「リョウ、リョウ!」
「んあ?」
香月に起こされた。どうやら俺はいつの間にか眠っていたようだ。
外を見ると、俺たちが乗っているマイクロバスは渋滞で中々進めなくなっており、歩道には歩いて避難する人たちがたくさんいる。
「良く、この状況で寝られるわね」
眠たいからだよ。
「私たち、どうすればいいの?」
「小室たちと行動を共にするさ。町まで出ると、〈奴ら〉の数も桁違いだからな。小室たちの家族を助け終わったらすぐに逃げよう」
この地獄と化した町で戦えない女を一人で守り抜くことなど不可能だ。小室たちとの協力が必要である。
俺は携帯を見ると、圏外のままだった。この事は世界に報道されているのだろうか。もしされていたら、この圏外の携帯にはクリスさんやクレアから連絡が沢山あっているだろう。
……あいつら、日本まで来ないよな?
流石に付き合わせたくはないな。リスクが高すぎる。でもクレアが来そうだ。俺が危険な時に助けに来るという約束をしちまったからな。
「香月、俺、もうちょっと寝るから何かあったら起こしてくれ」
「えぇ!? ちょっ」
俺は意識を遮断させる。少し、寝たいんだよ。それと腹が減った。
あー、小室と宮本、無事だろうか。
☆
「コラ! 起きなさい!」
頭に鉄球が落ちてきた。と思ったら、高城の拳骨だった。
「え? なに?」
何故俺は殴られた?
「行くわよ。バスを降りるの」
「……オーケイ」
何やら俺が眠っている間に話が進んでいたようだ。
俺たちはバスを降りる。
だが、メンバーは少ない。紫藤組の奴らは付いてこないようだ。
ま、戦闘能力皆無な奴が多いし。それに紫藤、嫌だから別に良いんだけどな。
俺たちは今、小室と宮本がいないから、
前衛 毒島先輩、俺
後衛 平野、鞠川先生、高城、香月
まあびっくり。戦える奴が三人しかいない。
「で、これからどうすんだ?」
「アンタ、どこまで聞いてたの?」
「何にも聞いてなかったです」
「御別橋を渡って東署で小室たちと落ち合うのよ」
「なるほど」
でも、遠くね?
俺たちは東署がある方向へ進む。
「そういえば、何で黒瀬はグロック19を買ったんだ?」
平野が聞いてきた。
「そうだな……命が狙われてるから?」
「誰に?」
「……アンブレラ」
「はぁ? アンタ、寝言もそこら辺にしときなさいよ」
まぁ、信じないだろうな。
「こっちも色々とあったんだよ。アンブレラに命を狙われるくらいのな」
その事は、香月にしか話してないな。コイツらにもいつかは話さないと。
☆
「結局こうなるんだな!」
「文句も言ってられんさ!」
俺たちは、東署へ向かおうと行動したわけだが、ほとんどの橋は封鎖去れており、通る事ができなかった。何とか封鎖されていない橋を見つけ、渡ろうとしたのだが、〈奴ら〉に囲まれてしまった。
俺はナイフで〈奴ら〉の首を正確に斬っていくが、それでも数は減らない。増えていくばかりだ。
「きゃあ!」
俺は香月に近付く屍を蹴り、倒れたところで頭を踏みつける。
「戦えない奴は一ヶ所に固まっててくれ!」
女三人は戦えない。香月の銃もレクチャーしてなかったし。
「こんの!」
〈奴ら〉の顔面を殴り、倒れたところで頭を次々と踏み潰していくが……
「クソ! これじゃ消耗戦だ!」
「弾が切れます!」
放棄された車の奥から〈奴ら〉が次々と現れる。
「この!」
ダガーナイフを五本全部投げて五体の活動を停止させるが、それでも足りない。
「小室たちがいてくれたら……」
つい、言ってもどうしようもないことが口から漏れてしまった。
ブロロロロ!!
どこかから、バイクのエンジン音が聞こえてきた。
「この音は!?」
「バイクだ!」
バイクが俺たちの元に突っ込んできた。それに乗っている男女。
「小室、宮本!」
宮本はバイクから飛び降り、〈奴ら〉をリーチのある棒でなぎ倒す。小室は、バイクに乗ったまま、〈奴ら〉を轢き、行動不能にさせていく。
「平野、これを!」
小室は平野に回転式拳銃を投げ、平野はキャッチした。
「これなら!」
平野は次々と〈奴ら〉を撃つ倒す。
「奥からも来ているぞ!」
車が何台も止まっている奥から〈奴ら〉が溢れ出す。
「香月、俺に銃を!」
「分かったわ!」
俺は香月が投げた銃をキャッチし、狙って狙って、車の給油口に二発、撃った。
銃口から放たれた弾丸は、吸い込まれるように給油口へ飛翔し、鉄の蓋を貫いた。直後、車が爆発し、他の車にも引火して、大爆発を引き起こした。
「〈奴ら〉は全部倒したか……」
いや、まさか本当に爆発するだなんて。映画とかの演出だけかと思ってたぜ。
「ちょっと、黒瀬、危ないじゃない!」
高城がズンズンと近付いてきた。
「一気に倒せたからいいじゃないか。それよりもだ……」
小室にも宮本にも怪我はない。全員、無事に集まれた。
「で、どうするんだ。もうそろそろ日が沈む。この辺で休める場所あるか?」
「あ~! それなら私の友達のお家がこの近くにあるわ! 大きい車もあるの~」
「そうね。私ももうクタクタだわ。電気が通っている内にシャワーも浴びたいし」
俺も腹減ったしな。昨日から何も食べてないし。
「じゃあ、僕と先生でその家を確かめてくるよ」
小室と鞠川先生はバイクに乗って、その友達の家とやらのマンションを確かめに行った。
俺たちは、〈奴ら〉に見つからないように身を隠して、小室たちが戻るのを待った。
明日も投稿予定