まだ病状があまりよくなく、インターネットの使用も余りできません……
次の更新はいつになるかは……自分の気力次第です。
ですが、頑張ります!筆者は大丈夫です!(目回し)
完結、させたいなぁ……
――――――――ありえない
この感じ、あり得るはずがない。この気配は久しく感じることなく、またもう二度と感じることの無いはずなのに。
何故、どうして?
そんな疑問が頭の中を駆け回る、こんなことは初めてだ。
亡霊、なのか?それとも僕が死んでいるのか?
「――――寺!雨寺!」
僕を呼ぶ声が聞こえる、途端に現実に引き戻される意識。
そう、ここは
そして僕は口に出す、偽り、でも今の自分の名前を。
「僕は……僕は雨寺 時美と言います、これからよろしくお願いします。」
そう、僕は雨寺時美。そして駆逐艦時雨、ただの時雨だ。
崩れそうな心を必死に抑え、僕は自己紹介をする。クラスのみんなに、そして自分に言い聞かせるように。
――――――ああ、僕は何も変わっていない、あの夜から何も。
僕は何故生きるのか、本当は死んでいるはずの僕が。ここに居るべきはあの人なのに、何故僕はここに居る?
決まっている、逃げたからだ、見捨てたからだ。
艦娘は強さこそ全て、そう思っていた。だからどこまでも強くなった、守るために。その為ならなんだってした、激しい訓練に無謀とも思える作戦、その全てに耐えて打ち勝った。
その果てに僕は手に入れた、駆逐艦の頂とも言える地点に到達したのだ。僕は思った、これがあればどんな壁だって乗り越えられる、皆を守れると。
事実、その力は圧倒的だった。姫、鬼級でも条件さえ整えばサシでやりあえる。
―――――――そしてその力はある夜、呆気なく燃え尽きた。「守るべきもの」、という強さの理由と共に。
海安学園 屋上
瑞鶴は怒っていた、激オコぷんぷん丸であった。休み時間、クラスメイトからの質問への返答もそこそこに屋上へ。
隣にいるのは時雨、もうどこか達観したような笑みを浮かべている。そして目の前にいる人物こそ――――――――我らが加賀である!
「それで?何か用かしら?」
涼しい顔で言う加賀に対し、瑞鶴はまず一言言った。できるだけ、それはもう冷静に。
「何故此処に?」
「それを貴女に話す必要が?」
「ありますよ!仮にも私達は軍事機密なんですよ、それなのに……!」
結局、五秒と持たなかった。そのまま捲し立てようとする瑞鶴を加賀は手で制し、続けてこう言った。
「大丈夫、提督には言ってある。」
「そんな証拠……大体加賀さんは教員免許持っているんですか?」
「証拠なら提督に連絡しなさい、それと教員免許なんて持ってるに決まっているでしょう?」
「いや、違うよね?てか二人とも落ち着いて!」
思わず、だがやっと時雨がツッコミを入れる。
それより読者諸兄も何故ここに加賀がいるのか気になるだろう、まぁ大方予想はできているだろうが。
あれは一週間前、瑞鶴が執務室から退室してから僅か十秒後の出来事であった。
一週間前、横須賀鎮守府 執務室
瑞鶴の説得及び詳細説明が終わり、提督が一息ついた直後、彼女は来た。
ガチャ
「提督、加賀です。宜しいでしょうか?」
「入ってきてから言うなよ……」
いきなり入って来た加賀、用件は皆さんご察しの通りである。瑞鶴の状況は把握済み、なんてったって扉の外で聞いていたのだ。だんだんと行為がストーカー染みてきたが、気にしたら負けだ。
「提督、私を瑞鶴のお目付け役としてくれませんか?」
「駄目だ、いい口実がない」
「と、言うと?」
提督は瑞鶴達を行かせるのは特例であり、そうそう他の艦娘に許せることではないと言うこと。そしてどういう形で加賀を送り込むかと言うことを話し、加賀に諦めるように言った。
それに対し、加賀は全てを聞いた後返答した。
「ならば、少し後塵の教鞭を取ってきます」
「?、どういうとこだ?」
「一応、教員免許くらいは取っているので」
「…………」
提督は絶句する、加賀がそんなに万能なんて話聞いていない。そもそも加賀は艦娘養成学校からの艦娘のはずだ、教員免許を取る暇なんてないはずである。
ならばいつ、どのような理由で……?
(……いや、理由なんて一つしかないか)
そう、加賀がここまでするに足る理由など娘のこと以外にありはしない。彼女はいつ何が起こってもいいように準備していたのだ。
とは言え、どんな理由をつけようとそれが付いていくのを許可する理由にはならない。
「因みに、提督が承諾しなかった場合は……」
「なんだ?言っておくがこれでも俺は横須賀の提督だぞ、生半可な脅しなどに屈するわけが――――」
「T督から聞いた貴方の学校時代の黒歴史、鎮守府に掲示するわよ」
「よし行って来い、話はつけておく」
まさに即堕ち二コマ、綺麗にフラグを立ててからの鮮やかな回収。最早芸術の域にまで達していた、流石加賀さんである。
「……と、言うわけよ」
「何さらっと脅迫をしてんのよ!」
このやり取りはチャイムが鳴るまで続いた、不毛な水掛け論を展開する中で瑞鶴と加賀の精神年齢は地に落ちた。そんな状況の中、提督からのお目付け役が自分だけではないと分かったが、その人物が新たなトラブルしか起こさない人物だと知った時雨はやがて、考えるのを、やめた。
一時間目 数学
やっている範囲は基礎的な式の計算、字面だけみれば簡単そうだが、この範囲は因数分解も含んでおりさらに艦娘採用試験の対策の為に、新たな範囲も追加されている。
(流石に言うだけのことはあるわね……でも!)
「はい、ではこの方程式を…寺牙さん」
「はい、x=十五分の三十八です」
流れるように答える瑞鶴、式を見てノートに写す、暗算で出来るところは暗算で。これが瑞鶴が昔から好んでやっている授業スタイルだ、無論初見の授業ならばもっと真剣にノート制作に取り込む所である。
が、今日から一ヶ月習うのは既習範囲。それに今は仮にも全艦娘が休日なのである、瑞鶴だって色々としたいことがあるのだ。
だからと言って提督の言うとおり国語の成績は洒落にならない、だが逆に言えばそれ以外の授業を真剣に受ける気は更々無かった。
(こちとら折角の休日を返上してるんだから、少しくらいいいわよね……)
実際瑞鶴の頭は艦娘艦娘養成学校でも上位に入る、よって何ら問題は無い――はずなのだが……
(私がこんなんだから時雨なんてモロ暇でしょうね、寝ちゃお―――――!?!?)
キュピイン!!!!
その時、瑞鶴に電流走る!それは時を越えた人類の可能性が為せた技か、とにかく瑞鶴は感じた、明確な視線とそこに含まれる「殺気」を。
(何処から!?)
辺りを見回す瑞鶴、そして視線が後ろから来ていることに気付き後ろを向く。
そこに居たのは――――
ドドドドドドドドド
加賀である、だが本当に加賀か?後を見た瑞鶴はそう思う、何しろ纏う雰囲気は勿論画風が違う。
具体的に言うと世紀末に出てきたり、後ろに
そしてその加賀が一言
「授業、受けなさい♪」
「イエス、マム!」
こうして時は過ぎていく、だがそれは瑞鶴に取っては異様に長く感じられた。主に後ろからのせいで。
だから昼休みのチャイムが鳴ったときに瑞鶴は一目さんに駆け出した、食堂に行きたかったからのと言うのもあるが兎に角加賀さんから離れたかったのだ。
「逃~げるんだよぉ~!」
端から見れば怪しまれる程の速度、人間が出せる限界を明らかに超えているが瑞鶴は気にしない。
そして後ろを振り返り、着いてきてないことを確認して安堵する。……というテンプレフラグを立てる。
「成る程、三十六計逃げるに如かずか……けれど甘いわね瑞鶴」
「!?…ってか本名だしちゃダメでしょ!」
そんなことは加賀さんにとって些細なことである。
そして瑞鶴は察する、加賀からは逃れられないと。
こうして泣く泣く加賀さんに引っ張られていった瑞鶴はお昼を加賀さんのもとで過ごすのであった、また昼ご飯は加賀さんの手作り弁当であり、何故か懐かしさを覚える味だったことを明記しておく。
午後の授業を満腹からくる眠気に耐えながら乗り切り、やっとのことで終礼。
「はーい、今日の連絡はこれまで。あと文化祭が迫っているのでアイデア等を考えてくること!」
(文化祭……か)
文化祭、高校にもよるが秋に多いイベント。クラスごとに出店や出し物をして楽しみ、クラスの結束を高めるという趣旨である。
ちなみに一部の高校の特定のクラスなどでは出し物ができず、研究発表などということをするところもある。楽しみかどうかは……察してください。
瑞鶴や時雨が通っていた艦娘養成学校にはその手の催しもあった、あったのだがなんせ国家機密を育てる場である、来ようにも厳しい身分調査が必須であり尚且つ生徒の親族しか入れない。
そのような七面倒くさい理由もあってか、艦娘養成学校の文化祭は殆ど内部……生徒向けのイベントだった。
「面白そうね……」
「でしょでしょ!特にうちの高校の文化祭は規模が大きいんだ!」
自然と口をついて出た言葉に反応したのは前の席にいた女子、しかし瑞鶴はロクにクラスメイトの顔も覚える暇がなかったので返答に詰まってしまう。(主に誰かからのプレッシャーにのせいで)
「え、えーっと……」
「あー名前わかんない?そっかーそういえば真っ先になんか新しい先生に連れて行かれたもんね、なにかあったの?」
「う、うん色々と……」
言えるわけがないであろう、知り合いどころか上司であるなどと……
「あ、私は
のことなら何でも知っているから!」
「あ、ありがとう……」
「じゃあ一緒に帰ろうよ!帰り道で色々聞かせて!」
あって初日でこの会話、クラスによくいる中心人物なのだろう。なぜ自分に声をかけてきたのか、自分の友達とすることで自分のコミュニティの拡大を……と思ったところで思う。
(だいぶ毒されているわね……)
艦娘養成学校では皆がライバル同士、クラスの関係一つとってもあまりホンワカした雰囲気ではなかった。
故にこういう感覚は久しぶりだと感じていた、と共に改めて自分と同年代とは住む世界が違うことに気付いてしまう。
きらきらと目を輝かせる彼女はそのような邪気を一切感じさせず、ただ純粋に好奇心からきていることを示していた。
「あ、そこの転校生さんも一緒に帰ろう?」
「僕のことかな?」
「うん!」
目線だけをこちらに向ける時雨、瞬時に瑞鶴と同じ考えをしたのであろう。苦笑しながらうなずくと、帰り支度を始める。
帰り道は途中まで一緒だった、と言っても瑞鶴と時雨は近くに拠点を取り共通の家に暮らしている。(ちなみに家賃、電気代、水道代、ガス料金その他諸々はT督持ちである)
道すがらでの話はやはりクラスについて、特に瑞鶴が聞き流していた交友関係についてが中心だった。
「雨寺ちゃんと寺牙ちゃんは誰か興味のある子はいた?」
「あんまりいないかな……まだ来たばっかりだし」
まぁあんまり長居もしないしね、と考えながら答える。言っちゃあ悪いが彼らとは短期間しか付き合わないのだ、あんまり仲良くなってもいいことはないだろう、私たちは艦娘で彼女らは一般人なのだから。
「じゃあ聞いてもいいかな?」
「雨寺ちゃんはだれか気になる子がいたの?」
あら珍しい、と思った。時雨にたいしての瑞鶴の感想として他人にあまり興味がない、というのがあった。時雨は自分の姉妹艦以外とは(所属していた艦隊の艦娘を除き)殆ど交流がなかったのだ。
「教室に白い髪の娘がいなかった?」
「ああ、木目ちゃんね……」
「木目……木目さんっていうんだ、どんな子なのかな?」
その言葉をいう時雨はどこか悲しそうで、瑞鶴は初めて時雨の素の感情を見たような気がした。それ程までに気になるとは、艦娘になる前に交流でもあったのだろうか?
「あんまり関わらないからな~よく知らないんだ、ゴメンね」
「大丈夫、全然いいよ」
積もる話もあるのかもしれない、(偶然とはいえ会うなんて機会中々無いからね)などと瑞鶴は思った。
兎にも角にもこれからしばらくお世話になるのだ、問題を起こさないようにしていこう。そう考えながら黄昏時の中、三人は帰っていった。
…………その日、帰宅時間帯に青い服を着てマスクとサングラス着用のサイドテールの不審者が、三人の女子高生をストーキングしているのを目撃され、緑のおばさんとおじさんのパトロールが若干強化されたのは余談である。
次回予告
…………すると思った?
次回「日常(艦娘)」