「はっ!?」
気が付くと、アナウンスが流れていた。
『爆発まであと四分です。避難してください。繰り返します――』
何かよくわからんが、この基地はあと四分で爆発するようだ。
だが、クリスとクレアを探さないといけない。一人だけ逃げるわけにはいかないからな。
基地中を走り回ると、クレアが走ってきた。
「クリスさんは!?」
「ウェスカーと戦っているわ」
「そうか……クレア、戦闘機はすぐそこだ。待機しといてくれ」
「リョウはどうするつもりなの!?」
「ウェスカーをぶん殴る!」
俺はクレアが来た方向を進み、外に出た。
「クリスさん!」
そこには、クリスさんとウェスカーの姿があった。外は炎に包まれており、炎の向こう側にウェスカーの姿が見える。ウェスカーは、顔を抑えている。火傷したようだ。
「リョウ、行こう。もうそろそろ爆発する」
「でもウェスカーは?」
「あの炎じゃ近付けない。決着は今度着けるさ」
ウェスカーは俺を見て、にやりと笑う。
「リョウ、良い事を教えてやろう」
「なんだ?」
「お前の友人、クレアとレオンが助け出したシェリーという小娘……」
シェリー、ラクーンシティの外で会った少女か。クレアに聞いた話によると、G-ウイルスの影響で衰弱していったと聞いている。だが、レオンさんと一緒に政府に保護されたはずだ。
「まさか……」
「そうだ、既に我々の手の中にある」
政府の目を潜り抜けたのか……
「……取り返してやるよ。そしてアンタを倒す」
「やれるもんならな」
「行くぞ、リョウ」
もう爆発するまで時間がない。俺とクリスさんは急いで、この基地まで乗ってきた戦闘機の元へと向かう。
「兄さん、リョウ!」
俺とクリスさんは戦闘機に飛び乗った。
「ちょ、リョウ、狭いじゃない」
「しょうがないだろ、二人乗りなんだしさ」
俺は戦闘機の席をクレアと半分個にして使う。
「さあ、急ぐぞ」
戦闘機は、爆発ギリギリで飛び、俺たちがいた基地は吹き飛んだ。
戦闘機は北へと向かう。
「兄さん、もう危険な事をしないって約束して……」
「それは出来ない。俺にはアンブレラをぶっ潰す使命がある」
クリスさんはとっくに覚悟は決まっている。
「クレア、話さないといけないことがあるんだ」
「何?」
俺は、ウェスカーから聞いたシェリーの件を話した。
「そんな……まさかシェリーが……」
「俺は直ぐに探すよ。そこにウェスカーがいる可能性も高いからな」
学校をサボることになるが、それよりもウェスカーを倒すことが重要だ。ほっといたら、今回みたいにまたバイオハザードを起こすかもしれない。
「俺も行こう。クレア、シェリーはお前の友達なんだろ?」
「ええ。私も行くわ。兄さん、良いでしょ? シェリーは私の大事な友人よ」
「しょうがないな。止めても行くんだろ?」
「ええ」
メンバーは三人か。少ないな。
「クリスさん、クレア、どうせならもっと増やそうぜ」
一週間後、ある廃施設が爆発した。
その場から出てくるのは、男女六人の影。
「きつかったわね。人間だけなら良いけど、まさかB.O.W.までいるだなんて」
B.O.W.とは、ネメシスやハンター、タイラントなどの人為的に作られたクリーチャーを指す。その中にゾンビは入らない。
「結局、ウェスカーには逃げられたな」
「クソ! ウェスカーめ」
このメンバーは、全員俺が知っている人物だけだ。
クリスさん、クレアを始め、レオンさん、ジルさん、バリーさん、俺を含め六人だ。
クレアを救出した後、レオンさんに連絡を取って、アメリカ政府の力を借り、シェリーと、このメンバーの居場所がわかった。このメンバーのほとんどはウェスカーに恨みを持っているので直ぐに参加すると伝えられた。アリスさんとカルロスさんの協力も願いたかったが、残念ながら居場所がわからなかった。
そして、今回の作戦の要であるシェリーは、クレアに抱えられて眠っている。
「それにしてもよく参加できたな、レオンさん」
「かなり無茶を言ったんだ。政府は部隊を派遣すると言ったが、それじゃそのウェスカーって野郎には歯が立たないと思ってな」
「確かに」
ただの部隊がウェスカーに勝てるわけがない。それに、このメンバーだからこそ、シェリーを救えたんだと思う。
「だが……あの女はやはり……」
「レオンさん?」
「あ、いや、こっちの話だ」
レオンさんは今回の戦いで何か気になることがあったようだ。
「リョウ、そういえばまだ礼を言ってなかったわ」
クレアが駆け寄ってきた。その手にはシェリーが抱き抱えられている。
「礼?」
何か礼を言われるようなことしたっけ?
「私を助けに来てくれたでしょ?」
「あ、ああ」
まぁ、結局何も出来なかったが。
「リョウが危険な目にあったらどこにいても必ず助けに行くわ。それが私の恩返しよ」
「出来れば危険な目には会いたくないけどな」
「リョウ!」
クリスが俺とクレアの間に入ってきた。
(クレアに手を出すなよ)
(わ、分かってるよ)
全く……クレアはブラコンだし、クリスはシスコンだし、兄妹仲がよろしいことで。
「やるな、ボウズ」
バリーさんが俺の背中を叩いた。
バリー・バートンさんは、元S.T.R.A.S.のメンバーだ。家族と幸せに暮らしているらしい。
「鍛えてますしね。傭兵やハンター程度に負けてはいられません」
「良い根性だ」
根性があれば、銃弾ぐらい斬れるもんな。
「リョウ、やったわね」
ジルさんだ。ジルさんもヨーロッパでアンブレラの行動を探っていたらしい。
「ええ。でもウェスカーは……」
「大丈夫よ。私たちが決着をつける」
「任せます」
俺ではウェスカーに遠く及ばない。でも、クリスさんやジルさんなら……
「ところでリョウ、説教の事、覚えているかしら?」
「え……」
そういえば、次に会った時に説教されるんだった。
「俺、直ぐに日本に帰って冬休みの宿題をしないといけないんで、また今度!」
「ちょ、リョウ!」
俺はクリスさんの元へ駆け寄る。
「クリスさん、まだ戦い続けるんだよな?」
「ああ。アンブレラをぶっ潰して、ウェスカーを倒すまではな……」
俺も参加したいが、残念ながら学校がある。高校を中退するわけにもいかない。
「クリスさん、高校を卒業したら必ず合流します」
「期待してるよ。クロセ・リョウ」
この後、俺たちはバラバラになった。
クリスさんとジルさんはヨーロッパに残り、バリーさんは家族の元へ、クレアとレオンさんはシェリーを届けにアメリカまで、そして俺は日本へ。
誰も知るよしは無かった。
戻った日本で、ラクーンシティの再来が起こるなんて……
ラストにあるように、次の舞台は日本です。
最後に皆を集めた理由は……今後のために面識を持たせたかった。それだけです。
明日も投稿予定