バイオハザード~破滅へのタイムリミット~   作:遊妙精進

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18話 帰宅

「生き残ったのはこれだけか……」

 俺たちは、死に物狂いで戦い、気が付けば、隣家に到着していた。

 生き残りは俺たちも含め、十六人だ。残っているのは、銃を手にしていた高城の家の部下がほとんど。

「何とか生き残れたわね……」

「流石に疲れたな」

 俺もレベッカも記者さんもボロボロだ。

「それにしても……」

 隣家は、前と比べると小さいものの、充分なでかさだった。

「君は確か……黒瀬君だったか?」

「あ、はい」

 高城の父親が近づいてきた。やっぱり迫力がある。

「仲間と共に行かなくて良かったのか?」  

「はい、俺は行くところがあるんです。アイツらは親探しがあるので、俺だけが無理を言って別行動をさせてもらったんです」

「行くところとは?」

「……アンブレラの研究所です」

「ほう……君は、私の知らないことを色々と知ってそうだ。それに、その赤い目」

「俺の目……?」

「今までいくつもの試練を乗り越えてきたのだろう? 君の目は闘志に燃えているよ」

 本当に凄いな、この人は。人の目を見ただけで……

「ありがとうございます。では、俺たちは行きます」

「休んでいかないのか?」

「はい」

「では、生きていたらまたいつか会うとしよう」

「はい!」

 俺たちは歩き出した。

 

 

 

                   ☆

 

 

 

「それにしても、レベッカも記者さんも強いんだな」

 レベッカは元S.T.R.A.S.だから、強いとは思っていたが、まさかナイフ無双をするとは……。記者さんも記者さんで、空手でゾンビを倒していた。

「私は空手の黒帯だからね」

 二人とも強いと安心だ。いや、小室たちの時も安心だったよ?

「そういえば、カメラは? やっぱり壊れちゃったんですか?」

「ふふ、これを見よ!」

 記者さんがバッグから取り出したのは、フィルムカメラだった。

「よく持ってましたね……」

「記者だからね」

 記者でも、フィルムカメラを持ち歩いている人は少ないと思う。

 

 

 

 

                       ☆

 

 

 

「ここが俺の家だ」

「マンションね」

 俺たちは、一日掛からず俺が住んでいたマンションに着くことが出来た。しかし、もう夜だ。

 マンションの自動ドアの隙間にナイフをこじいれ、開ける。

「真っ暗だな」

 マンションの中は真っ暗だ。電気が使えないから仕方がないっちゃあ仕方がないが。

「はい、これライト」

 俺は記者さんからライトを受け取り、目の前を照らす。

「ところで、君の家は何階?」

「……二十六階」

 エレベーターは、当然使えない。階段を使って二十六階まで行く必要がある。

 音を出さずに階段を昇っていく。

 ゾンビの声は聞こえてこないが、突然現れてもおかしくないのだ。警戒はしとかないと。

「いたわ……」

 ゾンビが一体、階段を昇っていた。

 俺はゾンビの後ろのゆっくり近付き、頭を掴んで首の骨を折った。活動を停止したゾンビをゆっくり床に倒す。

「行こう」

 それからは、ゾンビに会うことはなく、俺の部屋がある二十六階に着くことが出来た。

 俺は、自分の部屋の前で止まり、ポケットから鍵を出す。音を出さないようにドアを開けた。

 いつものように、電気のスイッチを押したが、電気が使えないことを思い出し、落胆した。

「真っ暗ね……」

「大丈夫、電池式のガーデンがある」

 俺は、壁に掛けられてある電池式のガーデンのボタンを次々と押していく。

「これで良いだろ」

 薄暗いが、はるかに見えやすくなった。

「今日はここで休憩ね。ベッドある?」

「ああ。この部屋を使ってくれ」

 案内したのは、両親が使っていた部屋だ。いつも綺麗にしてある。

「キングサイズのベッドだから、二人はここで寝てくれ」

 

 

 

                    ☆

 

 

 

 俺はベランダに出て、インスタントラーメンを食べる。

 もちろん電気もガスも水も使えないので、ペットボトルの水だし、カセットコンロを使って温めた。

「リョウ……」

 レベッカが、ベランダにやって来た。

「その……リョウの両親は?」

「死んだよ。四年前に」

「……ごめん」 

「いや、いいよ。もう昔の事だし」

「両親は何の仕事をしていたの?」

「二人とも科学者だったよ」

 あれ? そういえば、何の科学者だったんだろうか? 思い出せない。

「こんなときに聞くのもあれだけど、リョウは何になりたいの?」

「うーん、特には……アメリカのエージェントになろうかな」

 レオンさんと同じ道でも辿ってみるか? 冗談だが。

「私は、先生になりたいの。もちろん、アンブレラへの追及も続けるわ」

「そうか……」

 

 

 

 

                    ☆

 

 

 

 早朝、俺たちはアンブレラの研究所に行く準備をし始めた。

「必要な物は全部リュックに入れてくれ」

 まあ、防災グッズがちょうど三つあるから、それほど手間は掛からない。四年前の物だが。賞味期限は過ぎていないだろう。水も乾パンも五年は持つと言うし。

「通帳いる。中学の卒業アルバムいらない。ロレックスの腕時計……いる」

 必要な物をリュックに入れ始める。

「リョウくん、この写真は?」

 記者さんが持ってきたのは、死んだ両親と俺が一緒に写った写真だ。

「それも……持っていきます」

「これって、リョウ?」

 レベッカが持ってきたのは、俺が知らない小さいアルバムだった。

「どこでこれを?」

「ベッドの近くに壁絵が飾ってあったでしょ? その絵を外したら、これが落ちてきたの」

 なんだそりゃ?

 俺はアルバムを受け取り、中身を見る。

「これは!?」

 そのアルバムの写真は、クセッ毛の赤ちゃんが、今は亡き両親に抱っこされていたり、おもちゃで遊んでいるものだった。

「これって、リョウくんよね?」

「多分……」

 確かに、この赤ちゃんの顔は、俺に面影がある。だが、瞳が黒なのだ。俺の瞳は赤色である。

「日付は……俺が生まれてから二年間のものか……」

 日本人って、瞳の色が変わるもんなの? 

「リョウに兄弟は?」

「……いない」

 実は双子がいたとか? うーん、分からん。 

「これって、リョウくんが中学生の時のアルバムよね?」

 記者さんは、俺がいらないと判断した中学生アルバムを取り、開いた。

「この時は目が赤ね。小学生の頃のアルバムは?」

「小学生の頃は……あれ?」

 俺って、どこの小学校に通ってたっけ? というか、小学生の頃の記憶が全くないな。今まで何で気にならなかったんだ?

「全然わからんのだけど、今は急ごう。早く準備を終わらせよう」 

 分からんものを考えても仕方がない。脱出出来たら、香月に聞くとするか。 

 俺は必要な物を全部入れた。

「さ、銃を拝見するとしますか」

 俺は、タンスを開ける。中には、銃と弾薬、クレア救出の時に使っていた装備などが入っている。

「スゴいわね……これは短い警棒?」

 記者さんは、短い棒を持った。

「それは、スタンバトン。改造しているんで、人も殺せます」

 俺は学ランを脱ぎ捨て、ダガーナイフが三十本付けられている服を着る。

「好きなのを取ってくれ」

 俺はハンドガンと改造スタンガンを取った。

 記者さんはアサルトライフル、ショットガン、スタンバトン、レベッカはマシンガンとスナイパーライフル、スタンガンを取る。そして、全員が手榴弾を一つずつ。

 俺の装備は、クレア救出の時と大差はない。左太股には、香月に渡したハンドガンの代わりにスタンガンを装備している。

「いやー、ほんと、近接戦って感じね」

 記者さんが俺の装備を見て言った。

「まぁ、ナイフを投げて攻撃するんで、足手まといにはなりませんよ」

 準備が整い、全員リュックを背負う。

「さて、行くとしますか」

 と、そう言った直後、外からバラバラとヘリのプロペラ音がしてきた。

「ヘリ!?」

「救助か!?」

 俺たちは急いでベランダに出る。

「すげぇ……」

 外には、今まで見たことないくらいのヘリの隊列があった。

「自衛隊ね」

 そして、そのヘリから大量の自衛隊員が街へと降りていく。

「やっと救出作戦かよ……」

 自衛隊の作戦は、人命の救出、ゾンビの排除だろう。 

「どうする? ヘリで研究所まで送って貰う?」

「それが一番良いだろうな」

 俺たちは、その場から動こうとしたが、ベランダに一機のヘリが近づいてきた。

「乗ってくか?」   

 金髪のアメリカ人の男はヘリのドアを開け、俺たちに姿を見せた。

「久しぶりですね、レオンさん」

 その男は、アメリカのエージェントになるため、修行中のレオン・S・ケネディだった。 

 

 

 




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