バイオハザード~破滅へのタイムリミット~   作:遊妙精進

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言い忘れていましたが、4章は3人の主人公がいます


24話 大男

 リョウSIDE

 

「結局こうなるんだよ!!」

 俺はゾンビ三体に囲まれていた。二時間ほど部屋でゆっくりして外に出てみたらこれだ。

 豪華客船スターライト号には、大量のゾンビが発生してしまった。考えられる可能性は二つ。船に潜入していたテロリストがt-ウィルスを撒いた、もうひとつは、レオンの言っていた新型B.O.W.がt-ウィルスを保菌していたかのどちらかだろう。後者の方が圧倒的に可能性が高いな。

 俺を囲んでいたゾンビの眉間にぱぱっとナイフを刺し、移動する。レオンと連絡を取りたいが、残念ながら無線機を持ってきていない。豪華客船だからと完全に油断していた。

 とりあえず俺の目的は、1生存者の救出 2レオンと合流 3可能なら新型B.O.W.を倒す 4船から脱出 となる。船からの脱出は、レオンがアメリカ政府に頼んでヘリやらを送ってもらえるだろう。第一は、生存者の救出だ。レオンは訓練を受けているし、ゾンビとの戦闘経験もある。だが、他の奴等はそうもいかない。しかもこの船に乗っている奴等は、戦闘のせの字も知らなそうな富裕層ばっかだ。

「誰かいるか!?」

 俺は大声をあげながら船の中を回る。当然、ゾンビが寄ってくるリスクがあるが、生き残りをほっとくわけにはいかない。だが、誰からの返事も来ない。ゾンビに見つかるのを恐れて声をあげないのか、それとも全員ゾンビになってしまったのか。全員ということはないだろうが、ほとんど、言っていいほどの割合の人数がゾンビになっているだろう。スターライト号は全長330メートルの船、看板やホールは広いが、この狭い通路で囲まれたら終わりだ。

「誰もいないのか!?」

 誰も呼び掛けに応じない。わざわざ一室ずつドアを開けて調べる時間もない。

「だあああ! めんどくせぇ!」

 辺りにいるゾンビを蹴散らしながら進む。この狭い通路の中での戦闘、時間を掛けたらすぐに囲まれてしまう。それに、会うたびに倒してもキリがない。この船には2500人が乗れる。それに近い人数が乗っているのは確かだ。

「生存者、出てこーい!!」

 苛立ちを発散させるように声を出しながら、船内を駆け巡る。  

 

 

 

 

 

 レオンSIDE

 

「クソ! 数が減らない!」

 合衆国エージェント、レオン・S・ケネディは、正面にいるゾンビの眉間に銃弾を撃ち込む。撃ち抜かれたゾンビは本当の死を迎え、床に崩れる。

 ゾンビの弱点は頭。頭を破壊すれば、その活動を停止させられる。逆に言えば、頭を破壊しないといつまでも動き続けるのだ。レオンの脳裏には地図から消滅した街のトラウマが甦るが、今はそれを気にしている場合じゃない。過去のトラウマを振り払い、ゾンビを撃ち続ける。

 今やバイオテロの数が多くなり、B.O.W.も殺戮兵器として使われている。ラクーンシティ、シーナ島、ロックフォード島や南極基地、トウキョウのような規模のバイオテロが再び起こるのも時間の問題だ。

 マガジンの中の弾丸を全て使う頃、やっと人が通れる隙間が出来た。

「失礼するね」

 レオンはゾンビの隙間を縫うように潜り抜け、通路を突破する。

「キャー」

 近くから子供の叫び声が聞こえてきた。レオンはゾンビを無視し、声のした方まで一気に駆け抜ける。

 通路を曲がった先に、その声の主がゾンビに囲まれていた。

「伏せろ!」

 声の主はレオンに気付き、床に伏せた。レオンはそれを確認し、囲んでいるゾンビの頭に撃つ。

 五秒もすると、ゾンビは全員床に倒れ、頭から血を流していた。

「大丈夫か?」

 レオンは声の主の女の子に近づく。彼女は黄色のコートを着ており、歳はまだ十二、十三歳といったところだろうか。どこにも傷はなく、感染の兆候もない。

「俺はレオン・S・ケネディ。君は?」

「ルシア……」

 ルシアはレオンを警戒している。

「そうか、親はどこにいるんだ?」

「いないわ」  

「いない……?」

 いないとはどういうことだろうか。もう既にゾンビになってしまったのか?

「この船には一人で乗ったの」

「そうか……」

 これ以上聞くのは止しておこう。だが、彼女は過去に何かがあったことは推測出来る。

「ここは危険だ。ルシア、俺に着いてきてくれ」

「分かったわ、レオン」

 マガジンの中の残弾を確認し、狭い通路を進む。弾もそれほどない。節約をしたいところだが、ナイフはリョウに渡してしまった。

(リョウは無事なのだろうか……)

 リョウはまだ子供だ。彼の力は知っているが、それでもレオンにとっては子供に代わりはない。リョウと早く合流しときたいが…… 

「レオン、怪物が来るわ!」

「怪物?」

 辺りを注意深く確認するが、ゾンビもネズミも一匹たりともいない。

「本当よ! きっとあの怪物だわ」

 レオンはトリガーから手を離さず、辺りを警戒する。

「その怪物って?」

「大男よ。私を追いかけてきたの。何とか逃げられたけど……」

 大男といえば、レオンがラクーンシティで戦ったタイラントが思い浮かぶ。その大男が新型B.O.W.なのだろうか。人をゾンビにさせる新型のタイラントという可能性がある。

「もう近いわ!」

 ルシアはそう言うが、姿も気配も何もない。

「ウオオオオオオ!」

 突如、レオンの目の前の床に大きな穴が空き、ルシアの言った大男が床から飛び出してきた。

「何だ……こいつ」

 大男は服を着ておらず、身長は二メートルを軽く越えている。腹部に大きな穴が空いており、そこから何本もの触手が出ている。

「こいつが新型B.O.W.か……!」

 レオンは銃口を大男に向け、撃ち続ける。しかし、びくともしない。全くと言っていいほど効いていないのだ。

「ルシア、どこかに隠れろ!」

「レオンは!?」

「デカブツの相手をする!」

 ルシアは素直にレオンの言うことを聞き、走り去った。

「さぁ、俺が相手だ」

 残弾も残り少ない。何とか長く時間を稼がなければ…… 

 大男はその大きな腕をレオンに降り下ろした。ギリギリのところでバックステップで避ける。大男が殴った床を見ると、大きなへこみが出来ており、その威力が伺える。

 だが、当たらなければどうということはない。

「喰らえ、デカブツ!」

 レオンは大男の攻撃を避けながら、急所である頭に撃ち、何とか体力を減らそうとする。タイラントやネメシスと戦ってきたレオンなら分かるが、こういった化け物は並大抵の武器じゃ殺せない。例え、今持っている全弾を頭に命中させたところで倒せはしないだろう。しかも、この狭い通路での戦いだ。一瞬の油断も許されない。

 マガジンの残弾が切れ、ポケットから新たなマガジンを出そうと手を入れるが、マガジンの感触はない。

「マジかよ……」

 全ての弾を使い果たし、近接武器もない。

「アアアアア」

 背後からゾンビがレオンに組み付く。レオンの肩を食らおうと必死に顎をガチガチ鳴らすが、レオンもそうはさせまいと、頭を押さえつける。

「いい加減に……」

 だが、前方にいる大男も待ってはくれない。レオンの腹に鋭いパンチを入れようとする。

「させるか!」

 くるっと、背後にいたゾンビと共に回り、ゾンビを盾にする。だが、威力が強く、盾にしたゾンビもろとも後ろに吹っ飛ぶ。

「クソ!」

 すぐ立ち上がろうとするが、大男に足を捕まれた。そのまま投げられ、大男がさっき開けて出てきた穴の下にレオンは落とされる。

「ガハッ!」

 レオンは大きく息を吐いた。受け身を取ることが出来ず、背中は床に衝突、痛みが襲う。それでもゾンビに襲われないように落ちた先を見渡すが、ゾンビの姿はない。

「……泣けるぜ」

 レオンは意識は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 




明日も投稿出来るかな?

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