(例 レオンもバリーも地下組織に入っていない、など
ちなみにこの小説の時系列は
1998年秋 ラクーンシティ編
1998年冬 CODE:Veronica編
1999年春 黙示録編
2000年夏 GAIDEN編 となります
23話 スターライト号
季節は夏になった。俺たちは三年生に進級し、毒島先輩は大学へと通っている。
俺は、寮の自分の部屋で荷物をバッグの中に詰め込んでいた。
「黒瀬、また外国に行くの?」
同じ部屋の平野が聞いてきた。こんな質問をするのも無理はない。俺は暇さえあれば、何度もアメリカやヨーロッパに行っているのだ
「ああ。アメリカの豪華客船にな。こんな手紙が来たんだ」
平野に外国から届いた手紙を見せる。平野は手紙を手に取り、読み始める。
「なになに? 『初めまして、いや、久しぶりの方が良いかな? 私の名前はジョン・スミスというものだ。君の両親と共に働いていた。親しい間柄でね。久しぶりに君の顔を見たくなった、と言ってもあの頃は君も赤ちゃんだったからね。私の顔を覚えてはいないだろう。チケットを付けておいた。船の名前はスターライト号。豪華客船だから、それなりの格好をしてきた方がいいと思う。君の都合もあるが、出来れば来てほしい。私の部屋は隣だ。ゆっくり話そうじゃないか。親愛なる黒瀬涼へ』……これでいくつもりなの?」
平野が疑うのも仕方ない。
「まあな」
「でも、ジョン・スミスって」
「分かってる」
ジョン・スミスは、アメリカ人の偽名として良く使われている。日本でいう山田太郎のようなものだ。他にも色々と怪しい部分があるが……
「黒瀬の両親って研究者だっけ?」
「ああ。何の研究をしていたかは分からないけどな」
ともかく、俺の両親を知っている人物かもしれないのだ。俺の両親は、いや、俺自身も謎が多い。その謎が少しでも解明できるなら、例え罠だろうと行ってやる。
「レオン、君に任務だ」
訓練中のレオンに、政府の上官の男性が話しかけてきた。
「はい。どういった内容ですか?」
レオンは訓練をやめ、上官に敬礼をする。
「スターライト号という豪華客船に新型B.O.W.が乗り込むという情報を嗅ぎ付けた。君には一人で船に行ってもらい、速やかに新型B.O.W.の排除をすることだ」
そこまで聞いたレオンには、一つの疑問が思い浮かんでいた。
「でもなぜ私ですか?」
レオンはまだ若手だ。他にも優れたエージェントならいるはずだが……
「君は他のエージェントよりもB.O.W.との戦闘が多い。君にしか頼めないことだ」
確かにそうそうB.O.W.と戦うエージェントなどそうもいないだろう。
「分かりました。行かせてもらいます。作戦の決行日は?」
「……明日だ」
バリーの家に電話が掛かり、クリスから悪い知らせがあった。それは、アメリカの豪華客船に新型B.O.W.が乗り込むとのことだった。
「バリー、すまない。頼めるか?」
「もちろんだ、クリス。クリスも頑張ってくれ」
クリスもジルもヨーロッパの方でアンブレラと戦っている。こちらにはすぐには来れない。
バリーは電話を切り、すぐに出掛ける準備をする。
「パパ? どこかに行くの?」
「ああ。悪者をやっつけにいく。モイラ、ポリー、いい子にしてるんだぞ」
「だるっ」
俺、黒瀬涼は、豪華客船スターライト号に乗り込み、用意された部屋のベッドでゆっくりと休んでいた。
流石は豪華客船、波の揺れは一切感じず、まるで陸にある豪華ホテルにいるような感覚だ。
まぁ、来て早々無駄足ということが分かったが。俺の両親の友人と称するジョン・スミスさんは、隣の部屋に来ると書かれていたが、部屋から人の気配はなく、ノックしても出てこない。船員に聞いたところ、誰も予約はしていないらしい。ますます謎が深まるばかりだ。なぜジョン・スミスは俺をこの船に乗せたのか。全然分からん。
考えても仕方がないので、大広間に行くことにした。有名なピアノ家が来ているらしい。何はともあれ、折角何百万と掛かる豪華客船に来たのだ。楽しんで帰ろう。俺としてはありすと有意義な夏休みを過ごしたかったが。
「すげぇな」
それほど有名なのか、すごい人だかりが出来ていた。周りにいる人たちは高そうなタキシードやドレスを着ていて、お金持ちということがわかる。……豪華客船なので当たり前だが。俺ももちろんタキシードを着ている。高城に選んでもらったやつだ。
二階から下の大広間を見下ろすと、ショートの黒髪で、黒いドレスを着た高校生ぐらいの女性がピアノを美しく奏でていた。一瞬、日本人かと思ったが、よく見ると中国人だ。
彼女が弾くピアノの美しい音色は、心をリラックスさせ、何とも言い難い気持ちにさせてくれる。これなら人気がでてもおかしくないな。俺もピアノは弾けるが、こんなに美しい音色は出せない。
柱に貼ってあったポスターを見てみると、彼女の名前が判明した。ユーチェン・ハンというようだ。やはり中国人だった。
「ん?」
ふと、気になる人物が俺の目に写った。それは若い金髪の男で皮のボンバージャケットを着ている人物。
俺はその男に近づき、話し掛ける。
「何でレオンがここにいんだよ?」
「俺もびっくりだ。まさか知り合いと会うなんて思っていなかった」
俺たちは友人のように話す。彼の名前はレオン・S・ケネディ。エージェント見習いである。
「マジか……」
俺とレオンは人気のないところで話し、事情を聞いた。
どうやら、新型B.O.W.がこの船、スターライト号に忍び込んでいるらしい。レオンの任務は新型B.O.W.の排除だ。
「リョウ、すまないが手伝ってくれないか? 情報は新型B.O.W.としか……」
「それで面倒くさくなって、ピアノを聞いてたのか?」
「それ、上には言うなよ……」
「分かってるよ」
だが、確かに情報が少なすぎるな。新型B.O.W.ね。ネズミくらいの大きさだったら流石に探すのは無理か……?
「それにしてもレオン」
「なんだ?」
「俺たち、もっと平和なところで会えないかな? これで会うの四回目だけど、全てゾンビとかB.O.W.が絡んでんじゃん」
電話やメールでのやり取りはあるが、実際にはまだ四回しか会ってないのだ。
「じゃあ、俺に会いに来てくれよ。シェリーのところには行ったんだろ?」
「嫌だよ。エージェントになるの断ったし、気まずいじゃん?」
アダム・ベンフォードという人からお誘いはあったが、丁重にお断りさせてもらった。俺はまだ幸せに暮らしたいし。
「じゃ、早速、B.O.W.探しに行くとするか」
「リョウ、これを」
レオンは胸ポケットに手を入れ、何かを取り出して俺の前に出す。それは黒塗りのサバイバルナイフで、新品のように刃が綺麗だ。
「ありがたく受け取っておこう」
正直、ナイフ一本じゃ心許ないな。十本はほしいところだが、文句も言ってはいられない。
「グッドラック」
「そっちこそ」
内ポケットにナイフを入れ、俺とレオンは分かれてB.O.W.の探索に乗り出した。
明日も投稿出来れば良いな、と思っています