転職活動や引越しなどで忙しく、更新が遅くなりました。申し訳ございません。
6月末までは暇なのでたくさん更新できればいいなぁと思ってます。
また後書きにお知らせがあります。
黒瀬はジュアヴォを倒しながら市庁舎へと向かう。
しかし、道中では敵の戦車が待ち構えていた。すぐに身を隠し、様子を窺う。
「クソ、これじゃ先に進めないな」
戦車の周りには、ジュアヴォが複数おり、銃を持っている者、手足が変異している者と、かなりの護衛がついていた。
周りの敵ならまだしも、黒瀬の武器では戦車相手にどうすることも出来ない。強いて言えば、二つ手榴弾があるが、こんな物じゃ大したダメージにもならないだろう。
どうにか手はないか。無視して別の道から進む方法もあるが、敵の兵器を放っておくとBSAAに更なる被害を及ぼす可能性もある。
黒瀬は「はぁ…」とため息をつき、覚悟を決める。
多少の無理や無茶なら今まで何度もやってきた。戦車との戦いは初めてだが、これまで戦ってきたBOWよりかは楽な相手のはずだ。
「やるしかないか……!」
黒瀬は手榴弾を一つ投げ、爆発と同時に飛び出す。黒瀬に気付いたジュアヴォたちが一斉に銃を向けた。
「うおおおおおおお!!」
雄叫びと共に刀でジュアヴォの銃弾を弾きながら進んでいくも、全ての弾を防げるわけではない。
直撃こそはしないものの、黒瀬の腕や肩、太ももに擦り傷が増えていく。
敵戦車も黒瀬に気付き、砲身を向ける。
(流石にあれは無理だ!)
黒瀬は横に跳ねるように飛んだ。直後、轟音と爆風が襲う。黒瀬が先程まで立っていた地面は戦車から放たれた榴弾で抉れていた。もし避けていなかったら木っ端微塵になっていただろう。
すぐに立ち上がろうとするも、足に激痛が走る。先ほどの爆発で大きな破片が脹脛に刺さっていた。
「っ痛……!」
痛みを我慢しながら破片を抜き取ると、血がどくどくと溢れ出てくる。破片は骨にまで達していたようで、傷から下は動かそうとしてもぴくりとも動かない。
黒瀬が動けないと気付いた変異ジュアヴォが近づいて来る。そのジュアヴォの腕は長い触手のように変異しており、黒瀬にその腕を伸ばした。
顔を掴まれた黒瀬は宙高く飛ばされ、そのまま地面にたたきつけられる。
「ぐぅっ!」
頭から流血し、視界が眩む。その隙にまたもやジュアヴォは触手で黒瀬の脚を掴んだ。
「そう何回もいくか!」
黒瀬は腰の短刀を抜き、触手を切った。そしてジュアヴォの頭に短刀を投げて倒す。
よろめきながら刀を構えて立ち上がる。足の傷はまだ再生仕切っていないが、それでも戦えないわけじゃない。
片足を引きずりながら前へと進む。ジュアヴォは手加減などするはずもなく、目一杯の弾丸を黒瀬に撃ち込んだ。それでも黒瀬を倒せず、彼の間合いに入ったジュアヴォは斬り裂かれていく。
再び戦車の砲身が黒瀬に向けられた。周りにはジュアヴォもいるが、奴らには味方意識などないだろう。すぐに砲弾を撃ち込んでくるはずだ。
黒瀬は近くのジュアヴォを砲身に向けて投げ付ける。その瞬間、砲弾が放たれて黒瀬の投げたジュアヴォに命中し、爆散した。
(あんな死に方はしたくねえな……)
自分でやったことにドン引きながらも、周りのジュアヴォを全滅させて戦車に向かって走り出す。足の傷は走れるほどには回復をしていた。
次の弾が装填される前に戦車に張り付き、そのままよじ登る。そして戦車のハッチを開けて中に手榴弾を放り投げた。
戦車の操縦席で爆発が起き、車体が一瞬ぐらりと揺れて、戦車は動かなくなった。
「ジュアヴォ……かなり厄介だな」
黒瀬は戦車の上に座り込み、傷が完全に癒えるのを待つ。
高い耐久力や変異能力を持った敵は今までもいたが、その上再生能力があったり、なんといっても変異のレパートリーが多い。これが一体、二体ならまだしも集団で、しかも兵器まで使ってくる。今まで戦ってきたガナードやマジニよりも手強い相手だ。
年々作られるウィルスやBOWは進化している。マルハワ学園では人をゾンビにさせるガスを放つBOWや、ザインという孤島で使われた一定以上の恐怖を感じると化け物に変異するt-Phobos。
どちらとも強力なウィルスで、マルハワ学園の事件ではBSAAの極東支部のエースであるメラ・ビジが死亡し、学園の関係者も全て亡くなった。ザインで行われたアレックス・ウェスカーによる実験では、島民は全員死亡し、実験のために連れ去られたテラセイブのメンバーもクレアと静香、モイラとありす、ナタリアを除き、亡くなった。その後行われたBSAAによる殲滅作戦にも多大な被害が出たと聞いている。
黒瀬を含め、BSAAの全員が世界のために戦っているが、それでもよくなる気配はない。それどころか酷くなっている。
(今こんなこと考えても仕方ないか……)
黒瀬が今こうして休んでいる間にも、多くの仲間が傷付き、倒れている。とにかく傷が癒えた今、彼に出来ることはただひたすら戦うことだった。
「おいおい、またやべーのが来たな……」
ジュアヴォを掃討しながら市庁舎を目指す黒瀬の前に、巨大な人型BOWが現れた。十メートルほどの巨体に、口は爛れ、背中からは心臓のようなものが露出している。その巨大なBOW──オグロマンは、近くにあった車を軽く持ち上げ、黒瀬に投げ付けた。
「うおっ!?」
黒瀬は間一髪で避けた。オグロマンは足下にいるジュアヴォを気にもせず、踏み潰しながら黒瀬に向かってくる。
あの巨体だからか走ることは出来ないようだが、その一歩はとても大きく、一歩歩くたびに地面が震える。黒瀬は昔アフリカで戦った巨大BOW、ンデスのことを思い出していた。しかし、奴とはサイズが違い過ぎる。黒瀬の持っている武器では太刀打ち出来そうにない。
建物からもジュアヴォが顔を出し、スナイパーライフルで黒瀬を狙う。また、設置されたターレットを使い襲いかかって来た。
「クソっ!」
黒瀬は物陰に身を隠そうとするも、その先にもジュアヴォの大群が。銃弾の嵐を掻い潜りながら建物の中に飛び込もうとするも、オグロマンがバスを投げ飛ばし、入り口を塞ぐ。
狙ってはいないだろうが、こちらとしては最悪の連携だ。
ジュアヴォとオグロマンに囲まれ、袋の鼠。黒瀬は後退りしながら刀を構えた。
ジュアヴォが一斉に銃を構え、黒瀬を撃ち抜こうとしたその時────
「撃てぇ!!」
男の掛け声とともに、複数の銃声が響き、ジュアヴォの大群を打ちのめしていく。
BSAAの隊員たちが展開し、黒瀬の周りのジュアヴォを倒した。
「リョウ、こっちだ!」
男は車に身を隠しながら、黒瀬を狙うジュアヴォを倒す。黒瀬も走ってそこに身を隠した。
「助かったよ」
「お前はいつも無茶をするな」
男は笑いながら黒瀬の肩を叩く。黒瀬の窮地を救ったのは、黒瀬の友人であり大切な仲間のパーカー・ルチアーニと彼の部隊だった。
「なんでパーカーがここに?」
「おいおい、俺は欧州本部の人間だぞ。イドニアでの作戦に参加するのは当たり前のことだろ」
「そうだったな」
パーカー・ルチアーニは、BSAAが今のように国連直属の組織になる前、民間組織だった時から所属している古株のベテランだ。その優秀さから一部隊の隊長を任されている。
「この前はクレアやありすが世話になったそうだな。礼を言うよ」
「トトーガ島での事件か……あの時は酷い目にあった。まだ傷も完全に癒えてないんだぞ」
パーカーは苦笑いで答えた。
『パーカー隊長! 指示を!』
インカムに彼の部下から通信が入る。今もジュアヴォの掃討が続いているが、巨大BOWのオグロマンはただひたすら暴れ続けていた。
隊員たちの銃でもオグロマンにとって豆鉄砲に過ぎない。あれを倒すには更に強力な武器が必要だ。
「巨大BOWの相手は俺とリョウでする! チームはジュアヴォの殲滅を続けろ!」
『了解!』
パーカーの部隊は相当精鋭揃いのようで、ジュアヴォを素早く倒していく。
「おいおいパーカー、あのデカブツを倒す手段があるのか?」
「ふっ、俺の背中にあるものが見えないのか?」
パーカーは黒瀬に見せつけるかように後ろを向いて、背負っている武器を親指で指す。それは対戦車兵器RPGロケットランチャーだった。
「なんでそんな都合の良い武器を持っているんだ?」
「……お前、ここに来る途中戦車を倒しただろ」
パーカーはジト目で黒瀬を睨む。黒瀬はパーカーが何を言いたいのか気付いた。
「もしかして、あの戦車を倒すために……?」
「そうだ! こっちには戦車を倒す武器がなかったから、一旦撤退して『こいつ』を取りに行ってたのに……戻ってみたら既に無力化されてやがる!」
パーカーは怒りで、黒瀬に唾がかかる勢いで声を荒げた。黒瀬は「まあまあ」と落ち着かせようとするが、収まることはなく、更に怒りがヒートアップしていく。
「もう少し組織の一員として自覚を持って欲しいものだな。オリジナル・イレブンは自分勝手が多過ぎる」
まるでオリジナル・イレブンの代表として怒られているかのようだった。確かにパーカーはBSAAに所属して以来、黒瀬と同じオリジナル・イレブンであるクリスやジルにも振り回されてばかりだ。
「ごめんよ、パーカー。でも結果オーライじゃないか。それであいつを倒せるんなら」
「……反省してないな」
パーカーもこれ以上黒瀬を怒る気になれなかった。戦車を倒す作戦を無駄にされたとはいえ、黒瀬の言う通り被害もなく、ここまで来れた上に、デカブツを倒せる武器まである。
「反省はしてるよ。だから俺が引きつける。パーカーはそいつで奴の頭を吹っ飛ばしてくれ」
「待て、リョウ!」
黒瀬はパーカーの静止を聞かず、刀を抜いてオグロマンへ駆け出す。
「……まったくあいつは」
パーカーはやっぱり自分勝手な黒瀬に呆れたように頭を掻いた。
『隊長、後ろ!』
部下から通信が入る。
パーカーは後ろから忍び寄ってきていたジュアヴォを蹴り倒し、手斧で頭を潰した。
「ありがとう。お前らはそのままジュアヴォの掃討を続けろ」
背負っているロケットランチャーを肩に担ぐ。
黒瀬は軽い身のこなしでオグロマンの攻撃を躱しながら、刀で脚を切り付けていた。だが、あの巨体には大したダメージはなく、やはり倒すにはロケットランチャーが必要だろう。
「リョウ、そいつの顔をこっちに向けてくれ!」
「オーケー!」
黒瀬はオグロマンの気を引き、パーカーの方へ走る。オグロマンも釣られてズシンズシンと地響きを鳴らしながら、黒瀬を追いかける。
オグロマンの顔がパーカーの方を向いた。パーカーは奴の顔面に狙いを定める。
「吹き飛べ!」
RPGの引き金を引くと同時に後方爆風が起きて弾頭が発射される。そのままオグロマンの顔面に直撃し、爆発した。
「やったか!?」
パーカーは用無しになった砲身を捨てる。倒せたとパーカーは安堵していた。
しかし、オグロマンは膝をつき、建物へと寄り掛かるだけで倒せてはいなかった。
「マジかよ……」
ロケットランチャーを使ってもなお倒せないオグロマンに、パーカーと彼の部下たちの頭に撤退の文字が過ぎる。だが、黒瀬はまだ諦めていなかった。
「まだだ!」
黒瀬は膝をついているオグロマンの背中に身軽に飛び移る。
狙うは背中から飛び出ている脈打つ臓器。これがデカブツの心臓のような役割を果たしているのだろう。
黒瀬はその周りに生えている棘のようなものを目一杯の力で引き抜き、生命器官に突き刺した。
オグロマンは雄叫びを上げながら一瞬立ち上がった。黒瀬はそのタイミングで飛び降り、オグロマンの動きを見る。
再び膝をついて四つん這いになり、ドロドロと蒸気を上げながら溶け始めた。
「やったな、リョウ!」
「ああ!」
パーカーと黒瀬は互いの腕をクロスさせて喜び合う。
「お前はいつも無茶をするな」
「それはお互い様だろ?」
こうして、犠牲者を出すことなく周りのジュアヴォも掃討し、黒瀬の目的地である市庁舎へ向かう。
市庁舎の前に辿り着いた一同。しかし、そこにはクリスたちアルファチームもジェイク、シェリーの姿もなかった。
黒瀬が到着する前にジェイクとシェリーはクリスの案内の下、ヘリに乗って既に出発したようでクリス率いるアルファチームが市庁舎に突入していると、HQから連絡が入った。
「分かった。これから俺たちもチームを率いて、市庁舎へ突入する。それでいいな、リョウ?」
「ああ」
黒瀬は静かに頷いた。シェリーと最後に話せなかったのは残念だが、今は任務に集中するしかない。
『現在アルファチームとの連絡が途絶している。中で新型のBOWも確認されている。気をつけてかかれ』
HQはそう言って連絡を切った。
黒瀬とパーカーは顔を見合わせる。
アルファチームはクリスをはじめ、コータと負けず劣らずの狙撃手ピアーズ・ニヴァンスなど、BSAAの中でも一際優秀な人材が揃っている。そんな彼らと連絡が取れないということは、中で何かあったのは明白だ。だが、クリスのことだ。その新型BOWにやられたということはないだろうが、気を引き締めてかからなくてはならない。
「全員集合! 準備が出来次第、市庁舎に突入し、アルファチームの捜索とBOWの殲滅を開始する!」
チームが集まり、突入前に各自武器の確認をする。
「新型BOWか……せめて何か特徴や特性を教えてくれても良いものの……」
パーカーはふとHQに愚痴を漏らす。黒瀬も同感だった。
戦う隊員の命が掛かっているのに、作戦本部は必要な情報を与えずに作戦の遂行をしろと言ってくる。隊員がどれだけの犠牲を払おうが、最終的に作戦が成功すればいいと考えているのだろう。
今のこの時代、バイオテロは世界中で起こっている。テロの被害者や犠牲者が多ければ多いほど、この狂った世界をどうにかしようとBSAAに志願する者は多い。どれだけ隊員が死んでも代わりの人間はいる。BSAAの上層部はそういう非情な考えの奴ばっかりだ。
「オリジナルイレブンさんよ、どうにかできないのか?」
「どうにかしたいのは俺も同じだ。でも、組織が大きくなり過ぎたせいで俺個人の言葉じゃどうにも出来ない。立場的にもHQの方が上だしな」
「そりゃ残念だ」
パーカーは本当に残念そうにため息をついた。彼も思うところがあるのだろう。彼が昔所属していた組織『FBC』に体制が似てきている。人が増えた弊害だろう。
「そういえば知ってるか、リョウ。カリフォルニアに出来たBSAAの新しい研究所の話」
パーカーは突拍子もなく、話す。
「そういう噂があるのは知ってるよ」
そう……噂だけだ。カリフォルニア州に新設された研究所は、詳しい場所や何を研究しているのか不明だ。
「元アンブレラの研究員が雇われているとか、人間に忠実なBOWを造る実験をしているっていう噂だぜ」
「ただの噂をだろ? それが本当だったら俺がBSAAを潰してやるよ」
昔BSAAがFBCをそうしたように、BSAAが兵器開発を行っている噂が事実ならば、断罪するのが正しいだろう。
「俺も信じたくはないがな。もう一つ噂があってそこに配備されている隊員は────」
ダダダダダダァン! と市庁舎の隣にある倉庫から銃声が轟き、会話は遮断される。
「隊長!」
「分かっている! お前ら休憩は終わりだ!」
一気に場に一緊張感が走る。
倉庫から出てきたのは気絶したクリスを引き摺るピアーズ・ニヴァンスと、強靭な外皮で全身を覆うBOW──『ナパドゥ』だった。
「ピアーズ!」
「リョウ! それにパーカーさんも!」
「隊員散開! ピアーズを援護しろ!」
パーカーも隊員もナパドゥに銃を放つが、その硬い外皮に全て受け止められ、通用しない。そしてナパドゥが巨大な腕を振り上げる。
ピアーズもなんとか抵抗しようとマシンピストルを連射するも──
「クソ、弾が!」
銃が弾切れし、反抗する手段がなくなる。ナパドゥの腕が今にもピアーズの頭に振りかかろうとしていた。
絶体絶命か、ピアーズは頭を守るように手を前に突き出し、目を瞑る。だが、彼に拳が振り下ろされることはなかった。
ピアーズは恐る恐る目を開けると、拳を刀で受け止めている黒瀬の姿があった。
「ピアーズ、無事か! クリスは生きているんだろうな!?」
「え、ええ! ですが、他の隊員は全員そいつに変えられました……!」
「なに!?」
目の前にいるBOWがアルファチームの隊員だという事実を簡単には受け止めきれない。顔も身体も完全に化け物になっており、人間だった頃の面影は全くない。だが、ピアーズが言うのだから本当なのだろう。
「クソったれ!」
悪態をつきながらも、黒瀬は刀をナパドゥに向ける。
こうなってしまった以上、黒瀬たちに出来ることは、BOWとなってしまった彼等をあの世に送ってやる事だ。
「ピアーズ、クリスを他の隊員に預けろ! お前の武器が必要だ!」
「はい!」
黒瀬はナパドゥを斬りつけるも、やはり通用しない。こいつを倒すにはショットガンか、ピアーズの対物ライフルがいる。
部隊の衛生兵にクリスを預けたピアーズはライフルをナパドゥに向ける。
「……すまない」
化け物に変えられた仲間の顔が浮かぶ。それでもこうする他ない。
放たれた十二・七ミリ弾が外皮を砕き、皮下組織が露わになる。黒瀬はその頭にナイフを突き刺した。
「俺が殻を砕きます! そいつに一斉射撃をお願いします!」
ピアーズは反動が大きいその銃を一発も外さずに次々と外皮を砕いていく。そして、他の隊員たちは集中砲火で一体一体確実に倒していった。
頭に傷を負い、目が覚めないクリスはヘリで運ばれていく。ピアーズに聞くと、変異した隊員を撃つことが出来ず、何度も殴られて気を失ってしまったらしい。
黒瀬は膝をつき、化け物にされた隊員たちの死体を見ながら、苛立ちをぶつけるように地面を殴る。
「いったい誰がこんなことを……」
焦燥感に苛ませる黒瀬にピアーズが近づく。
「エイダ……エイダ・ウォンと名乗る女に……仲間は……フィンは……!」
ピアーズが崩れるように膝をつく。彼の目は少し潤んでいた。
「エイダ……ウォン……?」
黒瀬は知っているその名前に驚きを隠せなかった。
お知らせになります。
既に13章に入ってしまっているわけなのですが、時系列を戻して番外編4をやりたいと思っています。と言っても前に話していたマルハワデザイアやリベレーションズ2の話ではなく、12章から13章の間の各キャラクターたちの日常(?)や主人公や小室たちがまだ高校生だった時の話をやりたいと思っています。
そう思い至った経緯としては、15章、最終章には今まで登場してきたほとんどのキャラクターが出てくるのですが、今までオリ主中心の話だったため、サブキャラクターの出番やその後どうなったのかほとんど分からずになっています。ですので、番外編4でそこら辺を明らかにするのと、ただ私が日常回をしてみたかったというのが理由です。
一応今の時点では、平野コータとピアーズの話、マヌエラのその後、高城両親とありすのその後、ジルのリハビリ話などをしたいと思っています。また、〇〇と〇〇の絡みや話を書いてほしいという要望があるのなら、できる限り答えていきますので、よろしくお願いします。
番外編4が一区切りしたら13章を再開しますが、その後も要望があるのならエピソードを番外編4に追加するかもしれません。13章を楽しみにしていた方は申し訳ございません。