「イッセー君!遊ぼっ!」
「待ってよイリナ!」
「「ニャー!」」
公園ではしゃいでいる二人の子供は無邪気に遊んでいた。黒い猫と白い猫は子供たちを見守るかのように見ていたが、やがて子供たちの遊びに混ざった。
『なんでだよ!なんで今までのことがバレたんだ!?』
公園の影から憎悪の目で少年を見ているのは少年と似ている顔をした男の子だった。
『あの猫どもが来てからだ!父さんと母さんが俺が今までやったのがバレて段々と俺のことを信用しなくなったのは!!』
少年は歯を鳴らしながら拳を握るが時すでに遅し。茶髪のショートカットの子はこの子の本性を知られていた。
『クソっ!こうなったらイリナは諦めて他のヒロインを攻略してやる!まずはアーシアからだ!他のヒロインは原作通り進めて手に入れてやる!』
男は邪念を浮かべながら計画を練っていくが
『何故だ……何故相棒じゃなくこんな奴なんだ』
男の中の赤い龍は悲しみに明け暮れていた。悪夢なら早く目覚めてくれと今の現実を受け入れることができなかった。
何故だ……こんな仕打ち余りにも最悪だ。これなら前のあだ名で苦しんでいた時の方が何倍もマシだ。
赤い龍は自分が殺したはずの神に願った。本来の主に帰してくれ。せめてこんな奴から俺を抜いてくれと
「ここが姫島神社?」
「そうよ、ここの巫女さんはね、あなたたち兄弟が産まれるように毎日安産を祈って舞っていたのよ」
「へー………うん?」
鳥居のところに一人の女の子が大人の巫女と遊んでおり少年は誰だろうと思った。
「こんにちは朱璃さん」
「あらこんにちは兵藤さん。今日は息子さん一人?」
「はい、一度挨拶をとほらイッセー」
「えっと兵藤一誠です。初めましてどうぞイッセーと呼んで下さい!」
イッセーが挨拶すると何がおかしかったのか朱璃という女性はクスクスと笑いだした。イッセーは戸惑うばかりだ。
「ごめんなさいね、あなたったらあの時一生懸命に参りしていたお父さんにそっくりだったから」
朱璃は少しイッセーをからかいつつあるがその言葉に嘘はない。
『目元はお母さんそっくりでそれ以外はお父さんそっくりね。でも罪作りの男になりそう♪』
朱璃がそう思いつつ自分の娘を前に出した。
「ほら朱乃、この人たちにご挨拶しなさい」
「ひ、姫島朱乃です」
朱乃という少女の様子がおかしいと思ったイッセーは朱乃に近づいて挨拶しようとした。
「えっと、僕は兵藤一誠。朱乃ちゃん大丈夫?」
「ごめんなさい!」
朱乃に急に謝られて戸惑うイッセーだったが朱璃はいつものことのように言った。
「あらあらうふふ。ゴメンねイッセー君この子は人見知りで他の人を受け入れるのは時間がかかるのよ」
朱璃は怖がる朱乃の頭を撫でながらイッセーを励ました。
「さあイッセー、時間も時間だしそろそろ帰りましょう。お父さんと一正が待ってるわよ」
「うん!」
イッセーは母親の手を繋いで姫島神社を離れた。
「どうしたの朱乃?まだ他の子たちと遊べないの?」
夕暮れになり晩餐を済ませたあといつものように朱璃は朱乃の髪を手櫛で梳かす。
「うん、だって私人間じゃないなんてあの人たちに知られたら私だけじゃなくお母さんも化け物って呼ばれちゃう」
「そんなことないわ。朱乃はお父さんの綺麗な翼と私の髪をしてるんだもの、 誰もそんなひどいこと言わないわ」
朱璃は朱乃の頭を撫でて勇気づける言葉を言った。
「朱乃、女の子にはね全てを受け入れる王子様が現れるの。王子様なら朱乃がどんな子だろうと抱きしめてくれるわ」
「本当に!?」
朱乃は朱璃の言葉に眼を輝かせたが突然朱璃の顔が険しいものとなり、朱乃は不安になった。
「お母さん?」
「朱乃、お母さんと逃げるわよ!」
母の変わりように戸惑う朱乃だったがその言葉の真意が分かった。イヤ原因が来たと言うべきか
「朱璃、その化け物をこちらに渡せ」
「嫌です!この子は何も罪はない!!」
突如刀を手に持った集団が部屋の中に来襲したのだ。朱乃は自分が狙われ、胸の中には恐怖に満ちていた。
「お母さん!」
「朱乃!お母さんのことはいいから早く逃げなさい!」
なんとか神社から境内まで逃げた朱璃たちだったが既に囲まれており、絶体絶命の危機に陥ってしまった。
「朱璃よ、その化け物は我が一族の汚点だ。それを渡せばお前だけは助けてやろう」
「この子は化け物じゃない!」
朱璃は否定し男たちを説得しようとするがリーダー格が痺れを切らしたのか刀を構えた。
「もういい!貴様も我が一族の恥晒しだ!その化け物と一緒に死んでしまえ!」
「朱乃っ!!」
朱璃は朱乃の前に立ち覚悟を決めて目を瞑った。朱乃は自らの運命と出生を呪った。
「死ねええええ…………グオッ!?」
朱乃の目に映ったのは白い光が自分たちを斬ろうとした男に当たった瞬間だった。
「な、なんなんだテメェ!?」
朱乃は光が飛んで来た場所を見るとそこには手を向けて佇んでいた見知った少年がいた。
「イッセー君?」
思わず名前を呼んでしまったが突然の来訪者によって極限状態になった男たちはイッセーの名前など聞く余裕がないのか刀を持ちながらイッセーに襲い掛かる。
「ハァッ!」
イッセーは光の弾を浴びせながらパンチやキックなどで応戦し徐々に数を減らした。
「クソッ!せめて化け物だけでも!!」
下っ端は札に力を込めて朱乃に狙いを定めた。
(今ならあのガキは化け物を守れないはず!)
邪念が篭った札は黒い火球となり朱乃を襲い掛かり朱璃は庇うために前に立った。
「なんだと?」
いつの間にかイッセーは朱乃たちの前に立ち、両手を突き出して光の壁を出し火球を防いだ。
「お前で最後だ!」
イッセーは最後の下っ端に光の弾を当て襲来者たち全員を倒した。
「朱璃さん!朱乃ちゃん!大丈夫ですか!?」
イッセーは朱璃たちに近づき様子を伺おうとした。
「イッセー君後ろ!」
「ウアアアア!!!」
朱乃はイッセーに叫ぶが連戦により油断したイッセーは最後の敵に気づくことができず、刀で袈裟がけされ血が吹き出した。
「チッ、役立たずどもが最後まで俺の手を煩わせやがって」
「あ、あなたは!」
不意打ちをした男は鬱陶しそうに朱璃の言葉に反応した。
「鳳凰!!」
「おいおい、兄を呼び捨てかよ妹よぉ」
姫島鳳凰は朱璃を蹴り捨て、朱乃の首を掴み持ち上げた。
「やめて!その子に手を出さないで!!」
「がっ、くっ…………」
朱璃の必死の訴えに鳳凰はますます苛立ちの顔になり、怒鳴りながら答えた。
「うるせえな安心しろこのガキ殺したらお前も殺してやるよ」
「ううっ!」
伯父の言葉に反応した朱乃だが首を掴まれた上にいつの間にか施された封の札により力を発揮できなかった。
「お前も一応姫島の当主候補だからな、このガキ殺せばお前も当主になれるかもしれない。だから本家には化け物を庇った上での不慮の事故ってことにしとけば俺は一気に当主になれるぜ」
鳳凰は首を掴んだ手の力を強め、歪んだ顔で刀を朱乃の心臓を目掛けて刺そうとした。
ガキィンッ!
強い金属音がその場に鳴り響き一人以外はフリーズした。その一人は鳳凰ではなく
「ハァ、ハァ、ハァ…………」
「お前、なんで立っていられんだよ!?」
血を出しながら剣で刀を止めたイッセーだった。
(妖刀村正の呪いは悪魔でも致命傷を負わせるんだぞ!?のになんでお前は生きていられるんだ!!?)
鳳凰が戸惑っていたがその隙がイッセーの反撃を許した。
イッセーは持っていた剣に光の力を籠めて鳳凰を斬ろうとするが鳳凰は村正で防ごうとした。
バキィン!
朱乃と朱璃を殺すために姫島から無断で持って来た自慢の妖刀村正はイッセーの剣により無残に破壊され、致命傷を負った鳳凰は呆然とした。
「な、なんだよこれ……なんで姫島の当主の俺が……」
自分の中では既に当主になっていた鳳凰だったが、その実態は幻想と現実を区別できない妄言を吐く哀れな道化だった。
「ガキィ……お前はもう終わりだ……俺たち姫島を敵に……したんだからなぁ……今度はお前の家族もろとも……」
負け犬の遠吠えをする鳳凰だったが最早その命は
「終わるのはお前だ」
イッセーによって斬り裂かれた。
「イッセー君!イッセー君!」
「ハハッ、痛いよ朱乃ちゃん」
朱乃は命の恩人であるイッセーに抱きしめるがイッセーは照れくさそうに笑いながら朱乃を抱きしめた。
「イッセー君!しっかり!今呪いを!」
朱璃は朱乃を落ち着かせイッセーの体に手を添えて呪いを解けないにしても進行を抑えようとするが、目を疑った。
「呪いが消えてる?」
朱璃は今起こっていることに驚きながらもイッセーのケガを手当てし、なんとか刀傷を消した。
「お母さん、イッセー君の両親に連絡しないと!」
「分かったわ、朱乃とりあえずイッセー君の家に電話を!」
朱璃は朱乃に電話を掛けるよう伝えイッセーの治療に専念した。
「朱乃、お母さんが言った通りでしょ?」
「うん、イッセー君は私の………あれ?」
朱乃はイッセーの嫁になるのを決心し朱璃の元へ行こうとしたがポケットに何かが入っているのに気が付き手を入れると
「これは?」
そこには赤と紫の銀の人に近い何かがカードに映っていた。
カードの正体は丸わかりでしょうね。
次回は高校生の本編です!
ちなみに鳳凰のモデルは紅の九鳳院竜士を大人にした感じです。