バイオハザード~破滅へのタイムリミット~   作:遊妙精進

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書き忘れていましたが、時系列は
1998年秋 ラクーンシティ編
1998年冬 CODE:Veronica編
1999年春 黙示録編
2000年夏 GAIDEN編
2002年夏 オペレーション・ハヴィエ編
2003年冬 アンブレラ終焉編
となります。  


33話 アリスとエージェント

 レオンSIDE

 

「寒いな……」

 

 ロシアの地に降り立ったレオンは、身を震わせた。

 合衆国エージェントであるレオンは、大統領命令でこの地までやって来た。

 

 どうやらロシアの私設対バイオハザード部隊が、新型B.O.W.を開発している情報を受け、アンブレラロシア支部の工場を襲撃しようとしているらしい。

 

 大統領からレオンに下った命令は、私設対バイオハザード部隊と協力し、工場を制圧、そしてアンブレラの情報を抜き出し、裁判へと提出することだった。

 

 裁判――――アンブレラのt-ウィルスが漏れ、ラクーンシティでバイオハザード発生。合衆国政府は、表では事態を終息させるために、裏では、アンブレラの顧客だった証拠を無くすために核ミサイルを放った。

 当然、アンブレラには業務停止命令が下ったが、金で多くの弁護士集団を雇い、合衆国政府と裁判を起こした。それが、あの事件から五年経った今でも続いている。

 

 事件の証拠は、合衆国政府がミサイルを放ったため、何一つ残っていなかったが、今から向かうコーカサス研究所、そこには何らかの情報があるのかもしれない。そういう可能性もあって、レオンが向かわせられた。

 

 レオンは雪道を歩く。この先に研究所までの案内人がいるのだが、その人物の名前までは知らなかった。

 前方から雪上車がレオンの方へと向かってくる。目の前で止まり、中から一人の女性が降りてきた。

 

「久しぶりね、レオン」

 

 彼女は、金髪にウェーブのかかった髪、防寒具を着ているが、至るところに武器を付けていた。

 

「久しぶりだな、アリス」

 

 彼女の名はアリス――アリス・アバーナシー。1998年、レオンが政府に身をおいた後も彼女の話を何度も聞いた。

 噂では彼女はアンブレラの研究所や基地に忍び込み、破壊しまくっているそうだ。

 

「早速だけど行くわよ。もうそろそろで部隊が研究所に着くわ」

「それなら急がないとな」

 

 アリスとレオンは雪上車に乗り込み、その場から動き出した。 

 

 

 

 

 

 小室SIDE

 

「遅かったな」

 

 工場内への扉まで行くと、カルロスがマガジンに弾を込めながら待っていた。

 

「他のメンバーは?」

「もう中に入った。クリスとジルは別ルートから探索している」

 

 小室たちは中に入り、それぞれの武器を構える。

 

「そういや、アメリカからエージェントが来るんだってよ」

 

 カルロスが唐突に言った。

 

「エージェント?」

「レオン・S・ケネディだ。知ってるだろ?」

  

 小室と黒瀬は頷いた。一年前に南米で共闘した人物だ。また会えるとは思っていなかった。

 

「アリスがレオンを連れてくるらしい」

 

 ありす? 小室の頭のなかでは、可愛い桜色の髪の少女が思い浮かんだ。

 

「アリスもこの部隊に? 懐かしいメンバーばっかりだな」

 

 小室は今理解した。黒瀬とともにラクーンシティを脱出した人物だろう。

 

「お、来たぞ」

 

 ハンターがわらわらとやって来た。小室たちに飛び掛かり、爪で攻撃し始める。

 

「ったく、なんつう数だよ!」

 

 ハンターを近付けさせぬよう、小室とカルロスは撃ち続け、ハンターが弱ったところに黒瀬が木刀で頭を砕いていく。素早くハンターを殲滅した。

 

「タカシもやるじゃねぇか」

 

 カルロスは小室の頭をポンと叩く。

 子供扱いをされているのは少し嫌だが、誉められていることに関しては嬉しかった。

 

「俺は左を行く。リョウたちは右を頼む」

 

 カルロスは、残弾が少なくなったマガジンを抜き取り、新しいマガジンを差し込むと、左の方へと駆けていった。

 

 小室も弾を詰め込み、辺りを警戒する。

 いつどこか現れるのか、一切分からない小室にとって、ここはお化け屋敷のようなものだ。チラッと黒瀬を見ると、サイドパックから煙草を出し、火を着けた。そして、満足そうに煙を吐き出す。

 

「全く、こんなところでも煙草を吸うとは……」

 

 緊張感の欠片もないなと小室は思った。

 

「別に良いじゃんか」

 

 そう言ってまた煙を吐いた。

 黒瀬はヘビースモーカーではない。時々吸うぐらいだ。というか、小室も黒瀬もまだ十九歳なので、煙草を吸ってはいけない年齢なのだが……

 

「そういえば小室も随分と英語が上手くなったな」

 

 いきなり何の話だと小室は思ったが、元々黒瀬はこういう人物なのを思い出し、答える。

 

「冴子から教えてもらってるんだよ。昔は英語なんて使わないものだと思ってたけど」

 

 毒島冴子とは、何とも言いにくい関係が続いている。あの事件から心を通わせた二人だが、好きだった宮本麗との関係も取り戻したことによって、未だに進展しないでいる。

 仲間からは「ヘタレ」だの言われるが、確かにそうだ。ヘタレである小室には二人のどちらかを選ぶことなど出来ない。だが、仲間に言われる筋合いはなかった。

 

 平野と沙揶、黒瀬と香月の進展も何一つない。黒瀬に関しては、全くそういう気がない。もうそろそろで二十歳になるというのに、結婚願望などまるでない。というか女に興味がなく、興味があるのは『アンブレラ』や『B.O.W.』だ。本当に大丈夫なのだろうかと思う。

 と言っても黒瀬以外のメンバーも恋愛する気はないのかというくらい何もない。鞠川静香も南リカも佐藤リコも三十歳なるというのに結婚していない。ありすはそろそろ中学生になるが、誰とも付き合ってもらいたくない。そんなやつがいたら一発ぶん殴る。 

 

 小室はロリコンではないが、ありすとは家族のような関係だ。少しばかり余計なことをしてしまって怒られることもしばしばある。  

 

「小室、敵さんがいらっしゃったぞ」

 

 階段から〈奴ら〉が複数下りてきた。

 

「やりますか」

 

 小室は〈奴ら〉にショットガンを向ける。

 

 

 

 

 

 

 レオンSIDE

 

「着いたわ」

 

 一時間ほど経つと、目的地であるコーカサス研究所前に到達した。

 

「行くわよ。もう戦いが始まっているわ」

 

 アリスとレオンは車から飛び降り、工場の敷地内へと入る。

 ホルスターからハンドガンを出し、構える。

 至るところから風の音と銃声が吠える。アリスの言った通り既に戦闘は始まっていた。

 

「こちらアリス、目的地へと到着したわ」

 

 アリスは胸に付けられている無線を使う。

 

〈了解した。アルファ1からアルファ8が工場内で戦闘中だ。そちらに向かってくれ〉

「了解」

 

 アリスは無線を切り、ホルスターからマグナムを二丁取り出した。

 

「聞こえたわよね? 今から工場内に入るわ」

「ああ」

 

 と、レオンが短く答えた直後、

 

〈ぎゃああああああ!!〉

 

 アリスの無線から、耳をつんざくような叫び声が辺りに広がる。

 

〈巨人が……うわぁぁぁ!!〉

 

 ザザーとノイズが流れ、一瞬の静寂が訪れる。

 巨人……タイラントの一種かもしれない。せめてロケットランチャーがあれば良かったのだが、レオンの武器はハンドガンだ。

 

「中に入る前に一仕事しないとね」

 

 アリスが微笑みながら言うと、上から何者かが飛び降りてきた。

 

「こいつは……!」

 

 レオンがラクーンシティで見たタイラントと似ているが、白いコートに青いサングラスをしている。その白いコートは、人の血で汚れていた。

 

 アリスはその姿を確認すると、無言のまま走り、手に持っているマグナムを連射する。弾はタイラントのコートに当たるが、それほど効いていない。衝撃吸収コートのようだ。

 

 それでもアリスは撃ち続け、弾が切れたマグナムを投げ捨てると、タイラントの腹へと掌低を喰らわせた。続けて、凄まじい跳躍力で顔に回し蹴りを放ち、その巨体を吹き飛ばす。

 その光景を見たレオンは唖然としていた。黒瀬もそうだが、アリスもB.O.W.と素手で戦うとは……

 タイラントはすぐに立ち上がり、アリスの顔を狙って殴るが、掌で受け止められ、くるりと回して横転させられた。  

 黒瀬以上のパワー、レオンが知っている情報には、そんなものはなかった。一人でアンブレラの基地を壊滅させるほどだから、自分よりかは強いと思っていたが……想像以上だ。

 

 アリスは意図も容易くタイラントの頭を踏み潰し、投げ捨てたマグナムを拾う。

 

「さあ、レオン、行きましょう」

 

 アリスはマグナムに弾を込めながら言った。

 

「……ああ」

(俺が来る意味はあったのか?)

 

 正直アリスだけで十分だと、レオンは感じた。

 

 

 

 

 




バイオ2の最後
レオン「アンブレラをぶっ潰すのさ」←頑張れレオン!
バイオ4の冒頭
レオン「アンブレラは潰れた」←え? アンブレラを潰す話は?
と思っていました。

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