バイオハザード~破滅へのタイムリミット~   作:遊妙精進

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14話 銃

「もう無理……」

 俺は、部屋に用意されているベッドにダイブした。

「はは、そんなに疲れてたのか?」

「そりゃな。走って戦って……そんな事してたら疲れるさ」

 

 俺たちは、何とか無事に、鞠川先生の友達のマンションに着く事が出来た。マンション内にも〈奴ら〉が大勢いたが、俺たちに除去された。小室と宮本もいたので、ものの十分程度で終わった。やっぱり、戦える人が多いと楽だな。

 そんで、俺たちは今、鞠川先生の友達の部屋で一休みってわけだ。女性陣は只今、皆仲良くお風呂に入っています。

 

「せーのだぞ、平野」

「うん。せーの」

 小室と平野は、バールで鍵が掛かっているロッカーを開けた。

「お、本当に銃があったぞ」

 ロッカーの中には、三つの銃が入っていた。先に開けた右のロッカーには、クロスボウと大量の弾薬が置いてある。

「うおおおおお!!」

 平野はロッカーの中にある銃を手に取り、何やら説明し出した。寝たいので聞かないが。

 

 

 

 

                    ☆

 

 

 

「黒瀬も弾を入れるの手伝ってよ」

「めんどくさいなぁ……」

 文句を言うが、俺は渋々手伝う。

「エアソフトガンで勉強したのか?」

「いや、本物だよ、本物。ブラックウォーターで習ったんだよ」 

「へぇ、そりゃすげぇ」

 ブラックウォーターといえば、アメリカで超有名な軍事サービスの会社だ。

「それにしても、何者なんだよ、静香先生の友人ってのは」

「SATの隊員って言ってたけど」

「警察なら何でもアリかよ……」

 一体どうやって手に入れたんだろうな。俺はアンブレラの監視者から奪ったが、友達さんはやっぱり買ったんだろうな。俺が買えたのは、ハンドガン二丁とショットガンと手榴弾だけだ。思ったよりも高いんだもん。

 とまぁ、俺たちはごく自然に、他人の銃を借りパクしようとしているわけだ。銃を持っていくことには俺も賛成だがな。全員の火力が上がるし。……俺は上がらんけど。

 俺は弾を詰めるのに飽き、バルコニーに出て、双眼鏡で人が大勢避難している橋の上を確認する。

「ひでぇな……」

 人であったものが、人を食らい続けている。そして、食われた人も人ではなくなっていく。人が大勢いるので、〈奴ら〉も大量に集まるのだ。

 橋では、そのような事が起きていた。しかし、橋の真ん中には警察官や避難した一般人が大勢いる。

「突破されんのは時間の問題か?」

 日本の警察に〈奴ら〉を抑え込めるとは思えない。警察だけならまだマシだろうが、一般人がいるからな。〈奴ら〉に危害を加えると文句を言う奴が現れそうだ。

 橋の上の双眼鏡で見て回ると、気になるものを見つけた。

 大勢の一般人が集まり、旗や紙を掲げて何やら抗議をしているように見える。

「小室、テレビを付けてくれ」

 近くにカメラとニュースキャスターらしき人がいるから、多分テレビで流れているとは思うが。

「付けたぞ」

 俺は部屋に戻り、テレビを見る。橋の上の状況が中継されていた。

 ふむふむ。なるほど。

 どうやら、一般人が集まり、警察に向かって〈奴ら〉を傷付けるなと言っているようだ。この事態の仕業は政府とアメリカが共同開発したウイルスだって。

 ほう、中々的を射ているじゃないか。〈奴ら〉を傷付け無いことには賛同できないが。もう治せないし。

「何言ってんだよ! 死体が動いて人を襲うなんて、そんなの科学で出来るもんじゃないだろ……」

 小室が呟いた。

「いや、〈奴ら〉は死んでないよ。前頭葉が破壊され、食欲に飢えてるだけさ」

「どういう事だ?」

「あの姿のなると、胃の中の消化が急激に早くなって、常に強い空腹感があるんだ。前頭葉が破壊されてるから、物事の判断も出来なくなり、その強い空腹感を抑えようと人を食らうようになる」

 と、一通り説明した。全部クリスさんとジルさんから聞いたことだが。

「それって、黒瀬の妄想?」

「断じて違う。俺はこの一年間、〈奴ら〉を相手にしてきたんだ。高城が言ってたろ? ラクーン事件の事を」

「じゃあ黒瀬は、ラクーンシティに?」

「ああ。いたよ。仲間と共に脱出した」

 あの日の出来事は、一日足りとも忘れはしないし、忘れる気もない。

「〈奴ら〉を治す方法は?」

「ない。脳が破壊されてるんだ。脳ミソを取っ替えるってんなら治せそうだけどな。現状無理だ」

 死体が動くなんて事があってたまるか。

「…………」

「…………」

「…………」

 ……黙んないでよ。

「いや、何かビックリだ。とんでもないことも打ち明けられてさ……」

「嘘を言ってるようにも見えないしね」

「ま、別に信じなくてもいいよ」

 信じても信じなくても〈奴ら〉を殺すことに代わりはない。〈奴ら〉が生きてようが死んでようが、俺は生きるために殺すし、戦う。

「腹が減った。下で何かを食べてくるよ」

 俺が階段を降りようとすると、ちょうど、バスタオル一枚だけの鞠川先生とすれ違った。俺には気付いていなかったようだ。

 キッチンでは、裸エプロンの毒島先輩が料理を作っていた。

「あ、黒瀬君、お風呂上がったから入ってもいいぞ」

「はい、後で入ります」

 俺は冷蔵庫からプリンを取り出す。

「あ、リョウ……」

 香月の声がし、振り向くと、下着姿の香月が立っていた。

「香月もプリン食べるか?」

「あなた……男としてそれはどうなの……?」

「え? 何が?」

 プリンって女は食べないの?  

「女の子の下着姿よ!! 普通なら『うわああ、すみません!』て顔を真っ赤にさせながら言うでしょ!」

「そうなの?」

 何で謝らないといけないんだ? 故意で見たのなら謝るけど、その姿で歩き回ってるわけだから、俺のせいじゃないと思うのだが。

「リョウ……あなたはいつか女に刺されるわよ」

「んーまぁ、あるかもなぁ」

 男になら刺されたことが何度もあるし。

 俺はその場でパパッとプリンを食べ、容器をゴミ箱に捨てた。

「じゃあ俺は使える武器探しでもするよ」

「銃はあったんでしょ?」

「あったけど……ほら、俺は生きてる生物には使えないんだ」

 ほんと、何でだろうな。そこらに、撃ったら爆発するドラム缶でもあれば、俺だって銃を使えるんだけどな。

「そういえば、自衛隊の人たちは何をやってるんだろうね。ヘリならたくさん見るけど」

「関東中でこんなことが起きてんだ。最優先なのは要人の救出だろうな。それが終わったら一般人の救出も始まると思うが……」

 だが、東京だけでも要人はわんさかいる。救出作戦が始まるとしても、あと三日以上は掛かるだろう。関東の人口は四千万人だが、その三日の間でほとんどの人間は〈奴ら〉になってるんじゃないかな。

 

 

 

 

                    ☆

 

 

 

 風呂にも入り、家中で使える武器を探しいると、二階の方から銃声が聞こえてきた。

「小室、どうしたんだ?」

 小室が、学ランを着て、降りてきた。毒島先輩と宮本も集まる

「女の子を助けに行く」

「なら、私たち三人は門の方で見張っておこう」

 俺たちは外に出て、門を開ける。

 小室は、バイクに乗って門から出ていった。

 平野がライフルを撃っているので、銃声で〈奴ら〉が何体か集まってきた。

「よし、やるぞ!」

 小室が帰ってくるまで、ここは死守しなければならない。 

 俺は飛び出し、バールで〈奴ら〉の頭を叩き潰していく。

 あ、そういえば、使える武器はサバイバルナイフ二本、あとはアイスピックとかレンチとかを見つけた。

「不味いな……」

 小室が乗っていたバイクのエンジン音で、〈奴ら〉が大量に小室の元へと集まってきている。

「ちょっと、何の騒ぎよ」

 高城が降りてきた。

「小室が女の子を助けに行くって、飛び出していったよ」

「うわ、すごい数ね。アイツ、戻ってこれるの?」

 流石に……無理か。

「俺にここは任せて、逃げる準備をしてくれ」

「ま、確かにこんな騒ぎを起こしといて、ここに居れるはずもないわ」

 女性たちは戻り、準備をしにいった。

 俺の傍らには、鞠川先生の友達の軍用車両、ハンヴィーがある。これなら〈奴ら〉の大軍にも突っ込める。小室を救い出せる。

 俺は近付いてきたゾンビを凪ぎ払い、頭を踏みつける。

「平野! 一通り終わったら、銃と弾をバックの中に詰め込んでてくれ!」

「了解!」

 バールを振って〈奴ら〉の頭を叩き潰していくと、手の汗で、バールが滑ってどこかに飛んでいってしまった。

「やべっ!」

 武器がなくなってしまった。しかし、〈奴ら〉はそんなこと構わずに襲い掛かってくる。

「この!」

 〈奴ら〉を蹴って、塀を追いやる。

「黒瀬、援護は!?」

「いらん!」

 〈奴ら〉を塀へと追いやると、頭を掴んで塀に叩きつけた。

 〈奴ら〉はあと五体。

「お願いだから噛まないでね!」

 俺は〈奴ら〉に殴りかかった。 

 

 

 




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