バイオハザード~破滅へのタイムリミット~   作:遊妙精進

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初めましての方は初めまして。遊妙精進です。
実写映画とゲームをごっちゃにしますが、ストーリー自体はゲームです 



プロローグ
0話 S.T.A.R.S.


「いや~、すごいねぇ。本当に優勝しちゃうなんて」

 

 俺は、茶髪のセミロングの頭にサングラスを掛けた女性から褒められた。この女性の名前は聞いていない。随分と長い付き合いになるが、別に知っても知らなくてもどうでもいいからだ。

 

「はは、まぁこれでも三回優勝していますからね」

 

 使い慣れない敬語を何とか使う。歳上の人と話すときは普通敬語だが、いざ話すとなると、案外難しいものだ。

 一体何で優勝したかというと、アメリカの射撃大会である。俺は射撃が大の得意なのだ。

 長い休暇があると、いつもアメリカのどこかの町で射撃大会に参加する。今回はゴールデンウィーク、アメリカに射撃大会と観光目的で来た。メインは射撃大会である。

 

「それより早くラクーンシティに行った方が良いんじゃないですか?」

「そうね。君のバイクで送ってくれる?」

「嫌ですね」

 あからまさに嫌な表情をして言ったはずだが、彼女はものともしていない。

 

 彼女は日本の記者であり、雑誌の『アメリカ警察特殊部隊特集』の取材でわざわざアメリカまでやってきたのだ。ゴールデンウィークも仕事とは……大人って大変なんだな。

 

「もう! リョウくんのケチ」

「はいはい」

 

 リョウ、というのは俺の名前で、フルネームは黒瀬 涼(くろせ りょう)。日本の高校一年生だ。自分で言うのもアレなんだが、不良生徒である。

 

「それにしても、剣道、柔道、空手、合気道に加えてまさか射撃まで上手いとはね。これは特大スクープものですぞ」

 

 はぁ、うざい。

 いや、まぁ、俺の運が悪いのがいけないんだよ。まさかアメリカ行きの飛行機で隣同士になるとは……。前から知り合いだったせいで絡まれて射撃大会にまで付いてくるし。

 

「あの、早く行ってください。何でしたっけ? そうそうS.T.A.R.S.の方を待たせてしまいますよ」

 

 ラクーンシティの警察の特殊部隊の名前がS.T.A.R.S.というらしい。ラクーンシティはここから近くにある街だ。薬品製造企業アンブレラ社の工場で街が発展したらしく、郊外にあるアークレイ山地で有名だったな。今度暇があったら行ってみるか。

 

「ふふん、大丈夫よ。こちとら何年記者をやっていると思うのよ。遅刻なんて絶対にしないわ」

「そうですか」

 

 こちらとしては今すぐにでもどこかに行ってほしいんですけどね。

 

「なあ君、クロセ」

 

 背後から誰かに話しかけられた。

 見ると、この大会準優勝のクリス・レッドフィールドさんが立っていた。

 

「はい?」

「クロセはここら辺に住んでいるのか?」

「いえいえ、日本ですよ」

 

 日本の東京ですよ。

 

「そうか。日本にも凄い子供がいたもんだな」

「はあ」

「俺はクリス・レッドフィールド。ラクーンシティで警察の特殊部隊をやっている」

 

 あらら、警察の方でしたか。て、ラクーンシティ?

 

「本当!?」

 

 記者さんがレッドフィールドさんに飛び付いた。

 

「S.T.A.R.S.のクリス・レッドフィールド!?」

「ああ、そうだが。……まさか日本から取材に来るっていう記者は……」

「もちろん私よ!!」

 

 

 

                    

 

 

 

「ほうほう。なるほどねえ」

 

 レッドフィールドさんは記者さんに猛烈な取材を受けている。場所は近くのファーストフード店。何故か俺まで付き合わされる始末である。俺の折角の予定が大狂いだ。

 レッドフィールドさん曰く、『取材と射撃大会が被っていたし取材が面倒だったのでほとぼりが冷めるまでこの街で時間を潰そう』と思っていたらしい。そこを運悪く記者さんに見つかってしまったというわけだ。うん、半分俺のせいだな。

 

「これで取材は終わりです! ありがとうございましたー!」

「はあ、疲れた」

 

 レッドフィールドさんは背もたれに背を預け、頼んだコーラを一気に飲み干した。よっぽど取材が嫌いなのか?

 

「それにしても空軍に所属していたなんて」

 

 取材中にわかった出来事だ。

 

「ああ。軍でも一般の大会でも射撃の腕は良い方だと思っていたんだがな。まさか日本の高校生に負けるとは思っていなかった。それで少し話を聞こうとしたらこの様だ」

「そりゃ残念」

 

 半分じゃない、完全に俺のせいだな。取材から逃げようとしたこの人が悪いんだが。

 

「ふふふ、私は運が良いわ。ラクーンシティまで行かなくても取材が済むだなんて。後は観光を楽しむだけね」

 

 本人の前でなんつーことを言いやがるんだ。

 俺は残っていたコーラを一気飲みする。飲み終わると、突如ババババ!! と何発もの銃声が店内に響いた。

 

「キャー!!」

「ウワー!!」

 

 店にいる店員や客が叫ぶ。

 

 特に驚いていない俺は上着の中に手を入れ、黒塗りのサバイバルナイフを取り出す。えっ?何で持っているかって? そりゃアメリカは危険だからね。今まで何回撃たれたことやら。

 

「てめえら!! 静かにしろ!!」

 

 銃声を響かせた犯人たちが姿を見せた。

 全員で五人。五人とも覆面を被っており、その手にはマシンガン、胸にはナイフ、腰には手榴弾をつけている。

 

「てめえら、金を出せ! 抵抗すると撃つぞ!」

 

 ああ、怖い怖い。これだからアメリカは……日本でも同じことあるな。違うところと言えば、銃が全部本物なとことか。日本はナイフとか本物だとしてもハンドガン程度だが、こちらは簡単に手が出せないような武器となっている。

 

 どうやら強盗は二人がレジ担当。他二人が客担当、もう一人が見張りのようである。

 客担当の二人は、客のバッグごと取り、黒い袋の中に入れていく。客からも金を取るなんて何て奴等だ。

 まあ、流石に銃持ち五人が相手だと俺だけじゃ無理だ。日本だったら銃が偽物とかあるけど、アメリカじゃ銃を手に入れるのは簡単だからな。全部本物だろう。

 

 俺は強盗たちを威嚇させないようにナイフを上着の中に戻した。

 

(あいつらは巷で有名の強盗団だ。店と客両方から金を奪い取り、最後は店内に手榴弾を投げるくそ野郎共だよ)

 レッドフィールドさんが小声で話す。

(じゃあ私たちは金を取られる挙げ句、殺されるかもしれないってこと?)

(まあそうだな)

 

 ……もう馴れたが毎度毎度、運が悪いな。つい最近日本で銀行強盗に襲われたばっかだぞ。俺の運の悪さは世界一位なんじゃないかと本気で思う。

 

(リョウくん、何とか出来ないの?)

(無理。銀行強盗のときは銃が本物じゃないってわかったから良いけど、こっちは全部本物だ)

 

 しかも俺の武器はナイフだけ。ナイフが五本もあれば良かったんだけど。

 

(クロセ、戦えるか?)

(ええ。それなりにね)

 

 そういえば、こっちには元空軍で今は警察の特殊部隊の男がいるじゃないか。

 

(今から言う作戦、危険度は大だが、手榴弾で死ぬよりかはマシだろ) 

(従いますよ。こっちも日本でやり残したことがたくさんあるので死ねませんからね)

 

 

 

                  

 

 

 

 作戦その一、俺たちの金を奪いにくる二人を俺が相手をする。

 作戦その二、その間にレッドフィールドさんが自分の銃でレジにいる二人を撃つ。

 作戦その三、見張りを撃つ。

 うん、良い作戦だ。大分ざっくりしてるけど。

 こっちは日本で何度も死闘をしているんだ。相手が軍人じゃなければ接近戦で負けなし、強盗さんも軍の訓練を受けているとも思えない。

 

「おい、バッグか財布を出せ」

 男二人が俺たちのテーブルまで来た。一人の男は袋を俺たちに突きだし、もう一人は、俺たちがていこうできないように銃を構えている。

 記者さんはバッグを黒い袋の中に入れる。

 

「お前らもだ」

 

 その瞬間、レッドフィールドさんから膝をつつかれた。

 よし、ボコるぞー。手加減は無しで。

 

 俺は財布を渡す動作をしながら、上着の中に手を入れる。

 そして、黒い袋を持っている男の顔に財布をヒュッと投げ、上着から取り出したナイフで銃持ちの男の利き手を斬り上げる。

 

「ぐっ」

「げっ!?」

 

 背後から椅子が倒れる音。レッドフィールドさんが立ち上がったんだろう。

 

 銃持ちは利き腕を斬られたせいで銃を手から放し、床に落とす。俺はナイフをバッグの男の太ももに刺し、ナイフから手を離して、銃を落とした男の胴体に両手のラッシュを加える。

 

 ナイフを刺された男の叫び声とともに、乾いた二発の銃声がすぐそこから聞こえた。レッドフィールドさんの射撃の腕ならたかが十数メートル、外すことはない。実際に射撃大会でその腕を見せてもらった。確信している。

 

 男にラッシュを加え終え、胸ぐらと腕を掴み、足を押さえている男の方へと背負い投げ。足を押さえている男は八十キロほどの体重に押し潰され、意識が飛んでいった。

 

 ちょうどその時、またもや背後から銃声が一発。見張りを撃ったのだろう。男の短い悲鳴が聞こえた。

 

「ふう、これで終わり? 増援とか来ないよね?」

「ああ。こいつらは五人グループだからな。被害者を出さずに良かったよ」

 

 安堵の息を吐く。レジの方をを見ると、呆然とした店員と、床には強盗三人が仲良く呻き声をあげながら痛みで苦しんでいた。

 

「アメリカの警察はよく殺すと思ってたけど」

「確実に皆を救うためなら殺した方が良かったんだがな。君もいるから大丈夫かと思った。結局は死刑だろうが」

「いやー、やっぱりリョウくんはすごい! ヒーロー!」

 

 記者さんは笑いながら肩を叩いてきた。……この人本当に日本人か? 普通ならキャーキャーギャーだろ。まぁ、叫ばない方が、うるさくなくていいけど。

 

 

 

                    

 

 

 

 あれから数分で、警察の車が何十台も集まり、俺たちは保護された。もちろん長い事情聴取付きだ。強盗と体調不良を訴えた客の何人かは病院に運ばれていった。多分、死にはしないだろう。多分だがな。

 

「ああー、長かったな。事情聴取」

 

 俺はぐっと背を伸ばす。今まで何回事情聴取を受けたことやら。しかし、日本以外で事情聴取を受けるのは新鮮だ。

 ロビーまで行くと、レッドフィールドさんと青い帽子を被ったショートヘアの女性が話していた。女性の服の左肩にはS.T.A.R.S.と書かれている。

 

「お、リョウ、終わったか」

 

 レッドフィールドさんは俺に気付き、駆け寄ってきた。

 

「はい。色々と聞かれましたよ」

 

 警察官にはこってり怒られ、そして若干褒められた。

 

「ちょっと、クリス! まだ話は終わってないわよ」

「紹介しよう。ジル・バレンタインだ。こいつもS.T.A.R.S.のメンバーだ」

 

 S.T.A.R.S.って若いメンバーもいるんだな。

 

「どうも、クロセ・リョウです。今回はレッドフィールドさんのお陰で助かりました」

「そう……こんな子がクリスと一緒に強盗を撃退したのね」

 

 バレンタインさんは信じられないという表情をしている。

 

「射撃大会では俺を抜いて一位だからな。将来は有望そうだよ」

 

 いやー、それほどでも。

 

「クリス、そろそろ行くわよ。仕事をサボってまで射撃大会まで行って。サボった分はしっかり働いてもらうわ」

 

 この人、仕事をサボってたのか。あ、そもそも取材の日だったな。

 

 レッドフィールドさんはバレンタインさんに引っ張られていく。

 

「リョ、リョウ、九月二十九日にまた別主催の射撃大会がこの街であるんだ。出場しないか?」

「ええ。俺の優勝ですけど。レッドフィールドさん、それまでお元気で、バレンタインさんも」

「俺の事はクリスでいいぞ。それに次は負けないからな」

「クリスさん、さよならー」

 

 クリスさんはバレンタインさんに引っ張られ、車に乗せられ、去っていった。女には勝てないとはこういうことだな。

 

「いやー、クリスさんとジルさん、良い写真を撮らせてもらったよ。この写真は雑誌の表紙で決定かな」

 

 何処からともなく記者さんが現れた。

 

 

 

「九月二十九日か。よーし」

 

 学校があったらサボって行こう。そしてラクーンシティにも行ってみるか。

 

 

 

 


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