バイオハザード~破滅へのタイムリミット~   作:遊妙精進

20 / 117
19話 研究所

「で、アンブレラの研究所に行けばいいのか?」

「はい、お願いします」

 俺は、ヘリのパイロットにお願いした。

 俺たちはヘリに乗って、アンブレラ研究所へと向かっている。

「それにしても、何でレオンさん日本に?」

 自分の意思で俺を助けにきたというわけではないだろう。訓練中の見習いエージェントだしな。

「任務だよ。お前、国連の試験に合格してんだろ? 未成年でも車の免許が取れるやつ」

「大体合ってるよ」

 その試験は、世界でも百何人しか合格していない。それに合格すると未成年の俺でも、国家資格を取ることが出来る。俺が持っている国家資格は……数え切れないや。

「そんな優秀な存在を見殺しにするわけにはいかないってことで、リョウの元には俺が派遣されたんだ。知り合いだから、信用しやすいとかなんとか」  

「政府は俺のことを知ってんのか?」

「ああ。ラクーンシティを脱出したことも、クレアの時にアンブレラの施設に行ったことも知ってるよ。流石はアメリカだな」

「ねえねえ。二人だけで話を進めるのは止めてよ」

 記者さんが、俺の肩を叩いた。

「そうだな。自己紹介をしよう。俺はレオン・S・ケネディ、アメリカ合衆国の見習いエージェントだ」

「私はレベッカ・チェンバースよ」

「私は佐藤リコ、記者をやってましたー。というわけで一枚」

 パシャッと、記者さんはレオンさんをフィルムカメラで撮った。

「使うなよ。どうしてもって言うんなら、大金を払って貰うことになるぞ」

「んもー、わかってるわよ。見習いエージェントさん♪」

 レオンさん……この人はこういう性格だ……

「そろそろ着くぞ」

「で? 目的は?」

「この事件の真実。やっぱり、アンブレラが関係してんだよな?」

「さぁな。俺は聞かされていない……が、その可能性が高いな」

「電磁パルスを起こさせた理由は?」

「それも聞かされていない」

 まぁ、見習いだしな。 

「ほんと、それが謎よね。何のためにしたのか……検討もつかないわ」

「アンブレラが関わってるかもな」

「着いたぞ」

 研究所が下に見えた。

「あれは……?」

 研究所の駐車場には、他にもヘリが止まっていた。自衛隊のヘリだ。

「何故自衛隊がいるの?」

「さぁな。直ぐに分かることさ」

 俺たちはヘリから降り、自衛隊のヘリの中を確認する。

「誰もいないな」

「ああ。全員研究所に入ったのか?」         

「こっちにもいないわ」

 止まっているヘリは全部で五台。パイロットもいない。

『ここで止まっておくからな。直ぐに戻ってこいよ。怖いから』

 合衆国のヘリのパイロットは陽気そうに言った。

「じゃあ、行くとするか」

 俺たちは武器を構え、既に開けられている研究所の扉へと入る。電気が使えないので、中は真っ暗だ。 

「暗いな。全員これをつけろ」

 レオンさんから貰ったのは、イヤーライトだった。

 耳に付け、辺りを照らす。

「人の気配はないか……」

 自衛隊員はどこに言ったんだ?

「一年前の事を思い出すわ」

「洋館事件?」

「ええ。その前にもトラウマがあるのよ。元軍人さんと一緒に乗り越えたけどね」

 進んで行くと、二つの分かれ道があった。

「さて、チーム分けをするか」

 話し合った結果、俺とレベッカ、レオンさんと記者さんで分かれることになった。

「じゃ、幸運を」

「そっちも」

 俺とレベッカは右へと進む。

「ねえ、リョウ。レオンとはどういう関係なの?」

「ラクーン事件の時の命の恩人?みたいなもの。直ぐに離ればなれになったけどな」

「レオンもリコも大丈夫かしら?」

「ラクーンシティを脱出したレオンさんだ。記者さんのこともバッチリ守ってくれるよ」

 進み続けると、床に無線機が落ちていた。俺はそれを拾う。

〈誰か誰かいないのか!? 助けてくれ!! 誰か!! あ、ああ、ギャアアアア!!〉

「おい、大丈夫か!? どこにいる!?」

 通信は途絶えてしまった。

「ヤバそうね」

「非常にな」

 進み続けると、開いているドアがあった。俺はその中に入る。

「あれ?」

 入ってすぐ、足場がないことに気が付いた。

「う、うわあああああ!?」

 俺は下へ落ちていく。よく考えてみれば、エレベーターのドアだったじゃないか! 何てまぬけなんだ。 

 俺は壁を蹴り、梯子へとしがみついた。

「ふう……」

 九死に一生を得た。マジで怖かった~。

「リョウ!? 大丈夫!?」

「な、なんとか。地下に続いているようだ。レベッカも来てくれ」

 俺は梯子を降りていく。無線機が落ちていたということは、こっちに誰か来たのはまちがいないはずだ。電磁パルスせいで、エレベーターが使えないのでドアをこじ開けて、下に降りていったのだろう。

 

 

 

 

                    ☆

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 何分経過しただろうか。梯子を降りても降りてもゴールが見えない。一体地下何階まであるんだ? 

 それでも降り続けると、やっとゴールが見えてきた。

「やっとね」

「……ああ」

 やっぱりここのエレベーターのドアもこじ開けられていた。

「腕も足も痛いわ」

「俺もだ」  

 自衛隊員もここを降りてきたのか。帰るのもめんどくさそうだ。いや、絶対めんどくさい。

 それにしても、ここは何故か電気が点いている。地下深くだから、電磁パルスを避けられたのだろうか。

「う、うぅ……」

 誰かの呻き声が聞こえてきた。俺たちは走る。

 その先には、自衛隊員が何人も倒れていた。

「おい、大丈夫か!?」

 俺は生きている隊員に駆け寄る。酷い出血量だ。長くはもたないだろう。

「君たちは……?」

「俺の事はいい。ここで何があった!?」

「爬虫類のような緑の化け物が……」

 爬虫類のような緑の化け物? ハンターの事か。

「う、…………」

 隊員は、息を引き取った。

「レベッカ、他は?」

「ダメ、全員死んでるわ」

「そうか……」

 ハンターがいるということは、この研究所でB.O.W.の研究をしていたことは間違いなさそうだ。

「ハンターがいるかも。気を付けて」

「シャアアア!」

「言った矢先かよ!!」

 ハンターが二体、飛び出してきた。

「右は私が!」

「オーケー!」

 俺は、ハンターの突きだし攻撃を避け、その腕を掴んで、肘を足に落とす。肘の骨が折れ、俺はその折れた腕を振り回して壁に叩きつける。そして、とどめに顔面にナイフを刺した。

「流石ね。クリスが誉めていただけことはあるわ」

「レベッカもな」

 レベッカも既にハンターを倒していた。  

 進んで行くと、ハンターが何体も出てくるが、俺たちにはハンターは通用しない。出ては殺られ、出ては殺られの繰り返しだった。

 しばらく進むと、円形の白いホール出た。

「ここは?」

 がしゃんと、俺たちが入ってきたドアが閉められた。

『只今より、B.O.W.の戦闘実験を開始します』

 アナウンスが流れる。

「戦闘実験って、ここでするの!?」

「そうみたいだな」

 奥の扉から、ハンターが三十体以上出てくる。 

「キツくなりそうね」

 レベッカは、ハンターの群れに銃を向ける。

「全くだ」

 俺は、ダガーナイフを出し、投げる。

「シャアアア!!」

 何体かに刺さるが、致命傷というほどではない。

「レベッカ! 援護を頼む!」

「分かった!」

 俺は木刀を二本だし、構える。

 次々と襲い掛かるハンターの体を、木刀で破壊していく。レベッカは、行動不能になったハンターの頭をマシンガンで撃ち抜く。

 俺にもレベッカにも、ハンター程度今さらなんだというぐらいに、簡単に倒していく。

 残り十体ほどなると、俺は腰から手榴弾を取り出し、ピンを抜いてハンターの群れの真ん中に投げつけた。

「レベッカ、伏せろ!」

 床に這いつくばり、手榴弾の爆風に耐える。起き上がり辺りを見回すと、ハンターは肉片となって全滅していた。

「やったな、レベッカ」

「ええ」

 B.O.W.の実験は終わったよ。早くこの部屋から出してもらいたいところだが……

『驚いたよ』

 スピーカーから、男の声がした。

「リョウ、あそこ!」

 レベッカが指を差したところを見ると、上に長方形の鏡があった。マジックミラーになっているのだろう。声の主の顔は分からない。

『自衛隊十人でも、倒せたのは五体だ。それなのに、君たちは二人で三十五体も倒した。流石は元S.T.A.R.S.のメンバーに、ラクーンシティを脱出した者だけのことはある』

 この男は俺たちの事を知っている。アンブレラの幹部なのだろうか。

「アンタは何者だ?」

『ディルク・ミラー、と言っても分からんだろうな。君たちに因縁深い人物の部下だよ』

 俺達に因縁深いといえば……

「「アルバート・ウェスカー!!」」

 これは、ウェスカーの目的なのか?

「関東でバイオテロを起こしたのもウェスカーか!?」

『いいや、ウェスカーでも私でもない。アンブレラ・ジャパンの人間だよ。間接的には私たちが起こしたとも言えるがね』

「何でそんなことを……?」

『ラクーン事件、あれは致死性のウイルスがラクーン全体に広まったことにより、アメリカの手によって滅菌作戦が行われた。世間にはそう報道された。もちろん事実は違う。君たちが知っている通りだ。だが、ラクーンの生存者が、いくら世間に真実を伝えようとしても、ほとんどは信じない。死者が動き出すなんて、ファンタジーの世界だ。実際には死んではいないが』

「それで? アンタは何が言いたいんだ?」

『これほどのバイオテロを起こすとどうなるかね? ラクーンの生き残りは少なかったが、ここは日本の関東だ。四千万人が全員死ぬことなどありえない。そして、生還したものは世間に真実を語る。ラクーンのときよりも桁違いの数の人間がな。そうするとどうなる?』 

「ウイルスによって、ゾンビを作れるようになる。その事を知ったテロリストや反政府軍が、そのウイルスを購入する」

『そうだ。要は、t-ウイルスのプレゼンテーションなのだよ。大規模のね』 

「イカれてるわ」

「俺もそう思うね」

 t-ウイルスを売り出すために、こんなに人を殺したっていうのか……。

『生物兵器の効果は絶大だからな。テロリスト共がこぞって欲しがるだろう。しかも、そのウイルスに感染したものは、動き出すという特典つきだ』

 確かに、致死性のある細菌兵器をばらまくのと、t-ウイルスをばらまくのとでは、威力が全然違う。なんたって、感染者は動き出すんだからな。あれ? でも……

「〈奴ら〉は、t-ウイルスとは違う症状だぞ? 視覚も嗅覚もない」

 〈奴ら〉が反応するのは音だけだ。

『まぁ、それは私も驚いたよ。日本人や中国人がt-ウイルスに感染すると、そうなるようだな。しかも、感染率が百パーセントだ』

 何だよ、新種のウイルスかと思ってたよ。て、それだと……

「俺も噛まれたんですけど……」

 噛まれたのにゾンビになっていないんですけど。日本人は感染率百パーセントじゃないの?

「…………」

『…………』

 いや、テメーまで黙んなよ。

『君、日本人じゃないんじゃない?』

「俺は純日本人だ。……多分だが」

 目が赤色ってこと以外は日本人だよな? 祖父母も曽祖父母も知らないから、何とも言えないんだけど。でも、両親は日本人だったしな。目は赤くなかったけど。

『……時間を使いすぎたな。では、この辺でお別れだ。最後にささやかなプレゼントあげよう』

 扉が開いた。

「おいおい、マジかよ……」

「あんな化け物が……」

 扉から出てきたのは、三体のネメシスだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




雑ゥ!!

あとちょっとで三章終わります

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。