瀬にt-ウィルスに感染してしまった魚が襲い掛かってきた。

 黒瀬は魚の突進を避け、パルスグレネードを投げて魚が怯んだところでナイフを突き刺す。

 

『――というわけだから、三日後は空けといてくれ。私は製薬企業連盟の方に出張だからしばらくは帰ってこんぞ』

 

 オブラエインからの通信が切れる。

 

「おい、オブラエイン!? もしもし!?」

 

 無意味とわかっていても返信を促す。だが、オブラエインからの通信はこない。

 

『黒瀬くん、大丈夫だった?』

 

 近くで戦っていた宮本が泳いできた。

 

「あ、おう……」

 

(一体本題は何だったんだ?)

 

 結局、黒瀬は分からず仕舞いで本部へと帰還した。

 

 

 

 

 

 

「あ~多分あれだな……」

 

 オブラエインと最後に話したのは三日前、恐らく黒瀬が戦っている最中に話したのだ。それしか考えられない。

 

「思い出した? じゃあ早速そこの椅子で取材を開始しましょう!」

 

 黒瀬はあからさまに嫌な表情を浮かべるがどうすることも出来ない。

 オリジナル・イレブンのほとんどは本部におらず、各地のバイオテロに派遣されている。B.S.A.A.のトップをオブライエンだとしたら、オリジナル・イレブンはその次となる。遠くにあまり出張しない黒瀬がオブライエンの代わりにB.S.A.A.を指揮しなければならない。

 

(面倒くさいから他の奴に任せようかなぁ)

 

 そう画策するが、今B.S.A.A.本部にいるメンバーでB.S.A.A.に詳しい人物は黒瀬だ。

 

「よし! どんとこい!」

「良いねぇ、私もヤル気が出てきたわ!」

 

 黒瀬はまだ知らなかった。これが地獄の取材になることを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒瀬はオーストラリアでの任務が終わり、オーストラリアのフィソロフィー大学にやって来た。

 

「おーい、レベッカー」

 

 大学構内でレベッカを見つけ、手を振る。

 

「リョウ!」

 

 レベッカは黒瀬を見つけるないなや駆け寄り、ハグをしてきた。

 

「久しぶりだな、レベッカ。仕事のついでに来たんだ」

「仕事ってバイオテロ?」

 

 レベッカはハグを止め、黒瀬の顔を見つめる。

 

「ああ。FBCが逃がしたハンターを処理しただけだけどな」

「他の人は来てないの? タカシ君とか……」

「いや、他にもメンバーはいるが……ビリーの奴、レベッカに会いたくないって。恥ずかしいんだと思う」

 

 レベッカはそれを聞くと顔を真っ赤にさせた。照れているのだろう。

 

「まぁ、ビリーのことだし、わかってはいるけど……」

 

 恋とは非常に難しいものなのだろう。B.S.A.A.内でも小室と毒島、宮本や平野と高城、他にもリカと田島、クリスとジルなど、互いの気持ちは分かってるくせに恋愛には発展しない。

 

(そんなに難しいのか?)

 

 黒瀬は恋などしたことないので理解できないが、小室たちに関しては四、五年も進んでいないので、相当難しいことが伺える。

 

「あ~恋してみたいなぁ……」

 

 そんなことを呟いた。黒瀬の回りの人物のほとんどは好きな人とかいるのに、黒瀬にはいない。不良をやっていたせいかもしれないが、小室もモテているので関係はないだろう。

 

「クレアがいるじゃない」

「クレア?」 

 

 黒瀬は唐突に言われて混乱する。確かにクレアとは仲が良いが、どうやってもそこまでだ。クレアにはレオンの方がお似合いだ。

 

「クレアとは仲が良いけど、恋人までとはいかないよ」 

「う~ん、そうかしら?」

「レベッカ先生~」

 

 二階から、ここの生徒らしき学生がレベッカを呼ぶ。

 

「お呼びだぞ、レベッカ。今度は仕事じゃないときに来るよ」

「じゃあ、その時は日本のお土産ヨロシクね」

「ああ」

 

 レベッカは駆けて、校舎へと戻っていった。

 

 




番外編2はまだ続きます。
皆が幸せでいられるのは今くらいなので。
二部からは……

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