バイオハザード~破滅へのタイムリミット~   作:遊妙精進

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今回から学園黙示録編です。
実は、がっこうぐらし!と学園黙示録、どっちにするか悩みましたが、話の作りやすさでこちらにしました。
バイオキャラも出る予定です 


3章 黙示録
10話 学園


 あれから四ヶ月が経った。

 ロックフォート島や南極の基地の事件は、世間に報道されることはなかった。アンブレラが揉み消したのだろう。

 今もなお、アンブレラはアメリカ政府と裁判を続けている。

 ああ、そういえば、俺がアンブレラに監視されている件。監視している奴を突き止め、牢屋行きにしてやった。銃を持っていたからね。仕方ないね。

 

 

 

 季節は春、もう四月だ。時間が経つのは早く、あと何日か経てば、クリスさんとジルさんに会って一年ということになる。

 春休みは、ヨーロッパに行き、アンブレラが飼っているハンター共を殺したぐらいだ。あんな殺人兵器をほったらかしにしとくわけにはいかないんでね。

 まあ、そんなこともあり、俺は進級、二年生になったわけだ。十二月はほとんど無断欠席をしていたが、留年にならずにすんだ。

 で、俺はいつもの通り、授業を寝て過ごしているわけだが……

『全校生徒に連絡します。只今、校内で暴力事件が発生中です。全校生徒の皆さんは、先生の指示に従い、速やかに避難してください』

 と何とも物騒な放送が流れてきた。

 校内で暴力事件? 不審者が校内で暴れまわってんの? なにそれ怖い。

 皆の様子も俺と同じ感じで、緊張感というものは何もない。そりゃそうだ。教師がいる。体育教師は決まってムキムキだ。そいつの迫力で何とかなるだろ。

 だが、その次がいけなかった。

 キィィンと、耳につんざく音。

『や、やめてくれ!! 痛い!! 助けてくれ! ギャアアアアア!!』

 と、マイクから教師の断末魔。どうやらただの不審者というわけじゃなさそうだ。

「う、うわああああああああ」

 同じクラスの生徒の一人が叫び、教室を飛び出すのように出ていった。

「きゃあああああ!」

「にげろおおおおおお!」

 他の生徒も、先に飛び出した生徒に続き、濁流のような勢いで、教室を叫びながら出ていった。

「何故そうなる!?」

 教室には俺一人がポツンと残された。いや、確かに放送室にいた教師が何者かに襲われた事実はあるわけだが、それでも今のように全員がパニックになるだなんて……

 あ、俺がおかしいだけか。異常者だしな。

 俺は机に掛けているバッグを取り、その中からハンドガン、サバイバルナイフ、ダガーナイフ五本を取り出す。この装備は、いつでもアンブレラの奴らと戦えるようにするためのものだ。俺にまた監視者を送るかもしれないしな。

「用意周到だね」

 自画自賛を挟みつつ、教室を出る。

「リョウ!」

 俺に駆け寄ってくる人物がいた。俺の友人であり、マンションの部屋が隣同士の女。

「よお、香月」

 彼女の名前は、香月 彩(かつき あや)。流れるような黒髪ロングの高校二年生。同級生だがクラスが違う。

「て、その銃なに!?」

 驚くのも無理はない。俺の右手にはハンドガン、左手にはナイフが逆手で構えられている。

「さっさと移動しよう。不審者さんがここに来るかもしれない」

「いや、その銃を説明してよ……」

「安全を確保したらな」

 俺は警戒しながら進む。俺の手に握られている銃だが、もちろん俺は生きている生物には使えない。脅し用だ。

 銃が生物に使えない理由だが、俺にも分からん。撃とうという気はあるのだが、いざ、となると俺の指が拒否してしまう。物には撃てるんだがなぁ。

 階段まで行くと、信じられない光景が俺の目に写った。

「何よ、これ……」

 香月の声は震えている。

 階段の下には、五人の男女が倒れ込んでいた。頭から血を流して…… 

「皆が一斉に逃げ出した時に階段で押されたり、転んだりしたんだろうな……」

「そんな……」

 これ、全国で放送されるわ。多分、他の階段でもこんな目にあっている奴がいるんだろうな。

 俺は香月に待機の指示を出し、ゆっくりと階段を降り始める。

 倒れている生徒たちのところまで行き、生徒たちの様子を確認するが、ピクリとも動かない。五人全員死んでいるようだ。

「クソ!」

 こんなところで死人が出るとは…… 

「香月、いいぞ、降りてこ――」

「リョウ、後ろ!!」

 香月の声により、俺は反射的に前に飛ぶ。

「おいおい、マジかよ……」

 後ろを見ると、死んだはずの五人が立ち上がっていた。

「アアアアア」

「オオオ」

 と、呻き声にも似た声を発し、俺を掴もうとする。

 俺の頭は、一瞬思考が停止した。

 何でゾンビが……この日本に…… 

「リョウ!」

 香月の呼び掛けによって、俺は思考を再開する。

「本当に、ドッキリとかじゃねえんだな? 手加減はしないぞ……」

 ゾンビに反応はない。俺を食らおうとしてくるだけだ。

「なら!」

 俺は一番前にいたゾンビの腕を掴み、引っ張って階段から落とす。

「アアアアア」

「ほんと、何でこうなったんだよ……」

 俺はゾンビの顔に回し蹴りを喰らわす。二体のゾンビにヒットし、首の骨が折れる音が聞こえた。

 次に、ゾンビの首にナイフを刺して捻る。その間に近づいてくるゾンビを蹴り、怯んだところにダガーナイフを投げる。ナイフはゾンビの頭に刺さり、ゾンビは倒れた。

「香月、降りてこい」

 香月は俺の傍に近寄る。

「どういうことなの?」

「さあな」

 俺は、倒したゾンビからナイフを抜き取る。

「香月、これはお前が持て」

 ハンドガンを香月に差し出した。

「え? でもリョウは……」

「ナイフがあるから大丈夫だ」

 ゾンビに脅しは通じないしな。ゾンビを撃てない俺が持っていても意味はない。

 銃を香月の手に乗せる。

「わ、けっこう重たいのね。でも使い方が……」

「そうだったな。んー、まあ、コイツらが至近距離に来るまでは使わなくていいよ。俺が守るから」

「リョウなら信用しても良いわね。何か慣れてるし」

「そうかな」

 香月の方がよっぽど慣れてないか? 俺なんかラクーンシティでは、慌てふためいたのに。生徒が死んだんだぞ? しかも俺の手によって。

 いや、それよりも何でゾンビが……

 もしかしたら、アンブレラが俺を殺すためにと一瞬思ったが、さすがにここまでの規模のことはやらないだろう。それなら、遠くからライフルで撃った方が簡単だ。

 そういえば、日本にはアンブレラ・ジャパンがあった。大きな研究所もあったはずだ。

 もしかしたらそいつらが――!?

 いや、待て。まずはこの学校から脱出するのが優先だ。余計なことは考えないようにしよう。

「香月、行くぞ」

「うん」

 ゾンビは神出鬼没だ。香月から目を離さないようにしないと。

 この学校の生徒は六百人以上。今は、その半数以上がゾンビになっていると考えても良いだろう。

 さすがにそいつらを潜り抜けて、学校から抜け出すのは不可能だ。街もここと同じになっている可能性が高い。

「リョウ、どこに行くの?」

「職員室だ。誰かの車の鍵を取って、学校から脱出する」

 動きやすさを考えればバイクがいいか。だが、うちの学校にはバイクに乗って通勤する奴なんていないし、普通に考えれば、遠征用のマイクロバスか。あれなら人をたくさん乗せれる。 

「目的は決まったことだし、職員室に直行するぞ」

 この校舎からじゃ遠いな……

 

 

 俺は、心からこみ上がる心配を隠しきれなかった。

 ラクーンシティは、町と町が離れていたから、十万人という多大な被害者で……いや、その程度で済んだんだ。だが……俺たちが住んでいる町は違う。この市の人口は百万人、ラクーンシティの十倍だ。

 それに、市と市の間は、ラクーンシティのように離れていない。

 関東地方全部でバイオハザードが発生しているかもしれない。いや、そう考えて妥当だ。

 そんな地獄を……俺は香月を守り抜いて脱出するなど……

   

   

 

   

 




明日も投稿予定

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