バイオハザード~破滅へのタイムリミット~   作:遊妙精進

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ヤッホオオォォォォ! 三章終わったああぁぁぁぁ!


22話 親友

 リョウSIDE

 

 俺たちの元にゆっくりとネメシス、ハンターが近づいてくる。

「どうする? 神頼みでもするか?」

「あー、そういや、今年は初詣行ってなかったな」

 香月からの誘いがあったが、シェリー救出のために日本に帰れなかったんだった。

「二人とも、冗談を言っている場合じゃないわよ。逃げる方法もない、武器もない」

 ヘリは全てネメシスに破壊され、皆の銃の銃弾は全て尽きてしまったのだ。

「じゃあ、ナイフでも使う?」

「あんな奴と接近戦なんてしたくないわよ」

 一匹のハンターが俺たちに走ってきた。そして、腕を振り上げ、空中高くジャンプした。

 レオンさんが動けない俺の体を庇うが、いつまで経ってもハンターの攻撃は来ない。

『ポケットの中にビスケットが一つ……』

 聞き覚えのある声が、空から聞こえてきた。

「ヘリよ!!」

 プロペラ音と共に銃声が何発も轟く。ハンターを撃ち抜いていた。 

「おまえら!?」

 自衛隊のヘリには、仲間が乗っていた。何度の死戦を共に潜り抜けた友人たち…… 

「黒瀬ー! 私たちが仲間を見捨てるわけがないでしょ!!」

 ピンクのツインテール、自称天才の女。高城沙耶。

「黒瀬君、言っていたではないか! また会おうと」

 剣道の達人、毒島冴子。

「シャアア!」

 そういう間にも俺たちにハンターが近づいてくるが、平野により、胴体を撃ち抜かれて倒される。

「的は外したことがなくてね」

「嘘つけ!」

 軍オタ、平野コータ。

 三機のヘリから、自衛隊十五人と小室、毒島先輩、宮本が降りてきた。

「黒瀬、もうダウンか?」

 小室が手を差しのべる。

「まだまだだよ」

 俺はその手をガッチリと掴み、立ち上がった。

「リョウの友達か? 頼りになるな」

「ああ。自慢の仲間だ」

 身体は痛むが、動けないというほどでもない。肩の噛まれた傷もすぐに回復するだろう。

「今から、化け物の掃討作戦を開始する。一匹も逃がすな!」

 部隊の隊長らしき人物が、残りの十四人に命令する。

「ハンターにはツーマンセルで戦ってください。あのデカブツとは距離を取るように!」

「聞いたな!? では……てぇぇぇ!!」

 自衛隊による一斉発砲が行われる。

「記者さんとレベッカはヘリに乗ってくれ! レオンさん、これを」

 俺はサバイバルナイフと太股のハンドガン、マガジンを取ってレオンさんに渡す。

「もう一戦、頑張るとするか」

 ネメシスはどう頑張っても自衛隊には処理は出来ないだろう。俺とレオンさんで倒すしかない。

 ネメシスがガトリングガンを俺たちに向けるが、ガトリングガンの銃身は、空からの射撃により貫かれた。

 平野がヘリから狙撃している。

「さて……やるか」

 反撃が始まった。

 

 

 

 

 

 小室SIDE

 

「こンのっ!!」 

 戦闘が始まった。

 小室は、ギリギリまでハンターを惹き付け、その手に持っているショットガン、『イサカM37』の引き金を引いた。『イサカM37』から、散弾が発射される。小室は体全体にのし掛かる反動を抑えた。使いはじめて一週間も経っていないが、小室にとって、相棒のようなものだ。外すわけにはいかない。だが、ハンターにすんなりと避けられた。必中距離のはずだが、小室はハンターの知能と敏捷性を甘くみていた。  

「クソ!」

 次弾を装填するために、ハンドグリップを素早く引いた。ジャコン、と気持ちいい音が鳴り、空薬莢を排出され、弾丸が薬室に装填される。

 ――次は外さない! 

 再びハンターを狙おうと、銃口を正面に向けるが、そこにはハンターの姿はなかった。

「孝! 上よ!」

 宮本の掛け声により、反射的に空に銃口を向ける。小室の目には、右腕を突きだし、空気を遮りながら真っ直ぐ小室の元へと落ちてくるハンターの姿をしっかりと捉えていた。引き金を引くよりも、体が防御の体勢になる。ショットガンを横にして上に突き出す。ハンターの攻撃をがっちりと受け止めるが、衝撃によって地面に叩きつけられた。

「かハっ!」

 鈍い痛みが背中を襲う。だが、今の小室はハンターの腕を抑えるので精一杯だ。そして、ハンターの左腕が空高く振り上げられた。直ぐにでもその左腕は小室の首を刈ろうとする勢いだが、その腕は毒島の居合い斬りによって切断され、地面に落ちた。ハンターの切り口からは、大量の血が噴き出す。

「小室君、無事か!?」

「何とか……!」

 小室は毒島の手を掴み、立ち上がった。

「――危ない!」

 ハンターは右腕を切断されても尚、倒れずに残った右腕で毒島に襲い掛かる。だが、その手前でハンターの頭は、宮本の銃剣付き『M4A1』によって貫かれた。

「お二人さん、油断はしないことね」

「反省しときます」

「互いにカバーしよう。一人で戦わないことだ」

 小室は十五メートルほど先にいるハンターに向かって発砲した。命中するが、致命傷は負っていない。ハンターが怯んでいる隙に毒島と宮本は一気に駆け寄り、その緑の体を突き、そして斬った。

 一体一体倒すのに手間がかかり、戦闘力が高い。小室は、リョウが小室たちを連れていきたくなかった理由を納得した。

(こんなバケモノを今までリョウは相手にしてたのか)

 今は自衛隊が戦っているおかげで、ハンターの大部分は彼らによって処理されているが、もし、小室たちだけで戦っていたとしたら、囲まれ、既に殺されていただろう。

「小室!」

 リョウの声がした。見ると、リョウはハンターを蹴散らしながら駆け寄ってくる。木刀でハンターの攻撃を受け流し、頭を叩き割る。複数体がリョウに襲い掛かるが、苦もせずに五秒ほどで叩きのめした。

「香月とか先生はどこにいるんだ?」

「先に避難してもらったよ。高城のお父さんにアンブレラの研究所に向かったことを聞いたんだ」

 そう話している間にもハンターは襲い掛かるが、リョウは閃光のような斬撃をハンターの胴に喰らわせた。

「んじゃ、皆無事なんだな!?」

「ああ! 僕と麗の親も無事だ。それと先生の友達とも合流したよ。今は上のヘリで狙撃をしてくれてる!」

「それを聞いて安心したよ!」

 リョウは俊足の駆け足で、ハンターを倒しながら戻っていった。

「あいつ……人間か?」

 小室の口から、ついそんな言葉が漏れた。 

 

 

 

 

 リョウSIDE

 

「どうだった? 友達全員無事だって?」

「ああ。ちゃんと親孝行も出来たんだってよ!」

 俺とレオンさんは互いに背中を預けながら次々と襲い掛かるハンターを倒していく。

 体はまだ痛むが、ちゃんと動けるようになった。流石は俺の回復力だ。

 襲い来るハンターの顔面をぶん殴って吹き飛ばす。レオンさんはハンターの頭を銃で撃ち抜く。

『オオオオ!』

 ネメシスが吠える。

「バケモンは俺たちをお呼びのようだが?」

「じゃあ行くとするか」

 ダガーナイフを出し、ネメシスに投げつける。深々と刺さるが、大して効いていない。レオンさんも銃で攻撃するが、これも効かない。

「レオンさん、どうすんの?」

「逃げるか?」

「それはない」 

 俺はネメシスにナイフを投げ続ける。ネメシスもやられっぱなしではいられないようで、壊したヘリのドアを引きちぎり、投げつけてきた。

「しゃがめ!」

 とっさにしゃがんで回避したが、後ろから短い悲鳴が聞こえた。背後に自衛隊員がいたようだ。だが、俺たちは振り返らない。ナイフを投げながら少しずつ距離を詰める。

 ネメシスは焦れったいのか、俺たちの元に走ってきた。腕から飛び出している触手を使い、俺たちに振り回してくる。

「来たぞ!」

 ローリングで回避し、肥大化した胴体を木刀で叩きつける。バキッ! とネメシスの骨ではなく、木刀が折れた。レオンさんはナイフと蹴り技で同時攻撃するが、ネメシスはビクともしない。俺も回し蹴りを放つ。丸太を蹴ったような感触があった。

 ネメシスが振り回した触手に当たり、レオンさんは吹き飛ばされ、壊されたヘリに背中を激突させる。

「離れるんだ!」

 自衛隊のヘリが近づき、アサルトライフルでドアから援護が入る。ほとんど命中するが、それでもネメシスは動じない。

『オオオオ!』

 ネメシスはヘリのテールロータを引きちぎり、攻撃しているヘリに投げる。テールロータは回転しながら操縦席へと突き刺さり、コントロールを失ったヘリは落下、研究所に突っ込んで爆発した。

 俺は周りの状況を確認した。小室たちは生き残っている。だが、地上に降りた自衛隊は、十五人から六人に減っていた。そこらに、人間の首が落ちている。ハンターに殺られたのだ。

「こんな奴を逃がすわけにもいかないし――」

 その時、空から大量の弾丸がネメシスへと降り注いだ。

『待たせたな、リョウ!』

 その声はクリスさん本人だった。ヘリを操縦している。そして、機関銃を撃っているのは――

「クレア!?」

「約束したでしょ!? 必ず助けにくるって!」

 いや、嬉しいなぁ。本当に助けに来てくれるなんて。

 クレアはネメシスに集中砲火に、流石にヘリの機関銃には勝てず、ネメシスは倒れた。

「目標の殲滅を確認!」

 どうやらハンターも倒し終わったみたいだ。

 クリスのヘリが着陸する。

「怪我人はこっちに乗せてくれ!」

 俺はレオンさんを担ぎ、自衛隊のヘリに乗せる。

「全く、それでも見習いエージェントか?」

「油断は禁物だな」 

「こっちにはもう乗れない。君はあのヘリに乗ってくれるか?」

「オーケー」

 俺はクリスさんのヘリに乗った。

「ありがとう、クリスさん、クレア。わざわざ日本に来てくれるなんてな」

「あなたなんて、私を助けに南極まで来たじゃない」

 あ、そうだった。 

「飛ぶぞ」

 ヘリは飛び立つ。 

 研究所から五百メートルほど離れて、俺はポツリと言う。

「終わった……」

 瞬間、弾丸の雨がヘリに襲い掛かってきた。

「何だ!?」

「これを見て!」

 双眼鏡を見ると、ネメシスがガトリングガンを自衛隊や俺たちのヘリに撃ち続けている。

「あいつ、まだ生きていたのか……!」

 しかも、ガトリングガンに予備があったとは。五百メートル離れているといっても、数発は既にヘリに当たっている。

「あんな化け物野放しにしておくわけにもいかないな。リョウ、そこにロケットランチャーがあるだろ?」

 ロケットランチャーが立て掛けられている。

「いくらなんでも化け物と離れすぎよ!」

「いや、リョウなら当てられる」 

 ネメシスとは五百メートルほどの距離が空いている。

 俺はロケットランチャーを肩に担ぐ。初めて持ったが、結構重いもんだ。

 ドアを開ける。

 撃てるかどうかは分からない。銃もクロスボウも生物を狙って引き金が引けないんだ。だが――

「やってやるよ」

 風向や風速を肌で感じる。ヘリは空中で停止することなど出来ない。ネメシスとの距離を詰めることも出来ない。ガトリングガンを避けるために揺れる。こんな状態で五百メートル先にいる豆粒のような奴にロケット弾を当てることなど、普通なら不可能だ。

 頭をフル回転させ、ネメシスに必中させるためにあらゆる計算を尽くす。

「ここだ!」

 俺は引き金を引こうとするが――

「ぐっ!?」

 激しい頭痛に襲われ、何かの映像が脳裏でフラッシュバックする。

 見たことのない記憶だが、何故か懐かしいという感情もあった。誰かの体が真っ赤に染まる。誰かの体に注射が打たれ、その体はバケモノに変わる。

「あ、ああ……」

 俺の目からは涙が出ていた。これがどういうものかは不明だが、涙が止まらない。

「リョウ……」

 引き金を引こうとする指にそっと、クレアの手が重ねられる。温もりが俺の身体中を伝っていく。

「私が引き金を引くわ。リョウは狙って」

「……わかった」

 俺は左腕で涙を拭い、再度計算を開始する。

「今!」

 俺の指の上に置かれているクレアの指が動いた。シュコッと軽い音を出し、重いロケット弾が、計算された通りに空を駆け抜けていく。

「「いっけぇぇぇ!!」」

 豆粒ほどのネメシスは、ロケット弾が当たると思っていなかったのか、動かずにガトリングガンを撃ち続けていた。だが、俺の知能の方が上だ。俺が狙って、クレアが撃った弾丸だ。当たる!

 豆粒ほどネメシスはロケット弾に命中し、爆散した。双眼鏡で確認するが、辺りにあるのは肉片だけだ。

「やったのね……」

「ああ」

 夕暮れの空に民間人を乗せた三機のヘリが、関東の外へと向かう。

「終わった……」 

 俺は倒れこむように座った。クレアも隣に座り、温かいその手で俺の手を軽く握る。

 俺とクレアは沈み行く夕陽を、いつまでも眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 三章エピローグ

 

「リョウ!」

 ヘリから降りたとたん、香月が俺に飛び付いてきた。

「香月……」

 二日振りなのに、まるで何十年も会わなかったみたいに、懐かしい顔ぶれがそこにはあった。

 小室、宮本、毒島先輩、鞠川先生、平野、高城、ありす、ジーク……そして香月。

「なんか、このメンバーが揃うのって、めちゃくちゃ久しぶりに感じるな」

 本当に、誰一人欠けないでよかった。

 結局、ディルク・ミラーを逃がしてしまったが、俺は諦めない。アルバート・ウェスカー、ディルク・ミラー、利用されたアンブレラ……例え時間が掛かろうとも、必ず潰す。

 そう、あの日の決意を胸に……

 

 

 

 

 

 

  

 

 




……なんだこれ?

次回、四章か、主人公たちの日常の番外編

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