「生き残ったのはこれだけか……」
俺たちは、死に物狂いで戦い、気が付けば、隣家に到着していた。
生き残りは俺たちも含め、十六人だ。残っているのは、銃を手にしていた高城の家の部下がほとんど。
「何とか生き残れたわね……」
「流石に疲れたな」
俺もレベッカも記者さんもボロボロだ。
「それにしても……」
隣家は、前と比べると小さいものの、充分なでかさだった。
「君は確か……黒瀬君だったか?」
「あ、はい」
高城の父親が近づいてきた。やっぱり迫力がある。
「仲間と共に行かなくて良かったのか?」
「はい、俺は行くところがあるんです。アイツらは親探しがあるので、俺だけが無理を言って別行動をさせてもらったんです」
「行くところとは?」
「……アンブレラの研究所です」
「ほう……君は、私の知らないことを色々と知ってそうだ。それに、その赤い目」
「俺の目……?」
「今までいくつもの試練を乗り越えてきたのだろう? 君の目は闘志に燃えているよ」
本当に凄いな、この人は。人の目を見ただけで……
「ありがとうございます。では、俺たちは行きます」
「休んでいかないのか?」
「はい」
「では、生きていたらまたいつか会うとしよう」
「はい!」
俺たちは歩き出した。
☆
「それにしても、レベッカも記者さんも強いんだな」
レベッカは元S.T.R.A.S.だから、強いとは思っていたが、まさかナイフ無双をするとは……。記者さんも記者さんで、空手でゾンビを倒していた。
「私は空手の黒帯だからね」
二人とも強いと安心だ。いや、小室たちの時も安心だったよ?
「そういえば、カメラは? やっぱり壊れちゃったんですか?」
「ふふ、これを見よ!」
記者さんがバッグから取り出したのは、フィルムカメラだった。
「よく持ってましたね……」
「記者だからね」
記者でも、フィルムカメラを持ち歩いている人は少ないと思う。
☆
「ここが俺の家だ」
「マンションね」
俺たちは、一日掛からず俺が住んでいたマンションに着くことが出来た。しかし、もう夜だ。
マンションの自動ドアの隙間にナイフをこじいれ、開ける。
「真っ暗だな」
マンションの中は真っ暗だ。電気が使えないから仕方がないっちゃあ仕方がないが。
「はい、これライト」
俺は記者さんからライトを受け取り、目の前を照らす。
「ところで、君の家は何階?」
「……二十六階」
エレベーターは、当然使えない。階段を使って二十六階まで行く必要がある。
音を出さずに階段を昇っていく。
ゾンビの声は聞こえてこないが、突然現れてもおかしくないのだ。警戒はしとかないと。
「いたわ……」
ゾンビが一体、階段を昇っていた。
俺はゾンビの後ろのゆっくり近付き、頭を掴んで首の骨を折った。活動を停止したゾンビをゆっくり床に倒す。
「行こう」
それからは、ゾンビに会うことはなく、俺の部屋がある二十六階に着くことが出来た。
俺は、自分の部屋の前で止まり、ポケットから鍵を出す。音を出さないようにドアを開けた。
いつものように、電気のスイッチを押したが、電気が使えないことを思い出し、落胆した。
「真っ暗ね……」
「大丈夫、電池式のガーデンがある」
俺は、壁に掛けられてある電池式のガーデンのボタンを次々と押していく。
「これで良いだろ」
薄暗いが、はるかに見えやすくなった。
「今日はここで休憩ね。ベッドある?」
「ああ。この部屋を使ってくれ」
案内したのは、両親が使っていた部屋だ。いつも綺麗にしてある。
「キングサイズのベッドだから、二人はここで寝てくれ」
☆
俺はベランダに出て、インスタントラーメンを食べる。
もちろん電気もガスも水も使えないので、ペットボトルの水だし、カセットコンロを使って温めた。
「リョウ……」
レベッカが、ベランダにやって来た。
「その……リョウの両親は?」
「死んだよ。四年前に」
「……ごめん」
「いや、いいよ。もう昔の事だし」
「両親は何の仕事をしていたの?」
「二人とも科学者だったよ」
あれ? そういえば、何の科学者だったんだろうか? 思い出せない。
「こんなときに聞くのもあれだけど、リョウは何になりたいの?」
「うーん、特には……アメリカのエージェントになろうかな」
レオンさんと同じ道でも辿ってみるか? 冗談だが。
「私は、先生になりたいの。もちろん、アンブレラへの追及も続けるわ」
「そうか……」
☆
早朝、俺たちはアンブレラの研究所に行く準備をし始めた。
「必要な物は全部リュックに入れてくれ」
まあ、防災グッズがちょうど三つあるから、それほど手間は掛からない。四年前の物だが。賞味期限は過ぎていないだろう。水も乾パンも五年は持つと言うし。
「通帳いる。中学の卒業アルバムいらない。ロレックスの腕時計……いる」
必要な物をリュックに入れ始める。
「リョウくん、この写真は?」
記者さんが持ってきたのは、死んだ両親と俺が一緒に写った写真だ。
「それも……持っていきます」
「これって、リョウ?」
レベッカが持ってきたのは、俺が知らない小さいアルバムだった。
「どこでこれを?」
「ベッドの近くに壁絵が飾ってあったでしょ? その絵を外したら、これが落ちてきたの」
なんだそりゃ?
俺はアルバムを受け取り、中身を見る。
「これは!?」
そのアルバムの写真は、クセッ毛の赤ちゃんが、今は亡き両親に抱っこされていたり、おもちゃで遊んでいるものだった。
「これって、リョウくんよね?」
「多分……」
確かに、この赤ちゃんの顔は、俺に面影がある。だが、瞳が黒なのだ。俺の瞳は赤色である。
「日付は……俺が生まれてから二年間のものか……」
日本人って、瞳の色が変わるもんなの?
「リョウに兄弟は?」
「……いない」
実は双子がいたとか? うーん、分からん。
「これって、リョウくんが中学生の時のアルバムよね?」
記者さんは、俺がいらないと判断した中学生アルバムを取り、開いた。
「この時は目が赤ね。小学生の頃のアルバムは?」
「小学生の頃は……あれ?」
俺って、どこの小学校に通ってたっけ? というか、小学生の頃の記憶が全くないな。今まで何で気にならなかったんだ?
「全然わからんのだけど、今は急ごう。早く準備を終わらせよう」
分からんものを考えても仕方がない。脱出出来たら、香月に聞くとするか。
俺は必要な物を全部入れた。
「さ、銃を拝見するとしますか」
俺は、タンスを開ける。中には、銃と弾薬、クレア救出の時に使っていた装備などが入っている。
「スゴいわね……これは短い警棒?」
記者さんは、短い棒を持った。
「それは、スタンバトン。改造しているんで、人も殺せます」
俺は学ランを脱ぎ捨て、ダガーナイフが三十本付けられている服を着る。
「好きなのを取ってくれ」
俺はハンドガンと改造スタンガンを取った。
記者さんはアサルトライフル、ショットガン、スタンバトン、レベッカはマシンガンとスナイパーライフル、スタンガンを取る。そして、全員が手榴弾を一つずつ。
俺の装備は、クレア救出の時と大差はない。左太股には、香月に渡したハンドガンの代わりにスタンガンを装備している。
「いやー、ほんと、近接戦って感じね」
記者さんが俺の装備を見て言った。
「まぁ、ナイフを投げて攻撃するんで、足手まといにはなりませんよ」
準備が整い、全員リュックを背負う。
「さて、行くとしますか」
と、そう言った直後、外からバラバラとヘリのプロペラ音がしてきた。
「ヘリ!?」
「救助か!?」
俺たちは急いでベランダに出る。
「すげぇ……」
外には、今まで見たことないくらいのヘリの隊列があった。
「自衛隊ね」
そして、そのヘリから大量の自衛隊員が街へと降りていく。
「やっと救出作戦かよ……」
自衛隊の作戦は、人命の救出、ゾンビの排除だろう。
「どうする? ヘリで研究所まで送って貰う?」
「それが一番良いだろうな」
俺たちは、その場から動こうとしたが、ベランダに一機のヘリが近づいてきた。
「乗ってくか?」
金髪のアメリカ人の男はヘリのドアを開け、俺たちに姿を見せた。
「久しぶりですね、レオンさん」
その男は、アメリカのエージェントになるため、修行中のレオン・S・ケネディだった。
明日も投稿予定?